おいたをする使徒
「なんだこれ?」
マーギンは祭典を見て目を丸くしていた。
いつもの「マナを押せ」の儀式のあと、新たな宴会芸、もとい、儀式というか祭典が始まる少し前のこと。
「みなの者。ワー族の自分が、ミャウ族の長となったことに、少なからず快く思わない者もいると思う」
ミスティの指名で、新たな長となったロブズンが演説をしている。
「俺は種族の壁を越え、この集落をさらによい集落にすることを誓う。みんな、俺に力を貸してくれ」
何も飾らず、実直にそう言ったロブズンにみんなから拍手が巻き起こる。そして、
「誰も不満になんか思っちゃいねーぞ!」
「そうだ、そうだ。ワー族はこの集落を守り続けてくれたんだ!!」
「使徒様のご指名だ。俺たちもありがたく受け止めてるぞー」
誰からも否定的な言葉は出ず、ミャウ族はこれまでのワー族の働きをちゃんと認めていた。
「みんな、ありがとう。では、俺から一つ提案がある」
ロブズンの「提案」という言葉を聞いて、ざわつくミャウ族。
「この集落にはミャウ族とワー族がいる。しかし、どちらもラー様を祀る民であることに違いない」
その言葉にみんながうんうんと頷く。
「そこで、ミャウ族、ワー族という垣根をなくすために、我々をラー族と改めたいと思うがどうだろう」
ラ族?
いらぬ想像をするマーギン。
そんなマーギンとは裏腹に、ミャウ族、ワー族の両方から、おぉーっ、という歓声が上がった。
「「賛成!!」」
誰も反対することなく、ここはラーの集落のラー族ということに決まったのだった。
「では、祝いの祭典を始めたいと思う」
急いで祭典の準備が始まり、全員が専用の衣装を身に着ける。
「おぉーっ! さすがムー様」
祭典用の特別衣装を身に纏ったムーは圧巻だった。背負い羽にビキニのような服装、頭にはティアラを着ける。他のみんなはヤシの殻で作られたブラとビキニの水着に葉っぱの腰みのだ。
「ミスティ、お前のは可愛い衣装だな」
「なぜ私までこのようなハレンチな衣装を着なければならぬじゃ」
使徒様、使徒様。と、崇められたミスティも断ることができず、祭典の衣装を着せられていた。しかし、色気の塊みたいなムーの横に並ばされたミスティが可哀想だな、とマーギンは見て見ぬふりをする。
「みっ、見んなよ」
ムーとミスティから目を逸らすとバネッサがいた。色気という点では劣るが、バネッサも迫力満点。踊ったらこぼれそうだ。
「ねー、マーギン。似合ってる?」
カタリーナが見せてくるが、ムーとバネッサを見たあとではお子様感が拭えない。ちなみにアイリスはミスティと同じカテゴリーだ。
「こ、こんな格好をさせられるなんて……ど、どうすればいいのだマーギン」
恥ずかしさで全身真っ赤になったローズがマーギンの腕を掴んで、後ろに隠れようとする。
ぽいん。
うむ、役得である。
こうして、笛の音が鳴り響いて、祭典が始まった。
「ラーラーララー ララララー」
なんか聞いたことのある音楽を歌い出す。
「なんだこれ?」
身体を震わせてリズムに乗せて踊るラーの民。ムーとミスティが中央のお立ち台に乗って踊っている。ムーはノリノリで腰をくねらせて踊り、ミスティはヤケクソなのだろうか? 羽でできた扇子を両手に持ち、すずめが踊っているような動きだ。それを見たマーギンはリズムと合ってないぞ、思いながら自分はチャンカチャンカと踊っていた。
「あわわわっ」
マーギンの後ろで、ヤシの殻では収まりきらないバネッサが溢れそうになる。そして伸縮性のない紐でくくられたビキニも落ちかけた。
「マーギンっ、助けろっ!」
えっ? とマーギンが振り返ると、バネッサがえらいことになっている。
「た、助けるってどうすりゃいいんだよ」
「押さえて、どっちでもいいから押さえてくれっ!」
バネッサがビキニの紐を押さえたので、マーギンはヤシの殻ブラを押さえる。
「そのまま離すなよ」
こうして、他の人たちから見た、ムーの使徒がおいたをしているシーンが出来上がる。しかし、誰も見て見ぬふりをした。
「ちっ、違うっ! 違うんだって」
さっと目を逸らしたみんなに言い訳をするマーギン。しかし、バネッサのブラから手を離せない。
それを見ていたカタリーナ。
「ほら、ローズもやらなきゃ」
「えっ?」
カタリーナにブラの紐をほどかれるローズ。
「キャーっ!」
そして、ヤシの殻を両手で押さえたローズをマーギンの元にドンとカタリーナが押す。その拍子にビキニの紐もほどけそうになった。
ヤバいっ!
バネッサとローズの2人のブラが落ちてしまう。不意にどっちを選ぶの? みたいな選択肢がマーギンに訪れた。
わずかコンマ数秒で判断を迫られるマーギン。
ええーい、ままよっ!
マーギンは2人を自分に抱き寄せ、ポロリ事故を防いだのだった。
「キサマは公衆の面前で何をやっとるかーーっ!」
それを見たミスティが叫んでやってきた。
「違うんだって。2人の衣装が全部脱げそうなんだよっ。なんとかしてくれ」
説明を聞いたミスティが2人のヤシの殻ブラの紐を結び直して、何とかなったのだった。
夜は酒とご馳走の宴会。
うなぎの蒲焼きをガツガツと食うミスティとカタリーナ。ノイエクスはマーギンに教わったハンバーグを作ってアイリスに食べさせる。
「5点です」
アイリスのハンバーグ採点。
「10点満点でか?」
ノイエクスは、それでも厳しい採点だなと思った。
「100点満点ですよ」
「………」
よく頑張ったで賞の5点だけもらったノイエクスのハンバーグ。認めてもらえるまでの道は長そうだ。
ムーとマーギンは宴会中にロブズンとミャウタンとラーの集落の話をしていた。
「いきなり長になって大丈夫か?」
「まぁ、なるようにしかならんだろうな。俺なりに頑張ってみる」
と、ロブズンはやるしかないと答えた。
「私も役目が終わったとはいえ、生きている間は手伝わせていただきます」
ミャウタンはロブズンのサポートをすると言った。これからミャウタンはラー族の長老というポジションになっていくのだろう。
そんな話をしていると、ミスティがこっちにやってきた。ラーの民から使徒様、使徒様と崇められるのがうっとおしくなったらしい。
そして、マーギンは自分たちのことを説明しておく。
「そうか、お前はそんな生き方を選ぶのか」
ロブズンが心配そうな顔でマーギンを見つめた。
「まぁ、俺たちにしかできないことだからな。それに俺1人じゃないし、それなりに楽しく過ごせるんじゃないかな」
「分かった。他の国はどうなるか知らんが、俺たちはラー様と共にお前たちを崇める者となろう」
「ま、好きにしてくれ」
と、マーギンは笑って返したのだった。




