初めて見るミスティ
送別会が終わり、皆が酔い潰れている間にマーギンたちは旅立った。
「おや、マーギン。ずいぶんと会わないうちに派手な見た目になったもんじゃの」
長らく顔を出してなかった、ジャガイモ農家のケンパ爺さんに会っておく。
「お久しぶり。収穫手伝うよ」
「すまんのう。年のせいか、なかなか捗らんかったんじゃ」
「そりゃ良かった。来た甲斐があったよ。全部掘っちゃっていい?」
魔法でダーッと収穫していく。
「今年の芋、収穫少ないね」
「仕方がないのぅ。土地もわしと同じで年くっとるからの」
ライオネルの魚粉肥料を使っているらしいから、栄養が足りないってことはなさそうなんだけど、不足成分とかあるのだろうか……と、マーギンがケンパ爺さんと会話をしていると、ムーが何かを始めた。
「何やってんだ?」
「土地の力が弱まっておるのだろ? 我が少し手を貸してやろう」
「魔力は注ぐなよ。魔ガイモとかになったらどうすんだよ」
「心配するでない」
ミスティも止めないということは大丈夫なんだろうと、様子を見ることに。
「これぐらいで良かろう」
「何をやったんだ?」
「ふふっ、喝を入れてやったまでよ」
「なんだよそれ?」
意味不明の回答だったが、ムーは感覚で魔法を使うので、理屈は分からないのだろう。
人数が多いので、晩御飯だけ一緒に食べて、泊まるのは遠慮しておく。
「ふむ、この芋は美味いな」
作ったのは粉吹き芋のマヨ掛けと煮っころがし、それとフライドポテト。マヨ掛けはミスティ、煮っころがしはバネッサのリクエストだ。ケンパ爺さんたちには煮魚を作った。
「ふむ、この芋はミスティが言っていたやつか? 美味いではないか」
ムーが粉吹き芋のマヨ掛けを食べながら、ミスティに聞いた。
「余計なことを言わんでいい」
「ムー、ミスティがなんか言ってたのか?」
「こいつはいつもお前が作る飯のことを……」
「余計なことを言うなと、言うたじゃろうがっ!」
そういや昔、初めてマヨを食べたときに目を丸くしてガツガツ食ってたな。
マーギンは追加でジャガイモを蒸し、ポテサラを作っておくのであった。
◆◆◆
「あっ、オヤビンがまた違う女を連れてきたでヤンス……あいたっ。何するでヤンスか」
いらぬことを言ったピアンはマーギンにデコピンを食らう。
次の転移先はミャウ族の集落だった。
「いらんことを言うからだ。ロブズンはいるか?」
「い、いるでヤンス。しかし……ずいぶんといい女を連れ……」
そこまで言ったピアンは、ムーを見て固まった。
「だ、誰でヤンスか」
「ミャウタンに説明してからみんなに話す」
ムーとミスティのことはミャウタンに説明してからだと言ったマーギンは集落の中に入っていく。以前とは違って、他の集落とも交流が増え、自由に出入りできるようになっていた。
わふっ、わふっ。
キンとギンが走ってきてマーギンの隣に張り付いた。いつもならすぐに顔を舐めまわすのに、今回は身体をくっつけたまま、ムーの様子を伺っている。
「大丈夫だ。あれは敵じゃない」
そう言って頭を撫でてやっていると、美少女か走ってきた。
「やっぱりマーギンが来てたっ!」
「お前、ポニーか?」
なんだこの成長ぶりは? たった数ヶ月でこんなに変わるものなのか?
「うん。それより……」
ミスティはフードで顔を隠しているので、ミャウタンと同じ顔だということはバレていない。
「は、初めまして……」
ポニーが挨拶をしようとするので、とりあえず止めた。
「ミャウタンのところで紹介する」
そう言ったマーギン。ポニーもキンとギンと同じく、いつものように飛びついてこず、ムーとミスティの方をチラチラと見ていた。
屋敷に着くと、ロブズンもすぐにやってきた。
「マーギン、それは何かのまじないか?」
「いや、ちょっと戦闘の影響でね」
「怪我の跡みたいなものか。お前にそれだけの傷を残すとはかなりの強敵だったんだな」
「まぁね」
そんな話をしながら、ミャウタンのところに行くと、三つ指をついて頭を下げて待っていた。
「お帰りなさいませ、マーギン様」
「様はやめろと言っただろ。今日は色々と話がある」
そして、マーギンは2人を紹介する。
「ミスティ、フードを脱げ」
そう言うと、ミスティは黙って顔を見せた。
「し、使徒様……」
「そう呼ばれていた本人だ。それと、こっちはムー。月の女神と呼ばれていたやつだ」
そう説明すると、お漏らしするんじゃないかと思うぐらい驚いて、そのまま床に頭をこすりつける。
「ミャウタン。そんなにかしこまらなくていい。こいつは神じゃない。神と思われていただけのやつだ」
「それでも、それでもムー様とラーの使徒様であることには間違いございません」
マーギンが何度言っても、ミャウタンは頭を上げない。
「良い。顔を見せよ」
と、ムーが声をかける。
「はっ、ははぁっ」
と、ミャウタンが顔を上げると、ムーは顎をくいとして顔をマジマジと見た。
「ふむ、見事な魔法であるな」
ムーはミャウタンが変化の魔法を使っていることを見抜く。
「しかし、その魔法はもう使うのは止めた方がいいの。間もなく命が尽きるぞ」
「これは集落を守るために必要なのでございます」
ムーが警告をしても、ミャウタンは集落のために変化の魔法を使うと言い切る。
「ミャウタン、俺も、もういいと思うぞ。ムーとミスティのことは、集落のみんなに話す。それに他の集落との交流も増えたみたいだし、元の自分に戻っていいんじゃないか」
「マーギン様……」
こうして、急遽いつもの広場にみんなを集めて、ムーとミスティのことを説明することになった。
ざわざわ。
説明が終わると、ミャウタンと同じようにその場で頭を地面にこすりつけるようにひれ伏した。
どうするよこれ? とマーギンが戸惑っていると、ミスティが前にずいっと出てきて、バッと手を伸ばした。
「みなのもの、顔を上げよ」
ビクッ。
こんな大きな声を出すミスティを初めて見たマーギンは引いた。
「ミャウタン、こちらへ来い」
そして、ミャウタンを自分の元に呼ぶ。
「これまで、私の代わりによくぞみなを守ってくれた」
ざわざわ。
「大義であった」
そうミスティが宣言すると、ミャウタンはボロボロと涙を流して顔をくしゃくしゃにした。
「もう、大丈夫じゃ。みなの前で変化を解くがよい」
「かしこまりました」
ボワワンと、変化の魔法を解くと老婆になったミャウタン。
ざわざわざわざわざわざわ。
「これからは、ゆるりと余生を過ごすとよい」
「ありがとうございます。ありがとうございます」
「次の長は決まっておるか?」
「まだ決まっておりません」
「では、そこの真なる獣人よ」
と、ロブズンを呼ぶ。
「は、はい」
「貴様が長をやるのじゃ」
「えっ?」
「不服か?」
「い、いえっ。謹んでお受けさせていただきます」
おぉー。
こうして、ロブズンがミャウ族を治めることになった。それから急遽、宴会の準備が始まるのであった。
エピローグが続いてもいいとのお声に甘えて、省こうと思っていたエピソードをもう少し書きます。




