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味方などいない12話

 メルランデ様にいじめられたが、その日の授業はその後もつつがなく終わりを迎えたので、俺とレナ様は帰ろうとしていた。


 しかし、放送によって(そんなことする必要ないのに)、メルランデ様に呼ばれたので仕方なく部屋に向かうこととなった。


「あら、よく来てくれたわね」


「よく言うよ。わざわざ放送なんか使って呼び出してくれちゃって。別に念話魔法でも使えばいいのにさ」


「ふふ、そっちの方が趣があるでしょう?」


 なんかよくわらないこと言ってるなーと思っていたら、レナ様の表情も俺と同じだった。


「それで?どうして私を呼んだの?」


 暇だったからお話しでも、という訳でもなさそうだった。


「まあまあそんなに焦らないで。ずっとイライラしてると、人よりも早く歳をとるわよ?」


 ……年齢の話を、メルランデ様がしますか……?


「え、ツッコミ待ち?」


 とか思ってたら、レナ様も同じことを考えていたらしい。


「……レナ?何か言ったかしら?」


「……………ナニモイッテナイデス」


 メルランデ様のオーラが急にどす黒くなった。

 ちょっと!イライラしてたら人よりも早く歳をとっちゃいますよ!ただでさえ人よりも長く生きてるのに!


「あらぁ?何か失礼なことを考えているわね、そこのメイドちゃん?」


「え!そんなそんな!何も考えてません!無でした!無!」


「嘘、ついちゃうのねぇ。そうなのねぇ」


 メルランデ様は目が笑ってない笑顔を浮かべた。

 あの顔は本能で分かる。勇者パーティで冒険をしていた頃にも何回かあった。ヤバいやつだ!


「えい」


 メルランデ様が指をぱちんと鳴らす。


 するとあろうことか、さっきまで守られてたはずの太ももが、途端に外気に晒された。


「え、ちょ、え!?何!?なんで!!??」


 思わずスカートを抑えるが、なぜか太ももが隠れない。というか、膝まで行かない。


「はい。ユウリちゃんのスカートをパンツが見えちゃうギリギリまで短くしちゃいました。今日帰るまで、その格好でいなさい?」


 今度は満面の笑みを浮かべた。


 り、理不尽だぁ……自分から年の話をしといて、自分で怒るなんて……


 この格好だと、ちょっと歩くだけでも大惨事になってしまいそうだ。誰が俺のパンツなんて見たいんだよ……見せたら多分通報されて騎士団行きになるな。


「メルランデ、おふざけは良いから、そろそろ本題に入ってくれないかしら?」


 と、レナ様は腕を組みながら俺のスカートを下から覗き込んで、説得力ほぼゼロの状態で言った。


 見るな!そんな見ようとするな!


「そうねぇ。じゃあ、本命のユウリちゃんいじめも終わったし端的に言うわね」


 こっちが本命かい!


「もうすぐ、この学園で大きなイベントを開くらしいの。アタシと、レナの名前を使って」


 メルランデ様の本命じゃ無い話は、結構大事そうだった。そっちの話だけで良かったよ最初から。


「へぇ、そう。どんなイベントなの?つまんなそうなら、私の名前は貸せないから」


 レナ様は吐き捨てるようにそう言った。


 確かにこの学園にあの勇者パーティーの一員の2人がいるという、圧倒的な集客ができそうなチャンスを逃すわけがないよな、とすぐに考えついた。


 しかし、そのように見せ物にされてしまうからこそ、安易に名前を貸すことはレナ様のプライドが許さないのだろう。


「レナならそう言うと思った。アタシだって、そう易々と請け負ったりはしないわ。このイベントって言うのはーーーー」




 メルランデ様はたっぷりと間をとって言う。




「ーーーー武闘大会よ」



 その言葉を聞くのが早いか、レナ様の表情は先程までとは全く変わって、新しいおもちゃを買ってもらった少年のようにキラキラとした笑顔になっていた。


「武闘大会……!?なによ、もっと早く言いなさいよ!」


 怒っているようで、顔はニコニコである。

 どうやら、お眼鏡にかなうイベントだったようだ。


「剣術魔術、なんでもありの最強を決める武闘大会よ。出場できる選手は、学園の生徒、またはその推薦があったもののみらしいわ」


「へぇ、面白そうじゃない。久々に、良い運動ができそうね……!」


「ふふ、アタシも話を聞いただけでゾクゾクしたわ。でも、アタシ達がそのまま出場しても、結局最後はアタシとレナが戦うに決まってるわ」


 そりゃあそうだろうな。魔術ならメルランデ様、剣術ならレナ様に勝てるものはこの世界にいない。


 勇者だった頃の俺だって、それぞれの分野でまともに戦っては、負けることだってあった。


「……まあそうね。だからといって、私はそれでも良いけど?アンタとどっちが強いのか、試してみたいと思ってたし」


「それも面白そうなのだけど……今回は、もっと楽しいことをしましょう?」


「もっと楽しいこと?」


 そう言ったメルランデ様の視線が、これまで蚊帳の外だった俺に向いたのがわかった。


 ……何か嫌な予感がする。


「ユウリちゃんを、その武闘大会に出場させちゃうのよ!」



 はい、悪い予感的中。



「ふうん。確かに、面白いことを考えるじゃない。今のこの子がどこまで戦えるのか、興味があるな……」



 はい、レナ様も味方じゃありませんでした。



「あの、お2人はご自分が何をおっしゃっているのかお分かりでしょうか……?わたしが出場しても、すぐに負けてお2人の顔に泥を塗ってしまうことになりますよ?」


「いえ、案外そうでもないと思うわ。今日の授業の様子を見て、改めてそう思ったわ」


 中級身体強化魔法によって、それなりに動けるようになった事だろうか。


 しかし、身体強化でどうにかできる範囲は、ある程度限られてしまうだろう。


「ユウリちゃん?あなたは、今の自分には身体強化魔法を使ってもそこまで強くなれないって勘違いしてると思うわ。昔の勇者ユウリの基準で考えているかもしれないけど、あれは化け物よ。あんな怪物と一緒にしたら、ユウリちゃんが可哀想だわ」


 あ、ユウリちゃんと勇者ユウリはもう別人なんですね。

 てか、化け物だなんて酷いなぁ……


「……と言っても、出ないってあなたが言ったら、そのスカート今後一生そのままだからね?」


 はい出ましたメルランデ様の激怖い笑顔!それもうただの脅しじゃん!


 やりますよ!やれば良いんでしょーー!!!


 俺はやけになって、やることに決めた。

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