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お出かけする13話

 その夜、屋敷に帰って来た俺は、レナ様と武闘大会のことについて話していた。


「メルランデ様はどのようなお考えなのでしょう?わたしを武闘大会に出場させるなんて」


「あー目立っちゃうから、的なこと?」


 うん、と頷く。

 実際のところ、俺のことを狙っている輩がいるから、あんまり目立ちすぎると良くないんじゃないかとも思える。


「寧ろ、メルランデはそれが狙いなんだと思う。ユウリが目立つなら、そこに人は集まるだろうし」


「悪い人たちを集めて、一網打尽にすると?」


「そ!あとそれにー」


 レナ様はこちらに近づいて来てニコニコする。



「ずっと冒険ばっかで、気楽にお祭りを楽しむなんてこと、今までなかったでしょ?」


 言われてはっとなった。そういえばこの人はまだ16歳だった。遊びたい気持ちもかなり強いよな。


 メルランデ様とレナ様がいるなら、まあ大抵のことはどうにかなるし。


 ほとんどの敵に対しても、2人で対処しきってしまうだろう。


「てかさ、メルランデが何考えてるかよりも、ユウリ!貴女の活躍の方が大事なんだよ!」


「わたしの活躍ですか?」


「そう!どうせ出るなら、このレナ様の名前に泥を塗らない活躍をして欲しいんだけどー」


「まあ、確かに……?初戦で負けてしまったら目立たないし、なんのために出場したのか分からなくなってしまいますね」


 そう伝えたレナ様の顔は、悪い顔だし、楽しそうに見えた。


「てことでー……」


 あ、これは何か楽しいこと(レナ様比)を思いついた時の顔だ。



「お外に遊びに行こっか!」



 □□□□□




 そんなわけで次の日。授業終わりの課外活動として、俺とレナ様、そしてメルランデ様が一緒になって街の外に出て来ていた。


 目的地は街外れにある洞窟。

 英雄2人を連れて行くにしてはあまりにも過剰戦力すぎる場所であるが、戦う力のない人々の立ち入りは禁止されているくらいに危険が伴う場所である。



「こうしてレナと一緒に移動していると、冒険してた頃を思い出すわねぇ」


「そうね。でも、あの時とはちょっとメンバーが違うんじゃない?」


 俺の方を見る。

 いや、俺はアンタらと一緒に冒険してたでしょうよ。


 ただ、今回勇者のパーティと違うメンバーは、俺だけにとどまっていなかった。



「あ、あの!レナ様とメルランデ様と一緒に居させていただけるのはとても嬉しいのですが!!これは、どう言う状況なんでしょうか……?」


 俺、レナ様、メルランデ様の3人にプラスして、レナ様と同じクラスのお嬢様、フエス様もいるのだった。


 戦力を考えればフエス様など呼ぶ必要はないはずだが……


「説明、してなかったわねぇ」


「そうだったわね」


 彼女に説明してなかったんだ。

 俺にも特に説明はないけども。


「武闘大会のことで、ちょっと私達に協力して欲しいのよ」


 メルランデ様がそう言うと、露骨にフエス様の表情が明るくなった。


「そ、そういうことであれば!ワタクシがお役に立てるのであれば、ぜひ、ぜひ!!」


 すごい嬉しそうだ。

 まあ、英雄に頼りにされるというのは嬉しいことなのだろう。俺には嫌な予感しかしていないけど。


「……レナ様、あんなお嬢様から護衛も外してこんなところに来させて、大丈夫なんですか?」


「……彼女の家の方に、私が護衛するから連れてって良いかって伝えたら、二つ返事で了承してくれた」


「……そうですか」


 英雄の地位を如何なく発揮されていますね。俺もその被害者ですハイ。


「着いたわ。騎士団の方で、魔物の残党が潜伏されていると報告があった洞窟よ。騎士団に代わって、私がその殲滅任務を引き受けたの」


 洞窟に魔物が潜伏してるのか。魔王を倒す前からよくあった話で、俺たちも冒険の道すがら、よく魔物退治でお金を稼いでいたものだ。


 洞窟は足場が悪く道も暗い。

 魔物にとってホームであるため、騎士団の方でも対策してから哨戒にあたる必要があるのだ。



「身に余る光栄ですメルランデ様!!英雄のお二人のお仕事を間近で見られるだなんて……!」


 フエス様はまた喜んでいた。

 まあこの2人が魔物討伐するところに同じパーティとして立ち合ったというのは、今後の名誉に繋がってくることなのかもしれない。


 ……でも、そんな簡単なことじゃないと思うよ。


「そう喜んでくれてるとこ悪いけど、私達は一緒に行かないから」


「はい!……はい?」


 ほら出たよ。俺はもう何も言うまい。


「フエスさんは、うちのユウリちゃんと2人でこの洞窟入ってもらうから」


「は、え、あの……え?」


 さっきまで大はしゃぎしていたとは思えないほど動揺している。


「ユウリ……さんというのは、こちらのメイドでしょう?あの、それって、死……」


 あ、死ぬって言っちゃってるよもう!いや気持ちはわかるけどね!!彼女は俺の、最初の剣術披露を見ているのだ。手から剣がすっぽ抜けているのも見ているのだ。


「うーんそうね。一歩間違えたら死んじゃうかもね」


「そ、そんな、さっぱりと……!?!?」


 あーやばいなこいつ。ちょっと楽しんでるわ。

 俺はレナ様が、本当に危ない時は助けに来るだろうと知っている。


 フエス様がどうこうとかよりも、俺の為なんだろうけど。


「ユウリちゃんには、私特性の魔力が込められた腕輪を渡しておくわ。これをつけている間は、初級身体強化魔法と同じ効果が得られるはずよ」


「そして私からは剣。ボロいけど、()()()()使()()()()()()()?」


 そう言ってレナ様から渡されたのは、どこでも売っているような鉄製の剣。


 ボロく見えるけど、刀身はきちんと手入れされている。


「あの、これって……!」


 しかしその剣には見覚えがあった。

 いや、忘れるはずもない。


 俺が勇者として冒険を始めた時、最初に持っていた剣だからだ。


 受け取って持ち手を握ると、手の大きさも変わっているはずなのに、やけにしっかりと来た。


「ほら、早く行きなさい。フエスさんのことしっかり守るのよ」


「……はい!」


 鞘ごと肩にかけて背中に剣を回す。

 この体にくる重みが、俺の冒険心を体に思い出させた。


「い、行くって、ワタクシもですか!?」


「うん、そうよぉ。ユウリちゃんのために、一肌脱いでくださるわよね?」


 こうなったメルランデ様の圧に勝てる人間など、この世にはいない(俺を含めて)。


 こうして、俺がこの姿になってから初めての、街の外での冒険が始まった。


 英雄2人が見守ってくれているとはいえ、滅多なことでは助けてくれないだろう。


 いや、俺を助けてくれても、フエス様を助けてくれるとは限らない。


 彼女を絶対に生きて帰すんだと、勇者の頃の気持ちで、剣の持ち手をぐっと握った。

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