とどまる10話
2日後の朝。
ヨーテと戦った?日の次の日は1日学校休んで、その次の日にはもう俺達は学校へ来ていた。
「ヨーテが気になること言ってたわね」
「えっと、『他人の経験を奪う魔法を教わったのは、魔王配下の残党だ』って話ですよね?」
「そうそう。意外と私達の近くにまで魔王配下の残党は来ているんだなぁって」
「確かに危険ですよね。やっぱり、王都じゃない場所に住んだ方がいいんじゃ……」
「いや、私は学校に通ってたいし、その上でユウリを守りたい」
それがレナ様にとって理想なのは理解しているが、それで王都に危険が及ぶのなら意味がない。
それならいっそ、田舎にでも引っ越した方が良い気がする。
「レナ様の願いを叶えられる選択肢があれば良いとは思うんですけど、そんな理想的なのってーーー」
「ーーーあるんですそれが今なら!もう策を打ちました!褒めていいよ?」
え?
あるの?レナ様が学校に通えて、王都に危険が及ばず、俺も生きていられる方法が?
「あ、ほら、来たよ」
「来た?」
誰が?理想的な方法が?
と思ってやって来たのは、正しく理想的な方法と言える人でした。
「ーーー今日からこの学校に教師として務めることになった、メルランデよ」
「メッ……!?」
メルランデ!?と叫ぶのは、色々問題になりそうなので、ギリギリで押さえ込んだ。
「剣術は剣だけを使うのではないと、アナタたちにに教えてあげちゃうわよ」
ぱちくり、とウインクをした。
それと同時に、歓声。
「きゃぁぁぁ!レナ様に続いて、メルランデ様よ!」
「伝説勇者パーティが2人揃った!」
「しあわせすぎるぅぅぅ!!」
俺も、歓声こそ上げないが、目と口を大きく開けたまま、固まっていた。
「あ、あれ……?なんで、メルランデが……?」
「レナ、久しぶりねぇ」
メルランデはいつのまにか、俺とレナ様が並んで座る後ろの席までやって来ていた。
「お二人が話しているわ!」「美しい、美しすぎる!」
と、クラス中が2人に注目していた。
一応、俺も勇者パーティの一員というかリーダーなんですけどね?
「久しぶりと言っても、離れてから2週間も経ってないでしょ?」
「ふふ、それでも、毎日一緒に過ごしていたあの頃からすれば、それも久しぶりに思えてしまうのよ?」
いや呑気に会話してますけどこの2人!?説明は!?説明責任は果たさないの!?
「それにしても、レナ?そのメイド……アナタ、良い趣味してるわね?」
「あら?メルランデさんも分かるかしら?そうなの、うちのメイドさん、可愛いんですのよぉ?」
あ、背中がぶるっとした。
メルランデも愉快そうに俺を見ている。そういえば、言葉にこそしないが、コイツも俺の正体を知ってるんだった……
そう思った途端に、このフリフリのメイド服が恥ずかしくなって来たな……
「積もる話もあるから、この後私のところに来てくれるかしら?そこのメイドさんも一緒に」
そう言って、メルランデは去っていった。
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「メルランデ、なんでこの国にいるんだ?魔術国家ウェルスの統治は良いのかよ?」
メルランデは英雄のうちの1人なので、専用の部屋を与えられていた。だからこそ、秘密度の高い話をするのにはもってこいだった。
「うーん、その話もいいけどぉ……まずは、ユウリ?やらなくてはいけないことがあるんじゃない?」
「え?」
やらなきゃいけないこと?心当たりが全くない。
「やらなきゃいけないことって?」
「とぼけないでよ。アナタ、レナにはずっとやってるじゃない?」
「え?」
何?本当に何?と、考え込んでいると、とうとうメルランデは教えてくれた。
「敬語、アタシにも使ってよ。あと、メルランデ様って呼んで?」
「は、はぁ?なんで……」
「あらぁ?一介のメイドが、勇者パーティであるアタシに、タメ口なんか使っていいのかしらぁ?」
コイツ……!俺がへにゃへにゃになったのをいいことに、いじめて来ている……!
「メ、メルランデ……様。申し訳ありません。言葉がすぎました」
「うん、よろしい。そのメイド服、似合ってるわねぇ?アタシもずっと、ユウリにメイド服着せたいって思ってたのよ」
それは、男の時の俺ってことでしょうか。メルランデ様は特殊な考えをお持ちなのですね。
「うちのメイドをいじめたくなる気持ちはわかりすぎるけど、それくらいにして本題に行ってくれない?まだユウリは、現状を理解してないだろうから」
「そうねぇ。ユウリがあんまりにも可愛いから、いじめちゃった。許してね?」
怒ってはないけど、結局敬語はそのままにしなきゃいけないような空気だった。
「アタシがここに来たのは、レナに呼ばれたから。魔王配下の残党が、ユウリに近づいて来てるって聞いたから来たの」
「では、わたしを助ける為に?」
「そうよ。レナ1人ではどうにもならないことは多いけど、アタシと2人なら大概のことはできるからね」
レナ様は『剣聖』と呼ばれる程の人だから、基本的には1人でも大丈夫だが、ヨーテみたいに上位の魔法を使われると途端に何もできなくなる人だ。
しかし、メルランデ様がいれば、魔法面の不安を全て解消できる。メルランデに様よって、レナ様の能力が完全に引き出されるのだ。
「では、ウェルスの統治は?」
メルランデ様は、魔術国家ウェルスの統治を任されている。
それは彼女が、とてつもなく長い間、ウェルスの魔法院で魔法を研究し続けているからだと、メルランデ様本人から聞いたことがある。
「アタシならウェルスと王都ランスローの往復くらいすぐできるって、ユウリもわかっているでしょ?」
そういえば冒険中も定期的に帰っていた。
瞬間移動魔法は、一往復で魔力の半分を使うらしい。
もっとも寝れば魔力は回復するし、元の魔力が膨大だから半分になっても問題はないが、ゼロになって仕舞えばメルランデ様はなにもできなくなるらしい。
全部本人談である。
「まぁ、これからはアタシがユウリちゃんの面倒を見てあげるから、アナタはどこか違う国へ行っていていいわよ?」
メルランデ様は俺を急に抱きしめて来て、レナ様に向かってそう言った。
「可愛いのは分かるけど、あげないからね?」
「欲しいわぁ、体の隅々まで、研究したいわぁ」
むぎゅうっ!と、メルランデ様の胸に押し付けられた。というか、押し潰された。
く、苦しい!死ぬ!この場合って圧死!?窒息死!?どっち!?
「ちょ、返してよ!その馬鹿でかい乳でユウリを誘惑しないで!ユウリも、ちっちゃい方が好きですってはっきり言ってよ!」
この人、何を言ってるの?俺の意思は?
勇者パーティの2人に取り合われるとか、これから俺は普通に生活できるのか?
まぁ、俺は元勇者だけども。




