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「すっごい似合ってるね。麗華ちゃん」
別の声も聞こえてきた。
名前を出すな。名前を。
絶対に私に向かって話しているってわかるじゃん。
私は、さすがに名前を呼ばれたときにスルー出来るほど、心臓が大きくないんだよ。
仕方ない。振り向くか……
は!!!!
凛くん。かっこいい。もうかっこいいっていうことばしか出てこないくらい、かっこいい。
さわやか~。
ものすごくよく似合っている。
濃い紫色の上の服がにあっていて、まるで王子様みたいな。
その後ろに、声をかけてきた張本人神田迅。
こちらは、真っ黒な服を着ていらっしゃる。
こわ。あんたにあっているけど、黒色着てたら怖いよ。
まあ、さわやかだけど、顔がいいから、かっこいいよね。
とか言って見ほれたらだめなんだって。
急いで、自分を現実世界に引き戻す。
「雫ちゃんも似合っているね。」
「ついでみたいに言わないでよ。二人もものすごくかっこいいね。」
ね、そう思うでしょ。って。
そう思いますとも、そう思わないわけがないでしょ。
ただ、私は今後の自分の生活が懸かっているから、そう気安く二人と話したくないんです。
大学を無事に卒業して、私がきちんと後継ぎに決まったらいいけど。
それまでは、私は、静かにしていたいんだって。
「うん。みんなかっこいいって言ってるよ。」
うん、嘘は言っていない。
現に、他の女子たちは私たちのほうをチラチラ見ながら、なんか言ってるし、
私の意見じゃなくて、他の人の意見ですよー。感を漂わしたい。
それで、どうか、早く別のところに行っていただきたい。
どかうかどうか。
お願いします。
「二人とも一緒に回るー?」
って、雫ちゃーん。
なに誘ってるの!
どうか、二人とも断ってくれ。
私は、祈った。
本当に祈った。
この一瞬だけでも、ほんとうに祈ったんだけど、
「うん。じゃあ、そうさせてもらおうかな。」
って、おい。断れよ。
空気読めへんのかーい。
あ、だめだ。
思わず突っ込んじゃった。
だめじゃない。
わたし、お嬢様だよ。
麗華様だよ。




