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その時の話  過去の出来事

翌朝、登校の準備をしている時に、「あの家に一度行ってみるわ。」と幽霊が言ってきた。「いいんじゃね?それに良かったっしょ、死んでなくて。お前も“生き霊”ってやつだったんだな。」「いや、たぶん(ちゃ)うと思うで。」ウィッグを被る為に、伸びた地毛をネットの中に押し込みながら話す。「早く親御さん、安心させてやれよ。」「そやなっ!びっくりして、今度は相手がひっくり返ったりしてな!」縁起でもねぇ。幽霊は壁をすり抜けて消えた。あいつが体に戻ったら、自分とは接点がないし、しばらくは体を動かすためのリハビリ等で病院やジムに行くだろう。道でばったり会うなんて事は自分が在学中にはないんじゃないか。春の終わりから今まで、短いような長いような。あっさりした別れだが、けれどあいつの体が無事で、家族もいて友達もいる、充実した世界に戻れるのだ。良かった。ただそれだけだ。


学校に着き教室へと向かうと、リンダがなにやら真剣な顔して陸部の二人と話している。数日後には終業式だから、冬休みの算段でもつけているのかと思っていたのだが、聞こえてくる内容はちょっと違うようだ。気になって昼休みに聞いてみた。「それがさぁ…。」昨年末、暴力沙汰を起こした為に当時のニ年生、現三年生は全員部活動及び大会出場が謹慎となっていた。が、そろそろ一年。謹慎が解かれるのだが、この一年間は今の二年生が頑張って率いてくれていた。先輩後輩の信頼や、チームとしての仲間意識が出来上がっている中で、いきなり三年生が出てきても…。といっても、言って後は三学期だけ。受験や就職活動で忙しく、部活に顔は出さないだろう、と考えていたのだが。「少しでも履歴書に学歴を書き込みたいなら、大会出場枠を取りに来るのではないか。」と、不安が広がってきているのだと言う。「そりゃ、先輩を優先してって気持ちは解らなくもないけどな。」リンダは、いつものおにぎりとでっかい保温ジャーに入ったおでんを食べながら険しい顔をする。「ただ、指導してくれたり、励ましてくれたりって一年の俺らを面倒みてくれたのは二年の先輩だからなぁ。」「でも、その二年の先輩達が一年の時に、面倒見てくれてたんじゃないの?」弁当のウィンナーを食べながら問うと、今度は朋ちゃんが答える。「それがねぇ~。そうじゃないんだって。」朋ちゃんが先輩マネージャーから聞いた話だが、元より、この部員達は問題行動が多かったのだと言う。彼らが一年の頃は、まだ大人しいくしていたらしいが、二年に上がり、後輩が出来て脅威の三年が卒業して、一気に馬鹿をさらけ出した。「リーダー格のやつがいてね、中学の時は結構、大会でも上位に名前が上がってたんだよ。」しかも勉強もそこそこできたから、先生方も“まさか”という思いが勝ってしまった。「三年の先輩が引退になった夏の大会以降、ひどくなる一方だったって。」一年の後輩をいじめ、仲間内で“誰が大会で早くゴールするか”の賭けをしていた。金額は“カラオケ代”位だったらしいけど、賭けは賭け。そして部活動謹慎となったのが、この賭けで負けた奴が、「お前のせいで負けた。」と、大会に出た一年生を殴ったのだと言う。それをスマホに撮っていた。不幸中の幸いというか、その動画は世に出回らなかったのだが、一連の悪事を一年生と一部の三年生は記録し、証拠を集めていて、ここがタイミングと見定めて学校、教育委員会に報告し、さらに警察も相談する形で、“履歴”を残した。こうして、当時二年だった陸部の生徒は一年間の部活動及び大会出場の謹慎に加え、他学年の教室に近づく事も禁止となり、先生方も目を光らせていた。「多分、半数位の三年生は退部したんだよ。けど、その中心的な先輩が辞めてない。」リンダはおでんの汁を飲みきってジャーを置く。「ねぇ、スポーツ推薦がある位だから、やっぱり部員は多いの?」帰宅部の自分には解らない。「その年によるけど、今、一年は俺含めて15人、二年が9人だな。」「ほんとはもっといたんだけど、去年の“いじめ”が原因で辞めちゃったんだって。」朋ちゃんが紙パックジュースをズズーっと吸い上げて凹ました。「で、マネージャーは、あーし含めて4人。」「じゃあ、戻ってくる三年は何人?」リンダも朋ちゃんも顔を見合せ首を捻る。「んー、名簿を見た感じだと…元々が14人で半数が辞めて7人、かなぁ。」「けど、“辞めたらしい”だから、実際は解らんよなぁ。」ふーん。「素直に顧問と、コーチに相談したら?皆で。先生方も、一年って期限を切ってんだから、戻ってくるの判ってたんだし。対策とか、考えがあっての事だよ。」確かになぁ、とリンダはぐぅっと伸びをした。学ランのボタンがはち切れそうだ。「年明けに予選も兼ねたマラソン大会もあるし、早めに相談した方が選手のポテンシャルにも関わってくるよね。うん、そうする。」朋ちゃんも、明るい顔で自分の席に戻った。気持ち良く、冬休みを迎えれそうだ。

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