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流離う世界に私は  作者: 眠井ネタイ
第一章『ネメシス』篇・後日談その1
9/23

8.化物を倒す者もまた

《乃亜side》


目の前で未だに正体を隠したジェスが魔人をザクザク倒していく姿を見て私も周りの人も唖然とするしかなかった。()もありなんと言わんばかりにジェスが魔人を倒していっているが、そもそも私たち一般人基準では一体でも対処困難とされていた生物である。困難というだけで不可能ではないものの拳銃では倒せないらしいと言われる程はあるのだ。


その時一瞬だけ周囲の魔人が動きを止めたかと思えば、ジェスが何かを呟くと同時に一斉に再度動き出した。ところで二守君が氷をタオルで包んだ物を持って帰って来ていた。


「んー。何かもう終わっちゃいそうだね。僕ももう少し見てたかったな」

「おう、観斗おかえり。よく分かんないけど何か色々と凄かったぞ。お前が保健室に行った後に漫画みたいに雲がパカーって割れてたぞ」

「あぁあれか。今もまだパックリ割れてるね」


さっきジェスが大鎌を振り抜いて雲を割いた時は流石に周囲がざわついて、私も「そうなるだろうな」とか思っていた。

私をケルベロスから救けてくれた時にも闘う姿を見た事があってがあれでも到底全力といえるものではなかったのだと目の前の光景が理解させてくれた。もはや私基準の尺度で図れるような実力ではないのだろう。なおそんな人物が割とずっと近くに居たという事実に再々度驚愕することになった。

そう色々と考え事をしているとグラウンドに倒れているおびただしい数の死体が転がってきたため立っていられる者が減り、ジェスの姿が見えやすくなってきていた。未だに悠然と、顔は見えないがそれでも余裕を持て余してそうに戦い続けていた。


「死神って実際何者なんだろうな?」


ふと神野君がそんな事を言い出した。

いざそういう事を考えると、確かに私はジェスに関しては「ジェス・ノスタルジア」という名前以外に素性に関する情報は何も知らない。ついでのボランティア感覚で魔人を狩っているだけに過ぎないと。

ジェスは私の助けになるような話を中心にしていたが私は今現在の社会が突如抱えることになった謎について問うばかりでジェスにまつわる情報をあまり知ろうとしていなかったのだ。


「さぁね。でもこういうのって、実は身近な人が正体を隠していました。なんて展開がお決まりで面白いんじゃない?」

「そんなまさかがある訳ないだろ」


そのまさかである。とは念の為言わないでおこう。

ジェスも一応正体を隠すために死神を演じることにしたのだろうし、その理由があの強さが関係していることは明らかだ。強すぎる力は憧れと共に畏怖を生む。

自分に関係の無い所で、または自分のために振るわれる力は憧れや賞賛を呼ぶ。だが自分に向けて振るわれる力はその限りでは無い。そこには必ず妬みや嫌悪、逆上や苛立ち、人生を賭けた場であれば恐怖を感じることもあるかもしれない。そういった事を危惧して正体を隠して、普通の学生を体験したいのかもしれない。


「なぁ扶神さん。男か女かだったか分かる?抱っこされてたから分かるんじゃねぇかと思ってさ」

「••••••」


抱っこ、もっと正確にはお姫様抱っこされていた事を思い出して少し気恥ずかしくなる。よく考えたら落ちないようにジェスの首に手を回していたような気もしなくもなくもなくもないのでもう考えないようにするために、両手で自分の頬を強めにつねって既に赤くなっている事の言い訳を作っておいた。

さっき私はジェスの正体を明かすべきではない。みたいな事を考えていたが、唯一死神の顔を知る者としての自慢(マウント)があるため少しだけ私アレンジのヒントを出そうと調子に乗っていた。そしてその衝動を抑えられなかったので、こうした。


「優しくてちょっとドジな男の子だったよ」


少なくとも私の知るジェスは優しくて戯れる程度だと分かるくらいの悪口しか聞いたことはないし、少しお調子者の節があって調子が上がる時に何かしら失敗する印象が根強いのは私に正体を明かしてしまう原因になった風でフードが脱げてしまうという珍事件を目撃してしまったからだろうか。とにかくあの異様な強さを除けば何処にでもいそうな周りよりも優しい男の子な気がする。その証拠に余計と思ってしまうほど私を気遣ってくれた。

••••••至近距離に顔を近づけてきたアレだけは本当に訳が分からないけど。


「扶神さん。熱があるなら額か首筋に氷当ててたら?」

「だ、大丈夫だよー」


わざとらしくニヤニヤしながらでは心配されている気がしない。やっぱり私は二守君だけはずっと異性ということ関係なしに苦手だ。

さらに時間が経つと遂にグラウンドに立つ人影はジェス唯一人になった。

よかった、という安堵が身を包むのとほぼ同時にジェスがふとこちらを向いて歩み寄ろうとして、


その背後に忍び寄るのが影を目撃した───



────────────────────────


《ジェスside》


「•••••ふぅ。流石に少しは息が上がるな」


あれから約千人の魔人を五分程かけて壊滅させた。

「全滅」では無いのは今俺が首根っこを掴んで引きずっている親玉ポジションの奴だけは生かしているからだ。後で事情聴取するためだ。

ひとまずはこの一件以降、この世界(・・・・)で大きな事を企むような奴は出てこないだろう。単純に戦力不足だ。

これで残すところ、乃亜の説得だけになった。

なので当然俺は乃亜のいる校舎の方に体を向けて歩みを進めることは•••••まぁ、できないか。


すぐさま手に持っていたゴミを校舎の方に投げ飛ばし一瞬だけ結界に穴を開けてそこに放り込み、背後を守るために大鎌を背中に構えてそれを受け止めた。

細剣(レイピア)斬りかかってきたのはショルダーヘアーの黒髪の後ろの方だけをポニーテールで一つに纏めている女だった。俺はこの人と知り合いでは無いが顔だけは知っていた。ネットニュースで何度かこの顔を見たことがある。


「確か国防隊とかいうやつの副団長の広繋 奏波(ひろつな   かなみ)さんだったかな。あってる?」

「•••••あってます」


力技で大鎌を振り抜くと同時に後方に飛び退かれ、空振らされた。

一応俺はこの世界のためにさっきの魔人狩りを行った訳なのでここの住人はあまり手にかけたく無い。それがここの最大戦力クラスともなると尚更だ。

ので、一応俺を狙った理由を確認しておく。


「化物を倒す者もまた化物。っていう扱いになったっことだよね?」

「はい。そう考えてもらって構いません」

「酷いなぁ。命懸けの慈善活動をしてあげたのに仇で返されるとは。それで?化物が一体だけなら総戦力叩き込めば勝てるって算段なの──っかな!」


更に後ろからもう一人奇襲をかけてきたため軽く身を捻ってそいつの顔を確認すると同時、脳が軽く痺れる感触を覚えたがすぐに異常をきたす程ではないと判断してタイムラグ無しに行動を続ける。だが何故かその人物は明後日の方向に剣を振り回していた。

余りにも馬鹿なことをしていたので初心者のフリをして罠にかけようとしているものと勘違いしてしまうほどである。


「なっ!?」

「不意打ちを交わしただけだろ。そこまで驚くことか?」


よく分からないが俺はお構い無しに捻ったときの勢いで体でそのまま回し蹴りを腹に入れ込んだ。

カハッ、と渇いた息を吐き切るような悲鳴を上げて吹っ飛んでいった。

それより若干前、俺が奇襲を仕掛けられたタイミングで正面にいた広繋奏波も同時に懐に飛び込んで来ていたため、跳躍してその一振りを躱して俺は頭と足、上下が逆向きの状態でカウンターで大鎌を振るが細剣で受け止められた。が、現実は非常にも優しくなく地力の差で楽々押し勝ってしまったためその体は結果敷地外のマンションに体を打ち付けられていた。


「やべ。流石に生きてるよな?」


ちなみに魔人の大軍を見てから避難指示もなく逃げていてマンション内に人はいないと思われた。

一瞬の間で一悶着している間に全員同じ格好をした集団が来ていた。まぁタイミング的に同じ国防隊だろうと目星はつけられるため程々に痛い目を見せて退かせることにした。

ついでに、お手本を見せておくとしようか。


「『柔肌撫でるそよ風よ、荒ぶることなくただ囁け』───走れ、『ワインド』」


今までより数段込める魔力量を減らして放った風魔法『ワインド』だが、その威力はこれまでとなんら変わりなかった。

結果としてその集団の中心に向かって一般的基準の強風が吹き、圧死しない様に手ほどきされた人塊を低空かつ低速で飛ばされる。


まったく、「詠唱」による効力の底上げというものは相変わらず恐ろしいと常々感じさせられる。

しかし先程までこれを使わなかったのにはしっかりとした訳がある。まず、詠唱における詩を聞き取りさせすれば魔法の系統を理解できるのは必然だ。事実『ワインド』の詠唱にも「風」という語がしっかりと入っている。もう一つ詠唱は「これから放つぞ(・・・・・・・)」という意思表示や信念に準ずるもので、前もって詠唱を済ませた魔法を使うという行為は通常時の経過とともに魔法そのものが希薄になっていく。

つまりは発動のタイミングをほぼ完璧に読まれる。という訳ではなく対策法や逆手に取る方法はちゃんとある。まず、魔法名だけを唱えることだ。俺が大量の魔人相手に初手で放った『アストラルライン』が典型例だろう。次、詠唱とは全く違う魔法を使うことだ。当然の話、詠唱による効力の底上げを満たす事ができないが「炎がくる」という意識の集中で「電撃がきた」となれば必ず反応が遅れる。もっとも、魔力の流れを読み取れるものには通用しないが。そして少し論点がズレるが、初見の技の詠唱は読まれづらい。


で、何故今の状況で詠唱をしたかといえば、空間魔法による感知精度を上げて妨害が来ない、というか間に合わないことを確認して「絶対に邪魔されない局面」だったからこそ行ったのだ。という理由よりも一度見せてやりたかったと思ったという要因の方が大きい。詠唱という儀式の価値を。

まぁそもそもこの世界に詠唱なんて種がないんだけど。


「どけ雑魚共が!テメェも調子、乗ってんじゃあ、ねえぇよ!!」


先程不意打を仕掛けてきた男が再度斬りかかってきた。が、初撃でネタ明かしされずとも理解できた。


絡繰 念嗣(からくり  ねんじ)だったか?確か『未来が見える』なんて自己アピールしてたそうじゃないか。へっぽこペテン師が」

「また!上からもの言うんじゃねぇえ!」


続けて下から上に乱雑に振られる剣をより屈辱を与えるように親指と人差し指で挟んで止める。


「くっ、ざけんな──。おいテメェらこっちに人寄越しやがれ!」

「お前、一瞬だけ他人の脳に干渉して命令させられるんだろ。だから相手の次の動き出しに合わせて距離を詰めるのが本来の戦闘スタイルなんだろうが、そもそも命令を下さないといけないという前提が崩れたらこれだ。効かない相手に遭遇したことはなかったか?」


相手の次の行動を自分の意思で確定させることができる。使いこなせればかなり強力な部類の権能(フォルトゥーナ)なんだけどな。


「•••••••は?なんで、それをそこまで」

「せっかくセンスだけはあるのにな。精神的に難ありだとその力はどうあがいてもそれ以上伸びねぇな」


そう言って裏拳で顎を殴り飛ばして一撃KOを決めて、足元に置いておくのもなんなので適当に人がいるところに投げ飛ばした。

にしても、


キィィィィィン────


刃がせめぎ合うときの金属音が辺りに響く。さっき吹っ飛ばしたはずの女が早々に戻ってきたのだ。


「君、副団でしょ?失敗の理由をいつでも部下のせいに出来るように動いているクズ団長に下剋上挑んでみたら?」

「勝てないので結構です」

「まぁそうだねー。脳を魔力で強化・保護するのって口で言うだけなら簡単なんだけど、デリケートな部位だから一歩間違えたら脳みそが破裂しちゃうこともあるしね」


実際のところ一定ラインの実力を超えると体内の溜まりすぎた魔力をより効率よく消費、吐き出そうとするため自然に魔力が全身を流れ巡ることで常に身体強化が発動する。とはいっても意識的にする方が効果的なのは変わらないが。

それよりこっちの女だ。実力だけ見たら他の面子よりも頭三つくらいずば抜けている。一対一(タイマン)ならさっきの魔人全員に勝てるのではと思わせる程だ。しかし権能(フォルトゥーナ)も魔法も使ってこないのが気がかりだ。何かある(・・・・)。という確信がある。


(乃亜だけで充分過ぎると思ってたけど、もしかしたら)


俺は重心を後ろに傾けつつ大鎌を逆手に持ち変えて、ぶん投げた。そして加減して投げた大鎌よりも早く駆け出して女の背後に回った。相手視点で正面から直進してくる大鎌、後面に素手の俺がいる構図だ。

だがすぐさま倒れながら振り下ろされる俺の拳にカウンターを入れるように細剣をふる。それならばと拳を引き戻しながら逆の足で蹴りを入れようとするが、加速しきる前に側面を蹴り返されて逸らされた。そして倒れていたため空振ってきた大鎌をそのまま取り、蹴りを逸らされた無理な体制から大鎌に風魔法を纏わせることで推進力を得て、期待を込めて遠慮なく振り下ろす。が、大袈裟に手足で地面を跳ねて躱された。

再度少し距離を取らされてお見合いの状態になった。


正直、魔力で身体能力を強化せずともこの女と同じくらいの膂力と速さを出せているのは間違いない。だからこそ確実に勝っているはずの技量で攻め切ろうとしたが、全ての攻撃を躱されてカウンターを狙ってきている。

多少対人に慣れがあったとしてもこれは明らかに異常だった。

実践経験だけをみれば俺の方が圧倒的に上だが、それを持ち前のセンスだけで跳ね返されている。


「••••••••」

「?」


女は急に黙り自身の細剣を見つめ始めている。

すると急にとんでもないことをしだした。

魔力が剣に這ったと思った瞬間、小刻みに剣が揺れているのだ。その細剣で今度は逆に攻勢に出てきた。

大鎌を使い片手で細剣を受け止めて空いたもう片方の手でカウンターで腹を殴ろうとしたとき、ペキ、という良くない音を耳にした。


「っ!?」


魔力で強化していた大鎌にヒビが入ったのだ。確かに刃まで木製であるのに違いないが、それでも魔力を纏わせているこの状態で、この世界の刃物に負ける強度と切れ味ではない。それを破壊させる可能性があるだけでおかしい。

しかし即破壊という訳ではないためカウンターは行ったが、必殺とも言える一撃を行いながら半身で躱しつつ更に魔力を纏わせた細剣に力を込めてきた。

そのタイミングで俺は大鎌に入れ込んでいた力を一気に抜いて、一振りに体重が乗り過ぎた女の体制を完全崩したところに膝蹴りを叩き込もうとするが、逆に身体をこちらのほうにピッタリ寄せて来た。確かにここまで密着された状態ならなら膝蹴りが当たることは無い。

ならばと大鎌を短く持ち振り下ろすと同時に細剣を振り上げ、互いに相手の脳の刺突狙いを顔を軽く動かすことで避けた。だが反応速度の違いで俺は完全に躱しきり、相手はこめかみを切られて出血していた。


だが俺は、フードが破けるという社会的ダメージを負った。



────────────────────────


《乃亜side》


何合かの斬り合いを見守っているうちにジェスのフードが破け、素顔が露わになった。


「••••••••終じゃね?あれ」

「だねー」


当然親しかった二人には一瞬で見破られた。

それにしても二守君の「だねー」って何?反応薄過ぎない?


そして国防兵団の対応もまぁ分からなくもないが、悪戦苦闘を強いられてきた状況下で魔人たちの全滅させてくれた人へ謝辞も対話も無しに排斥しようとするのは流石にどうなのだろうか。それも全員でよってたかって化物を相手にするかの様に。

そして流石にジェスも連戦は難しかったのか動きが鈍くなっている気がする。

そして私に有るのは、出来ることは何もないという事実だけだ。

だからただ頑張れ、生きてと願う。



────────────────────────


《ジェスside》


「はぁ。人の衣服を破かないでくれないかな。一応人としての羞恥心とかもちゃんとあるんだよ。俺」

「•••••••••」

「どうした?黙りこけて」

「いや。普通に顔だなと」

「逆にフードの下なんだと思ってたのか気になるけど、まぁいいや」


爛れた顔でも想像してたのだろうか、という考えを押し込め先程までのこの女──広繋奏波の動きを振り返る。

まず不明だった権能(フォルトゥーナ)の正体は、振動魔法を創り出すといったところだろう。現にそれを細剣に付与して振動カッターの容量で殺傷力を数段増していた。こうして説明していて当然という感じを出しているが、まず武器に権能(フォルトゥーナ)の効果を付与するのは全くもって簡単ではない。

魔法ならまだ楽だ。発動させた魔法を放出させずに武器に貯めておけば魔法剣と呼ばれるものは完成する。権能(フォルトゥーナ)でこれを実践しようとすると話が変わる。権能(フォルトゥーナ)は本人の潜在意識や意思が強く影響するため、出来る側から言わせてもらうと身体を引き延ばしている様な感覚に襲われる。それに加えて魔法剣を作るときと同様に卓越した魔力操作技術を求められる。

それを俺が大鎌に風魔法を纏わせた時に「ふーん。その発想は無かったな、やってみよ」という感覚でやってのけたのだ。俺も習得には二ヶ月はかかったのに(なおこれでも異例中の異例の早さである)。

極めつけ言ってしまえば、この世界では魔力は異物判定であるため、武器に高い魔力密度を載せてしまうとへしゃげるか捻じ曲がってしまう。もっと振り返ればそこから凄いことなのだが、これが出来る前提で魔法剣とかの話云々である。

末恐ろしい、という言葉が一番似合うだろう。


だけど、


「流石に限界かな」

「••••••••」


女は両鼻から流れる鼻血を袖で拭ってまた薄い闘志を見せたが、ここまでだ。


「正真正銘魔力が0になったら死んじゃうから、俺はこの辺で退いておきたいんだけどダメかな?」

「はい。駄目みたいです」

「そう。じゃあ悪いけど、力づくで眠ってもらうよ」


さっきまでの俺の動きは魔力強化無しの素の(・・・・・・・・・)身体能力(・・・・)だ。だから、これで終わり。


俺は魔力である程度強化した肉体で地を踏み出す。踏み込んだときの足跡は地を蹴るときの衝撃で地面が抉れて跡形も無くなっている。

刹那の一瞬で懐に入り込み流れる様に鳩尾に裏拳を抉り込ませる。それだけ。

女はその場で細剣を手放して呻き声を上げ前に倒れ込み気絶する。

本当に末恐ろしい。あの速度にも一瞬で身を引く判断が出来ていたから、身体が追いつけば凌がれていただろう。


「さてと、これで決着さようならとは、いかないよなぁ」


マジでどんだけ俺を殺したいんだ。と内心ため息を吐きながら振り向く。さっき吹き飛ばした国防兵団たちの末端がわらわらと走ってきていた。

勇敢なんかじゃない。現実が見えていない馬鹿共による無謀な挑戦だ。


「ねぇ。明らかに弱い者を倒している方が悪に見えちゃうのって、本当に何でだろうね?」


そう言って俺は右手の親指と中指を合わせた。


────────────────────────


《乃亜side》


心配は杞憂で終わった。

頑張れ、と心の中で応援していたら一瞬で勝負が着いた。早すぎて終わった後の立ち位置的に横を通りすぎたのだなと認識した時には広繋奏波さんは倒れ込んでいた。


「おー!この前アニメであんな感じの倒し方見た気がするな!映画みてるみてぇ!」

「呑気だねぇ友弦は」

「••••••二人とも、さっきから思ってたけど源君が死神だったのに反応薄くない?」


流石に我慢できずに聞いてしまった。

普通、友達があんなこと出来る人だったとしれば腰を抜かすとか大声が出るとかするもんじゃないだろうか。


「僕は終自身が何か隠してるだろうなとは思ってたからね。体力テストの項目毎に結果に差がありすぎでしょあれ。それに走る時、着地と踏み込みの瞬間で足の裏の全面を常に地面に付けるように意識してたから手加減されてはいるだろうなとは思ったし」


前にも同じ事を思ったけど、高校一年生にしては洞察力が優れすぎではないだろうか。全くもって気付けなかった。


「へぇーそうなんだな。初めて知ったぜ」

「こっちはポケーと能天気なだけ」

「あ、うん」


二守君が神野君を指差して指摘した。

まぁ私も何となく分かっていた。


「それと友弦。賭けの件は覚えてるよね?」

「ナンノコトダッタカナ」

「死神、もとい終の次の出現場所を当たれたらジュース奢り。提案者は友弦だよ」

「はいはい。部活する時にでも買いますよ」


今日こんな事があったら部活は無理でしょ。と思ったが恐らくいちいち突っ込んでいたらキリが無くなると思い、切り替えてジェスの方に目をむける。


ジェスは次に襲いかかってくる者達に対して手を向けており、その形は指パッチンをするようになっている。

魔法の発動の合図として指パッチンがありがちだということは私も何となく分かる。何をするのだろうと期待と不安に包まれた一瞬の後で指が動いた瞬間突風が巻き起こり、先程より何倍も大きい竜巻が巻き起こった。

が、

今指パッチンの音が出ていただろうか。

遠く離れていたが、カスッ、という音が聞こえてきたような気がするが流石に気のせいだろうか。


「ぷ、ふふ。カッコよく決めようとしたのに指パッチン失敗はダサすぎるでしょ。ほら見てみて!少し耳が赤くなってる!あはははははは!!」

「だはははははは!!流石にダサすぎるな!絶対強者ムーブかましておいてからの失敗だったらアレ!悠然と立ってバカでかい魔法使っておいて致命的にダサい!」

「フフ、あははは」


やはり気のせいではない事が分かって私もつられて笑ってしまった。

今もジェスは頬を引き攣らせて少し赤くなった顔で悠然と立ち尽くしている。


「はぁ〜あ。で、あのドジな死神の正体を独占して知っていた扶神さんはどういう心情で学校に居たのかな?」

「フフフ•••••••へ?」


今急に飛び火をもらった気がするが気のせいだろうか。


「スルーして終わると思った?終のことを優しい男の子とべた褒め自慢するなんてお茶目なことするじゃん」

「•••••••うるさい」


そう言ってむすっとムキになって弱々しい返ししかできなかった。

 

はい。どう考えてもジェスと乃亜の視点を交互させすぎですねw。読みづらいと思うので修正を心がけていきます。

あと広繋奏波さんはレギュラー枠なのでどうかお忘れなく。

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