6.狼煙のドキドキ
《乃亜side》
学校に着くと源••••じゃなかった。ジェスは登校していなかった。
「なぁ扶神さん。終見かけなかった?」
「ううん、見てないよ」
首を横に振って否定した。
ジェスが昨日私の部屋を出て行ってからの行方は知りようが無かった。
心構え、という言葉を置いて行ったが結局のところ未来の話をしていると思ったのでそれが何を意味しているのかを考えても仕方がないと割り切った。
「なぁなぁ、『死神』がまたこの辺で出現したってニュース見たか?」
「っ、!?」
いきなり正体を知っている人の話が出てきたことで少しびっくりした。
•••••多分それ以外の理由もあるのだろうが。
「うん。なんか最近この辺りで姿を見せる頻度が上がってるよね」
「次どこ市で現れるかを当てるゲームで何か賭けようぜ」
「友弦って賭け事好きなの?将来ギャンブラー?」
「いや違うがな。ただ最近運がいい気がするからこの調子で観斗を負かしてやれるチャンスじゃねって思ったんだよ」
「確かに最近の友弦は運良いよね。昨日僕と試合したときもシャトルがラケットに挟まったせいで僕が負けちゃったし。しかもその時の友弦は足がもつれてヘッドスライディングしてたのになぁ」
「運も実力の内ってやつだな。賭けはジュース奢りな。んでどこだと思う?俺は二つ隣の市にするわ」
「じゃあ僕はこの学校」
「•••••それマジ?冗談?」
「マジの方」
割と当たってるかもしれない。確かに当の本人が次来る時は登校してくる時だろう。隣で展開されている知り合いの会話に聞き耳を立てながら鞄に入れてきていた教科書を引き出しに入れていく。
どうでもいいが、聞き耳を立てている会話の話題について自分の方が詳しい時って謎のマウントが内心生まれるよね。正直コレが今結構楽しい事を知ってしまった。
「そういえば死神で思い出したけど、南極で大地震があったらしいね。震源が特定出来なかったという超大規模な怪奇現象って言われてるの一向に止まないね。もう二ヶ月も前のことなのに」
「ニュースって何でおんなじ内容を一々繰り返し放送するんだろうな。新鮮味が無くなるだけじゃないか?」
「社会の懐事情ってやつじゃないかな?」
「社会の闇が語られている」
そういえばそんな事もあった。確か南極に近い大陸でも揺れが伝わるほどの歴代最大規模の地震だと騒がれている。
「ていうか終って熱で休む感じなんだよな。アイツ今頃何してると思う?」
「昼まで寝て夜までゲームして寝ると思うよ」
「お前の中の終ただの引きニートじゃねぇか」
「コレは冗談。その辺をほっつき回ってるんじゃない?終って割と落ち着きの無いタイプだし」
「落ち着きがあるような気がするけどなアイツ」
「落ち着きが無い人は授業中に足の角度を高頻度で変えるんだよ。終なんて一限の間に三十回は姿勢を変える習性がある」
「ふーん。人間観察とは卑しい趣味だな」
「人聞きが悪いよ。観察眼が優れてると言ってもらいたいね」
私自身、未だに謎の人物像に仕上がっているジェスについて何も知り得ないので参考にさせてもらおうとさえ思えた。
最近になってこの二人と会話することも少しずつ増えてきているので話しかけるのも割と不自然ではないだろうか。と、やる事もなくボーっとしているとホームルームを知らせる予鈴が鳴った。
今日も一日がスタートした。
だが、いつも通りは今日を持って終わりを迎える。
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《ジェスside》
「ふわぁー。ふぅ、暇ー」
時刻は午前八時半。
早起きが苦手な質なうえで、こうしてボーッとしているのは疲れる。もはや眠気との戦いだ。
「ったく。発破かけたのに全然来ねぇじゃねぇか。トップのヤツは思ったよりも小心者か?」
正直ここまで散々暴れまくってきた魔人どもが慎重に出てくる事をあまり考えていなかった。
まぁ別に遅いことに不利益が生じるわけではないが単純に暇な時間を潰すのにも苦労がいる。
それに可能なことなら屋外──それも可能なら人気のない場所でおっ始めたかった。乃亜は性格的に周囲の目を気にしすぎるところがあるのでコッソリ解決させるつもりだったが難しそうだ。
アイツらの感知能力では、目視しないと恐らく割り出しが出来ない。そこからするに放課後に入った直後あたりが決起の瞬間になる。
決起といっても俺は一人だけど。
「一人だと守りが弱くなるからなぁ。そこんとこだけでも手伝ってくれないのかよ。アル」
「駄目です。私は基本的に貴方の任務外のことにしか対応しないことにしていますので。そうじゃないと盛り上がらないでしょう?」
「いや盛り上がりとか要らないんだけど」
俺は電柱の一番上に座っているが、アルはすぐ横を浮いていた。基礎的な風魔法を駆使した浮遊だ。別に俺も出来るが無限時間出来るわけではない。アルは技量を極め抜いているので魔力の消費効率が並外れて高く、飛行するだけなら魔力の回復が勝つためそこそこのスピードなら無限に飛んでいられる。
「ていうか何か安心したよ。やっぱりお前はその服装が一番しっくりくる」
今のアルの服装は執事服というのが的を突いている一言だが、中の白シャツをズボンに入れずに出してベルトを隠している状態だ。かったるいのが苦手なのだろう。
髪の毛と瞳の色が純白だが、俺は瞳の奥にあるドス黒い性格を何となく感じ取れるため黒のスーツがマッチしているように思える。
「ふむ。やはり服のセンスもあのお方に任せておけば間違い無いということですか」
「前々から思ってたがあのお方って誰のことなんだ?《クアッドシフト》の中の誰かだったりすんの?」
「あ?アイツらなわけ無いでしょう?吐き気がするのでやめて下さい」
「何でちょっとキレ気味なんだよ」
ちなみに《クアッドシフト》とはあっちでは最強に位置付けされている猛者達の集まりらしい。元々は総員四名だったらしいが現在は三名しか在籍していないらしい。だがそろそろ四人目を任命されるとかなんとか。とにかく無縁な話である。
「というか魔物の徘徊がこの街に偏ってきてるな」
「おおかた魔力を探し求めているのでしょう。魔物は知性を持たない物どもの総称みたいな物ですからね。魔力をあっちこっち撒き散らしているのに大気中から吸収出来る魔力が少な過ぎる結果、魔力濃度の高い場所を追い求める習性が有りますからね」
「そんでこの場所と。まぁ乃亜の魔力の保有量を見るにもう空きが無さそうだったからな。霧散している魔力を乃亜が吸いきれなくなってるんだろ」
要するに貯蔵庫がもう満タンなのだ。乃亜の存在で保たれていた均衡も限界になっていた。もしも乃亜の魔力の生成量がもっと多かったらもっと酷いことになっていたところだ。容量オーバーで自動放出される魔力は一定量、その人物の周囲を覆うように漂う。もしかすると乃亜の魔力溜まりで弱めの魔物が自動生成されることもあったかもしれない。
「はぁー。暇だしちょっくら狩ってくるか」
重い腰を上げて狭い電柱の上で大きく背伸びをする。その辺りを徘徊していた魔物を狩るためにだ。
「ジェス様は他人のことは割と関心を持たれませんが、ここでは特別ということですか?」
「そんなんじゃ無い。ただ、手が空いていたってだけだ。自分を優先させるのが基本だけど、抱える余裕があるなら他人の分まで背負って苦しんでやろうと思ってるんだ。追いつくためにもな」
そうだ。俺は必ずあの場所に帰る。そう誓ってここまできているんだ。そのためなら、他を蔑ろにすることすら厭う気は無い。たとえそれが人の尊厳であっも。
「ふふふ。全く貴方も大概、秘密事を多く抱えていらっしゃいますね」
「お前ほどじゃない」
そう言って俺はフードを被り直し、亜空間からいつもの大鎌を取り出して建物の上を駆けて行った。
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《乃亜side》
ようやく昼休みになった。いつも通り菓子パンを食べ切って宿題でもして越そうと思っていると例の二人組から一緒に食べようと誘われたので言われるままそうした。
「扶神さんって終のことどう思う?」
「•••••え」
ど、どうと聞かれても応答に困る。
この場合そういう事を聞かれているのだろうがこれを言うもの恥ずかしくて憚られる。
「見た目からしての第一人称の話ね」
「•••••••」
なんだか騙された気がする。
そして二守君はニヤニヤこっちを見てくるのには悪意しか感じ取れない。しかしここには神野君もいるので上手く使えば話題をそらせるだろう。
「何でも無難にこなす優等生みたいな感じかな」
「あー分かるよそれ。終って観斗ほどではないにしても何でも出来るタイプのヤツだよな」
「あ、あと何かその、いちいち格好付けようとしてる気がする」
この前バレーで鼻血を出していたのもそうだし、それより前の死神の格好をする不純な理由についてもそうだ。
「確かに実際に終ってちょっと厨二臭いよね。たまに発言がそんな感じになってる」
「この前恥ずかしい台詞を喋らせる罰ゲームした時も『我が名は創世神!!』みたいに片目に眼帯つけて目ぇぎらつかせて言ってたからな。見てる側からしても痛すぎたなアレ」
そんな事してたんだ。確かにライトノベルを読むのが好きそうではあるがそこまで感染しているとは予想外だ。この前から発言的に日本生まれらしい発言をしていなかった為少し意外だった。
「あとは初対面でも爽やかで接しやすいと思う」
「扶神さん。それは絶対美化されてる」
「断言できるけど、終は根は人見知りだね。発表とかもかなり露骨に嫌がるし、初対面の人と話す時は手の組み方を事細かに変えていてとにかく落ち着きがないからね」
「そ、そうかなぁ?」
正直私個人と意見としては、ジェスとしてのイメージが強過ぎるので優柔不断な優男と見えてしまう。割と相談に乗ってくれもしたし、私の性格を読み取ってくれて対応を変えてくれている節もあったように感じている。だが死神としての初対面において一瞬現れた不気味な雰囲気はまだ根付いたままだ。アレには一種の執着があったように見えた。
「どうでもいいけど扶神さんって毎回菓子パンだよな。肉とか野菜とか食べないの?」
「•••••パンが好きなんだよ」
「料理スキルは関係無いんだね」
「•••••••」
先ほどから二守君の発言は核心を突いてくるものがちらほらある。ちょっと怖い。
嘘が下手だとはジェスに言われたがそんなにだろうか。
「ていうか俺の親が最近さ、地元に帰って来いってうるさいんだよな。確かに魔物やら魔人やら物騒なことがあるけど実際、死神が高頻度で現れるから実害なくてあまり実感できないんだよな」
唐突な話題変更だったが、成程。と納得のいく意見だと思う。私もそうだったから言及することでも無いだろう。人は反省から学ぶことが大事だとよく言うが、逆に言ってしまえば失敗の経験が無いと学ぶ必要性を感じられないのだ。つい先日それを身を持って実感してしまった。
「まぁでも命あってこそでしょ。後悔すら出来なくなるよりは、それも検討してみるのも良いんじゃない?」
「いや、俺は死神を一度生で見てみたい。こう、シュバって倒して去っていくのとか格好いいじゃん。そして正体不明なのがまた良い味出してる」
「ふーん。んで何で扶神さんは頷きながら誇らしげなのかな?」
「そ、そんな風に見えた?」
正直なところ「正体不明」な人物の正体を自分だけが知っていることに優越感を感じてしまっている。ソレと同時にファンであるのも良いかもしれないと思えた。
「ねぇ扶神さん。終って割と寂しがり屋なの知ってる?」
「え、そうなの?」
そんな感じは全くしなかった。どうしても私はジェスが死神の姿をして、学校でもおちゃらけているイメージが根強いせいか寂しがっている一面など見たことが無かった。
「本当に誰が見ても落ち込んでるって分かるから面白いんだよね。この前なんてわざと終を無視して友弦と話してたらいたら口尖らせて黙ってしょんぼり俯いてたんだよ。まぁつまり」
ここで昼休みが終わる予鈴がなった。つまり次の授業の五分前ということを示している。
「気付いたら気に留めてあげてね。あれは黙って堪えてしまうタイプだからさ。じゃあ弁当片付けて急いで行こうか。次の生物は移動教室だから」
「あ、」
どいうことなのかを聞きたかったが、時間が迫っているのでそんなことをしてもいられないのは分かっていた。
だから後で後悔することになるのだ。気づくのが遅すぎた、と。
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ようやく帰りのホームルームが終わって下校の時間になった。私は体育の授業はとーっても嫌いだが、全授業座学というのもそれはそれで疲れる。というわけで少し腰が痛い。
校門をいつも通りの歩幅で歩き出る。
「っ──!?」
だけなのに背筋が凍って。前のめりにつんのめって転ぶ刹那、ドゴォォン、という激しい衝突音が辺りに響いた。
そこに目を向けると、すぐ横で人の形をした翼を生やし、人の肌をしていない文字通り青一色の肌をした異形のソレが校門の横の石造りの壁に頭から突っ込んでいた。だが、異形のそれは血走った目で私を見据えて立ち上がった。つまり大破したのは石造りの壁だという事実を示している。
そして私のように呆然とせずに直ぐに現実に理解が及んだ他の生徒達の絶叫が辺りを包み込む中、殺意───それだけが私に向けられる。
「•••••え?、へぁ、あ───がっ!?」
刹那、爪の長い青い片手に首を掴まれる。だがその力が尋常ではなかった。もはや人基準では締めつけるという表現が正しく、そのまま私の身体は持ち上げられていた。
この前のケルベロスの時よりもずっと怖い。理性があるだけではなく「殺す」という物語でありふれた二文字の意思を濃く明瞭に理解させられてしまう。
「あ゛っうぐっ、カはっ───」
始めて首の骨が痛いと思ったかもしれない。骨折したことは無いがそれでも折れると確信させられる程の圧迫感がある。
私はその異形の手を振り払うべくめいいっぱい抵抗する。その際一瞬だけ首にかかる力が緩んだ。とはいえ一瞬酸素を取り込めた程度で何の解決にも至ることは無い。そのとき拙い人語が聞こえた。
「───殺ス、ダメ。生かサなイト、モッていク」
「うっえ゛ぁ───」
意識が朦朧としてきた。この騒ぎによって生まれた混乱による絶叫も聴き取りづらくなってきていることからそれが分かった。感覚的に分かるのは浮遊感があることから恐らく空中を飛んでいることだけ。
ここまで来ると、私が権能のことを思い出す術などあるはずもなかった。
寝る時のそれとは違う。苦しみで意識が沈んでいく体験が脳に刻まれる。ゆっくり、ゆっくりと•••••
唐突に更なる浮遊感が襲って来るのと同時に痛みが消え、酸素を取り込めた。
「キィアァァァァ───ギヤ、あ」
「•••••カハっ───!?ハァっっっハァっっハァ」
「ごめん。また怖い目に遭わせることになっちまった。ゆっくり深呼吸できる?」
すぐさま飛び込んできた光景は恐らく私の──いや、人の常識では捉えられない一瞬で行われたのだろう。
その異形の魔人は私のはるか頭上へ高く打ち上げられて片腕が見当たらずに、見えない何かが腹部を貫通していた。傍目から見たら急に腹部に空いた謎の穴だけが映る。
そして恐らく───いや、この場面ではこの人しかいないだろう。何度か目にした死神の外套と風で靡かせ、大鎌を宙に浮かべて現れたその人の顔がいきなり視界に飛び込んだ。
「ジェ──、ス?」
あぁ、まただ。助けて貰ったのは二度目だ。安心出来る腕の中で私は彼に身を寄せて身体を預けて気を失う。ことよりも理解が追いついたおかげ──せいで意識が覚醒した。
要するに今私は空中でジェスにお姫様抱っこされている状態なのだ。
「え!?いや、ちょ、どういう──」
「暴れたら落ちるよー。じっとしてなさーい。今ゆっくり降りてるから」
どういう状況でこうなったのかをもう少し詳細まで問いただしたかったが黙殺された。
程なくして色んな意味でフラフラの私は久しぶりに地に足をつけることが出来た気がした。
心臓は大丈夫だろろうか。これまた色んな意味で。
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数分前
《ジェスside》
ここまで、たまたま乃亜に出会ったことを除けばほぼ全てが予定通りに進んでいる。
暇な時間でボランティア感覚で魔物を狩り回っていたがそろそろ終わりだ。今俺の目の前には魔物の死骸が大量に積まれてある。消滅させるのは魔力をそれなりに使うのでこの状態で留めている。
というか、やはり大鎌を使うのは慣れない。
俺の本来の戦闘スタイルは剣一本なのだが、アルのやつが俺にとっての不利な要素を増やしたいということでこの大鎌を採用しているのだ。
大鎌は長物すぎて懐にいる対象に攻撃を当てづらいのだ。一度身を引いて再度振りかぶったり、大鎌を引いてその場で回転してその勢いで斬るのも良いのだが、そうするくらいなら普通に蹴り飛ばしてしまったほうが早いということになる。
要するに立ち回りの良し悪しすら判断する基準が無いので非常に難しいというのが扱っている側としての感想だ。
おそらくその状態から抜け出そうとする過程がアルが俺に課している課題なのだろう。
だが俺も成長しているのだ。最近ではようやく漫画みたいにカッコよく掌で武器を回すアレが出来るようになったのだから!
「ソレって全くする意味なくないですか?」
「あー、あー。聞ーこーえーなーいー」
アルが何か正論を言っているがそれはスルーだ。
俺は耳を塞いで声を少し大きくする事で聞こえないフリをした。ここで正論は大変不粋である。
「そろそろ時間ではないですか?奴等もゾロゾロ動き出してますよ」
アルに言われるまでもなく俺自身でもちゃんと気付いていた。伊達に空間魔法を最も得意としているだけあって感知能力だけは誰にも負ける気はしない。
「ああ。ていうか、動き的に徒党を組んでいるわけではないのか。各々が取り合いをして一人に褒章を与えるとかしてんのか?」
「取り合いによる乱戦の中、強者の数人だけであの少女を奪いに来る算段でしょう。混沌を起こすことで感知される確率を少しでも下げる作戦。部下を囮に使う判断は正しいでしょうね。有象無象など魔法戦の余波で介入など出来るはずもない。ワタシ個人の意見としては良策です」
「乱戦のゴッチャしてる空間はむしろ得意だ。一網打尽にしてやるよ」
俺が使うのば基本的に空間魔法と風魔法の二種類と大鎌によるシンプルな斬撃だ。他魔法は適性に難ありで使えなくはないが出力がイマイチなことから使用する機会は小手先の目眩し程度しかないだろう。
体術はアルに一通り仕込まれているため問題は無い。近中長距離のどの状況においても対応が効く。
準備は出来た。あとは実践できるかどうかだ。
「それじゃあ遅刻する前に行ってくるよ」
心構えも充分。この程良い緊張感が俺としては良いパフォーマンスを発揮しやすい。
踏みしめる足にさらに力を込めてひとっ飛びして学校までおもむいた───
「学校は遅刻どころか欠席になる時間帯ですが?」
「お前空気読めないって言われたことあるだろ」
一気に緊張が冷めた。こうして俺のある意味の第一歩は台無しにされた。




