4.コメディは続くよどこまでも
《扶神 乃亜side》
私は───訳ありで学校の近くに一人暮らし中だ。
小さい頃といっても何歳だったからだろうか、私は人生の半分近くは児童養護施設で過ごして来ていて4歳くらいまでは記憶があまり無いので実質的に殆ど施設の中の職員かそこにいた子供達としか関わりを持っていなかったため、いざこうして一人で離れて高校に通っているとあまり人から近寄られる態度を守ることができなかった。
まぁ、私としてはまだ見知らない他人と関わるのはまだ抵抗があるので、悲しくもあるが安心もできると思いつつ、前みたいに誰かとお話ししたいという矛盾に駆られている。
だが、つい先日に私を助けてくれて更に優しく話しかけてくれたあの人の顔がまだ強く頭に焼き付いて離れなかった。
「・・・・・・だってあんなに顔が近かったんだし」
ボソっと、ベッドの布団にくるまりながら呟いてしまった。
・・・・・・まるでこの前見た少女漫画みたいに
「いや、いやいやいやいや!?ないないないないない!?」
だってあれがあんなにカッコよく見えるはずがないのだから。
学校では普通にクラスメイトに混ざってバカやってる事もあるアレが!?
テストに焦りまくって頭良い人にすがっていたアレが!?
今日だってよってたかって私のお腹がなっちゃったのを揶揄ってきていた中にいたアレが!?
カッコよかった!?
「うー、うーー、うーーーー!!」
ゴロゴロとベッドの上を転がり続けてこの感情を何とか抑えようとしているが全く効果が出てきている気がしない。
────本心・・・・という事なのだろうか。
「はぁ。もう寝よ」
小テストくらいなら、授業もついていけている上に単語も元からそこそこ自信あるから勉強してなくても何とかなるだろう。
そう考え───もとい思い込んでちゃちゃっと寝てしまうべく、うつ伏せで枕に顔を埋めて目をつむった。
だが例の人のヘラヘラした顔がずっと思考に入り込んできたせいで寝つきが悪かった気がした。
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《◯◯◯・◯◯◯◯◯◯side》
昨日勉強したところは全部正解するつもりで暗記してきて学校に来た。
「観斗」
「ん。終にしては珍しく来るのが遅かったね。おはよー」
「・・・・・・おはよう。俺はお前のせいで尻がまだ少しヒリヒリするし、昨日の猛ダッシュのせいで両足ともしっかり筋肉痛になったせいで歩きづらいんだよ」
「あはは。プルプル震えてて産まれたての子鹿みたいだねー」
へらへらと笑いながら馬鹿にされているが観斗自身が昨日のことくらいヘッチャラとでも言ってるかのように余裕に佇んでやがる。
コイツの運動神経化け物だろ。
「俺は筋肉痛が無くても尻はちゃんと痛くて困ってるわ。座ると少し響くしな。何なんだよあの野球部顔負けのスイングスピードは」
「ブォンってなってたもんな。それもあのスピードで走りながら最後まで一切威力を落とさずに叩かれ続けたし」
「ふふふ。あまり僕を怒らせないように気をつけようか。ね?」
「口で笑っていても目が異常者のソレだから怖いんだよ観斗はよ」
「もうそろそろホームルーム始まるから座ろうか」
「あ、そうだ。なぁ観斗、昨日のここのとこなんだけどよ」
「ふむ。どれどれ」
ここはこう、そこはこうやって───なるほど
といった会話を俺も復習を兼ねて横から聞いていたのだが、チャイムが鳴って中断する───前に、
扶神さんがギリギリで滑り込んで入室した瞬間にチャイムが鳴った。
話しかけようと思ったが、先生が廊下を歩いているのが見えたため大人しく自分の席についた。
席が隣なので横目で扶神さんに視線をやると、口を固く閉じているかつ鼻息が荒く肩を上下させているため、息切れによる口での呼吸音がうるさくて周りに迷惑がかかることを懸念しているのだろうか。
アルを通して扶神さんの家の住所は掴んでいるのでこの距離でこれだけ息切れを起こしているのなら、相当急いで登校してきたのだろう。
寝不足なのかな
「急だが、今日は時制が少し変わったからよく聞いておけ。一回しか言わないからな」
出た。大事な事なのに一回しか言わないという謎宣言をする先生あるある恒例行事の一つ。
「今日の一限目と五限目の入れ替えの関係で、予告していた古典の小テストが一限目に実施されることになるからそのつもりでな」
ふむん。正直好都合だ。覚えていられる時間はあまり長くないため早ければそれだけ確実に点が取れる自信がしている。
その後の先生の話は一切聞かずに、頭のなかで暗記してきている内容を復唱していたらホームルームはすぐに終わった。
「何かさ、再テストを賭けられると少し緊張しないか?」
「僕はそんなにかな。学校生活始まって成績で指摘される事も無かったし、再テストなんて尚更だよ」
「すごい」という言葉よりも「うざい」という言葉
を言いたくなるのはちゃんと人間してる証拠なのだろう。多分。
「俺もそんなにだな。再テストした回数なんて数えようとしたら足の指も使わないといけないしな」
こっちは経験がありすぎて貫禄が違いすぎる。
すごいと素直に思える。
「まだ十分くらい時間あるし、何かしてたら?」
「終。単語しようぜ。ここが一番不安だからさ」
「いいよー」
そんなこんなで互いに問題を出し合っては単語帳を開いては閉じたりを繰り返して残り時間をかけて有意義に復習していた。
そんなこんなで小テストが始まった。
「今から二十分間な。始め」
その合図で先ずは解答用紙を見て勉強笑重ねてきた暗記系が後半の方に固められているのを確認して、
問題用紙の最後の方に目を通した。
【問三.棒線部の古文単語を和訳せよ】
どうでもいいのだが、何故学年が上がる度に問題文を命令形にしていくのだろうか。
小学校の問題では、しましょう、で終わっていたのに。
とまぁこんな事はどうでも良いのだがそれよりもテストだ。
だが再び問題用紙に目を通すと不足が見られた。
「あぁ、スマン」
この切り出し方をするところを聞くに、おそらく俺と同じ所に気付いたのだろう。
────このとんでもない欠陥部分に
「問三なんだが、棒線をつけ忘れてしまったからとかないでくれ。だから四十点満点の十六点未満の生徒を再テストにする」
・・・・・・・・・・・・俺たちが勉強していたのはせいぜい単語含めて二十五点分程だった。その内単語の十点分が引き抜かれるため、取れるのは十五点分。そしてボーダーは十六点。
••••••••••俺は先生にバレないように少し後ろの方を向く。そこには飄々とした顔のままウインクしている観斗がいる。
(ごめんね)
とでも言いたいのだろうか。
••••••••俺はあのクソ担任のクソジジィを絶対に許さないと誓った。
──────そして授業終わりにて
「いやーごめんね。流石にミスを予想するのは無理だよ」
「••••••••それはもういい。しょうがないとしか言いようが無いからな。俺が責めたいのは観斗じゃぁなくてだな────」
俺はその対象を目をガン開きにして睨みつける。
「え?俺?何かした?」
「何でテメェは合格してんだぁ?あぁ!?」
「いやー教えてもらった所もちょくちょく間違えてたんだけどさ、あの暗号みたいな文の問題に記号問題あったじゃん。適当に書いてたら全問当たったんだよ」
「四択問題を、五問も、だと」
「本当に適当なら0.1%くらいの確率だね」
「俺なんか、全問外したんだぞクソッタレ」
「それはそれで24%くらいの確率だからどちらかといえば運良いんだけどね。すり抜け回避二回連続分と同じくらいの確率だから良かったじゃん」
「こんなところで低確率引いても何一つ嬉しくなんかないんだよ•••••。せっかく教えてもらったところは全部合ってたのにさぁ、虚しく十五点だよ。あと•••••あと一点なのによぉ」
もう分かると思うが、この三人の中で再テストになったのは俺だけだった。だがクラスで一人だけというわけではなかったのは唯一の救いだ。他にの男子の中で若干名再テストが出てくれたおかげでしくしく泣いて再テストということにはならなかった。
というわけで気分を入れ替えて、これから二日連続の体育のお時間である。
体力テストは先日のシャトルランにて終わっているのでこれからは選択種目の競技をすることになる。
俺たち三人は満場一致でバレーボールにしているので、今は着替えの最中であり、この時間で先程の愚痴会話が行われていた。
「•••••••終って腹筋割れてるんだな。結構意外かもな」
「でもその割には上体起こしの回数少なかったよね。確か二十と少しくらい」
「••••••割れてることが直接記録に繋がるわけじゃないんじゃねぇか?」
「そっか。まぁどうでもいいか」
正直体力テストの記録調整はかなり難しかった。
握力測定なんかは左右の記録に三倍近い差が生まれてしまうほどに。
その気になれば、身体の柔軟さが問われる長座体前屈以外は確実に満点になるのだが、そんな事をしてしまえば後はお察しの通りである。
そして着替えが終わり説明に入った。
「取り敢えず今日は初日だから、皆がどのくらい出来るのかを見るために最初からチームを分けて試合をする。今日は時短のため主席番号でチーム分けを行うが、次回からは好きに割り振っててくれ。それじゃあネット立てたら始めていいぞ」
こういう時って男女で差が出るよね。
男子は体育倉庫に走り始めているが、女子はゆったり立ち上がっていた。
経験上では少なくとも、共学だと男子の方が体育に対して気概があるように感じる。
「体育って憂さ晴らしになるから良い科目だよな」
「分かるぜそれ!何かスッキリするよな。そして疲れた身体で次の授業で寝る時めちゃくちゃ快眠なんだよな」
「分かるわぁ。良いよなそれ!」
「まず寝ちゃダメでしょ」
何か正論が聞こえた気がするがスルーだ。
そして個人的には球技というのがことさら良い。
何故なら俺は球技で出来る最強のストレス発散方を知っているのだ。
俺のクラスの男子の数は十八人なので六人のグループが三つ作られ、友弦は違うグループになり観斗とは同じグループになり、最初の試合は今挙げたグループで行うことになった。
そして公正なジャンケンにより、サーブはこちらのグループ───の俺からになった。
「終ナイッサー」
「へいへい」
サーブの仕方は当然王道のジャンプサーブだ。
まず体重を乗せた一歩目を踏み出すと同時にボールをほぼ直上よりも少し前方向に投げる。
あとはニ、三歩目を落ちてくるボールに合わせて踏み込んで跳ぶ。
「っらぁ!」
気合いを入れて打った第一本目は打点からほぼ直線に高さを変えずに飛んでいき───ネットの白帯に当たって相手コートに落ちた。
点は入ったのだが••••••なんか恥ずかしい。
「ぷっふふ。たかが授業で『っらぁ!』とか言ってジャンプサーブまでしてカッコつけておきながらネットインはちょっと、ダサい。ふ、ははは」
「言われんでも分かっとるわ!」
それに加えて一人目というのが災いして他の面々からも笑われている。
気を取り直して二本目の準備をする。
補足だがバレーボールはルール的に、サーブは連続得点している限り同じ人にサーブ権が与えられるのだ。
「っふ!」
スポーツ上、インパクトの瞬間に息を吐き出すのは割と大事なのでこれは流石にやっておく。
これだけで笑われたりはしないだろう。
俺の二本目のサーブはさっきよりふんわり柔らかく飛ばしたため、コントロールを重視している。
だが、ほぼ経験がない事は確かなので想像よりも少し内側の方に飛んでしまい、そこにいた友弦にレシーブされてしまった。
友弦はレシーブ時に少し高めにボールを上げたため、攻撃に間に合いそのままスパイクを打ってきた。
「ほいさぁ!」
「よっと」
観斗はそのスパイクを軽々レシーブしてネット付近に上げてみせた。
だが友弦のスパイクも絶対普通じゃない。まず間違いなく俺のサーブよりも数段早かった。
コイツら確かバドミントン部だよな?
運動神経がそんじょそこらのやつと比較して一線を画してるのはもはや気のせいじゃないだろう。
俺も見せ場が欲しいと思うで積極的に参加しよう。
「へい!」
と、トスが欲しいアピールをするとちゃんとボールを俺に上げてくれた。
少しボールが低かったが若干角度を上向に調節すれば何とかなるだろう。
俺は空中で右半身を引いて教科書どおりに構える。
だが相手の前の方にいた二人がブロックするために跳んで来ていた。
そこでふと思い出す。
(某バレーボール漫画の様にブロックアウトを成功させたらカッコいいんじゃね?)
というわけでブロックの手の先の方を狙って振り抜いた。
だがこの時、二つの誤算が起こった。
一つ。俺が思ったよりも下手くそだったため思いっきりブロックの掌にボールが当たったこと。
二つ。まずこのメンツの中に経験者がいない。よってドシャっと叩き落とすブロックが出来る人など当然居らず、ブロックの手は床と垂直に真っ直ぐ置かれてある。
これらの結果から起こったことは•••••••
「ぶっ」
ドッ、という鈍い音と共に俺の顔面に跳ね返ったボールがクリーンヒットしていた。
そして更に跳ね返ったボールは結果的に相手コートに落ちた。
そして尻餅をつく形で着地して、鼻がむずむずしていると案の定垂れてきた。
「ナイス鼻血スパイク」
観斗がそう言った後、笑いに包まれた俺は保健室に連行された。
こうして楽しい体育の授業は終わっていった。
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俺がなかなか鼻血を止められずにいると、保健室に友弦と観斗がやって来た。
「よう終。今日からお前の異名は『鼻血スパイカー』で決定だ」
「不名誉すぎるだろ」
「これで俺の失敗は上書きされぞー。ぐっへっへ」
「コイツ未だに根に持ってやがった。そしてお前の下ネタ発言よりはインパクト薄いと思うぞ」
だが実際クラスメイトのほとんどにそう呼ばれてしまっているのが現実だ。
「終。なんか顔赤くない?」
「いや恥ずかしがってるだけじゃないか?」
「そこまではならねぇよ」
そういうとわざとらしく掌で額を撫でる素振りをしてみせる。熱があるんじゃね?というアピールだ。
観斗も俺の額を触ったことで熱があるかもしれない、ということで体温計で熱を測ってみることになったが───正直まずい。
そもそも余程弱ってない限り俺が熱を出すことはない。今行っている熱を任意で出すという行為のカラクリは、微弱な火炎魔法を体内で発生させて身体をほてらせるようにしているだけだ。
だがこれの調整は思ったよりも難しく、体温が軽く十度は上がっている気がする。人間卒業している俺からするとどうだってことないが、体温が五十度を超えていたら余裕で入院になってしまう。
(あ、そうだ)
料理の技術でもあるではないか。「余熱」といわれるものだ。
俺は火炎魔法を解除して後は勝手に体温が下がるのに賭けた。
ピピピという電子音で観斗が目を見張るスピードで俺の脇に挟んでいた体温計を引き抜いた。
俺だけが見て偽ればそれで終わりだったのだがちゃっかり止められた。
だが観斗が想定していたのは実際よりも体温を高く申告してズル帰宅することだろう。本当は逆に体温を低く申告したいというのに。
「四十三度だって」
(やっべ十分過ぎるほど高い)
「流石にバグってるだろ。もう一回測ってみたらどうだ?」
(ナイスだ友弦!ファインプレー!)
おそらくそろそろ体温が引いてきているため丁度良いくらいになるだろう。
すぐさま観斗から体温計を取り上げて測り始める。
果たして結果は••••••三十八度。
(よっしゃギリギリ!)
もう少し遅かったら平熱に戻っていただろう。
これを理由に今日は帰宅しよう。
「じゃあ俺今日は帰るわ」
「一応言っとくけど、どのみち再テストはあるからね」
「あーあー聞こえない聞こえなーい。じゃあ教室から俺の鞄取って来てくれ」
「コイツ弱みという強みを最大限生かそうとしてやがる」
「あーキツイなー。関節とかが諸々痛いなー」
風邪ひいてる時は周りの人が介護してくれて良いですねー。
少しすると観斗だけが戻って来て必要なプリントなどもセットで鞄を渡してくれた。
「じゃあね終。お大事に」
「はいはーい。そっちこそ授業頑張ってねー」
「ねぇ終、熱引いてない?」
「キツイなーキツイなー」
「急に千鳥足になったね」
マジで観斗の観察眼は侮れない。
俺は逃げるように校門を小走りで出て、いつもの様に制服と外套を入れ替える。
今回のはおそらくここの住人が「魔人」と呼んでる類の奴だ。何かと狡猾に立ち回ってくるのでこちらも不意打ちで倒したいところだ。成功させる為に気をうかがう時間は長いに越した事はないためのズル早下校だ。
だが、早下校したからにはゲームもしたいためチャチャッと終わらせよう。
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《扶神 乃亜side》
小テストは軽く乗り越えて学校で帰りのホームルームを終わらせて下校中、私はいつもよりも少し遠回りになる道を選んでいた。
理由としては、先日のケルベロスの一件の影響であのあたりの建造物が倒壊していて未だ通行止めになっているからだ。
なので、いつも通りではないが家──もといアパートの一室──に行くために階段をのほほんと登って部屋に入ろうとしていた時、
「おかえりー!」
「うひゃあああぁぁぁ!?」
階段のところに配置されている屋根に足を掛けて、コウモリのように宙ぶらりんで登場したのは今日早退したはずの源終だった。
私は階段を登り切る一歩を踏み出そうとしだが、驚きのあまり後ろめりになったことで転落しようとしていたところを、未だ屋根に足を掛けたままの源君が私の手を取って引き留めた。
「おっと、危ないなぁ。ちゃんとしてよね全く」
「ハッハッハッ•••••••そ、その前に、驚かさ、ないで、ハァっハァ」
ちょっと───いやかなり泣きそうになった。
声はかなり大きく出していたことから脅かす気は満々で構えていたのだろう。
源君はそのまま私を引き上げると、屋根に掛けている足を離して空中で半回転して着地してみせた。
「ほっと。こうして二人で話すのはニ日ぶりかな」
「そ、それより!何で私の家の住所知って、はぁっ、るんですか!?」
「友達に家まで尾行させたからだよ」
「そんなサラッと!女の子の住所特定して何する気なの!」
「心配しなくても言いふらしたりしないし、不法侵入する気も無いよ。ただ知っとくと便利だなと思っただけだよ」
「な、何に!使うんですか!」
「君に会いやすくすためだけど?」
「•••••••••」
これは受け取り方次第で意味が右往左往するのでは?
これはどういう意味で受け取るべきかを熟考させる難題なので何も話せずにいると、その答えは彼自身が教えてくれた。
「君の権能、せめてもう少しちゃんと使えるようにしてあげるよ。見ていないところで暴発されても困るしね」
「え、あ」
なんだそんなことだったのか───と思ってしまうのは気のせいだろうか。
「なんか顔赤いけど大丈夫?心なしかボーッとしてる感じもあるけど」
「え!?あ、はい何でも無いです」
(無い!はず!)
無理矢理そう思い込むことにした。ヤケクソな対処療法だがひとまずはこれで会話が成り立つ。
「立ち話もなんだからちょっと部屋に入れてくれない?あ、勿論玄関に腰掛けるくらいで良いからさ」
「まぁはい。なんなら片付けるのを待ってくれるなら中まで入ってもらって大丈夫です」
「マジ?それじゃありがたくおじゃまします」
ひとまず何か話をするようなので上がってもらった方が楽だろうと思った提案だったが、後から気付いた。
(あれ、もしかして一人暮らししてる部屋に異性を立ち入らせるのは割とイケナイことなんじゃ••••••)
そう気づいた途端に作業をする手は思考と共にフリーズした。




