3.今は普通の高校生
改めて名前のふりがなを載せときます。
源 終 (みなもと しゅう) 主人公
扶神 乃亜 (ふかみ のあ) ヒロイン
二守 観斗 (ふたかみ かんと)
神野 友弦 (かみの ゆづる)
《◯◯◯・◯◯◯◯◯◯side》
まぁなんやかんやあったが今は普通に高校生を満喫したいので、普通に学校に登校しては─────机に突っ伏している。
「おっはー」
「男ギャルみたいで気持ち悪いよ」
「開幕毒舌すぎないか?」
いつも通り俺、友弦、観斗の順番で教室にいる。
そして今観斗がホームルーム5分前で登校してきたところだ。
「でぇ、なんで終はこんな気怠げに机に突っ伏してるの?」
「・・・・・・・・・すり抜けた」
「あぁガチャの話ね。フフ」
自分の不幸を笑われたことで少しイラッときたため、逆に問い返してみる。
「観斗はどうなんだよ」
「僕もすり抜けたよ」
「・・・・・・ふふふ。これで仲間ができた」
気合の入る言葉をもらって、俺はようやく顔を上げて二人の顔を見ることができる。
「自分と同じ目に遭ってる人がいて安心するクズの典型例だな」
「ちなみに10連目で新キャラが出てその10連以内ですり抜けたよ。これで次のキャラは確定だなー良かった良かった。」
「・・・・・・このっ、裏切りもんがぁー、あ」
世界一いらないどんでん返しを貰ったためじゃれ合い程度に掴みかかろうとするが、自分の机に足を引っ掛けてしまい真横に思いっきり転倒して───
「ぶっ」
「わっ」
そうすると当然横の席にいる人に突っ込んでしまうわけだ。
そのまま隣の席の人のノートに顔からぶつかりに行く形になり、無事鼻から着地した。
「あーあー何やってるんだか。扶神さん大丈夫?」
「あ、うん。私は別に何も無いけど、それより・・・・・・」
「終、鼻血出てない?」
「ダイジョブ。痛いけど」
倒れた際に筆記用具もろもろが落ちたのでみんなで拾い集めていくなか、見られてる様な気がした。
それも直ぐ近くから。
「扶神さん本当に大丈夫?」
「えっ!?あぁうん何も無い何も無い」
「?」
単純に心配になったので聞いたのだが声のトーンが変な返しをされた。まぁなんとも無いなら謝って終わりでいいだろう。
「いゃーごめんね。予習中だったのに」
「あぁうん大丈夫。本当に大丈夫」
「あ!俺予習してねぇ!今日5日だから・・・・・・最初俺に当てられんじゃん」
「あー、あの英語教師日付で発表者決めるからね」
「というわけでノート写させてくれ」
「俺やってない」
「僕もしてないよ」
「え!?お前らならしてそうだったのに」
「今日やるところ文章量も問題量もそんなに多く無いから30番まで回ってこないだろ」
「僕もそんな感じ」
「お前らって結構サボってるんだな。あ、扶神さんちょっとノート見せてくれない?1問目だけでいいから」
「••••••あぁはい。どうぞ」
「あざーす。オッケ、『4』か」
友弦は答えを確認した後、直ぐに自分のロッカーからノートを取るためにダッシュで廊下に出て行く。
そのタイミングで観斗が俺の肩を叩いてひっそりと話しかけてきた。
「ねぇ終ってさ、昨日扶神さんとなんかあったの?」
「え、何かあったって何で?」
「いや、ペン拾ってる時も僕たちが話してる時もずーっと終の方ばっか見てたからさ」
「あーまぁ放課後にばったり会ったけどそんだけだよ」
「ふーん。そうしとこうか」
何か観斗の機嫌が良くなった気がする。それも意味深に俺と扶神さんを交互に見ながら。
「終ぅ、観斗ぉ」
「ん?どしたん?」
「肝心の予習ノートを忘れたぁ」
「「それは知らない」」
─────────────────────
4限目、体育の時間になった。
正直体育は持久走の類を除けばある程度楽しい科目だ。
座学では無いこの科目は1限分欠けて、体感では3限しか経っていないのに昼休みになっているみたいになるあれが俺は結構好きである。
「シャトルラン測るぞー」
だがそれはこういうのがなければの話である。
「なぁなぁ。こういうのって周りが1人も辞めなかったら誰も最初に辞めたくない負の連鎖が始まるやつだよな?」
「まぁなるよねーその謎雰囲気」
「そうか?俺はあんまそんな感じしないけど」
「あぁ、友弦は体力馬鹿だからそんなこと気にしなくていいもんね」
「あぁ、体力だけは自信があるんだ。小学生で100回超えたのが自慢話だ」
「そりゃ相当凄いな」
「僕は前に一度その話聞いたね。その後春なのに熱中症になったんだとか」
「そりゃ相当馬鹿だな」
確か体力テストでは125回走れたら10点で最高点だから友弦は確実にそれを超えてくるだろう。
「観斗はどんくらい走れるん?」
「んー100は超えるかな。でも125は走れるかはわからないよ。去年はダメだったけどそのもう一つ前の年はいけたから、まぁ五分五分かな?」
普通にかなり凄いと思う。まぁ部活でもかなり強い方だとは聞いていたから何となくそんな気はしていたけど。
「終はどうなんだよ」
「俺はそうだなぁ80くらいか?」
「ふつう〜」
「もういっそのこと30回とかの方が面白いよ」
「俺に何の芸を求めてるんだよ」
勝手に運動音痴属性を生やさないでほしい。
というか俺は魔力による身体強化を使っていれば体育は無双して俺TUEEEEもできるのだが、平穏を求めているため当然できない。
6・7点くらいを狙って出そう。
「ちなみに走るのは女子、男子の順で、待ち時間は体力テストのレポートを書いてもらう」
何だよ体力テストのレポートって。絶対要らないだろそれ。
まわりの男子からは誰が最後に残るかの賭けをしているところも見られていた。
「この時間ただただ暇じゃね」
「何か面白い話思いつく人いる?」
「あー・・・・・・大喜利とかはどうだ?」
「おー。頭馬鹿が珍しくいい案が出た。そんじゃ言い出しっぺは最初のお題よろしく」
「それただの悪口じゃね?じゃあそうだな・・・・・・学校でイラつく時」
「それじゃ僕からいくよ」
「早いな」
「これは直ぐに思いついたね。冷水機の水の後味が少し悪い」
「あー鉄の味みたいなのがするって聞いたことあるアレか」
「俺も部活してて初めてあの水がぶ飲みした時吹きかけたな」
「あぁあったねそんなこと。でも職員室の近くにあるやつだけは美味しいんだよね。謎に」
職員室はエアコンがつくのが教室より早かったりそういうのが何かとあるんだろうか。
「じゃあ次俺ー。部室が狭い」
「俺分かんねぇや」
「狭いうえに窓が小さいんだよねあの部室。男臭が充満してなかなかキツイんだよ」
「じゃあ最後は終な」
「・・・・・・そうだな」
こういうのは割とパッと出てこないだよなぁ。
俺は部活もしてないから今の2人みたいなのは思いつかないから、もっと日常的なやつを───あ
「教室の扉の所で群がられるのがダルイ」
「あーそれ分かるなぁ。特に異性がたくさんいると声かけづらいよね」
「え、そうか?」
「今度はコミュ力馬鹿か」
「なぁ観斗、これはどっち?」
「褒め言葉」
「へへん」
そこでふと女子のシャトルランの方を見てみた。
具体的には扶神さんの方をだが。何故かというと当然知り合いが彼女だけだからである。
走りの方は───まぁひどい。効果音をつけるとしたら"ぴょこぴょこ"だろうか。しっかり地面を蹴れていないからか一歩が小さくなっている。
早速疲れが見え始めてる所を見るに30回まで走れるかどうかといったところだろう。
「さぁ次は終君!お題をどうぞ!」
「そうだな・・・・・・さっきのに関連付けて嫌な先生なんてどうだ?」
「終は流石だねー。すっごくジメってる人の発想だよ」
「あぁん?」
「友弦。煽りってのはこうやってするもんなんだよ」
「なるほどなるほど」
どうやら昨日のことの報復をしようと勉強中らしい。そして共犯者に教えを貰ってる事は何故しっかり忘れてるんだ?
まぁ大喜利に話を戻そう。
「じゃあ今度は俺からな。そーうだな、副教科のテストを難しくしてくる先生」
「あー僕それ分かるかも。特に保険とか無駄に単語が多いのは勉強時間割かれるからめんどくさいんだよね。メインの五科目勉強したいのにさ」
「俺分っかんねぇや!ハハハ」
「流石常ノー勉は格が違うな」
とはいえ俺も副教科の勉強なんかほとんどした事ないのだが。
「じゃあ次は僕ね。まぁ無難に授業が分かりづらい先生。結構自分で復習が必要になるからね」
「「復習とか全然してないや」」
「知ってた」
「よし!最後は俺だな。これは面白いと思うぞ」
「お、いいね!どんなどんな?」
ちなみに俺は、さっきの冷水機の話といい友弦は何かと面白い話を抱えているところがあると勝手に思っている。
「いや俺、そこそこ田舎の方の実家から離れて今は一人暮らししてるんだけどさ・・・・・・」
「それは前に聞いたね」
「そこの小学校が冬の体育も半袖半ズボンだったんだ」
「うわー。そういう学校まだあるもんなんだ」
冬の半袖半ズボンははっきり言って地獄だ。ただ寒いだけでなく風邪で飛ばされた砂粒が耳にあたるだけで痛いのに。ボールなんかが手足の素肌に直撃しようものなら泣くほど痛い。
「そんな中でさー、あのクソジジィのやろーがベンチコートにモッコモコの長ズボン履いて来やがったんだよ」
「それはキれていい」
「ちゃんと正当性もある」
「だからサッカーの授業で俺だってバレないようにわざと顔面にボールをクリーンヒットしてやったわ。まぁバレて怒られたけど」
「よくやった」
「お前はその学校の英雄だ」
俺と観斗は揃って親指を立ててグットをつける。
俺もそんな状況になったら似たような事をしてそうである。
一区切りついたところで今のシャトルランの状況を見てみると、既に60を超えていてもうそろそろ終わりそうだった。当然に扶神さんは端っこで肩を上下させて激しく息を切らしていた。
「そろそろ終わりそうだな。暑くなるからジャージは脱いどくか」
「そうだねーそろそろ準備しようか」
「えーもうちょいやろうぜ。ほら、あの人なんか80はいけそうな感じあるじゃんか」
「まぁ・・・・・・そうだな」
「じゃあ最後に観斗!お題をどうぞ!」
「んー・・・・・・。この流れに乗っかって学校あるあるにしようか」
少し最初のお題と被りそうな気がするが、こっちは良い方面の方も含まれるので割と範囲が広いだろう。
「よーし最後は俺からな。ボールペンを解体して結果部品を失くす。あぁ、こうして何十本のペンを買い直したことか」
「自業自得の例文に丁度いいな」
「次僕ね。進級していくほど昼休みの外遊びが減りがち」
「まぁ弁当食べる時間も昼休みに含まれるから単純に時間が少ないからもういいやってなるよな」
「小学生の頃とかはサッカーボールはチャイム鳴った瞬間から取り合いだったなぁ」
「最後は俺か。えーっと・・・・・・」
「男子ー次入れー」
「あ」
答える前に集合がかかってしまった。
「じゃあ走りながら考えてね。終わったら教えてよ」
「それ走り終わったら忘れるやつじゃね?」
特に最後の方とかは必死になってそんなことを覚える余裕はなくなるはずだ。
回数調整は・・・・・・魔力を限界まで抑えたらなるようになるなるだろ。
「始めるぞー」
その掛け声と共にお決まりのドレミファソラシドの音が鳴り始めた。
そして回数が50を超えたあたりで息が切れてきた。
そこでふと、女子が端っこで長座体前屈をしているのが見えた。そういえば前回終わらなかったんだっけ。
「────あ」
丁度扶神さんが行っているのを見て思いついた。
体力テスト、長座体前屈だけ点数高いやつ。
────────────────────────
「はい。それでは班を組んで意見を交換して、まとめたもの授業の最後の方に発表してもらいます。では近くの人と班を組んで下さい。」
7限目目になって正直かなり眠くなっている。
だがこの担任の先生は眠ってる人を叩き起こして回るタイプなので寝るわけにはいかない。
「終、机動かして」
「ん?あー悪い悪い。寝そうになってた」
現状の席順は出席番号順になっている為、斜め後ろの観斗と横の扶神さんが同じ班になった。
ちなみに俺の後ろの席の人は体調不良で休みである。
「神野さんは1人余ってしまいますね。源さんの方の班に入ってください。これで全班が4、5人になるでしょう」
「よっ。お隣失礼」
これで俺と扶神さんと観斗と友弦の4人班ができた。
「ていうかさ、総合って授業要るか?」
「将来の為に何ができるかって言われても『勉強頑張って大学目指す』くらいしか書くことなさそうだけど」
「ぶっちゃっけこういうのってやる気のないことを書いて適当にこなすよなぁ」
「扶神さんどう思う?」
「え、えーっと。文理選択すらしてないしこんなことするのも早いと思ってるよ」
「あー文理選択。あるねーそんなの。みんなどっちにすんの?俺は理系一択。理由は暗記科目が大嫌いだから」
「そうなの?終って割と記憶力良いと思ってたんだけど。ほら、何日か前の話を完璧に覚えてたりすることもあるしさ」
「それは関心があればの話」
俺は歴史の授業中の単語の並びを見てもポケーっと聞いているだけだ。似たようなことを小中学校でした覚えがあるし、失礼だが全く興味が湧いてこない。
なんなら板書が多いからその時間を使ってライトノベルをコッソリ読んでいる。これが程々のスリルで中々楽しい。
「俺はどっちでもいいけどな。じゃあ観斗次第で決めるわ」
「僕も理系かな。計算は沢山してきたからね」
「お前何か習ってたっけ?」
「いや特には」
「ふーん。じゃあ俺も理系にしよー。扶神さんはどっち?」
「文系かな。物語が好きだから」
そんな感じでたまに総合の授業内容のことをするだけで、後は雑談だけで30分くらい過ぎていった。
「ふぁーあ。眠ぃなぁ」
「そうだねー。終に関してはダウン寸前みたい」
「終ぅ〜起〜き〜ろ〜」
「ふぁいはい」
マジで落ちかていた。隣の友弦が起こしてくれなかったら危うく白目剥いてうたた寝してるところだった。
「扶神さんは眠くないの?」
「あ、うん。昼休みは大体寝てたから」
「それお腹空かない?」
「・・・・・・ま、まぁ少しだけ」
少しだけ俯いて恥ずかしがっているのは少し愛らしかった。
そして流石にそろそろ雑談だけの時間が終わる。
「はいそれじゃあ右端の班から発表していきますので代表者を決めておいてください」
代表者決めの押し付け合いとなったら当然アレだ。
「ジャンケンな」
「はーい。そんじゃージャ〜ンケ〜ン、ポン」
結果は俺がパーでその他がチョキだった。
「うげ。また俺が負けか」
「お前高校入ってからジャンケン勝ったことあったか?」
「僕は見てないね」
「無いと思う。んで、これを言えばいいんだよな?」
「うん。そうだよ」
昔から悩みがあるとすればジャンケンだけは幼少期の頃からずっと弱かった。
今から読み上げる資料を黙読していると目に付くものがあった。
「おい。誰だこの『困った時は身近の人にぶん殴ってもらえ』とか書いた奴」
「「知らなーい」」
「それ書いたの二守君じゃなかった?」
ナイスだ正直者の扶神さん。
「おいコラ。今度は俺にドM属性でも生やす気か」
「いやどうせジャン負けは終になるだろうから面白いと思ってさ。うとうとしてる時にささっと書いたんだよ。ていうかそれこの前のゲームのアプデで追加されたストーリーのやつで、その台詞のシーンかっこよかったんだよねー」
「最っ悪のネタバレ食らった。まぁ取り敢えず消しとくぞ」
せっかく面白いのに──。
とか言って満更でもない表情をしていたのが腹立つ。でも何故かコイツにはそういうので勝てない感じがする。
そんなことを考えていた時─────
クウゥゥゥゥ
明らかにお腹が鳴る音がした方に視線が集まる。
そこには少し恥じらっていた扶神さんがいた。
とはいえ今は他班の発表中で周りでは発表者を除いて誰も喋っていないため。みんながスルーした。
その際観斗だけが「フフ」と少し笑いを漏らしたが、それだけだった。
─────のだが、
グウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
先程よりも少し低く、長くなった。
当の本人の耳が少し赤くなっている。
「・・・・・・・・・・・・」
「ハハ」
「クフっ」
「っ」
3人それぞれが笑いを止めようと奮闘していた。
俺と友弦は少し喉が震えて、観斗が若干肩を上下させていた。
─────だが世の中には、
二度あることは三度あるという言葉がある
キュウゥゥゥルルルルゥゥゥゥゥ
「「「「っ!?っ!?っ!?」」」」
(3連続!!??)
「コラーそこのはーん。発表を聞いてー」
そこにあったのは、笑いを堪えようとして肩を震わせている3人と、顔全面を赤くしている1人がそれぞれ机に突っ伏している光景だった。
その中の女の子はお昼を抜いたことを死ぬほど後悔して、以降は朝昼晩の3食をきっちり食べる優良健康児になった。
─────────────────────
7限目の授業は取り敢えず何事もあり終わったので俺たちは、
「はー笑った笑った」
「扶神さんって思ったより食いしん坊?」
「取り敢えず俺の蓄えてたお菓子あげるぜ」
「•••••••••お願いしますもうやめてください」
俯いて猛省してた扶神さんを少しおちょくっていた。
(友弦だけがちゃんと善意なるがまたいいパンチになってるな)
このまま昨日の報復に精神的に少しいじめてみるのも面白いかもしれない。
そう考えていたのだが────急に余裕がなくなった。
「今日の授業中で言い忘れだが、前々から知らせてた通り明日古典の小テストするからな」
とんでもない置き土産を届けてくれながら早々に立ち去っていった先生。
・・・・・・・・・・・・俺あのジジィ嫌いだわ
いやそれよりもだ。チラリと横目で扶神さんを見てみる。すると扶神さんも気付いたのだろう。視線だけでなく俺が何を言いたいかを。
「・・・・・・ふ、ふふ。わ、私は知らないもんねーだ」
・・・・・・・・・・・・クソっ
「「助けて下さい観斗様!!」」
「えー」
これが入学以来初めて友弦と同じ発想をした瞬間だった。
─────────────────────
その日は帰宅せずに観斗の家に友弦と一緒にお邪魔させてもらった。
観斗の家である理由は当然だが一番近いからである。
「はぁ。で古典の小テストに備えたいってことだよね。だったら分からないところだけ教えてあげるから質問して」
「「どこがわかっていないのかが分からない」」
「••••••どこから教えたらいいのか分からない」
しばらく沈黙が続いた。
何しろ教える側も教えをこう側も分からないと言うならば当然の事なのだ。
「ほら、何でもいいからこの辺の口語訳を教えて欲しいとか何とかあるでしょ?」
「はい先生」
「••••••••••••終に先生って言われるの悪くないかも。で何かね?」
「古典って科目に消えて欲しいです」
「終さん。それは質問ではなく願望と言います」
だって古典だけあからさまに不要科目な気がする。
英語は分かる。グローバル化が進んでいけば必要になる事が来るかもしれないし来ないかもしれない。
だが古文は一体誰が好き好んで使う?マジで、切実に、率直に要らないと思う。
「終さん。それはもうこうしてしまいなさい。"そういうものだ"と」
「へーい」
まぁ実際ここにそんなに長く居座るわけでもないしこの小テストだけ乗り切ってしまえばいいのだからそれで受け入れよう。
「はーい先生」
「はい何でしょうか友弦さん」
「カンニングの仕方を教えて下さい」
「マスクの裏に書くのがオススメですよ」
「え教える流れ?」
ちなみに俺もカンニングをしようと思えばし放題なのだが、チートを使う生活が楽しいかと問われると否である。
「二人とも先ずは自力でやってもらおうか。結構真面目に話すからちゃちゃっと終わらせよ」
そういうと本当に真面目に話をするかのように観斗の手持ちの教科書を机に広げて見せた。
「要するに50点中の20点、つまり4割取っちゃえばいいわけだから40点以上を取るのは最初から捨てに行く」
ふむ。なるほど一理ある。多岐に手を伸ばしすぎて全体的に疎かにしてしまうくらいなら一部に特化させて安定してそこそこな点を取りに行こうってことね。
その意図を理解してない友弦が、
「え、捨てちゃっていいの?」
「うん。どうせオリジナルの問題作ってくるだろうし、そうなるとちゃんと読んで解く問題を当てないといけなくなることになる。だけど悲しい事に二人はそれが無理そうだしね」
なかなか辛辣だなぁ。
「じゃあどうすんの?」
「古文単語と活用形の問題で稼ぐ。この完全な暗記問題のトータル二十点になるって先生言ってたし。あとはほぼ確実に出るところだけ覚えさせるから凡ミスしたところはこれでカバーする。これで大丈夫でしょ」
「おー」
「感無量って感じ」
「・・・・・・終って勉強できるイメージあったんだけどねー」
「全くじゃないって。数学は結構良いし他の科目も並よりは取れると思う。できないのは古典と英語だけだから」
数学は取れる。数学は公式を覚えて当てはめるだけ。一つの公式で何十点も稼げてしまうのだから効率が良い。
「英語もできないのかー。ちなみにどのくらい?」
「アップルがかろうじて分かるくらい」
「小学生未満の高校生がいた。試しにゲットの例文作ってみてよ」
「ターゲットロックオン」
「違うそうじゃない」
FPSゲームでよく聞くのに。
「あ、その問題なら分かるぜ」
ふふん──と先程から無口だった友弦が自身満々に言って見せたのだが、
「ポケモン、ゲットだぜ!って痛!?」
気がつくと観斗の手には紙を折りたたんでできたハリセンが友弦の頭を叩いていた。
「ちょっと強くないか!?割とちゃんと痛かったんだが!?」
「いやースパルタ教師も悪くないのかなと思ってね。次友弦がふざけたら連帯責任で終も叩くから」
「何で俺も?」
こいつ先生ポジションがだんだん楽しくなってきてないか?
あと笑い方がSな人のそれになりつつある。
ふざけるのやめとこ
「はい。それじゃあやっていきましょう。まずは古文単語帳を出して下さい」
「「はい先生。置き勉してきました」」
「あぁん!?やる気あんのかテメェら!あぁ!?」
「スパルタ教師が鬼教師になった」
「それあんまり変わってなくないか?」
「・・・・・・僕のを貸さないといけない感じになったところで悪いけど、僕も置き勉してるから無い」
「俺たちまだ勉強してすらないのに絶体絶命じゃないか?」
「こういう時って先生が取りに行く時に自習時間になってくれて楽だよな」
「暗に僕に取りに戻れって言ってるのかな?ほら、行って来なよ。教えを乞う側の君達がさぁ」
「ここまで上から目線を極め抜いた先生嫌だわぁ」
「・・・・・・まぁ冗談だよ。ちょっと待ってて」
そういうと観斗は自分のスクールバッグから適当な裏紙を取り出して凄い勢いでシャーペンを走らせていた。
ていうかその紙って文理選択のプリントじゃなかったか?
「・・・・・・よし、できたよ。取り敢えずテスト範囲の単語は全部まとめたからこれ見て覚えて」
「おー凄え。全部覚えてたのかよ」
「これが内職パワーだよ」
「さらっとサボり発言したぞコイツ」
「いや観斗は初日くらいからずっと授業サボってるだろ。授業中ずっと机の下でラノベ読んでるし」
「え、そうなん?」
友弦が言わなかったら席替えするまでずっと気づかなかったかもしれない。
「あーあ。終にバレずにサボるっていう遊びをしてたのに」
「何で俺をターゲットにしてんの?」
「それは気にしない気にしない。とにかく各々でこの単語を覚えてね。その間に僕は活用形の表を書き写すから」
そう言われるままに俺と友弦は単語の羅列を眺めると、ある事に気づいた。
「もしかしてこれって、俺たちが分かりやすいように少し噛み砕いた訳にしてくれてる?」
「ん、全部じゃないけどね。できるやつだけやってる感じだよ」
「いや分かりやすいよ。授業の時に単語帳開いて訳がわからなかったけどこれならいける気がしてきたな。もしかして観斗って教えるの上手い?」
「まぁ昔よく色々教えてたね。元気にしてるのかなぁあの教え子たちは」
「お前に教えられてるんならすっごい人格ひん曲がってそうだな。痛!?」
「理不尽!?」
また友弦がふざけたから俺まで叩かれてしまった。
あと友弦のいう通り本当に痛い。バシイィィンと気持ちのいい音が密室によく響く。
「はい出来たよ。これも覚えてね。似たような事を書いているところはバッサリ省略したから頑張ってね。それ覚えたらその他の細かい所を教えていくから」
「これもこれで分かりやすいな」
これはこれで志望校選択のプリントなのだがそれは最後の方に教えてやろう。
─────二時間後
「だぁー疲れたー」
「友弦は予想以上に時間かかってたね。終は逆に三十分くらいで完璧に暗記できてたけど」
「短期記憶は得意なんだ。明日のこの時間になったら間違いなく忘れてる」
「あー。もう六時過ぎて七時前なのか。じゃあ最後に短くこの古典の本文のあらすじを解説して終わろうか」
「うぇ、まだやるのかよ」
「寝っ転がりながらで良いから聞いててね友弦。
この話はえーと••••••ちょっと一回読むから待ってて」
「コイツマジで一回も先生の話聞いてたこと無いんじゃねぇのか?」
観斗は一から百まで行き当たりばったりで何でも初見でこなせる天才肌説が浮上して来ている。
改めてよく観察すると人生二周目的な余裕がある雰囲気を醸し出していらように見える。このイケメン具合で精神年齢が老けてたら面白いな。
なんてどうでもいい脳内陰口を叩いていたら観斗は読み終わったと言った感じで顔を上げた。
早過ぎないか?
「ザックリ纏めると、この昔むかしに生まれた主人公は最終的に人に頼ろうとせずに自分の力でどうにかなると信じて戦争して負けたってかんじね」
「一年の初っ端重い内容だな」
「中学である程度わかるようになってる前提なんじゃない?」
だとしたら中学はほとんど行ってない俺はなかなか酷だな。まぁ訳さえ覚えてたら何とかなるだろ。
「ていうかこんな主人公見たことあるなぁ。もちろん現実の方でね」
「それってさっきの教え子どうこうに繋がんの?」
「いや全く」
「?───じゃあ誰の話してるんだ?」
「さぁねー。でもその人とは身近な関係だったけど、今は積極的に関わりづらいんだよね」
そう言いながら観斗は窓の外を見ながら今の空模様を眺めた後立ち上がった。
「そろそろ帰った方がいいんじゃない?後はそれぞれ自宅で勉強してね。多分それだけ覚えたけば再テストにはならないからさ」
「分かった。頑張ってみるよ」
「俺もう勉強したくなくなってきたわ」
「友弦は下手すると永遠と再テストを繰り返しそうだね」
「でも当日再テストで同じ問題出すって言ってたし大丈夫でしょ」
「ほら俺、過去を振り返らない主義だから」
キラッ──とカッコつけてるエフェクトが友弦の周りに見える気がする。
「こんな場面じゃないならカッコいい台詞なのに」
「ていうか観斗もカッコつけてることあんだろ。この前とかバク転失敗してアスファルトの水たまりに背中から落っこちてたろ」
観斗が自分のイメージを壊されたせいでイラッと来たのか未だに手に持っていたハリセンを振り抜いた。
そして────吸い込まれるように俺の顔面にクリーンヒットしていた。
「暴力反対!!」
「友弦が余計な事を言うからだよ」
「よーし帰ろうぜ」
と言いながら真犯人はせっせと帰ろうとしていた。
俺も取り敢えずスマホなどの諸々の私物を鞄に流し込んで玄関に向かって行った。
「観斗、このプリントはもらってって良いのか?」
「それないと勉強しづらいでしょ。そこまでしたんだからちゃんと再テストにならないようにしてよ。もしもそれで再テスト・・・・・・なんて事になったらこのハリセンで引っ叩いてあげるからね♪」
「「コイツ楽しんでやがる」」
観斗はSっけが強いという新しい一面も見れたのでなんだかんだ楽しい勉強会になったなと思いつつ友弦と玄関を出てさようならをしようとしていた。
「じゃあな観斗。やるだけやってみるぜ」
「はーい頑張れー」
ここで流れに乗って俺もさよならをする前に、やっておかなければいけないことがある。
────お返しに一泡吹かせてやるよ
「(友弦、走る準備しとけ)」
「?」
一応友弦にコソっと一言かけておいた。
これで準備は万端。
「さよなら観斗ー。じゃあ許可貰ったからお前の明日提出しないといけない文理選択書と志望先選択のプリント持って帰るからなー」
「──あ!?」
貰った裏紙───もとい重要書類を持ってそれをぴらぴら振ってアピールしておいた。
「ヨシ!走るぞ友弦!」
「ぷ、はは。面白いな!いいぜ!」
友弦も俺の意図を察して乗ってくれた。要するに仕返しという名の鬼ごっこである。
走り出す直前まで視界の端で観斗を捉えていたので追い付かれないかどうかはちゃんと確認できていた。
観斗の家は車を駐車する場所に高さニメートルほどの門のようなものがあるため、あれを少し上げてその下をくぐるのが最速で追ってこられる最短ルートだ。しかしかなり重量に見えるためそうすぐには追えないだろう。
その間に俺たちは十分距離を引き離せる算段だ。
ん?俺は足遅いだろって?
確かに体力に自信はないとは言った。だが短距離走や中距離走でこの二人に劣ると言った覚えは無い。いるだろ?短距離だけ異様に速いやつ。
せいぜい五百メートル程走って距離を詰められなければ流石に諦めてくれるだろう。
─────と考えていた時期が俺にもあった。
「おいちょっと待て!観斗あんなに足速かったのか!?」
「知らねぇよ!五十メートル走の時も俺たちほとんど同じくらいだったろ!」
まだ全員が一斉に走り出して百メートル程しか走っていない。それなのに、いつの間にか観斗はもう十メートル程度後ろの所まで近づいて来ていた。
(まさかと思うが、あの門を一蹴りで飛び越えて来たのか!?少しはよじ登る必要があるくらいの高さだったろ!?いやでもよく考えたらそもそもあいつの家の物なんだから出来ても不思議じゃ無いのか!?)
それだけならまだ分かったのだが、今現在進行形でみるみる距離を縮めるられているのに関しては俺たちより圧倒的に足が速い事しか説明がつかない。
どう考えても五十メートル走で五秒台の域に踏み込んでそうな勢いだ。
「お前!体力テストで手ぇ抜いてやがったな!って痛あぁぁぁい!?」
完全に追い付かれた俺と友弦は、観斗が握っていたハリセンで交互にお尻を叩かれまくっていた。
「今更気付いたがこのハリセン画用紙で作ってやがるな!?しかもかなり硬めの素材のやつを!道理でこんなに痛かった訳だ!痛い痛い痛い痛い痛い!?」
「ちょっマジで洒落にならないくらい痛えって!
終に乗ったのは悪かったから見逃してくれ!」
「あ、おい!ここまで来て見捨てて裏切んなよ!」
「心配しなくてもどっちも許してやる気は無いから。このまま叩きまくって友弦の家まで送り届けてあげるよ」
「いや俺らは馬じゃねぇんだよっっっっったぁーい!?」
結局俺たちは約一キロ先の友弦の家に三分弱と陸上部に劣らない時間で着いた。
ただし代償として俺と友弦の尻は真っ赤に染まって風呂に入る時に染みて痛かった。
この一章目は10話を少し超えたあたりでの完結を目指しています。
ようやく主人公視点を扱いやすくなってきました。




