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流離う世界に私は  作者: 眠井ネタイ
第一章『ネメシス』篇・後日談その1
3/23

2.種明かし

近くの公園のベンチで、私は源君が戻ってくるのを待っていた。今の私は・・・・・とにかく混乱状態だ。

だけどこれは仕方のないことだと思う。何もかも源君が悪いのだから。

とにかく回らない頭をフル回転させながら先程起きた大事件を纏めようとする。


(えーと、つまり源君=死神ってことは間違い無いから・・・・・うん、何もわかんない。)


ダメだった。とにかく今は安心し切ったり驚き過ぎたりでとにかくボーっとしてしまっている。


「ほいジュース。炭酸飲めるかわかんないからただのブドウジュースだけどいい?」

「あ、はい、何でも大丈夫です。ありがとうございます。」

「ございますとか要らないよ。仮にもクラスメイトなんだからもっと軽いノリで行こうよ。」

「すみませんが、軽いノリで話すのは難しいです。私の方はもう何が何だか訳がわからなくて混乱してて・・・・・」

「まぁそれもそうか。俺も(・・)最初はそうだったし」


そう言って「プシュッ」と炭酸の缶ジュースを開けながら話を切り出してくれた。

正直私はあまり他人に触れることがなく、コミュニケーションを取るのは苦手だと思っているため非常に助かる。何より彼の優しく語りかけてくれる感じが私は好きだった。施設にいた職員さんに似たような雰囲気がある。


「他の人に黙っててくれる代わりに色々と教えてもいいわけだけど、何か聞きたいことはある?基本的に君からの質問なら何でも答えられると思うよ」


──私はあまり秘密を勘繰る趣味はないと思っていたのだが、なぜかこの時だけはいつもと違い、もっとこの人のことを知りたいという好奇心が湧き上がってきた。


「えっと、源くんがいこーる死神ていうことでいいんですか?」

「うん。そこは君も見た通り間違いないよ」


一応、念には念をと今目の前にいるこの人の正体を確認しておいた。


「なんで死神に扮してモンスターを狩り続けているんですか?」

「面接官みたいな質問きたな。まぁそうだね・・・・。この世界(・・・・)が滅ばないような手助けをするのが俺の仕事ってわけで、死神にしたのはかっこいいから何となくって感じ」

「・・・・ん?じゃあ死神の格好をする必要性皆無なんじゃ・・・・」

「ない。強いていうなら学校に行くのに顔を知られちゃ不便ってくらい。まぁそもそも学校に行く必要もないんだけど。」


思っていたよりも突拍子のない答えがきて唖然とした。つまりは顔を隠せてしまえば何でもいい、極端な話全身タイツなどでも良かったらしい。


「え、じゃあ何で学校に通ってるですか?」

「んー。まだしたことがなからしてみたかった的なあれなの?」

「私に聞かれても困ります」


どうしよう。真面目に質疑応答に答えてくれているのか怪しくなってきた。


「・・・・どうでもいいかもしれないんですけど──」

「ん?」

「フードの下に仮面でもつけていれば顔がバレなくて済んだんじゃないんですか?」

「・・・・まじで何でそのことに気づかなかたんだろ」

「誰でも気づきますよ」

「そっちの方がカッコよく死神っぽく変装できたかも」

「え、そっち?」


ダメだ。私がツッコミを入れているだけで話が進まない。


「ていうかきになることといえば絶対他にあるでしょ。そっち方面の質問してよ。勝手にコント始めないでよ。

「いや絶対に私のせいじゃないと思います」

「ていうツッコミからコントに入ってるじゃん」

「っ〜〜!もう何でもいいよ!」


何で私がこんなことをさせられなければならないのかと思うと同時に──少し嬉しくなった。自分も初対面の人と対話することができているんだという事実に、先ほどまでにあった精神的な疲れがすっかりなくなっていた。

何というかこの人は、人に合わせるのが上手いと言った感じだ。その人に合った、その人が接しやすい行動をするので人に好かれやすい人物像といった感じだ。正直、甘く話しかけてくる大人よりも接しやすかった。

だが、それは急に変わる。


「ねぇ。俺も一つ聞いていい?」

「え、はい」


聞くままに頷いた


「さっき、アレに手をかざして何をしようとした?」

「っ!」

「いや違うな。アレがどういう死に方をするのかわかっていたのか?」


この人は私がスキル持ちだということに気づいているのだろうか。とにかくこの事に関してはあまり触れられたくない。物騒な力であることは間違いないし、この力の事は私自身も忘れたいとさえ思ってる。


「──いや、私は別に何も知らないです。ただ、その、混乱して勝手に動いちゃって───」

「とぼけるな。下手くそな奴ほど兆候(・・)がハッキリ現れるんだよ」

「──すみません」

「・・・・・謝んなくていいよ。脅しみたいな探りを入れたのはこっちだしね」

「──あの」

「ん?」

「このスキルってものは何なんですか?」


私の質問タイムはまだ続いているはずだ。それに彼は言っていた。「基本的に何でも答えられる」と。だからこういうものアリなはずだ。


「──?スキル?あぁ、こっちでは纏めてそう呼んでるんだ。そう。ふーん」


全部話してたら長くなりそうだ。と言ったまま説明に入る。


「君が言ってるのは俺たちの方では一般的に権能(フォルトゥーナ)って呼ばれてる。由来は知らないしぶっちゃけ呼び方なんて何でもいいと思ってるけど」

「ふぉ、ふぉるとぅーな?」


全く聞き馴染みのない語彙が出てきて呆然としているところに、更に追い討ちが掛けられる。


「そもそも、この世界のみんなはこういう異能を総まとめしてスキルって呼んじゃってるけど、実際もう少し割り振りがあるんだよ。そうだなー、んー、公共的に誰でもフリーに使える異能がスキル。その人にしか使えない自分自身の力で創り出した異能が権能(フォルトゥーナ)。分かりやすくいうとこんな感じ」


本人としては簡単に説明できたと言った顔をしているようにみえたが、こっちとしては全く馴染めないでいる。


「まぁそこんとこはどうでもいいね。君の質問に答えるなら何故そういうものが自分自身に備わってるかってことを教えたほうがいいかな」


そう。確かにどちらかというと何故こんなものがあるのかの方がずっと気になる。


「基本的に発現条件とされているのは、ある程度の素質──ようは才能を持つ者が強烈な意思による願いを放つことらしい。そしてその際に、その願いを叶えるため(・・・・・・・・・・)に必要な異能を得るということらしい。・・・・らしいらしいって言ってて悪いけど俺もぜーんぶ聞いただけの話なんだ。けど、かなり信用している人から教えてもらったことだからほぼ今言ったことで合っていると思う。」


・・・・・とりあえず、何故とかは問わずにフィクションの作品のようにそういうこととして受け入れたとしておく。・・・・・ただ、疑問が残ることもあった。私がその権能(フォルトゥーナ)を発言させるほどの才能があったとは思えないこと。だって運動音痴だし。

それともう一つ。時期が合わない(・・・・・・・)のだ。少なくともあの事件よりも前にそんなに強い願いをした記憶はなかった。小さい頃から物欲は少ないと両親も言っていた(・・)し、友達と触れるのも怖がっていたため流行りなどにも自然と無頓着になってしまったから、何かが欲しいとは口に出して言った覚えはあまりなかった。

私が長考に浸っているが、彼の話は続いていく。


「ただし、願いを叶えるための力ってのがかな〜りミソなんだ。例えばだけど、無人島から出たいと願ったとしよう。その時に得られる力ってのは飛行能力やイカダか船なんかを作れるような直接的な当たりだけじゃないんだ。これが木を切るためのノコギリだったりするし、生きるための水だけ寄越してくるなんてこともある。こういった遠回りの能力を引くこともあるそうでね、もっと酷い時は怪我しないための靴だけくれるみたいな役立たずなものもあるらしい。」


なるほど。権能(フォルトゥーナ)を持っていたとして、それが自分の願い通りに順当に従ってくれるみたいな便利道具ではないらしい。ただ、逆を言えば権能(フォルトゥーナ)を正しく使いこなした時に自分の本当の願いというやつが見えてくるのだろう。ただし、そうでもないことも教えられる。


「ただし、変に拗れてしまって本当に願いものじゃないことを願ってしまった時はそれがそのまま反映して権能(フォルトゥーナ)を得ることになるらしい。つまりは間違った願い(・・・・・・)を貫き通すことになってしまうわけだ。要するに感情に効果が左右されるから思い込みでもそれなりに強くなるってこと」

「私は──小さい頃からこの力があったと思うから、その・・・・強い願いっていうものができないと思うんですけど・・・」

「ふーん。まぁ例外もあるよ。恵まれた上で更に恵まれた世界に愛された天才君は、先天的に発現することもあるらしい。いやはや、羨ましい限りですなー」


そう言いながらニヤニヤししつつ、妬ましいとそのまま顔に張り付けたような顔でこちらを見ていた。そういう顔をされても困る。こっちだってそんな才能要らなかったし、あげられるならどうぞしたかったところだ。


「ふんふんふ〜ん。新バージョンはログボが美味しいですなー」


スマホを取り出してスマホゲームを始めていた。本人からすると、あまり真面目な話をしているつもりはないのかもしれない。


「ん。お気になさらず。質疑応答はまだ終わってないから気にせずどーぞどーぞ」

「なんか・・・すごいマイペースですね。私としてはその、すっごいスケールの大きい話をしている気がするんですけど。」

「そうかなぁ?まぁそんなもんか。こっちでもう常識になっちゃったし。まぁ慣れだよ慣れ。そのうちこれが普通になっていくから慣れよう!ね!」

「ね!て言われも慣れたくないですよそんなの。金輪際関わりたくないですし」

「その割にはこの質問タイムに結構ノリノリな気がするんだけど?」

「・・・・今後の私の身を守るためですよ」

「そのためになるような応えを一切出した記憶ないけど?」

「・・・・」


実際のところは知らなきゃいけないような気がするという謎の好奇心であることは伏せておこう。

なので無理矢理話を続けることにした。


「えーと、あのモンスターみたいなのはなんなんですか?」

「なんか無理矢理感あったけど気にしないでおいてあげよう。そのモンスター・・・・つーか魔物はね、魔力の過剰吸収で変質、変貌した動物、もしくは魔力の溜まり場で自然発生しちゃったって感じだね。こっち(・・・)でできた物ではないけど」

「それに遭わないための対策とか出来ますか?」

「それはね〜・・・何だと思う?」

「こっちが聞いてるんですよ」

「それはね〜、運」

「何も無いってことですね分かりました」

「あるよ」

「なら早く言ってよ」

「テンポいいねー。いいよいいよー」


さっきと同じようなことになっていたけどなんだかんだで楽しくて乗ってしまった。やっぱりこの人と話すのは何故か楽しいと思ってしまう。


「それはねー、君の権能(フォルトゥーナ)をポンポン使いまくって倒し続けること。最初は忙しいけどそのうち襲われることは無くなるよ。多分」

「あれはあまり使いたくないんですけど・・・・一応なんでです?」

「魔物たちをねー、裏で精神操作魔法で操ってるのがいる。」

「今までで一番大事なこと言い出すじゃないですか」


これは国に報告したりなんなりしなければならない重要機密なのでは?


「まぁそれが仕事の一つ(・・)だからね。そいつさえとっとと殺っちゃえばここ(・・)での仕事はおしまいで()に行けるんだけど。ちなみに何故精神操作魔法かというとね、短く言えば同じ術者にかけられた対象同士は、繋がりが生またりするんだよ。こう何というか・・・・賢い個体はコイツこんなこと考えてるんだろうなとかを共有できちゃうんだよ。なーんかこの前から明らかに協力して奇襲を狙ってくるのがちょくちょくでてきてるんだよ。まぁ俺にとっては奇襲になっていないんだけど」

「・・・・それ大丈夫なんですか?」


普通に考えてそんなの強すぎるに決まってる。その気になれば、あんな大きな魔物が群れを成して襲ってくることもあり得るわけだ。もしかしたら一対一だから勝てただけだなかもしれない。


「大丈夫だよ。有象無象が大量に来たところで大した意味ないから」

「そういうものなんですかね?」


実際、プロの格闘選手だってナイフを持っている輩を十人相手にするだけで絶望的だと勝手に思っている。やはり現実では、暴力でも発言力でも数が多い方が勝つ方が自然だと思う。


「魔法を使えるってことは一人で歩く銃器として完結してるんだよ。爆弾魔みたいなもんだよ。あはは」


さらっと自分自身のことを爆弾魔発言はしないで欲しい。いまそな爆弾魔と会話しているという事実で怖くなる。


「で、でもその精神操作魔法?を使ってる人は強いんじゃないんですか?」

「弱いよ。確定でいいと思う。さっき繋がりどうこうの話したでしょ?あれって未熟な証拠なんだよね。極めてる奴は完全に思考を操れるからまずそういう思考に至ることすら出来なくなる。完全支配できてるのもいたけど、こっちで弱りに弱ってるケルベロスを完全支配出来ていないだけで本人の実力なんざたかが知れてる」


・・・・理解できてるようであまり理解できている気がしない。話を戻してしまうことになるのだが、そもそも私はあまりこのフィクションみたいな話を信じきれていないところがある。大体今日まで学校で普通に一緒の教室に居た人が何故こんな色々なことに受け応えできてしまってるのか謎過ぎる。でも信じてしまった方が楽だと理解してしまっている節もある。


「んで?私は関係ないですよ感出してるけど、俺のこと心配してくれるんだ。」

「ま、まぁしますよ。目の前に一人で闘おうとしようとしてる人がいるわけですから」

「まぁそうだけど、ちゃーんと保険も連れてきてるから大丈夫だよ。少なくとも負けはないと思ってもらっていい。」


自信満々ではあるけど不安しかない。なんか・・・・・・この人は自信がある時こそ失敗するタイプな気がする。さっきもいい気になってる時に風でフードが飛ばされてたし。


「なんか失礼なことを思われてる気がする」

「ソンナコトナイデスヨ」

「嘘下手って言われたことない?バレバレ」


前々から顔に出る的なことは言われたことはあったが、そんなにあからさまに分かるものだろうか。


「私の嘘ってそんなに分かりやすいですか」

「すっごい個人的な質問してきたね。まぁ分かりやすいんじゃないかな。もうね、目があっちこっち泳いでて更に口が面白い形してる。小学一年生でも分かりそう」


最後ので十分なほど嘘下手なのがわかったのでもうこの話はしない。


「あ、そうだそうだ君の権能(フォルトゥーナ)を使いまくればどうこうの話をしてたっけ、何でかっていうとね。とにかくビビりまくると思うよ。なんか使おうとしてる時の君ってすっごい異質な雰囲気してるし」

「そうなんですか?」

「うん。普通の人が見ても同じ反応するんじゃないかな。こう、ゾワゾワって感じがするんだよね。悪寒がするってやつだよ。こいつやべぇわみたいになる」

「そんなヤンキーみたいな」


心外である。こっちがビクビク怖がりながらやっているのにそんな風に思われていたらこの人以外見て見ぬふりをされてしまいそうである。・・・・・・─────そういえばだ


「さっき、その権能(フォルトゥーナ)ってものを使う時に変なのが頭にチラつくんですけど、コレって何かわかります?」

「・・・・・・チラつくってのは?」


そういうと源くんはスマホの電源を落としてポケットに入れた。今までで一番大事な話になるのだろうか。そう思うと変に緊張して軽く作っていた握り拳に少し力がこもってしまう。


「えっと、知らない人の顔が出てきたんですよね。夢にぼんやりとなんですけどそれが顔と認識できてましたし。それに、触ってもらえていた感じもうっすらと・・・・・・」

「・・・・・・ちょっと診てもいい?」

「?いいですけどみるって何を────っ!?」


話していると容赦無くグイッと顔を近づけてきた。

近づけてきて・・・・・・近過ぎた。もう鼻息が私の口にあたっちゃってるくらい近過ぎる。


「えっ、あの、ちょっと、近す」

「動かないで、目ぇ合わせて」


あたふたしていて錯乱状態だったので言われるがままにそうしてしまった。


(・・・・綺麗)


改めて・・・・・・いや、学校で見た時とはすこしだけ違う顔になってるような気がする。

輪郭などの大枠は変わっていないが、まず人外と言えるほどに肌の状態がいい。こんなに近くで見ても余計なところに毛穴ひとつ無いし、荒れすらなく赤くなっているところが無い。

次に目。一色で瞳が構成されていない。少し深めの緑に墨汁を一滴落としたような感じで完全に色が混ざっていない。

他にも挙げられる状態の頭はしていないのでただただ目の前の人を見つめることしかできなかった。


「んー」

「っ!」


既に鼻息が当たっている距離から更に近づいてこようとしていたので流石に抵抗せざるおえなかった。


「ま、待って!一旦ストップ!」


顔を大袈裟に引きながら両手で彼の肩を無理矢理押して距離を取ろうとする。がその抵抗も虚しかった。

まるで壁を相手にしてるかの様に全く動かなかった。それどころか片手を私の背中にまわしてきて彼のもとに引き寄せられる。

・・・・・・本当に何でこんなことになってるんだろう。


「っ!・・・・っ!・・・・・・っっっ!!」

「ジッとしてて。ちゃんと大事なことだから」


こっちが声にならない悲鳴をあげているというのに今日一番の真面目顔をされると妙に説得力が出てきてしまう────というよりはさっきと比較した時に、表情のギャップに惹かれてしまう。

そうこうしてる間に続きと言わんばかりに顔を寄せてきている。もう鼻がくっついちゃってるしもう少しこのまましてたら────!!!

もうそろそろ思考放棄しかけてるところに、幸か不幸──どちらかというと不幸──か意識を覚醒させる言葉が聴こえてくる。


「ママー。あの人たちがちゅーしようとしてるー」

「っっっっっ!!!」


もう常識とかなんとかはどうでも良かったので、さっき押そうとしていた手を思いっきり振って、適当に足で押して引き離そうとした。


「ぶっ」

「さ、さようなら!」


かなり鈍い音がした様な気もするが、まぁあの人なら大丈夫だろう。

そんなことよりも今はこの顔を隠したかったため着ていたセーターを頭に被ってワイシャツのまま家に帰った。

肌寒いはずが顔だけは暑く感じた。きっとセーターで覆っているせいだ。



────────────────────────



《◯◯◯・◯◯◯◯◯◯side》



「痛たたたた」


ベンチから頭から落っこちたため後頭部と支えをしていた首を撫でる。

それともう一つ、顎が痛い。


「そっかービンタじゃなくてアッパーかー、•••••••いやアッパーはおかしいよな。こういうのって普通ビンタだよな?」


殴った当の本人は目をつぶっていたし多分がむしゃらにしたことなのだろうが当たりどころは完璧だった。

そのついでの前蹴りもちゃっかり鳩尾に入っていたのでもう少し力があって速く蹴られてたらまぁまぁヤバかった。


「フフフ。なかなかアグレッシブな小娘ではないですか」

「おお、アル」


いつの間にか俺の隣に二十代前半くらいの大学生の様なボーイッシュな服装で俺の横に立っていたのは、向こう(・・・)でできた俺の友達のアルネーブだ。愛称でアルと呼んでる。


「中々いいのをもらってましたけど、少しばかり鈍ってるのではないですか?」

「いやいや。人を突き飛ばす勇気とかないと思ってたんだよ。一応ビンタ対策はしてたけどアッパーが来るとは思わなかったんだって。」

「そういった想定外に緊急で対処できるのが強者だと私は考えていますよ」

「ぐぬぬ。言えてやがる」


正論で返されるのは苦手だ。

まぁそんなことよりも、


「お前もあの娘で確定でいいか?」

「ええ。問題無いかと。それよりもさっきのアレ、やる意味ありましたか?」

「まぁ取り敢えず異常があったら困るし見ておこうかと思って」

「そうですか。直ぐにでも連れて行きますか?」

「いや、ここを解決してからでも遅くはないでしょ。もう少し泳がせよう」

「かしこまりました」


あの娘にはまだ此処でやってもらいたいことがある。上手くいってくれれば手間と時間を大幅に削ることができそうだ。


「あ、でもそうだな。ラグナを呼んできてくれ。尾行させて家を特定させて張り付かせたい」

「わざわざ呼ぶ必要ありますかね?別に貴方がやれば問題無いでしょう」

「倫理観の問題だよ。単純に女の子の部屋を一日中覗くもの忍びない」


風呂とかもっての外だし。


「そういうものですかねぇ••••••。分かりました。しかし、戦略としてカウントする事は許しませんよ」

「分かってるって」


かくして、ココでしておかなければならないこともそろそろ終わろうとしている。


「にしてもお前その服どこで買ったんだ?」

「その辺の高額商品を物質生成(マテリアル)を駆使してコピーアンドペーストしました。いかがでしょう?」

「正直その変な装飾は結構ダサい。あともうやめとけ。必死に働いてる人が血涙流すぞ」


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