1.この出会いは運命ではない
《◯◯◯・◯◯◯◯◯◯side》
俺は今、『源終』と名乗って高校生活を営んでいる。
「しゅ〜う〜くーん!」
「またその陰気臭いよびかたか。今度はなんだ?課題見せて欲しいのか惚気を聞いて欲しいのか?それともちょっかいかけにきたのか。」
「・・・割り箸なんて持っ」
「手で食ってろ」
「辛辣!まだ言い切ってない!即答しないで会話繋げようよ〜。あとマジで割り箸とか持ってません?最悪爪楊枝でもいいので」
「はぁ〜」
そう言われて俺は鞄から割り箸を取り出し、その中にある爪楊枝だけを渡し、割り箸はまた鞄に戻す。
「・・・いやあるなら箸をくれよ。爪楊枝だけ渡すより割り箸の入った袋ごと渡した方が早いだろ。
何でもいうこと聞くので箸の方もくださいお願いします!」
「じゃあ今度英語教えてくれよ」
「・・・・いやそこはせめてジュースを買わせるとかを」
「じゃあそれで頼む。お前から提案してるんだから、ちゃんと有言実行しろよ?ほら、さっさと行ってこい。」
「クッソ!!まえにもこんあことあったなぁ!!めんどくせぇ!!」
よくある「先にキツイお願いをした後に少し緩めれば妥協してもらえる」戦法をくらって地団駄を踏みながら廊下へ走って行ったあいつは神野 友弦という俺のクラスメイトだ。本当にからかいやすいやつなので入学してからというのもこういったことを何度も繰り返しておちょくっている。いや本当に良き友人を持ったものだ。
「まだ5月なのにこの光景にも見慣れてきたね。机端っこだけ借りるよ。」
俺が友弦を自然な流れでパシリに使おうとする方法を考え、脳内シュミレーションをしてるところにもう1人の友人である二守 観斗が弁当を持って俺の机の端に弁当が入った袋を置いた。
「なぁ観斗。欲しいものとかある?」
「きゅうにどうしたの?」
「いや今度は友弦のやつに何を買わせてやろうかと。」
「・・・あんまりお金がかかるもの買わせすぎると金欠になるだろうから程々にね」
たしかにそうだ。あんまりお金を使わせすぎると友弦が長持ちしなくなってしまう。それはそうとして・・・
「観斗君や。君に集まってるこの視線の中で弁当を落ち着いて食べるなんて無理なんですけど。」
「しょうがないと諦めてよ。僕だって別に望んでこうなってるんじゃないんだから文句をつけられても困るよ。」
そう、二守観斗はイケメンである。顔はもちろんのこと成績優秀スポーツ万能に加え、入学初日に階段から落ちそうになった女の子を助けた・・・本人からすれば助けて(ド天然イケメンムーヴをかまして)しまったせいで、その名は上級生にも轟くことになった。現に教室の前を歩いている3年生の女子生徒の歩く速さが遅すぎるうえに観斗をガン見してる。怖
「そうそう。昨日のゲームの公式発表観た?」
「え!観てない!どんな感じだった?」
「新キャラめちゃくちゃ可愛い」
「うわぁ早く帰ってそれ観て〜。あ〜あ、この学校スマホの使用自由だったらな〜。俺もすぐにでもその公式発表観たいから友弦のスマホで観よ。」
俺は友弦のバックに手を突っ込んで、その中に入れているスマホを無断で操作し始める。
バレたらバレたで友弦が使っていて電源を付けたままどっか行きました、的なことを言って誤魔化す。まぁそんな事にもならないだろうけど。
「いや普通にロックが・・・っていま指紋で開けた?」
「この前借りた時についでに指紋認証で開くようにしてたんだよ。うわホントだめっちゃ可愛い。これは追加で課金しないとな♪」
「それ一歩手前とかじゃなくて普通に犯罪だからやめなね。」
観斗とは好きなものに共通点が多いため話があって会話を広げやすい。ゲーム以外にもライトノベルも互いに好きなのでたまにあるエッチィ挿絵で盛り上がることもしばしばある。やはり持つべき友達というのはこういう人物であろう。そうこうしていると友弦が帰ってきた。
「買ってきたぞ〜。いやこの学校1階にしか自販機ないから4階の1年生はマジで大変だな。お!視線を察知!俺をチラ見してくる女の子は誰だ!」
「その視線は1人残らず観斗に向いてるだろ。ていうかお前彼女いるんだから気にする必要もそんなにないだろ。」
「ああ。その子とはもう別れた。」
「「今すぐ謝ってこい。このヤリち」」
「言わせねえよ!!ていうか違うって、メールで別れてっていわれただけだって。」
「僕の推理では、きっと酷いことをされたから怖くて直接会うのが怖かった。それ故に、わざわざメールで別れたいことを伝えるしかなかった、と読むね。つまり、」
「やっぱヤリ」
「違ぇから!!普通に直接会うのが面倒だからメールで伝えたって最後から2行目に書いてあったから!」
「最後の行にはなんて書いてあったの?」
「でもあなたが悪いからって書いてた」
「「やっぱりヤ」」
「ヤリチンじゃねぇから!!!あ」
完全に自分から言った。いや言わせた。その証拠に今こちらに向いてる視線は観斗ではなく、間違いなく友弦に向けられていた。
「フフw良かったなみんなの視線がお前に釘付けだぞ。」
「アッハハハハw。僕もうお腹痛い、無理w」
「てんめぇらな」
怒りと恥ずかしさで顔を赤くした友弦が突っ立っていた。まったく、本当にからかいがいのあるやつだ。
《扶神 乃亜side》
私は特に友達はいない普通の高校生だ。いや、普通ではないところは有る。
この世界には昔から〈スキル〉といわれるものが存在している。当然〈スキル〉は持つことができる人と持てない人がいるが、基本的には持っている人の方が少ない。だが、〈スキル〉を持つ人には共通点として、身体能力が人並み外れている傾向がある。
実際私も<スキル>を持っているが、運動神経が良い・・・・・なんてことはなく別にごく普通の女子高生並み・・・・・どころか学校一とも言える、超が百個はつくほどの超運動音痴だ。
〈スキル〉には当然、持つ人によって各々に千差万別の特殊能力がある。そして、その能力にも格差が存在する。〈スキル〉を持つものはどんな能力を持っているか分からない。だから、生涯でその能力に気付かずに、才能が埋もれたままに。といったケースも起こり得るらしい。しかし、私は自分がスキルをもっていることを「知っている」。・・・・・そんな気がする。それにスキルが無いと、あんな惨劇が起こるはずが・・・・・いや、思い出したくない。
私自身が「どんな能力分からない。」のだ。こんな力、使うものじゃない。使うのが怖い。トラウマを呼び起こすだけだ。だから友達を作るのが怖い。友達を作って、大切なものが離れるのが怖い。怖くて怖くて怖くて怖くて怖くて堪らない!!
・・・・・ふぅ。深呼吸。落ち着こう。
(この⬛︎は⬛︎⬛︎に⬛︎まれた⬛︎⬛︎の⬛︎を解く。⬛︎⬛︎の⬛︎いが⬛︎⬛︎う⬛︎⬛︎を⬛︎⬛︎させる。今に⬛︎る⬛︎⬛︎はこの⬛︎⬛︎の為に在る。)
・・・・これは私が物心ついた頃から知っていた言葉で、文脈は意味がわからない上自分の思考にノイズのようなものが被さるような気持ちの悪いものばかりが並べられているが、私の心を和らげるものとして不思議よく馴染む。まるで誰がいてくれるような、よく分からない安心感があって、絶対に忘れたり無くしたりしてはいけないものである気がしてる。
話を戻すと、今世界では〈モンスター〉と呼ばれているものに頭を悩ませている。
ゲームやファンタジーの世界のもののように、小型の無害にも思えてしまう動くスライムや二足歩行の知恵あるもの、巨大な六足歩行や八足歩行をするような昆虫の形をしたものまで様々だ。
その中でも魔人といわれるモンスターが特筆して脅威とされている。高い認識能力を持っているためか複数で連携をとってくるだけでなく、〈魔法〉を使用したり、肉弾戦がとてつもなく強いものもいるらしい。
人間側の人たちが苦労しているのは、ゲームなどと違って人に〈魔法〉を使えるものがいないからだ。実際の所、通常兵器で倒せなくはないのだが、強すぎるモンスターが相手の場合に市街地の被害があまりにも大きすぎるため核兵器などは当然使われない。そういった時は、国が抱えている国防隊と呼ばれている、スキルを所持している人だけで構成されている兵隊さんたちがモンスターを倒している。
理屈は判明していないが、普通の人とスキルを所持している人が同じことをしても身体能力の差だけでは説明がつかないほどダメージの入り方が全く違うらしい。それも相まってスキルを持っている人はモンスターとの闘いにめっぽう強く、この国でも中でも団長の絡操 念嗣と副団長の『広繋 奏波』の2人の名が有名だ。
しかし、それの有名人たちを凌いで最近有名になってきている人物がおり、みんなはそれを『死神』と呼んでいる。『死神』は神出鬼没に世界各地に現れているため同一人物では無いのだろうが、共通しているのはつい数ヶ月前から突然現れ始めたことと討伐、撃破が困難であろう強力な力を持つモンスターたちを刈っていること、そして何より大鎌を振り回して戦う人物が正体不明であることだ。最近のニュースでもその正体が誰かで持ちきりでトレンド入りも果たしている。そして毎日見てて最近私が考えてることは・・・・・
(片手で常にフードを抑えててこんなに強いんだ。)
という感じである。いや、正直もっとマシな隠し方は無いのかと思う。わざわざ外套のようなものを着なくても顔を隠せるものなんていくらでもあるでしょ。
「ヤリチンじゃねぇから!!!あ」
・・・・めちゃくちゃびっくりした。私はホラー系はを観るとアレルギー反応(怖いのが苦手とかそういうわけじゃない!多分!絶対!!そう!!!)が出て泣きそうになる。でも大声で下ネタを叫ぶのは流石に引いてしまう。
もうそろそろ昼休みも終わりそうなのを教室の時計です確認してひとり席を立ち、体育の時間が始まる前にせっせと更衣室に向かう。いつも通りだ。
だが、運命のイタズラなのか、はたまたそういう宿命なのか。さっそく今日からいつも通りが終わりを迎えることなど、もちろん私は知らない。
《◯◯◯・◯◯◯◯◯◯side》
帰りのホームルームも終えて俺たちは階段までの廊下を三人並んで歩いていた。
窓がカタカタ音立てていることで思い出したが、そういえば今日は「風がいつもよりも強いため洗濯物が飛ばないように」とかを天気予報で言っていた。だが今はそんなどうでもいいことよりも・・・・・
「あははは。当分の間はとなりのクラスでも話題になってくれそうだな。なんせあんなに大声でド直球に下ネタかましたんだしさ。クク、ははは」
「お前・・・絶対いつか復讐してやるからな・・・・」
「その前に友弦はもっと警戒して注意を解かないようにするべきでしょ。僕みたいに。」
「う、うるさい!確かにそうだけど休み時間は休むためにあるんだからもっと楽にしてーリラックスしたいじゃんかよー。それに観斗はいつものほほんとしてるだろ。」
「僕はほら、ここが違うから。」
そう言って観斗は人差し指で自分の頭をトントンと叩いてみせる。しかも楽しいのか快よいのか、それはもうと〜っても意地悪い笑顔を魅せながら。
「うっっっぜぇな。なんですかー?天才アピールですかー?」
「実際、比較対象が友弦なら月とスッポン、天才とバカだろ。」
「そらみろ!俺がスッポンだってよー!ざーこざーこ!!」
「スッポンの方がバカの方だからな?分かってないだろお前。」
「・・・ふ、終くんや。言葉は刃物なんだ、慎重に使わないと二度と離れ離れになるかもしれないんだぜ。」
「カッコよく魅せたいのはわかるけど、パクったの言ったところでなんも響かないから。せめて自分で考えろよ。」
「ちぇ」
「終はこのまま帰るよね?」
「うん。帰宅部はいかに早く家に帰ってコントローラーを握るかの競争だから」
「誰と競ってんだよ」
いつも通りの会話をしてから2人にまた明日と告げる。2人は同じ部活をしているが、俺は帰宅部所属なので他の人よりも早下校だ。ただ、このまますぐに自分の家に帰宅するわけではない。
面倒なことに、この平和な日常をぶち壊すものが身近に来ている。俺は靴箱に上履きを入れ、校門を走り抜け、信号を通り、そのままの速度を保ったまま、あまり人が通らないであろう路地に出る。
「人は・・・・・・いないな。」
すぐにあたりに人がいないことを確認し、何もない空間に手を突っ込む。取り出すのはいつもの外套と自作の大鎌。学校用の鞄は取り出した空間の中に突っ込み、正体がバレないようにするために、学校指定の制服と自分の靴を魔法で入れ替える。
「衣服召喚っと準備よし。」
先ほど自身の感知魔法に引っかかった魔物を刈るために、俺はその場を離れ走り出す。このありふれた日常を守るために、今日も(押し付けられた)仕事をこなすとしますか。
《扶神 乃亜side》
私は部活は入っていないから、下校がみんなよりも早い。私は両親・・・・・と言っても私を養子として引き取ってくれた人達なのだが、今はその人たちの元を離れて1人で生活してる。
(流石に2日続けてカップラーメンは良くないよなー。何食べよう?カレーは・・・・・やめておこう。もうカップの蕎麦のやつでいいや。)
私は最近気づいてしまったのだ。自分が全く料理ができないことに。一人暮らしを本格的に始めたので自炊に挑戦してみたものの上手くできなかった。調べた説明通りに調理してるのに?と自分でも思うが、もう私は「せんす」というやつがないのだろう。そういうことにしたい。
帰り際に学校から少し離れたところにある、私の家に近いコンビニでカップラーメンとインスタント食品でも買おう。そう思って角を曲がって、
・・・・・・・・・・・・・。
「シャァァァァァア」
・・・・・蛇のような頭があった。頭部だけで見てもその高さは1メートルほどあった。頭がここまで大きいと、全長は一体どのくらい大きいのか。と、頭の中は恐怖でいっぱいで、死ぬかもしれないというときに変なことを考えていた。たぶん私の頭は恐怖で狂ってしまったんだろう。
私が怖くて逃げようとして、尻もちついた自分の足を見ると激しく震えていた。
ああ、こういう時にこそ自分のスキルを使ってなんとかしようとすべきなのだろう。でも私自身ですら、使い方がわからないのだから。
「「「ガルルルルルルルルルルルルル」」」
その巨大な蛇が後ろを向くのと同時に3つの狼の頭がこちらを向いた。どうやらそれは巨大な蛇ではなく、狼の3つの頭の胴体についていた尻尾だったらしい。この特徴的な見た目は私もどこかでみたことがある。たしか「ケルベロス」とかいうやつだ。
(ああ。怖いなぁ。)
でも、私自身がやったことを省みれば当然のことだろう。だって私は自分の手で、・・・・したのだから。
「ガアアアアアアアアァァァァァ」
3頭の狼の頭が目の前にある餌を捕食しようとして、その大きく開けた巨大な口が私めがけて襲って来る。
しかし、まだ絶対死ぬと決まったわけではない。一か八かだけど〈スキル〉を使えるならまだ可能性はある。
私は襲いかかってくる狼の頭に向けて手を伸ばす。怖い。〈スキル〉が出なかったら食べられる。嫌だ。〈スキル〉を使えてしまったら、また血を浴びることになる。苦しい。あの日を思い出してしまう。
でも私は念じる。〈スキル〉が出てくれることを祈ることしかできない。出てくれなければ死ぬだけ。
(お願い!!!)
私は手にありったけの力を込める。それしかできない。狼の頭はすぐそこまで近づいてきたところで、私の世界がスローモーションに見える。車に轢かれる瞬間に少しゆっくり見えるというそれだろう。
そう考えるのと同時に走馬灯のような記憶が私の頭の中を奔った。
(・・・・・・・え?)
何?
(誰?この人?)
よくわからないそれは気持ちが悪い感覚だった。
小さい頃から塗られていた記憶という絵の具が、全く違う色で塗りつぶされていくようなかんじがした。・・・・・・が今はそんな事を気にする場合ではない。
今はただ、〈スキル〉が出てくれることを祈るだけ。
ケルベロスの巨大な頭が頭の上を覆い影を作り出す・・・・・前に小さな影が頭上を通り過ぎる。その影はケルベロスの頭の一つを蹴り飛ばし、巨大が転倒するの見た時には謎の人物によって脇下に担がれていた。そのまま建物の間の狭い所に私を、思ってたよりも優しく押し込んでくれた。その人物は何度か液晶越しに見た外套を身に纏い大鎌を片手に持っている———死神と呼ばれる人が目と鼻の先に居た。
「危ないから俺が戻ってくるまで出てこないように。フリじゃないよ?」
「あ、はい」
もう驚きで適当な返事しかできなかった。死神は硬いアスファルトの地面を一蹴りして瞬きする間もなく一瞬で消えた。しかしやはりというべきかさっきまでの恐怖が吹き飛んだせいで興味が勝ってしまった為に片目だけ出すかんじでのぞいてしまった。
「グォッガァッァァァァァアアァァァァァ」
死神は既にケルベロスの四本の足を全て切り飛ばしたあとだったようでケルベロスは大量の血を流しながら鼓膜を破ろうとしてやらんとばかりに大声量で咆哮いや、悲鳴をあげている。私は咄嗟に両耳を両手で塞ぎつつもその光景から目を離せなかった。直後にケルベロスの三頭の蛇の頭、もとい尻尾の口から薄紫色の煙が吐かれた。見た目からしてまず毒霧だろう。
「ほっと」
空いた左手でそれを軽く一振りすることで逆方向に吹きとばして———はおらず、その左手に毒霧が集まっていて、もう一度手を振ることで完全に消え去った。周囲に霧散しないように気を使ったのだろうか。そうこうしてる間にケルベロスは執念を見せるかのように切断された手足の断面で立ち上がっていて、歯の間から見せる口の中が赤黒く発光していた。
「お座り———いややっぱ座れないだろうからおねむり!」
と陽気なことを言いながら大鎌の刃を口の上から顎まで貫通するように振り下ろすことで吹き出すはずだった炎が口の中で炸裂していた。
「ヴゥゥゥァァ・・・・ガァ───」
「───ごめんね」
そう語りかけた頃には頸が鈍い音を立てながら落ちていた。
「ふぅ。さて誰か来る前にトンズラこくとしましょうか。」
死神は大鎌を肩に担ぎ疲れを感じさせない様子で真っ直ぐこちらに歩いてきていた。私はすぐに狭い通路から体を出してお礼を言おうとするが、会話の第一声は死神から始まった
「大丈夫みたいだからいいけど、覗き見はダメだよー。制服に血なんてついちゃったら台無しじゃん。」
そうか。私に血が飛ばないように始めから斬りかからずに蹴飛ばしてから私を避難させてくれたんだ。安心感が体の奥から込み上げてきているがそれと同時に違和感が湧いてきた。
(既視感?声?)
だがそんなこと聞くよりも先ずは救けてくれた事に対するお礼をするべきと常識的に考えた。
「あ、あの。救けていただきありがとうございます。」
「いいよいいよ。仕事ついでのボランティアみたいなものだし。じゃあ何も見なかった事にして気をつけて帰ること。いいね?フリじゃないよ?あ、やべ。これフラグになるのかな?」
だが私はやはりこの口調といい声といいどうしても違和感が拭えなかったなので背を向けて去ろうとしている彼?に尋ねようとして一歩踏み出そうとした———とき、突風が吹いた
風のイタズラのド定番。女子高生のスカートがめくれる———ことは無かった。ちゃんと鞄を持っている手を含めて両手で押さえてる。
だがめくれてしまったのはその深いフードがついている外套で———
「———あ」
目が合った。バッチリ。その顔にはまだ見慣れないが、確かに知っている顔だった。クラスメイトの 源 終の顔が目の前にあった。
そして数秒だが長く感じる時間の後、
「———見なかったことにってできます?」
「無理でしょ」
性に合わず即ツコッミをすることになった。




