追憶その0
ここにいるのは私ともう一つの"人格"のみ。
私は今、不可思議な存在と対話している。
「いいかい?重ね重ね言うけど、今から君に観せるのはここに連なるまでの全てだ。記憶という情報を直に頭にペーストするようなものだから、潰れそうになったら僕の方から無理矢理接続を切る。いいね?」
「心配してくれるのは有り難いけど、今は本当に一刻を争う事態だからそう簡単に倒れるような事にはしない。それに、これは私が絶対に知らなくちゃいけないことが詰まりに詰まっている。この"世界"とは何なのか。何をキッカケに彼は堕ちたのか。」
彼は優しかった。どこまで際限なくひたすらに。前向きで明るくて、座り込んだ私の手を温かい手で握って、文字通りその手で導いてくれた。そしてそれは私だけじゃ無かった。
でも私達は気付かなかった。気付いてあげられなかった。気付かずに甘え切っていた。いつからか彼の心に、信念に、願いに歪みが生まれて・・・・・いや、違う。その優しさこそが、仮初の強さこそが、彼の本当の歪み。
「とにかく早く始めよう。あの人達でさえ、彼を食い止めていられる時間は長くないって言っていた。」
「・・・・・分かった。だけど無理はしないで。君が倒れたら元も子もない。」
そうして、私は触れる。この世界の深淵である記憶に。
「第一章、『ネメシス』篇・後日談その1」
このシーンは最終盤のほうに繋がる予定です




