39.矮小な歪み
ジェス視点で進めたら頭が良く思い切りがある性格なうえ、それなりに強いほうなため展開が爆速になる。
乃亜視点で進めたら優し過ぎるあまり慎重になりすぎて展開が超ゆっくりになる。
ダブル主人公は使い分けがむずい。
「だぁークッソ。人が気持ちよく寝てる時に爆音鳴らしやがって。近所迷惑なんだよ」
「殺人未遂と近所迷惑をひとくくりにするなよ」
見るからに不機嫌そうなテオに、疲れを見せないジェスが冷静なツッコミを入れた。
テオはエレナに休めと厳命されていたものの、流石に状況が状況だ。王宮へ迫撃射撃が行われたという防衛上危機的な状況で沈黙を通すわけにはいかないとテオ本人から起きてきたらしい。
いかにもテオは自分をガサツな性格と思っていそうだが、とても律儀で情に語りかけるのも上手い。ルワンダやエレナとしてもテオの存在は大いに助かっているはずだろう。
「というか攻めて来ないのか。いくらジェスが被害を緩和させてくれたとはいえ、奴等の狙い通り王宮内の騒動を起こすのには成功している。成果としては十分だったはずだろ」
「本当は死者がでるところまでいきたかったか、何か不測の事態に陥ったか。何であれこの有り様で攻め入られると困るのはこっちの方だし甘んじて受け入れるとしよう」
ジェスの言う有り様とは、先の迫撃?で王宮全体が狼狽している状態のことだ。
あちこち多方面に対処するために走り続ける同じ服を着た兵隊さん(おそらくテオの部下)が周辺の状況把握・監視に行きたいものの、誰がわしらをまもるのじゃ、みたいな偉そうな人たちによる満場一致の身勝手に思われる発言が飛び交う。
これでも先程遠くに居たときに比べたら和らいでいる。
エレナとジェスが頑張ったから百人百種の罵声の叫び声で阿鼻叫喚がここまでなったのだ。
「……エレナ、テオ。ちょっとこっちに」
ジェスが二人を連れて大広間の端に移動し固まり、なにやら内密の相談事をしているそうだ。
私が一人にならないように横にいた奏波が話しかけてくれる。
「どうしたんでしょうね」
「良い話ではないっていうことしか分からないね」
三人とも真剣な表情をして話を進めている。判断が比較的早い三人なので円滑に事を進めるのだろう。
だから、何も出来ないことがもどかしい。
下手をするとこのまま、先程ジェスとエレナの二人で場を宥めた時のようにずっとお留守番をもらうだけになる。
「焦らなくても、どのみちお師匠様は私たちにも出番を作ろうとすると思いますよ」
そんな私の心情を的確に言い当てるかのような奏波の発言。
「面倒事を嫌う性格でしょうし、口約束とはいえそれを破って後で怒られるのは避けようとすると思いますよ」
「それはそうかもしれないけど……。なんか違うというか?」
無理矢理役目を与えられるのではなく、ジェスにちゃんと頼りにされるような役割が良いというか。
短く言ってしまえば見栄を張りたいのである。
「それと、ほら。このまま戦争とかになっちゃったらこの前の『奈落』の時みたいになるかもしれなくて」
「……あちらは考えものですよね。半分暴走気味でしたし」
ノスタジルに居たとき、ジェスは普通に友達として輪に入っているように見えた。目に映る誰とも仲睦まじかった。
でもこちらの『スティグマ』に来て、そういう仲間が居なくなった途端に変貌したような気がする。
見た目はそのまま、中身だけがかけ離れていくような。
「今更ですけど、宥め方でも考えておきます?」
「宥め方?」
以前奏波に、ジェスがまたその半暴走状態になったら一緒に逃げないかという話があったが、それは私から断っている。
だから別の方法という事なのだろう。
「乃亜があんなことやこんなことをして治まってくれたら一石二鳥じゃないですか」
「なんか色んな意味混ざってない!?話変わってるよね!?」
「私はただ頭を撫でてあげるくらいのことを考えていたんですけど。というかそっちの方の意味しか区切りとれないならそれはそれで問題じゃないですか?」
「うぐっ、」
そもそも「あんなことやこんなこと」なんて含みの言葉を奏波が使ったのが悪いけどこれは言い返すに困る。
それとその、『それ』を「治める」じゃなくて場を「収める」のほうの漢字を使うべきだ。
「何を想像したらそんなに赤くなるんですか」
「なんか奏波この手のいじり多いねぇ!」
「……それは困りますね。そういう役回りは望んでないんです」
望んでいないとしても奏波が始めたことだ。
なんとかして奏波にも同じような思いを味わらせてやりたいなと試行錯誤はしてきているが未だにこれというものに考え至らない。
「そっちはそっちで何か考え詰めてるところ悪いんだけど」
いつの間にかエレナとテオと話し終えたジェスがこちらに来ていた。
「お前たち、奏波は特にもう寝ろ。こういう荒事の後始末でやってもらうことなんて無いし、不用意に人の醜い様を見せたくない。これから色々裏で舵取りするにしても避けられないしな」
そもそも私たちは夕方頃にリフトに乗ったあと、夜闇に紛れるかたちで王宮に来ているのだ。つまり今の時刻は体感で朝の三時といったところである。
私は倒れた後に昼頃まで寝こけていたのでまだ余裕だが、その私に付きっきりで看病してくれていたらしい奏波はそうもいかない。
ジェスが自身の寿命とか睡眠に関して色々と言っているが、未だヒトである奏波にはそんなこと関係ないはずだ。先程からたびたび薄目になっているのがその証拠である。
「それは分かりましたけど裏で舵取り、というのは?」
私としてもジェスたちが何をしようとしているのかを聞こうとしていたので同意見の質問となった。
ジェスの返答は、
「防衛戦から戦い方を切り替えて一挙に潰す」
一気に大荒れの方向に舵を切るものだった。
*****
「エレナ、テオ。ちょっとこっちに」
俺は乃亜と奏波をそっちのけで、重要な二人を呼んで部屋の端に連れる。
「エレナとテオの直感でいい。最長で一週間、人命無視でこの王宮と周辺街の占拠を躱し続けるには兵力はどの程度要る?」
「……まぁ全方位からってのを加えたら全体の六割ってとこだが、」
「まさか」
「これ以上無駄に消耗する前に、こちらから一気に攻め入るべきだと思う」
二人の察したとおりのことを確認のため一度口にはしておいた。
無茶を言っているのは承知だが、はっきり言ってこのまま守り続けても勝ち目は薄い。
「どうせ王宮と王都の貴族たちは消耗戦をしていればその内奴等が先に力尽きるとでも思ってるんだろうが、このままじゃその前に攻め切られて負けるだろ」
実際には貴族だけなら消耗戦に耐えられる。しかしその最中で搾取に遭う民間人の暴動も視野に入れなければならず、必ずそこまでに兵自身からの反感も含めた別の暴動も考えられる。
更にクロードたちの一派の戦力と物資が未だ増大傾向である以上、消耗戦の前提が崩れている。
「現実逃避して他責にしか注力出来ないカスに構って、いたづらにこれ以上戦力を削がれて数の利を活かせなくなるのが最悪だろ。これまではルワンダを人質にされていたから二人も攻撃一辺倒の手段を選ばなかったんだろうけど、それも解決済みな以上必要無い。懸念があるなら、可能なら気付かれずに奇襲のかたちで実行したいから連絡網とかは封じておきたいくらいか」
「当然っちゃ当然だが、やっぱり内通者は居る前提なんだな」
「というよりは今回の迫撃射撃で確実になったと思ってる。いくら深夜の闇に隠れているとはいえ射撃地点に到達して射撃準備を終えるまで見張りが誰も気付かないのは無理がある。王宮に報告が届かないような情報操作を行っていた輩が確実に居ると考えた」
「そちらに関してはわたしも同意見ですよ。既に情報通達で不自然な点を洗わせているところです」
あれ、俺置いてかれてね?とテオがボヤく。これは専門分野の違いなので当然のこと。
エレナに関しては流石だ。初対面から切れ者だという印象が強く在ったが、今はこの状況でも遺憾無くその能力を発揮する精神面を評価するべきだろう。
「それと先程のジェスの懸念についてですが、王宮・王都内と『奈落』を越えたすぐ周辺島の町からの漏洩阻止ならわたし個人でなんとか可能かもしれません。けれどそれより外などの道中まで行かれると難しいでしょう」
「いや十分凄過ぎて少し怖いんだけど」
申し訳ないみたいな言い方をしているが言っていることはあまりに常識外れだ。
王宮からの裏切りや謀反を僅かに遅らせるために敢えて挙げた懸念だったというのにこれではエレナ一人で万事解決してしまっている。
味方で良かったぁと心底思う。孤軍奮闘と百戦錬磨を兼ね備えるような一人より、こういう膨大な人員と情報を操れる一人のほうが余程怖い。相手からしてみれば倒すのが極めて困難になる。
「いや本当にこの人戦闘以外なら基本なんでも常識外れなことするから」
「言い過ぎですしそんなことを話す場ではないでしょう?」
「分かりましたー。じゃあエレナ先輩の話はいづれさせてもらうとして」
一瞬違和感を覚える呼び方だったが、もともとルワンダ、エレナの二人とテオの以前の関係は学園の先輩と後輩だと聞いているのでおかしい訳ではない。テオが面白いぞと俺に示すようにわざと昔の呼び方を俺の前でしてみせたのだ。
ご所望通り今度この番犬の成り立ちを当の本人であり、鋭い目を更に細め圧を掛けてくるテオに聞いてみよう。
「それに踏み切る危険性も、分かって言ってるんだよな?」
「分かって言ってる。半端な戦力は返り討ちになるだけで余計な消耗をかけて本末転倒。やるなら少数精鋭を全て賭けた敵陣を突破したうえで救援無しの一発勝負だ」
数の有利を完全にかなぐり捨てた策だ。危険度はこれまでテオたちが取ってきたであろうものと比較しても段違いに高い。
しかし、
「やるやらないは遅かれ早かれ、計画自体は既にあるんだろ?」
確信があった。
「お前言ってたよな?俺や奏波みたいな『権力にかからず自由に動ける戦力は猫の手でも引っ張り出さないと戦争になっても勝負が成り立たない』って。貴族連中が守れ守れとボヤくのを見越して立て篭もり戦になることは必至なのに、自由に動ける戦力を欲しがっていたのはそういうことだ」
「テオ。わたしが居ない間にそんなことを言っていたのですか?」
「……チッ。出し抜くつもりだったってのに、急に聡いのが増えちまったな」
やはりいつかはそうするつもりだったらしい。
そしてこの分だとルワンダにも黙っていそうだ。
理由など、脱走者扱いにされるであろう作戦に二人を巻き込まなかったと考えるのが妥当だろう。
「……国王直属第二部隊」
「……」
急に登場した部隊の名前に俺ははてなマークしか浮かばないが、何故かそれによりテオの立場が危うくなっている気がする。
エレナはテオにじりじりと詰め寄りながら謎の列挙を続ける。
「カルリラ卿が保有する特殊魔法官。メルコリア伯爵の衛兵騎士団。テストロ侯爵の斥候兵。レスター子爵子息率いる市民から徴兵された勇士団」
「待って待って待って怖い怖い怖い怖い」
テオが本格的に慌て始めている。
どれもこれも『スティグマ』に来日して直ぐの俺は知るはずもないであろう貴族たちの名と、それ等が抱える戦力を読み上げているようだ。
まさか、
「これ、テオが今まで独自に接触した団体を暗唱してるのか?」
「そうだよだから怖いんだよ!俺ってこんな四六時中監視されてた訳!?」
「わたし達に対して悪さをしないという信頼は変わらずありますけど、食堂のデザートを先輩から盗む手の掛かる後輩も今まさに健在でしょう?」
「ぐぉっ」
正に裏で手引きしていたことが全て網羅されてしまっている悪い後輩はそれを否定出来る訳なく大ダメージを負い呻き声が漏れる。
というかそんなエピソードがあるのか。ますます興味が湧いてきた。
「……はぁ。そうでしたね。俺がルワンダ様にしようとしていた嫌がらせが全てあなたに看破されていたのを思い出しますよ」
「王太子に故意で嫌がらせとかマジで何やってんだよお前……」
頭のどこのネジを抜いたらそんなトチ狂ったことが出来るのか純粋に知りたくなる。
「とにかく、わたしも一言目から否定に入ることは致しません。何度も言った憶えしかありませんが以後は事前申告を怠らないで下さい」
「はい」
完全に母に叱られる息子の構図だなこれ……。
真面目にテオが可哀想に見えてきたので話を戻して窮地から救い出す。
「で、テオが募れたのは結局どのくらいなんだ?」
「取り敢えずエレナ様が言ったところは全部協力を承諾してくれているところだが、それでも決行するには少なすぎる戦力だな」
戦力という言い回しは数と質の両方を含んだ使い方だろう。
これに加えてテオの部下たちも使えるとしても、か。
やるにしても戦力が足りないならどうしようもない。断念するか、先送りの策に──
「では残りはわたしのほうで集めましょうか」
「「え?」」
先程までこの作戦を棄却しようとしていたエレナが急に協力的になったのはもちろんのこと、連合国の方針に反するような大事を一人で解決させるといった。
「特別なことはしません。隠蔽出来ていると思い込んでいる悪事の証拠をぶら下げるだけですよ」
うふふふふ。と完全にやばい笑い方をしている。
元は自業自得だから擁護出来ないがこれから被害に遭う方々はお気の毒に。
「しかし条件付きでの協力で良いでしょうか?」
「条件?」
俺に提示できそうなものがすぐに思い浮かばず少々困惑する。
「わたしの目的はあくまでもクロードです。奇襲を仕掛けるのは一向に構いませんがわたしも連れて行ってください」
「もとよりそのつもりだったから要らない交渉だけどな。仰せつかりましたとは言っとくよ」
「あら。意外ですね。効率主義らしいあなたなら絶対に断ると思ってましたのに」
エレナの言う通り効率、確実性を高くするなら絶対に連れて行くわけにはいかない。
俺やテオが出払わなければならない以上、この王都王宮を帰還するまで保たせるのは絶対条件だ。敵を倒したとして帰る場所を失ってしまっては意味が無い。
そのためには末端の兵隊だけでなく貴族個人がそれぞれ抱える多数かつ質の良い人材を惜しみなく投入させなければならないのは必至。そうさせるための強制力としてエレナを残して行くのは必定と言える。
だからエレナを連れて行くことは一見難しいように見えるが解決法は考えてある。
『マナグラノス』でノスタジルのみんなと数え切れないほど反復している方法を使う。もっともこの世界において俺を信頼してくれる人なんて皆無だからルワンダとエレナの名を全力で拝借させてもらうことになるが。
話を戻して、今はエレナの心外な感想だ。
「大切な人に会いたい感情を邪魔するのは筋違いだと思った……。本音を言うとエレナに予期せぬ行動をされると面倒だからだけどな」
一瞬。飄々とした立ち姿に戻るまでの刹那。
ジェスが望んで、脅す為に晒した訳ではないと理解しながらも総毛が立つ。
エレナとテオがジェスの奥底で垣間見えたものは『幼さ』であり『憧景』だったはず。なのにその光無き目に映ったものは正気を疑い背筋を凍らせるような、引き戻すことなど不可能なまでに沈み尽くした『固執』。
戦慄する二人の態度は揺らがない。ただ、動揺は確かに生まれる。
「……ったく、どっちが本音なんだか」
冗談めいたことを言う、と喩えるには程度が低すぎる。
「失礼ですね。心配しなくても他者に迷惑がかかるような身勝手は慎みますよ」
その刹那を無かったかのように会話を繋げ留めた。
「はは。それもそうだな」
会ってまだ十時間も経っていないが、それだけでもエレナがいかに強かで傑出かを量るには十分だった。
隠し事が上手なことから未だ完全に信用しているわけではないとしても、誰かを想う時だけはそのような上っ面が剥がれたときに見えたものが本性なのだと信じたい。
だが行動を起こすにしても構想を実現させなければならない。
その為には先ず、就職しないといけない。
「それじゃあエレナを連れて行くにあたって、そのエレナに少し頼み事があるんだけど」
「? もちろん可能な限りはお力添え致しますけれど」
「俺の志望役職は『公認泥棒』。叶えてくれる?」
「……………はい?」
*****
「ということで、俺とルワンダとエレナとテオの準備が完了次第また再出発する。流石に数日から一週間はかける必要があるからお前たち二人は待機で」
「……待機の時間長すぎじゃない?」
待たされるから暇だと言っているのではない。
任せきりになる時間が長すぎることに対しての苦情だ。
「そうは言ってもお前たちに出来ることが本当に無いからな。この世界の政治に俺も関われはしないし、出来る限り不審な動きをして警戒されることは避けたい。この作戦は味方に気付かれないことも重要だし」
言っていることは理解出来るしそれが正解である事実を否定出来ないが、容易に呑み込めはしないのも確かなわけで。
「それよりお前たちは自分の身を案じろよ。勝手に安全地帯に居るから大丈夫なんてこと思ってそうだが、そもそもここは素性も知れない赤の他人と醜い欲望が集うような場所なんだ」
だから、自分の身だけ大事にし続けたから、誰もいない侘しさに沁みたから、こういう感情を持つようになっているというのに。
「前も言ったが適材適所だ。ここは休息ほぼ無しで働ける人に任せておきなさい!」
「都合の良い時にだけ使われろって?」
ああ……。自分でも認めたくなかったことを、私自身が言い争いの火種にしちゃったな。
「私たちはジェスが欲しがる時にだけ居ればいいのかな?何で自分だけが頑張っていればいいみたいに思ってるのかな?何でも出来るから助けられるから、ずっとそうしていれば良いんだって──」
ぶぉぉん、と重たいものが空を切るような音とともに轟音が響いた。
「へぇ、反応は良くなってんじゃん」
「奏波!?」
私の右に居たはずの奏波が、十メートルほど離れた左の壁に激突したときの音が先程の轟音の正体だった。
「う、ぐっ……。お師匠様、今のは本気でしたよね?」
「そんなわけないだろ。冗談を間に受けるなよ」
奏波が投げ飛ばされるまでの最中で何があったのか分からないが、良くないことがあったのは状況的に間違いない。
ジェスは『いつも通り』に平静の装い。変化は無いようにみえる。
轟音がキッカケで、遠くにいたはずなのに何事かと気にしたテオがこちらにやってくる。
「おい、ジェス──」
「ごめんテオ。こっちの問題だからさ、今だけは頼むよ」
邪魔をしないで欲しいとテオを離す。
「乃亜。相手を煽って焚き付けるのも説得のための一つの手だそれは分かる。だがな、気軽に他人の過去を身勝手な推察で決め付け、あまつさえそれを小馬鹿にするかのようにうえから目線で叱りつけるのは程々にしておいた方が身のためだ」
誰によってそうなることを危惧しているのか。
分かってしまう。
間違いなく、何かを踏み抜いてしまった。
「それといい加減にくどい。対等な『仲間』として信頼されていると思ってるなら勘違いも甚だしい。一度揉めて仲直りしたらそれで『仲間』?フィクションの見過ぎだって」
「え……?」
「……ああ、これも勘違いしないで欲しいが特段嫌ってるわけじゃないからな?手が掛かるとは思ってはいるが、そういう性格の奴も長い目で見れば必要だったりするから大事にしようとしてる。だからお前みたいな綺麗で純粋な奴にヒトの醜悪に触れさせたくないし知ってほしくもない」
本心だ、と最後に付け加えた。
「前約束通りエレナに連れてってもらえ。俺も少し頭を冷やしたいから」
「ま、待って何処に──」
「泥棒してくるわ」
「…………はい?」
ジェスはかなり理想的な優しさをしてると思います。
これは完全に地雷ぶち抜いた乃亜が悪い。




