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流離う世界に私は  作者: 眠井ネタイ
第二章『スティグマ』篇
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36.打ち明けて

一人称が被りやすくなってきたので少し修正を加えます。

乃亜(のあ) →「私」基本ため口

奏波(かなみ) →「私」いつも敬語

エレナ→「わたし」素、「わたくし」演技中


どうやらエレナは誰かしらを中継にして現国王とルワンダの面会時間を遅らせるように手配させているらしいが、あまり時間のかかることでもないらしい。

なにせ凄腕の内務卿とかで、『連合国』となって尚小競り合いが絶えない国内で一役買う欠かせない存在とのこと。

よって俺たち五人は応接間に取り残されている状態だ。


「それにしても本当に何も置かれてないんだな」

「貴族どもの常識は知らねぇが、そこの観葉植物程度で充分なんじゃないのか?」

「確かにアル──、あぁすまない。俺のおっかない悪魔師匠(種族だけは天使)もそういう風に使ってたな」


こんな感じでテオと雑談する程度しかすることがない。

こちらの『マナグラノス』の世界の話を少しし始めているところだ


「別の世界にはあんたより上がいるのか」

「いやぁ俺なんてまだまだ、少し盛ったとしても中の上くらいじゃないか?」

「別の世界怖ぇー」

「そうそう怖いんだよ。それ以外にもみんながみんな魔法を使えるからもう滅茶苦茶で、何度殺されかけたことか。

師匠に頭鷲掴みされて魔物の口の中に押し込まれたり、

今は仲間の人の蹴りで腕が焼き切れたり、

師匠に両手脚の骨を折られて湖の底に沈められたり、

師匠が使う地魔法で地割れに挟まれそうになったり、

師匠が使う氷結魔法で内蔵に至るまで凍傷にされたり、

師匠の」

「分かった!ジェスの師匠の話は聞いてる側が辛くなるからもういい!」


まだまだアルの虐めはここからが本番だったというのに止められてしまった。


「とはいえ、尊敬してるのは本当だ。『力』じゃなく極限まで鍛えた『技』に圧倒するのって素直にカッコいいなと思うものだろうし」

「鬼畜の師匠に対してもちゃんと尊敬の念はあるんだな」

「ここまで強くしてくれたことには感謝しかないからな。『やり方』はともかく」

「分かったから強調すんな。あー、そうだな、そういやそこの嬢ちゃんは大丈夫なのか?」


テオが苦々しい話から抜け出したかったのか無理矢理話題を変えた。その標的はさっきからテーブルに突っ伏している乃亜だ。


「乃亜ー。さっさと起きろー」

「お師匠様。そもそもの話はエレナさんが悪いようなので気にしなくていいですよ」

「奏波。思い出させないで」


エレナに詰め寄られて怖そうにしてた俺を守ろうとか思ってくれていたのかもしれないが、それで自爆しているのだから理解に苦しむ。

何を察したのか知らないがテオが質問を投げかける。


「ジェスは色恋沙汰に興味無いのかよ」


視界の端で乃亜がぴくりと反応する。どうやら気になることだったらしい。


「無いな。他人の恋沙汰を応援しようとは思うけど、自分自身のこととなるとな……」


視界の端で乃亜がずーんと思い雰囲気を纏い出したが、これが本音であるので仕方がないと諦めてもらいたい。


「そんなに重いもんじゃなくてもよ、こう……軽い気持ちでさらりと行けたりするだろ。顔は良いんだし」

「軽い気持ちでそういうこと望むのは相手に対して失礼だろ。それと俺は自分に対してイけてると思ったことは無い」


男で誰がモテるかを考えたら第一にクリフだろう。

俺だけの意見だけでは無く本当に周囲からのモテ度が高く裏でファンクラブが存在しているとアルに聞いたことがある。

そう言うアルはどうなのかと言うと顔は良いのだが性格が終わってるので顔で一目惚れする奴なら少数いるかもしれない。

クリフは警備に携わるので図らずとも民間人とコミュニケーションを取ることが多く加えてあの性格だ。あれはモテるに決まっている。

レザシー、ユラ、デルードは接触する人が少なく名前しか聞いたことが無いと答える人がほとんどだろう。


こんな話は捨て置いてだ。


「なぁ、急に真面目な話になってしまって悪いんだけどやっぱり気になってな」

「何だ?」

「権能(フォルトゥーナ)と言えば伝わるのか?」

「ああ。そっちの世界にもあるんだな」


やはりこちらの世界にも魔法と似て非なる力として権能(フォルトゥーナ)は存在しているらしい。

もしかするとルワンダとテオも俺たちがそれらの力を知らないかもしれないからその内とっておきとして使う予定だったのかもしれない。


「有無だけでいいんだけど、やっぱりテオやルワンダにエレナも持ってるのか?」

「エレナ様は持っていないらしいが俺とルワンダ様にはあるな。別に信頼される為とあらば詳細を明かしても良いんだが」

「こっちは全員が全面的に開示を拒ませてもらいたいから、そこは対等にさせてくれ」

「別に開示してとしても良いのではないですか?私のものとか言い換えれば物理攻撃の延長上のようなものですし」


奏波の言う通り《振動魔法(レゾナンス)》は確かにそのようなものだ。しかし、対策法は割とあり耐震の結界でも作ってしまえば完封されるかもしれない。

そして同様の考えはテオにもあるようだ。


「奏波や、そういうもの程種が分っちまえば対策が効くんだよ。時間がどれだけかかるかは分からないけどな」

「そうそう。だけど対策させないようにするための対策法もあるからそれが出来るまでは自分から開示するなよ」

「いや何だよ対策されないようにするための対策法って。俺も初めて聞いたんだが」


分かってはいたがテオもキョトン顔をしながら興味津々だ。

こちらに関しては教えても構わないだろう。どのみちいづれ到達するであろう技術だし。


「難しいことだが難しい話じゃない。権能(フォルトゥーナ)であれ魔法であれ、独自で沢山魔力回路を作るか一つの自信作を解析しようがないくらい複雑にするかの二択だな」

「そりゃあ俺たちには無理だわな」

「お師匠様もそういったものがあるんですよね?」

「あるぞ。こいつらは流石に解析して特殊な結界は創られないだろうという自負がある」


実際にこれらはアルにも明確な対策法を敷かれなかったものの、発動前を潰されるか発動後に避けられるかしてボコボコにされたけど。

ここではアルみたいな外れ値は除外させてもらいたい。あんなんチーターやん。


「というか今更なんだがジェスの弟子が奏波なわけで、乃亜は何なんだ?」

「あー、おとも?」


流石に消滅権能に関しては一切口外出来ない。俺の身をもって証明してしまったことだが、相手が使用した魔法に触れるだけで使用者の最大魔力量を減量させられるというのはあまりにも強すぎる。

対策を立てるとか以前に乃亜に警戒心(ヘイト)が向くことになるので本人の為にも絶対に黙秘だ。


「……おとも」

「なんで復唱した?前に友達ってことにしてるんだから間違っては無いだろ」

「いやなんかこう、添え物みたいにされてる感じが否めなくて」

「そうは言っても他には助っ人くらいしか言い方がないぞ。あ、それか初めましての奏波が言ってた『ジェス(俺)が侍らせてる女の子』で通すか?」

「飛躍させないで!」


乃亜が伏せたままそう言うと、ふいにテオと目が合った。これはおそらく同じことを考えている。


((『飛躍』ということは、いづれは通る道と言っているようなものでは?))


テオがこの話を盛り上げることに乗り気になってきているが、生憎俺にその気は全く無いので話を逸らす。


「白兵戦、魔法戦の最強っていう二人がどう強いのか。そこを少しでも知っておきたい」

「成程、それはあんたらにとっては大事だな。幸い革命派の連中が台頭するまでの俺の扱いは近衛騎士団の団長だったわけだから、貴族お抱えの強者たちが試すのに丁度良かった。そういうのもあってどっちとも一度だけ模擬戦の経験はある」


見せしめにされているとなるとますますこの世界の貴族に嫌悪感が帯びる。ルワンダやエレナという例外があったとしても、大多数がテオの言うカスに該当するわけだ。


「ふは、三人揃ってそうカリカリされるとこっちが困るから止めてくれ。立場は良いんだからプラスマイナスで見ればプラスな生活してるんだよ。特にジェスは変に力振るとかよしてくれよ?」

「だけど力がある奴が何も変えようとせずに、どうするんだよ」

「そういうことを言ってるんじゃない。たとえ手を下すとしても非道に手を染めれば悪徳者になる、そういう心配をしてんだよ」

「いや別に構わないけど」

「そういうのを止めてほしいって私はずっと言ってるんだから。ジェスが犠牲になれば片を着けることが出来ても、そのままで普通に生活出来ないから。私だけじゃなくて『ノスタジル』のみんなも」


……そういえばクリフも言ってたっけな。

『自分をもっと重んじるべきだ』と。


「善処しとく」

「それ破るときの前振りみたいたものじゃないですか?」


あーあー聞こえなーい。

こんなどうでもいいことに時間使ってまで説教もらってたまるか、という感情のもと話を戻させる。


「テオ」

「はいはい。先ずは白兵戦のほうから。とにかく速い。以上」

「解説が終わるのも速い」

「仕方がないだろ。開始一秒で昏倒させられたんだから」


もしかすると白兵戦の最強を誇る奴は化け物なのか。

この世界をちゃんと見ることが出来たわけではないが、先の死刑囚との一連の騒動と他配下の兵たちと比較してもテオは強い。

ぱっと見の見解でしかないが判断能力がずば抜けて良いので、白兵戦の最強との闘いのように基本性能で圧倒されない限りは最上の結果の叩き出せる。


「速さのタネは不明だな?」

「分からないな。『知ってそうな人』に聞いても、その人自身と接触を絶ってから身に付いたものかもしれないとしか」


タネが分からないのならその場手探りで見つけるしかないが、先ずはその初撃を凌がなければならない。

少々手がかかりそうな予感だ。


「魔法戦の最強のほうだが」

「名前はテオがさっき言ってたな。『ローテ・ノーブル』だったか」

「ああ。こっちは瞬殺されなかっただけマシかもしれないが、それでも凄まじいことに変わりはないぞ。最初のほうは俺の身体能力も加味して渡り合えたんだが、後半になるほど威力と射出速度が上がってきて押し負けたな。手読みなんかせずに最初から詰めていればもしかしたら勝てたかもしれない」


どうやらこちらは先程の人物と違いなんとかなるかもしれない、というのがテオの認識らしい。


(後半になるほど威力と射出速度の増加。中々良い情報だな)


おそらくローテ・ノーブルという者の実力の根源に近づくものになる。現状は先手必勝で潰すのが対策法だな。

可能なら俺がそのローテ・ノーブルに当たり、その後で白兵戦の最強と奏波が闘うところを横で観戦したい。

師匠としては弟子の実戦を横から観れるのは理想の展開だ。


というか、


「『勝てたかも』とか自分で言ってるが、それ本当ならかなり凄くないか?」

「だから前に言ったじゃねぇか。俺結構すごいんだって。負けた話しかしてないから伝わりづらいと思うが、この世界じゃ上澄みの自覚はあるんだぜ?」


知らない間にかなりビックな人物が仲間になっていたんだなと知れて良かった。信頼出来そうだし実力もあるなら文句無しだ。


「何気にルワンダはどんな感じなんだ?闘えるのか?」

「強いぞ。場合によっては俺も負ける」


言い方的にテオの方が強いは強いのだろうが、それでなおルワンダの強みを認めており条件次第では負けると評している。


「というかそれ以前に二人は主従よりは友人に近いよな?」

「まぁな。元を辿ればみすぼらしい家系の俺が実技試験だけで名門学園に入学しちまったのが発端で、そん中で汚いと罵られてきた後輩の俺にルワンダ様が構ってくれたのが馴れ初めだ」

「実技試験って要するに魔法を使うんだろ?それって魔法を広めたくない連合国の方針に反してないか?」

「建前だ建前。か弱い貴族を護る騎士は強いに越したことはないんだよ」


とんでもない贔屓だな。

法より我が身を優先しているような状態でよくこれまで国を保てていたものだ。


「それを俺はどうでもいいと慈悲の手を振り払って一匹狼を気取り感謝の一つ言わないクソ餓鬼だったが、その後貴族位のせいで昇進に伸び悩んでた俺にルワンダ様が声をかけて下さった結果として今のこの地位だ。最終的には久しぶりに再開した年上のご近所さんみたいになったな」

「王太子をご近所さんと言える度胸が一番凄いよ」


だがそれはこの二人の深い親交があるからこそ口に出せることなのだろう。前々からルワンダの横で貴族連中の愚痴は言いたい放題だったわけだしな。

テオが革命派に振り向かずにいるのも友人を優先したからというのも大きいかもしれない。革命と聞けば最終的に王様を徹底的に失脚させることが目的と誰もが考える。成功させてしまえば次期の王様になるであろうルワンダのただでは済まない結果になるはずだ。


今更だが革命派の動機は絶対に他にもある気がしている。

そう考え出したのはさっきの貴族ジジィの『下市民』という発言。加えて丁度良いことに『アイテール』連合国ときた。

偶然ではないと思ってしまうからテオに聞こうとしたが、この応接間の扉を誰かがノックする。直前まで足跡を立てずに来たらで誰かは分かりきっているのだが。


「気付けば随分と長々と話をしてたんだな。俺たち」

「エレナ様ー。ノックなんて要りやせんぜー」

「失礼します」


部屋に入るまでは相変わらず上品に、これこそが貴族と言うものだろうという威厳を持っている。

しかし扉を閉めた途端にため息を吐き固い雰囲気を解く。

この豹変とも言える変わり方が本当に凄い。


「テオ。わたしはルワンダの横に居るために体裁を取り繕う必要があるんですから、プライベートになるまでは普段同様に丁寧な敬語でお願いすると言っているでしょうに」

「へいへーい」


面倒くさそうだが叱られている自覚はあるみたいだし、これからは真面目に敬語を使いそうである。

構図的にテオの兄姉がルワンダとエレナと言われても納得してしまいそうだ。


「へぇ、エレナはこっちの素は基本表に出さないのか」

「本当に数少ない人の前だけですよ?昔から強制されることが多かった反動なのか、こうして秘密の顔を持つのは楽しいんです」


分かる。小学校にお菓子持ち込んで食べるのは格別に美味しいのと同じだ。


「ジェスはなんか違うのを想像してる気がする」

「気のせいだ」


似ているだろう。多分。


一度席を変えて座り直した。腰を据えて真面目な話をするなら物理的にも面と向うことは大切なので、こちらが乃亜を真ん中に、テーブルを挟んだあちら側はルワンダを真ん中に据えており俺とエレナが対面している。


先ず話したことはルワンダとテオのコンビには既に伝えてある俺たちは異邦人であるという事実と、少なくとも俺は『世界情勢の安定化』と『以後協力関係を持つ』という二つの目的の元こちらの『スティグマ』に訪れているということ。

そしてあとはここに来るまでの事実確認の擦り合わせとルワンダたちの方に協力することにした俺達の立場を伝える。


それと実質ルワンダを見殺しにしようとした事実を変える気は更々無かったため正直に話したものの、殺されそうな目を向けられてしまいかなり怖かった。

本当に怖い。アルには勝てないけど。

そこからはたぶん無意識のうちに早口に話していたせいでかなり早く経緯を伝え終えてしまう。


「それは大変でしたね。しかしそれでわたしたちがあなた達の手を借りるのは引け目を感じてしまうものです。我々が情けないから、完全に部外者の人たちの手すら欲しいと考えてしまう」

「負い目にされるのはこちらも不都合なものでな。この協定を担保に、全て解決した後でも協力関係を続けてくれればそれでいい。エレナは内務卿みたいなんだから『取引』か『契約』と考えてほしい」

「優しいのですね。わたしがあなたの立場ならここぞとばかりに自身を優位にするように動きますし……実際に実行することも可能でしょう?」


そのしとやかな反面、見透かすような怖れさを持つ眼は俺の素振りを見逃さない。

早々に、俺は今エレナなりの方法で試されている。

俺がルワンダとテオにしたように『信用出来る人物』かを。


「対等という名の、武力をチラつかせた脅しによる強制。その方が『マナグラノス』の人には善良人に見られて都合が良いもので」


横の乃亜に袖を引っ張られて止めろと言われてしまうが、残念ながら虚勢ではなく半分くらいは本気の側面もある。

当然、保険という意味合いでだ。


「……ふぅ。悪役演じが得意なのですね」

「だな。顔もキまってた」


エレナとテオの二人から好評ならば満足だ。作り顔はあまり自信が無かったので素直に嬉しい。

ついでにエレナの雰囲気が柔らかくなったことから、ある意味で信用できると見切りをつけてくれたらしい。


「それとエレナ様。変なくだりを入れるのはやめましょうや」


やはりエレナ個人にも何かしらの事情があるからこうして交渉の場を設けているのだ。しかしエレナ自身に躊躇いがあるようでまだ踏ん切りをつけられていないらしい。


「……これはわたし個人の、一感情に過ぎないものです。易々と口にして必要無い筈の苦労をかけさせるのは傍迷惑にも程があります」

「その『一感情』を押し殺させてしまう方が迷惑だよ」


乃亜がエレナの考えに反感を露わにする。




*****




「対等という名の、武力をチラつかせた脅しによる強制。その方が『マナグラノス』の人には善良人に見られて都合が良いもので」


私は慌てるようにジェスの袖を引っ張る。

なんでそんなことを言ってしまうのか。本心からそんなことを考えていることは絶対に無い。

何を言おうと、何をしようと、誰かを『下』に置くことをずっと嫌がっているように見えた。

だからこそ『強制』なんて言葉も綾であるはずなのに。


(なんで、そんな顔ができるの……?)


「……ふぅ。悪役演じが得意なのですね」

「だな。顔もキまってた」


そんなに、悪者になることに拘って、自分を堕とすの?


「それとエレナ様。変なくだりを入れるのはやめましょうや」

「……これはわたし個人の、一感情に過ぎないものです。易々と口にして必要無い筈の苦労をかけさせるのは傍迷惑にも程があります」

「その『一感情』を押し殺させてしまう方が迷惑だよ」


ジェスの言う『慣れ』も、エレナという人が言う『一感情』も。

そういう話は強いからとかではなくただ譲っているだけだ。


「そういうのを見ている人は、ちゃんと居る。誰かを優先して、自分を損なう『だけ』で誰かが救われたとしても、還るものは自己満足しかなくて、傍から見れば苦しんでるようにしか見えない」

「……ぁ、」


呻きか嘆きか、どちらとも言えないようで言えるような短すぎる声で目が覚めた。


「……と思いますです」

「敬語おかしくなってますよ」


奏波につっこまれた。なんだろう。以前奏波と話した時もそうだったけど、自分でも分からないくらい自我が遠のいて勝手に言葉を紡いでいる。


「とはいえナイスだぜ乃亜。エレナ様、ここまで言ってくれたんですから応えてやらないわけにはいかないでしょう」

「……でも」


ルワンダがエレナの頭に手を置く。置くだけ。撫でない。優しく触れるだけ。

口元の包帯を外して、できる最大限ということか、微笑む。

始めてエレナの目が揺らいだように見えた。錯覚か、涙によるものか。エレナがさりげなく目を閉じてしまった今は確かめることが出来ない。


「……改めて見るとルワンダって顔良いよな」

「急に何言ってんの」


完全に緊張感をほぐすためだけのおふざけ発言にしか聞こえない。


(というか、その、……ジェスも負けてないし)


「今誰かに褒められた気がする」

「キノセイダヨ」


自分でも分かるくらい目の照準が合わず泳いでいる。

決して遊んでいるわけではなかったのだけれど、意を決したようなエレナを見ると直ぐに立ち直る。


「この連合国を覆しかねない程の、崩壊という『革命』という名目を掲げて始めた人物は表面上判明していませんが、発端の人物はわたしの中でほとんど確定してるんです。

それをずっと否定したくて、止めたくて、彷徨って、何も変えられませんでした。

この惨状はあの時告発しなかったわたしの責任です。

名前はクロード・アルヴァ・カーディス。わたしの──弟です。出来るならもう一度、会って話をさせて欲しいんです……」


それがエレナ・カーディスの告白だった。


本作でジェスが技術面の話でアルネーブをよく話題にしてますが、魔力操作関連の技量においては本当に天井クラスのキャラです。

強化イベあげなくても最強TOP10入りは確実かなぁ。

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