35.猿芝居
敵と味方の区別すらろくに判別することが出来ない俺たちが行き先への道順に従いながら歩くこと二時間あまり。そろそろ到着の頃合いとなっている。
しかしただ歩くだけというのはもったいないなと思い隊長殿さん──といつまでもしておくのも、これから協力する仲としてどうかと思ったので名前を教えてもらった。隊長殿さんもといテオ・ウィンシェルから可能な限りの情報を吐き出しながらの移動となっていた。
「魔法とか魔導具の扱いについてはどの程度扱っていい決まりなんだ?」
「原則として魔法の研究や研鑽を積むことも禁じられているし罰もあるが、貴族とかはそれはもう流れるように犯している。貴族の名柄を傷付けるよりもそのまま王家の手足として動いてくれてるほうが役得だとかでもう滅茶苦茶だな。はっはっは」
なんか闇の実情が語られたな。
家の格に任せたゴリ押しなのか。
確かに昨夜聞いた話でも魔法が使えるのは英才教育受けてるような貴族様が殆どらしいが、こういった無法状態も関係していたらしい。
「魔導具に関しては物的証拠で跡がつきやすいから王家が直接名指しするような者しか触っていないと聞いている」
「それじゃあ『奈落』に大量にあった魔導具はその者たちが革命派に裏切ってたことになるのか?」
「いや多分ノーブル家、あ悪い。魔法戦で最強の奴がいる家系が昔に魔導具作ってたみたいだから、法的に作れなくなっても知識だけは継がれてきてるようだからツテはそこだろうと考えている」
本当に滅茶苦茶だな。酷すぎるとしか言いようがない。
小学生でももう少しマシなことすると思う。
利益に走るあまり法律とか軒並みガン無視することが平常化している。
これは冗談抜きでそいつらの状態や敷いている制度の悪劣さによって連合国を滅ぼす立場になるかもしれないと本気で考える必要がある。
「あんたたちは不満じゃないのか?そんな状態の祖国に」
「不満は盛りだくさんだし貴族どももいい加減してほしいくらい鬱陶しいったらありゃしねぇ。あんなの殆ど自力を持たずに人を従えるクソだ」
「王太子の横でボロクソに愚痴るじゃねぇか」
ルワンダはまだ安静が必要なので喋っていないが、目の前で一人でに笑ったせいで勝手に顎を傷めている。何やってんだ。
「だがまぁ、ルワンダ様とか悪くない貴族もいるのは間違いないしそれだけじゃねぇしな。こんな諸事情に絡みもしない一般人はいたって普通に生きてる。俺たちだって同じように家族とか友達とか当たり前に居るしそいつらが生活出来る環境になってるなら許容範囲だ」
「少数派なんじゃないのか。そういう奴等は」
「んー。良くて半々といったところだな。とはいえ少なくとも俺の家族はあんたの言う少数派だからそっちを守ってやりてぇ。ザ自己中思考だろ」
「そういうわけでもないだろ。自分を蔑ろにして他人救う正義の味方は奴隷と変わらないと思うぞ」
「ハハ、言えてら。割と気が合うかもな俺たち」
「ふ。かもな」
正直すごく喋りやすい。こういう裏表無くスッキリしている人には気負いなく話せる。
「でもあんたはどちらかと言うと話すの苦手な部類だろ」
「おおぅ、ドンピシャ」
「え、そうなの?」
突如として始まった猥談に乃亜が興味あり気に入ってきた。
「嬢ちゃん。こういうのは何かしら義務感が無いと喋らないから構ってやりな」
「構ってちゃんじゃないんだよ」
「だけどこれ女苦手だから。頑張りな」
「さっきから絶妙に嫌なところバラすな」
「でも女の子に囲まれるほうが多い気も……」
「お?なんだハーレムか」
「言っとくが男友達のほうが若干多いからな」
本当のことだ。
クリフ以外の男面子はとにかく対面する時間が少ないから乃亜からみれば女友達のほうが多いと映ることは仕方がないだろう。
興味津々なテオが体を寄せてきてボソりと
「経験は?」
「無いからな!?」
このオッさん何急に下ネタに走ってんだよ。それも外見は青年の相手に向けて。
「生を見たことは?」
「………無いからな!?」
「おい待て何だその意味深な間は。真剣に詳しく聞かせてもらおうじゃないか」
「おい奏波!さっきから耳澄まして聞こうとしてんじゃねぇ!」
奏波を一喝した後、乃亜と奏波から離されて問い詰められた。
なおこの時にリフト上昇の時の仕返しと言わんばかりに他の面々も乗じてきたせいで洗いざらい吐かしてやろうという躍起に少しびびったが、負けじと応戦。
こうして俺の黒歴史は死守された。
*****
「くそっ。酷い目に遭った」
「本当に何を問い詰められてたの?」
「聞きたいですか?」
「おい奏波。本当に聞いてないんだろうな?」
「流石に本気で嫌がるなかで盗み聞きするほど嫌味な性格はしていませんよ」
嘘をついているようには見えないから安心して大丈夫だろう。
「てんやわんやありながらよく何とか帰ってこられたもんだ。あんたらは少し待ってろ。内情が陰険な今、ちゃんと正式な手順踏まないとどつかれちまうからな。行きやすよルワンダ様」
ルワンダは頷きついて行った。
連合国の王宮はそれはもう高く建てられている。
素人目でも外見重視で機能性を後回しに造っているのが分かってしまう。地魔法を駆使して土台を限界まで安定させようとしており、かつ『孤島』となっていることと『奈落』の魔力濃度の高さにより干渉しづらいことの二つが幸いし効果範囲が否応に絞られることで成立している。
全高八百メートルくらいだろうか。魔法が広く伝わっていれば遠くからドカンと上からドミノ式に壊されること間違い無しである。
そんなことをボーっと考えていると中のほうからドッと騒ぎが起きていることが丸分かりになる。
歓喜と罵声がそれぞれある台詞だ。
ルワンダの帰りを喜ぶか罵るか、はたまた怪我を心配するか鼻で笑うか。
「こんなことになるだろうとは思ってたけど。乃亜、一応言っとくけど『おかえりなさい』を言える善良民のほうが少ないからな。まさにあんな感じで」
「……うん」
「お師匠様。そういう煽りも今後は無しの方向でお願いしますよ」
「悪い悪い」
悪ふざけ感覚でこんなことを言うのは良くないことだと今更ながら自覚した。そもそもこの二人視点では俺の感覚のほうがイかれてるんだもんな。
「怪我人が出そうであれば止めれば良いんだよな?」
「え、……ありがと」
乃亜がぱちぱちと瞬きをしながらキョトン顔で俺を窺う。
「何で意外そうな顔されないといけないんだよ。ある程度はちゃんと協力するって約束しただろ」
これでも自分から切り出した約束を易々と破ることはしない。口約束であれやることなすこと責任が発生するのだから、それを反故にしてしまえば信用も助けも無くなる。
「これは変わりように驚いてるっていうか……」
「呆れて物申すのを諦めただけだ。ということで奏波頼んだ」
「本日飛び火二回目ですよ」
そういえば昼にもこんな話の振り方をしたなと思い出す。
「出力調節も修練の一環だ。常に全力を出しているせいで成せずにバテましたとか笑いものだから、ここは相手の力量に合わせた細かに出力を使い分けるということが──」
「要約すると面倒だから押し付けたということでいいですね?」
「話聞けや」
口で何と言おうと奏波の生真面目気質が変わることは無いので問題無く任せて良いだろう。
最中、中での声は更に大きくなる。
「王太子様に重傷を負わせた罪は思いぞウィンシェル」
「繰り返し申しております通り、我々共は既に負傷したルワンダ様を救出したのです」
「口では何とでも言えよう。無法地帯で起こることなど捏造は容易い。口封じをするかのような怪我は貴様らの仕業であろう?」
そういえばテオが言っていた。
俺たちはルワンダに救われた成り上がりなのだと。
さらに自分たちの家族は一般人とも言っていた。
つまりこのルワンダとテオが対面しているこの糞ジジィはそういった者共が気に食わないからどうにかして失脚させたいのだろう。利や損という結論をドブに捨て、感情だけで動くような能無しらしい嗜好だ。
しかし無駄に権力蓄えているだけに大きな反発の意思を露わにすることは許されない。
「真面目な話、どうする?このままだとテオを陥れようとする輩が増えていくばかりだが暴力沙汰にはならないぞ」
「静観は出来ないよね」
「かと言って部外者が介入すれば共犯をでっちあげられますよ」
俺も静観は可能ならしたくない。
気が合うのもあるが、それ以上に一気に国の内情を暴露出来るルワンダを手放したくない。しかし奏波が言うことも確かだ。
(……社交性とかはフィレーナから勉強中だし、そもそもこういう目立ち方は嫌いなんだけど)
やりたくないなどと言える状況ではいない。
俺は王宮の中へ、ルワンダとテオの下に向かう。
意図を読めない乃亜が静止を促す。
「待ってジェス」
「大丈夫だって。劇で盛り上げて来るだけだから」
乃亜の静止を振り切って二人の助太刀に入る。
当然だが王宮の玄関口には衛兵がいるが──このくらいなら《ゾーンロック》で動けなくさせられる。以前にも使用したがこれは本当に出力だけのゴリ押しで楽勝出来るときしか使わない。
これにより騒ぎも起きず、貴族群の中に割って入るまで誰にも気付かれずに侵入することが出来た。
テオが何やってんだお前という視線を向けたが黙殺し、俺は乗ってこいと視線を送る。
猿芝居の開演だ。
「見慣れぬ顔つきだな貴様。おい衛兵!何ゆえ賊を侵入させているのだ!」
「すみませーん。実はわたくし先日まで魔法の違法研究をさせられていた者でして、対象を『束縛』する魔法を開発したのです。証拠としてあちらの方々には皆様宛の被験体となっていただきました」
当然だが『束縛』すること自体が本質ではないが、ド素人目を欺くにはこのくらい雑でも問題無いと判断した。
貴族は俺を一瞥し笑みを深める。奏波の言う通りのことになりそうであり本当に単純だ。読み合いの「よ」の字も無い。
「ほう。ならば貴様がルワンダ様を拘束した共犯者であり──」
「しかしですね、この魔法には少々副次効果がありまして。『束縛』させたものは動かせないうえに外部から干渉出来ないのです。即ちこの魔法によりルワンダ様が無抵抗のまま暴行を加えられることはあり得ません」
異変を感じ取った他地点から現れた衛兵が、『束縛』された衛兵をどうやっても起こせないし動かせない。その光景はここにいる全員が目撃していた。
しかしこれだけなら『束縛』させた相手に縄をぐるぐる巻きにして拘束したあとに解除してしまえば結局は同じこと。そのくらいは直ぐに気付いて欲しいところだったがそうはならなかった。
「ならば下市民ごときの悪行を裁くまでよ。貴様はたった今、愚かにも己の罪状を述べたではないか」
「そういうわけにもいきますかね?あなた方が」
これは脅しではなく挑発だ。『束縛』そのものに攻撃的な性質が皆無であることは目の前で証明してしまっているため、これは恐怖を感じないこいつらへの取引。
私利私欲と自身の身の安全しか案じないこいつらにしか通らないであろうものを。
「先程申し上げました通りわたくしが行っていた魔法の違法研究はさせられたもの、強制労働と同義です。犯罪であることは重々承知でありますが帰り道中で逃亡中の我が身をこちらのお二人が拾ってもらい、有用性を見出してくれたのです」
テオにちらりと視線を送る。
俺が身寄りのない放浪者でありテオたちの立場で利用出来る存在であるという体で、適当に繋ぎを入れてくれればあとはこっちで丸め込んでみせる。
「ジェス氏が申した通りこの者の力は我々が制圧した際に実証済みであり、「ありがとうございます。後はこちらから」
生き証人がここにおり、俺を抑え込める人材としてテオが居る。その事実を周知させてもらえればまだ二人同時に扱われる。
「外敵からの接触、干渉を完全に防ぐ。『束縛』とは無関係ではありますが、現時点において対魔法の安全策として最有力ではないでしょうか?」
「この通り、相対しているローテ・ノーブルに対して防戦一方の状況を打破出来るキッカケになると考えここまで連行させました」
テオが俺の発言に付け加えるように出たローテ・ノーブルという名は始めて耳にしたが、そう言えば到着前に「ノーブル家は魔法戦最強がいる系譜」と聞いている。流れからその人が件の魔法戦最強の人物なのだと推察する。
さて、ここまでして返答がどうなるか。
「……そこの賊の有用性は評価してやろう。しかしその者を御すのがテオ・ウィンシェル。貴様である必要は無かろう。薄っぺらの功績を一つ増やした程度で裁きは変わらぬ」
呆れを通り越してもはや引くしかない。
餓鬼のねだりみたいにいちゃもん付けて何でも叶えろみたいなこの態度が気に食わない。
(こいつら革命派の連中に負けそうになってるんだよな?テオを排除する必要性がどこに)
「あなたがウィンシェル衛長殿を裁くことに、いったい何の利益があるのかしら?」
俺の疑念に被さるように澄んだ声色が響く。
内装からして階段を登り数メートル上の壇上から俺たちを見下すような場所に一人の女性が立つ。
煌びやかな銀髪に白金碧の瞳を持つ美麗な人であり、同時に威厳を持ち併せている。
「今、私共が置かれている状況すら理解出来ない程子供ではないでしょう?ハイス伯爵殿」
「こ、これはエレナ姫。如何様にこの場へ──」
「謁礼は要らないわ。貴殿は今、私の質問に答えることが最優先よ」
微笑み一つで場の空気が凍っているのが分かる。
緊張をほぐす笑みとは全く逆の意味を持つ圧を与えている。
「まさか何の理由も無しにウィンシェル衛長殿を、この王宮から排斥しようとした筈がないでしょう?もう一度聞かせてあげるからよーく聞いてちょうだいね。ウィンシェル衛長殿を裁くことに何の利益があるのかしら?」
「い、いえこれは……」
もはや縮こまったクソガキを大人気なく虐めているようにしか見えなくなったきた。
エレナという名の女性は、優しいように見えるだけの笑みを深め追い込む。
「それとも……他の方々が代弁して下さるのかしら?」
全てをこのジジィに押し付け、自分は事なかれ主義に徹そうとしていた他の面々たちに澱みが生まれる。
俺としてもテオを迫害するのに後ろ盾として加担していた者たちも同罪だから嫌っているが、今登場したばかりのこの女性はここまでの経緯を知らない筈だ。
まさかと思うが最初からこの惨状を想定して、言い逃れが出来ない状況と発言の言質を取ってから割って入るつもりで、始めからずっと騒動が聴こえる場所に待機していたのだろうか。
「……構いませんわ。あなた方の背後の根回しなど調べれば足をつけるのは簡単です。現時点においてウィンシェル衛長殿にかけられている冤罪を全て破棄。皆様はご自身の職務を全うする為、即刻解散なさい」
エレナならばいつでもお前たちを排斥することが可能である。そういう脅しを含めこの無駄な集まりを終わらせてみせた。
まわりを取り囲んでいた貴族連中が散らばり玄関口もといホールにゆとりが生まれる。この場を凌ぎ切れたことには素直に喜ぶべきなのだろうけど……。
(これって俺たちはどうなんの?)
この後に繋げて乃亜と奏波は協力者か同業者ということで俺と纏めて一括で逃れようとしていただけに、エレナという謎の女性による俺たちの扱いに今後を賭けられる状況になることに少し戸惑う。
エレナは階段を降り俺たちと同じ床の上で歩み寄る。
「ウィンシェル衛長殿。王太子陛下の奪還と護衛、誠にご苦労でした」
「勿体ない御言葉でございます」
テオの敬語口調は変わっていないが、先程までとは違う雰囲気がある。まるで笑いを堪えながら猿芝居の劇を演じることを楽しんでいるかのような感じだ。
「それと、このジェスと背後の二人は」
「そちらについても伺います。一先ず帰還された衛兵の方々は休まれて下さい。陛下と衛長殿、御三方は私めご案内致します」
奏波は内容を聞き取れていたのかもしれないが乃亜はその限りではないので、俺が二人を間引きこちらへ着いて来るように促す。
エレナに先導されるがまま城内を歩く。とにかく上へ上へと登る。
この間とてもではないが俺たちは雑談が出来る状況ではない。始めて訪れる場所への緊張とエレナという未知の存在があるからだが、要因としては後者によるものが大きい。
暫くすると応接間のような一室に案内され俺たちが皆部屋に入るとエレナが扉を閉めると突然ルワンダに詰め寄り……、ボディーブローをお見舞いした。
……えぇ?
ルワンダは急な鳩尾にクリーンヒットした攻撃に悶える。
「ちょ、エレナ様!心配だったのは分かりますけど一応怪我人なんすから──」
「ごめんなさいテオ。少し黙っててくれる?」
先程の威厳のある圧と打って変わり、こちらは美人ならではの圧という感じだった。ある意味こっちのほうが怖い。
「怪我は、大丈夫なの?」
只今絶賛暴行加えた人がそれを言うのかとも思ったが黙っておこう。
問いに応えようとするルワンダだが、口を動かせば当然痛みに悶えることになることを忘れて実行してしまう。結局は頷くことしか出来ないので俺が容体を口頭で教える。
「顔を複数回殴られたことによる骨折ですが、本人の希望で粗治療を実施させていただいたので安静にさせていれば明日には会話は成り立ちます」
「……失礼。ルワンダを助けてくれたことには感謝しますけれど、粗治療とはどの程度?」
「ひゅっ」
上品に笑いながらだがとにかく笑っているとは思えない程圧が強いのでびびって変な声が出た。こういった脅され方はされたことがない分耐性が無い。
「痛いのは承知の上で麻酔無しで割れた骨を繋ぎ合わせ、必要とあらば皮膚と筋肉を切って粉塵の骨を取り出しました。けれど希望通りやっただけなので責任追求はルワンダにしてもらいたいんです怖いです近付かないで」
さっきからどんどん近づいてきており今にも胸ぐら掴まれて引き摺り回されそうな予感すらあり息が詰まる。
その状況下で突如後ろから別の何者かに首根っこを掴まれ引っ張られた。背後に目を向けるとそれをしたのは乃亜だったが、何故か少し顔を顰めてエレナを睨んで一言。
「……近すぎ、です」
それにより何とも言えない空気感の中数秒が過ぎる。
ぼっ、と急に顔が赤くなった乃亜は雰囲気により部屋の隅っこに追いやられ奏波が横に据えられる。
何やってんだ。
エレナは冷静さを取り戻したのか俺から少し少し距離を置く。
「詳しい事情は後ほど聴き取りしますが先ずは、ありがとうございます」
ここに来てようやく普通のお姉さんといった雰囲気になって一安心した。貴族連中への脅しと先程の尋問を入れて三重人格なのかと疑ってしまうほどにころころと印象を変えている。
「こちらこそ、先程はテオを助けようとして力及ばずすみません」
「いやあんた本当に何で入って来たんだよ。俺としてもどうせエレナ様が助けてくれるだろうからって思ってたのに急展開だったから慌ててたんだぞ」
「こちらも予想外の来客で、少々入り方に迷いましたね」
「……俺が入らなくても結果は同じだったわけね」
なんか恥ずかしいな。勝手に猿芝居展開して意味の無い盛り上げをしただけじゃん。
とはいえ俺の能力をあの場の全員に誤認させることができたのは収穫と言えるかもしれない。万一内通者が居ても守り特化の能力と虚偽の情報が漏洩されるだけだ。
下手な探りを入れられる必要も無くなるだろうが警戒はしておかねば。
「それでは私は退室しますね。ルワンダの怪我具合により王陛下に面会を遅らせるよう遠回しに伝えてきます。御三方の説明と水入らずの話はその後に」
そう言ってエレナは出ていき、会話出来るのが俺とテオの二人だけになる。
「あの人は味方ってことで良いんだよな?さっきから一人称まで変わっててキャラ替わりが激しいんだけど」
「今のが素だ。名前とか素性はあの人に直接聞いてくれ。 」
知ってるなら教えてくれよとも思ったが、何かしら事情があるのだろうと察して呑み込んだ。
知らずにいたほうが良いこともある。というのは実際あると思うし、だからこそ禁忌魔法という括りが存在している。
しかしそれだけを理由にしていればそれは逃げているのと同じだとも思う。今回はエレナ自身の身分とかプライベートな部分を見受けたテオがその時まで内密にしておくべきだと判断したのだから、追求は不粋なのだろうけど。
……あの二人はもう少し積極的に攻め合って欲しかったな。
ジェスの黒歴史に関しては19話でちらっと登場してます。
ライト回がくればいつか詳細を明かすかも。




