34.問題視
これまで集団魔法という単語を使ってきましたが、今話から集束魔法にさせてください。こちらのほうが響きがかっこいいので。
その後、昨日取り決めた予定通りリフトに物資を運び終え次第"上"へ向かうことになる。
この人たちがそもそも"奈落"へ来たのはルワンダ救出がメインだったことに違いないが、この危険域に放置してあった魔導具らを輸送することも追加で行うらしい。
もっとも魔法や魔導具の研究も、使われる魔力量の一定ライン以上は法律で禁止されているなんたらでそれを破った魔導具の一部がここにあるらしい。
俺たちが"奈落"に来たばかりの当初はルワンダの護衛たちを正規兵とか呼んでおり、魔力濃度の高いこの場所ならば魔導具整作がしやすいから魔物や死刑囚をあらかた掃討しようとしていると考えていたが違ったようだ。
正確にはリフトと宿舎に関してはもし魔物が"上"に被害をもたらした時にそれらを直ぐに討伐出来るように設置されていたものではあるものの、そんなことは殆ど無く放置されていたよう。当たり前の話ではあるがそれが可能な魔物は飛んで来るため結局は"上"で応戦する。
それが次第に役目が消滅していったリフトに"革命派"が目を付けてここで違法の魔導具の製作をしたいたらしい。
そしてその一部を持ち運んでいる俺たちだが、これは言い換えれば押収品というわけだ。
一部とは言っているが元の総量を把握できていないのでこれが全てかもしれないし一割にも満たない量なのかもしれない。
ということで乃亜たちも呼んで直ぐに出発できるようにしてある。
「あんた本当になんでも出来るな」
「『マナグラノス』っていうこっちの世界では珍しい技術でもないからな」
昨日の騒動でリフトの一部が破損していたためそれの修理を途中から請け負っていたのだ。
なにせこれまた昨日の騒動の一件で技術職の人たちの死者負傷者が多かったようだ。魔導具の件もあるので戦闘員でない人を連れているのは仕方がないがなんとも不憫である。
人手も足りない知識も足りないとかでわぁわぁ言い合ってるところに俺が割って入った結果、割と簡単に解決出来そうな故障だったためそこから仕事を変えてたった今その修理を終えた。
なおジェスは珍しい技術でもないと言っており実際そうではあるのだが、非常に難しい技術であることに違いない。もはや工作とかそういうノリで身に付くものではなく、このレベルなら普通に魔導具店を開いて大儲け出来る。
しかしこれまた当人の自己肯定感の低さが災いしてそれに気付くことは無い。
修理と言っても特に難しいことではなかった。
リフト本体に刻まれている上へ押し上げるための風魔法陣の修復に加えて元の魔力回路の無駄を排斥し更に効率化させる。本当にそれで終わった。
その他の足場の補強などは任せたままにしてある。何せここに来たときより人数は減るであろうから心配をかける必要は無いだろう。
あとは物資の運搬作業に戻るだけだ。
この人たちの前で俺が使える数少ない魔法の系統を明かすわけにもいかず、全て力技で運んでいく。
両手それぞれに俺の体の十倍近いものを持って運んでいるときは周りからギョッとした目で見られてはいた。
「おい、あいつ大丈夫なのかよ」
小声で話しているようだが、近くであれば読唇術くらいは出来てしまうため視界に入るとどうしても読み取れてしまう。
「俺らが知るかよ。怖ぇのは分かるが」
「だけど不気味だよな。なんつぅかこう、命握られてるみたいな」
「実際昨日の見ただろ。いつでも俺たちを殺せる奴がのうのうとうろつかないでほしいぜ」
とはいえ今更陰口如きで気にすることもないのだけれど。
(そういえば前にレザシーのことで何か言った奴等は社会的に抹殺してやったかな)
詳しくは憶えていないがレザシーの種族偏見にまつわることで陰口叩いていた奴等をどうしても見逃せずに、適当な冤罪ふっかけて独房に叩き込んだことがあった。
俺やってることやばー。
そんなことを思い返しながら話し相手などおらず淡々と手伝いを続けていると、ルワンダ護衛の隊長からまた一声かかった。
「あんたが半分くらい運んじまったせいであらかた乗せ終わったぜ。適当なところで休んどいてくれや」
「俺まだ疲れてないから最後まで付き合うつもりだけど」
「……あんたも分かってんだろ。殆どがあんたのこたぁよく思っちゃいねぇんだ。かく言う俺もその内の一人ではあるんだが」
「おいおい」
今更不快になりはしないが言い切られるとこちらも反応に困るというものだ。
「いやなに、あんた相手には嘘八丁並べるよりか本音で話したほうが良さそうだしな。余計に詮索させることになるだけだろうし、どうせ自分に対する悪口は殆どダメージねぇんだろ。そんでもって誰かと比較してる。『あいつはこんなものじゃ無かった』とかな」
「……」
思ったよりも核心を突く言葉だった。
この隊長の人、口調が粗く敬語が下手くそだったりでろくでも無い人だろうと啖呵を切っていたが予想よりずっと目聡い。
「分かるぜそういうの。俺もよく友と比べるとかなんか特にそうだ。あいつならもっと上手くやれたんだろうなと考えちまう。革命派の奴が浮き彫りになるずっと前から搾取される日々で、その後も仲間は時折死ぬさ。それと昨日の騒動で死んだ医療班の女の子とか俺狙ってたんだけどなーははは」
「そういう空笑いも、部下やルワンダの前では見せられないものなのか?」
「そりゃそうだぜ。俺みたいな盛り上げ役で隊長にさせられたもんがわんわん泣いてみろ。その場の雰囲気最悪だ」
「盛り上げ役で隊長に任命されるのはどうなんだよ」
「いや大事だろ。盛り上げ役」
部下のモチベーション維持というのが大事と言われれば分かるが、そこに盛り上げ役という明確な役割は要らないだろうと思う。
「まぁ何はともあれ俺たちは助けられる側だ。そして立場上俺は鞭を持つことに否応言えねえ。だから頼むぜ。休んで来い」
「はっ、最初からそっちを言えばいいだろうに。分かりましたよ隊長さん。お勤めご苦労様です」
「はいはい。ありがとさん」
軽口を叩き合って言われた通り離れておく。
叱りつけるところを赤の他人に見せたくないという気持ちを蔑ろにする気は無い。
休め。とは言われたものの体力的には余裕であるため乃亜の様子を確認しに行く。やはり昨日の前触れ無く倒れたことは詳しく知っておくべきだろう。
宿舎の構造は憶えているためただ部屋に行くことに迷うことはなく、乃亜がいるであろう部屋の扉をノックする。
「乃亜ー。いるかー?」
返事は無い。
安静にしてろと言っておいたので大人しく与えられた自室に居ると勘違いしていたようだ。
「……奏波なしで、俺の言いつけを破るような奴じゃないよな」
*****
私はジェスと一悶着あった後、奏波に連れられて外にいる。
ずっと室内にこもって寝ていたので外の空気を吸いに行くのもいいでしょう。と言われたので。
「外の空気、なんて言っても崖に囲まれてるだけだから地味なんてものじゃないね」
「場所は、正直何処でも良かったのですけれど。声が届かないところのほうがいいかなと思いまして」
「え。これって密談なの?」
「綺麗に言えば内緒話。悪く言えば陰口です」
陰口。となると私の知る限りその対象になり得るのは。
「もしかしてだけど、ジェスのこと?」
「なんというか、危ないと思いませんか?」
「危ないって言われても……何が?」
本当に思い当たる節が無い。昨日から今日にかけての一悶着も元を辿れば私に原因があるので、ジェス本人が悪いことは……。そういえば一つだけ私はジェスに否定的に答えたものがありそれについてだろうと考えた。
「ジェスが一人で抱え込もうとしてる、とかあれのこと?」
「それじゃないですよ。躊躇が無さすぎるんです。人を殺すことに対して」
あ、と思わず声を漏らした。
「慣れてるとかそういう話じゃないんです。人の命に『必要』か『不必要』の価値を定めることがあまりにも早くて、冷たい」
分からざるを得なかった。
ルワンダさんを見殺しにする提案も然り。
死刑囚を皆殺しにして突き出そうとする提案も然り。
悩まずに即決していた。
「たとえ必要な犠牲だとしても、その正義はあまりにもいきすぎていると思うんです。だからこそ思い至った懸念なのですけれど……」
奏波が少し言葉に迷う。そもあまり見ない様子に私も少し戸惑いと焦りが同時に生まれる。
「確かアルネーブさんが言っていたでしょう?『もし他界で全滅の危機に瀕した際、何があろうと乃亜殿だけは必ず生還させるよう動きなさい』と。おそらくお師匠様はこれを言われるまでもなく自分でその判断を下そうとしていたと思います」
「あ……」
言われてみればそうだ。
人の命を『必要』か『不必要』の価値を定めることそのものに、ジェス自身の命をも天秤に乗せる可能性は高い。
これまでの行動と言動がそれを裏付ける。
「そしてなりよりそうなった際にそれを止める力が私たちに無いんです。私たちが死に瀕しないこと程度だからこそ私たちの言葉にも聞く耳を持っていますが、それもこの先どこまで通用するか分かりません」
奏波の言う通りジェスはその気になれば私を気絶させてでもそうするかもしれないし、現在進行形で弟子の奏波にそれを止められない。ジェスと奏波の実力差がどれほどなのかは私に分からないけれど、奏波本人が絶対に無理と言うのならそうなのだろう。
実際、ジェスは奏波に稽古をつけるとき未だ一度も魔法を使っていないらしい。
というか、
「ちょっと待って。その状況になったら奏波は……」
「それ聞きます?まぁ置いていかれて見殺しにされる、とかが良い落とし所じゃないですか?」
「そ、そんなの──」
「だから怖いんですよ。お師匠様と乃亜と私。現時点で一番利用価値が無いものを切り捨てることにも容赦しないはずです」
「けどそこまでジェスは」
「優しいほうだとは私も思ってますよ。そうでないとあれ程に仲間や友人に恵まれて慕われることもないでしょうし。だからこそ『もし』で本当に可能性の話です」
たとえあり得ないことだとしてもその可能性だけは忘れずにいてほしいと、そう言いたいのだ。
「……そうならないようにしないとね」
「いやそうなった時どう動くかを話し合いたかったのですけれど………。そうなってほしくないですか?」
「勿論」
当然だと即答しただけなのに奏波は可笑しそうに吹き出して笑った。
なんで今ので笑われなければいけないのだろうか。
「ふふ、すみません。面白いとかではなくて──嬉しいなと思っただけで。私はこれまで何かと他人に興味を持たない、というか持つ余裕が無かったので自業自得なんですが、こう、友人に何かを求められることが純粋に嬉しくてですね」
……らしくもなくそんなにニコニコ笑って言われると照れくさくていたたまれないのだけれど。
やはり私に限った話ではなく人はギャップに弱いのだと思う。
「……そうですね。弟子として頑張る理由が増えるのは良いことですよね」
「それはなんのこと?」
「内緒です。割と話し損な内容だったかもしれませんでしたけど、戻りましょうか」
ここに来たときと同様に私は奏波に連れられるがまま宿舎に戻った。
*****
空間魔法による感知、探知は曉圏のそれよりも遥かに立体的に捉える。
すなわち音を聴き取れずともこのまま読唇術を活用することは造作もなく、盗み聞きというよりは盗み読みというべきものを先程からしていた。
「やっぱ奏波はその辺は深読みするよな。知り始めると半端で終わらせない性格だし、何より直感で必要と不必要を正しく判別するからな」
これがたまにくる鋭い質問などが出てくる根本の能力だろう。
「乃亜は相変わらずとして、だな。やはり、」
奏波こそ、この先奏波を最も危惧すべきだろう。
戦闘センスによって俺に及ぼす危害の話ではない。
このまま乃亜に依存させると、いつか必ずつけが回る。
温もりと冷たさを。
理性と狂気を。
命の秤に乗せることを。
何も選び取れないまま死なせるなんてことにはさせない。
直ぐではないとしても、これからを見て考える必要があると判断した。
*****
程なくして乃亜と奏波が戻ってきた。
「おー帰ってきたか。仲良く連れション?」
「そもそも個室だけの女子トイレに一緒に行くこと自体に意味無いでしょうに。あとその辺嗅ぎ回すのは少し気持ち悪いですよ」
「男ノリ通じないのは良いとして棘しかない言葉選びやめて。リアルに結構クるから」
「真顔で言われると本気味あるね……」
本気も本気だ。これだから男手がほしいんだよ。
とはいえクリフをこっちに連れて来るわけにもいかないし、レザシーとデルードを引きずり出すのは至難の業だ。
ん?アルを忘れてないかって?悪魔はお呼びじゃないのよ。
「実際二人が何処に居たとかどうでもいいしな。乃亜が安静にする気があるならいいんだ。ところで熱は残ってるか?」
昨日奏波が乃亜を部屋に入れてから俺は一度も対面しておらず、乃亜の容体は常に奏波が口頭で伝えてくれていた。
警戒心からくるものなのか男を部屋に入れるべきではないという倫理観からくるものなのかは定かではないが。
「どうだろう。私自身は体温は平常だと思うけど、階段を降りる時とかは少し頭が痛いかな。脳が揺れる?ていうものだと思うけど」
「後遺症に関わる話ではなさそうだな。ちょっと触るぞ」
俺は乃亜の額に手を当てる。人間にあるべき体温かどうかくらいは手触りでなんとなく解る。
確かに平熱ではないけれど指先に当たるこめかみから脈が早いのが伺える。
「なんか脈早いけど、他は平常そうだな」
「……脈」
俺が少し屈んでいるせいで先程から十数秒程ずっと目が合っているがそのせいだとでも言いたいのだろうか。
しかし流石にそれでは理由が薄すぎるので考察から除外するべきだ。
「頭の痛みはとにかく衝撃を与えないままにしておくことを第一に考えるように。時間経過でゆっくり直していくしかない。だけどここまでの回復速度を見るに今晩くらいには違和感なく過ごせると思う。重ねて言うけど出立までは安静に」
「うん」
「それでお師匠様は外の手伝いをしに行ったのでは?」
「休めだってよ。客人にだけ任せてたら面目潰れだそうだ」
後半は嘘だ。
あの隊長さんは責任持って陰で職務を全うしているのだ。その心意気に水を差す軽率なことはしてはいけない。こういったまとまりを維持する為の些事は人知れずするものだからこそ意味がある。
「というわけで暇な時間を活用しよう。乃亜は部屋で安静と繰り返し言っているが、余裕のある奏波は少しだけ修練を積もう。簡単な魔力操作を練習するだけだから派手さ無いけど」
「良いですね。私もそう言おうかなと思ってましたよ」
「え何?今日の奏波偽物?」
「突然人が変わったのを疑うような目を止めてください」
「強くなろうとする姿勢は素直に嬉しくはあるんだけど、契約上急ぐ理由はないわけだろ?」
もちろん奏波には才能があるし強くなってほしいとは思っているが、急成長は望んではいない。強くなる過程でどうせ寿命は伸びるのだし皆伝に何十年かかろうと問題はない。
成長が止まらなければ、だが。
「とにかく魔力操作は反復練習するしか上達法が無いから頑張ろう」
「それよりも魔法を教えてほしいのですけれど」
「駄目。今のままだと数発しか撃てないのに弱いという諸刃の剣以下に成り下がる」
「そこまで言います?」
「たぶん奏波が使う一つの魔法で使う魔力と、ズル有りの俺が百の魔法で使う魔力が同じくらいになる」
「ズルって魔導具とか?」
「流石にそんなせこい比較の仕方はしねぇよ。己の身一つでの話だ」
なおズルとは空間魔法のことだ。まだ奏波に対策されたくないからネタは話せないけど。
「とにかく魔力量が増えることと、曉圏の維持が及第点を越えるまでは絶対駄目だ」
「……はぁ」
「溜め息隠せよ」
まぁ良いけど。
この方針は俺がアルの弟子になって成長したからこそ考えているものだ。
あの頃は全てが中途半端な技量だったため何から手をつけて良いか分からず大変だった。やはり基礎固めをしなければ魔法は扱いづらいのだ。
あとはひたすら曉圏を展開させて時間潰しついでの修行をしていった。
*****
ということで、奏波の魔力の回復速度を計算してほどほどで切り上げている。
戦闘時に万全の態勢でいてもらわねば実地訓練の意味が無い。
ルワンダの護衛の人たちの一人が俺たちを呼びにくるタイミングも大方予測通りだったため、夕暮れ直前くらいで全員と物資全てをリフトに乗せ終えている。
「なんかこれ、怖くない?」
「乃亜は高いところは苦手でしたっけ」
「それは直近にバンジージャンプさせられたから少しは。それ以外にも、こう、予感?」
「事故るわけないだろ。俺も魔法陣を直すの手伝ったし」
「……本当にそれだけだよね?」
「本当にそれだけ」
何を疑っているのだろうか。
流石の俺も物をあえて壊しておくといった悪質な嫌がらせをする趣味は持ち合わせていない。
「今更だがどうやって動かすつもりなんだ?」
「元々このリフトの設置と共に操作魔導具も作られているからこれを動かせばいいとのことだ。実際俺たちが降りるときは正常に動いていたから安心してくれ」
なら心配する必要もないなと見切る。
物資の固定にも緩みは無いとみる。あとは端に立つ馬鹿がいなければ問題ないだろうと考えていた。
起動させる直前までは。
ぐわん、と体が下に置いていかれるような感覚に襲われる。
リフトが明らかに一般人を乗せられないレベルの速さで上昇した。
ここで漸く己の過ちに気付く。
「あ、やっべ」
と小声を漏らすと悲鳴上げて泣き出した乃亜とその他の驚愕と恐怖のダブルパンチで声が出せない人たちの代わりに奏波から野次が飛ぶ。
「ちょっとお師匠様!?今のどういうことですか!」
「リフトに刻まれてた魔法陣が損傷してたから直したうえに手を加えて上等なものにしたんだが、そりゃあ弄ったら駄目だわ。上手くいってた元から出力上がるんだから」
「やらかしてますね!?」
はいその通りですすみません全部俺が悪いです。
「大丈夫だって。これだけなら速いだけで誰も落ちないし死にはしないから。時短だ時短」
それから数分、命綱無しの直上ジェットコースターは続く。
*****
地上に到達した。
「よーし!ぐったりしてないで張り切っていこう!」
「「「「 元凶が言うな!!!」」」」
流そうとすれば落ち着いてきた全員からの視線が痛い。
嘔吐する者まで現れる始末なのだから本当に悪いことをしたと思っている。
俺以外で平気そうなのは奏波とルワンダと隊長さんの三人だけだ。
何気にルワンダも闘う意思と理由さえあればそれなりに強いのかもしれない。
「……確かに気分は最悪だが、数時間かかるはずの予定を大幅に短縮出来たことには違いないわな。動けねえ者は動ける者の肩借りて移動するぞ。残りは周辺見張っておけ」
「あ、周辺見張りとかは全面俺に任せていいぞ。探知は得意分野なんだ」
この程度の情報開示についてはルワンダも知るところなので問題はないし、俺が言わずともルワンダが提案していただろう。
傍から見れば探知出来る奴がインファイター型なのかと凸凹の能力構成だなとなるかもしれないな。
「それでどこに行くんだ?行き先の方角さえ教えてくれればいいんだけど」
「ここから北東にある島に王宮があるからそこに戻る」
ふむ。『島』と言っているがこうしてみるとなるほどしっくりくる。
図らずとも区切りになっている『奈落』によって地盤が断裂した結果としてそれぞれが孤島となっており、その間は頑丈そうな橋で繋がれている。魔法さえ無ければ唯一の出入口となるところだ。
「これ革命派の奴等が橋を落とすことは無いのか?」
「そもそも魔法を使える者がいる時点である程度の戦力は行き来が可能だから落とす理由が薄いし、今も革命派は勢力拡大中なのさ。だからこそ一般人の通り道を落としてしまっては取り込む手段が無くなっちまう」
成程。デメリットが出現することを承知の上でメリットを掴みにいっているわけだ。かなり長期的な視野で計画を立てていると見受けられる。
「それじゃルワンダの家に向けて、出発だな」
「お師匠様。先ずは素直に謝ったほうが賢明だと思いますよ」
「皆様誠に申し訳ございませんでした」
やはり流し通せなかったのでちゃんと謝ることになる。
しかし許せなかったのか確かに時短になること自体は有り難いのかやるせないといった雰囲気のまま出発した。
そしてやはり乃亜からはしこたま怒られたが微塵も怖いと思わなかった。




