19.師団長
今話で新キャラを結構出すんですが、種族などは今後の展開とかで決めさせてください。
戦い方とかは決めてるんですけど、申し訳ございません。
俺は宮殿に帰って、会議室に足を運んだ。
少し急に決め事をする必要が出来たからだ。
会議室の扉の前では給仕の女性が部屋から出て来ているところだった。
ご苦労様と一声かけてから、俺も会議室に入室してラグナに頼んで呼んでもらった人員が集まっているかを確認するためにサッと見渡した。
「全員来てるみたいだな。待たせてごめん」
「いえいえ、ジェス様だって時間前にお見えになっておりますのよ?」
「そして一々謝らないほうが良いかと。王ならば配下に対して下手に出るのは威厳的な問題が起きかねない」
「僕は今のままくらいが好感持てていいんですけどね」
「お前と同格と周りに見られるのが駄目だ、つってんだよ」
「まぁまぁ。喧嘩はよそうよぉ」
全員がそのあたりは間際えているので喧嘩が勃発することは無いだろうが、本当に暴れ出したらノスタジルが更地になるのでちゃんと御しておかねば。
「じゃあずっとここに拘束してる訳にもいかないから手短に。ラグナから既に知らされていると思うが、『ネメシス』と今後俺たちが渡った世界を安定させた後の戦力拡散についてだ」
ここれが議題である。例として現在では『ネメシス』の日本から奏波を連れて来ているため、今後魔物や魔人が現れた時に人々を守れなくなる可能性がある。
なのでひとまずはこのノスタジルから人手を派遣しておこうと思った。
「『ネメシス』に行く者に関してなんだが、悪いがユラに指名で頼みたい」
軍部の第五師団長を担ってもらっている人間のユラ・カイリだ。南北境界線の戦地で諜報員として派遣されていたが俺がつまみ出した結果、死よりはマシと従ってくれている。
「何故某が?ラグナ殿の説明では、あちらの住人の力量のレベルは低いと伺っております。故に出現する魔物も相当のものでは?」
「それは確かなんだが、問題なのは俺が倒した魔人の軍団のことだ」
「未だ残党が居る、と?」
「俺の予想でしかないんだが、残党で片すには懸念があるんだ。ユラの言う通り『ネメシス』は魔力が希薄なんだが、だからこそ魔人はそもそも何処から来ているのかという問題が残る」
「あの、僕が前に読んだ本で『ネメシス』にいた神命遡行奔軍 と呼ばれる大群勢が壊滅したことで終末戦争が終戦したみたいだったから、その生き残りがいたんじゃないですかね?」
終末戦争が終戦するのを皮切りに双方が仲裁された訳では無いらしいが、どちらも一時矛を収める形としているらしくその証拠に五千年という長い間では世界間の渡りを不可能にさせられている。
「俺もそれは考えたんだけどな、とてもじゃないがどれも五千年前の人物とは思えない。あんなに簡単に倒せるような存在では無い筈だ」
五千年も生きる程の奴がいるとすれば、明らかに寿命を超越した災害だ。相応の実力を持っているのは間違い無いのだ。
一方で俺が全滅させた例の魔人の軍にはそこまで苦戦を強いられる程のものは皆無だった。今思えばこちらを炙り出す一回限りの使い捨ての軍だった可能性も考えられる。
「『ネメシス』の一件には間違い無く未だ裏方が存在している。あれだけの数の魔人を従わせるだけの何かが居るとなれば一人であれそれ以上であれ、相当の戦力がバックボーンにいる可能性が高い。だからこそ放置は出来ないが、こちらの戦力を削がれてしまっては意味が無い」
「そこで逃げが強い某を指名したと。そういうことであればそれなりの者を百程度連れて行っても宜しいか?」
「あぁ、構わない。何か動きがあれば直ぐにこちらに一報を送れるようにしておいてくれ。準備が出来次第俺が引率して界渡りをしてもらう」
「委細承知。元より命令であれば実行するのみ」
カッコよく頼りある台詞と共に承諾をもらった。
追加すれば、元から人間のユラが社会に溶け込みやすく見つかっても違和感が無いからだ。
「なぁ、まさかと思うが一世界毎にこの国の戦力を分散しようとしてるのか?」
この発言者は第四師団長シグ・トレイシスだ。
「当面の間はそう考えてもらっていい」
「いやいや、冗談じゃないぞ。一生この世界に帰れずなんてまっぴらごめんだからな」
「シグさんの発言に付け加えますけど、仲裁に使う戦力が減るとこの国の前提が崩れませんかね?」
第三師団長のレサジーが同意する形で申立てを重ねる。
そしてレザシーの言う通り、この国はそもそも南北における領土簒奪戦争の仲裁をしているのだ。
「そこに関しては、この辺りが落ち着いてから南北の戦力を同程度に各世界に遣わすことによって帳尻を合わせてくれるらしい。うちも一定周期で回していくつもりだから気をかけさせるつもりは無い」
そういうことなら、と二人とも了解してくれた。
「だから近い内にも大移動出来るようにシグとレサジーは各軍の統制をしておいてくれ。その世界に居る者や敵との相性とかでランダムに選ぶからそのつもりでいるように。代わってラグナのところの人員を入れ替わりで当ててれるように準備してくれ」
「はぁい」
「そしてこっからが皆を集めた本題なんだけど」
ここまでの話ならユラの派遣を含めて個人に会いに行くか仲介役を誰かに頼めばこと済むものばかりだった。
しかしこれだけは可能な限り内密にしておきたい。
「俺が異界に行く期間においてノスタジルのあれこれを全面的にアルに任せることになるんだが、その間は間違い無く戦地にいる人達からの報告が遅くなる。だからラグナとフィレーナには最高指揮権を与えるからノスタジルから東西に広がってもらう」
「確かに、わたくし達の王様がそもそも世界に存在してないなんて広まったら大問題ですわね」
この語尾が特徴的で、苦笑しながら反応したのが第ニ師団長のフィレーナだ。
「念の為に確認したが流石のアルも数百キロ先を確認するのは無理みたいだからな。現場監督が各々で即対処して欲しいんだ。あと俺が不在になることは兵の皆んなにも内密にしておいてくれ」
「承知しました」
「まぁ、相互に戦争は順調に緩和させていってくれてるらしいから本当に何もすることなく終わる可能性もあるんだけどな。一応他に言っておきたいことがあるとかがあったりしたら──」
「はぁい!あーしからぁ。『ネメシス』から乃亜ちゃんと奏波ちゃんっていう子たちが来てるから仲良くしてあげてねぇ」
「あぁ、あれか。そういやいっぺん見かけたことはあったな。異界から連れてくる程なら強いのか?」
「今のところ、奏波はぼちぼちで乃亜は論外だな」
「なんだ、面白くない」
「近い内にはシグを超えると思うから楽しみにしてくれ」
へぇ、と期待をそそらせた殺気ある表情をしていた。
「じゃあ俺はまた他の部署に行くから、早いが解散だ。ユラは準備が出来たら声かけてくれ」
「御意」
俺は時間が押しているので小走りで宮殿を出た。
*****
ジェスが部屋を出ていったことで残されたのは当然五人となった。
「それにしてもアルネーブの野郎が言ってたあれ、本当にあるのか?」
「某も特には。以前と遜色無いように見る」
「ですね。それよりも宮殿地下のほうはちゃんと厳重に出来てますよね?いくら言葉巧みにしていてもあそこが見たかったら意味無いわけだし」
「アルネーブ様が妨害工作をしているみたいですし、知識として知らなければ大丈夫かと思います。あのままでもラグナさん以外よりは強いとは言われていますが『お前達が何もしなければバレない』と大見得を切る程ですわよ」
「ったく。こんなことやって、意味あんのかよ?」
「あるんじゃないかなぁ。一応あーしは前に一回勝ちかけてた訳だからぁ」
「それ、あたしも死にかけたんだからな?あと三歩前にいたら消し炭も残らないところだったんだぞ」
「あはは。ごめんねぇ」
その発言に全員がこう思った。「笑い事では無い」と。
もはや世界中が周知のことではあるが、ジェスとラグナは過去に一度激闘を繰り広げている。
その際の被害で出来た運河が現在では南北を隔てる境界線のような役割を果たしている。
もし角度が違えば南北のどちらか、或いはその両方に甚大な被害をもたらしていた可能性がある。そうなれば間違いなくノスタジルが認められることはなかった。
「自重はして下さいね。この前も勢い余って訓練所の防壁を壊していたのでしょう?」
「あ、あれぇ?その場で直したからバレて無い筈なのにぃ」
「加減の悪さに関しては有名になってますのよ。貴女の外見にホイホイ釣られて入団してくる人が多いとのことですけど、逆に辛すぎて退団する人も一番多いみたいじゃなくて?」
「むうぅ。手加減するのが苦手なんだよねぇ。あーしはあまり訓練とか修行とかしたことが無いからかなぁ」
昔からラグナは生来の力が強いせいか、あまり技術にこだわることがなかった。だが自分よりも格下だった筈のジェスに負けてからは細かい制御や小細工などにも気を使うようになった結果、今ではノスタジルの国軍の総力より強くなった。
ラグナの狭い交友間で今のラグナを相手にして勝負になるのは、全力を出した時のジェスとアルネーブとアポクリフの三名だけだ。
だがアルネーブとアポクリフの二名は実力の底を見たことが無いため断定は出来ないが、なんとなく勘で勝てないとは思っている。未だに得体のしれない二人だ。
ジェスもアルネーブの言うところの"仕上げ"が終われば恐らく勝つのは難しくなってくることだろう。
「では某はこの辺りで暇させてもらう。先程ジェス殿に頼まれた要件もあるのでな」
「と言われても、つまらないことに今日のところは予定が無いからな。何も無いのはあたしと買い物でもしないか?」
「あーしは付き合うよ」
「わたくしもご一緒しても?」
「僕は遠慮しておきます。自宅で蜘蛛の観察がしたいので」
「蜘蛛好きって気味悪いよな」
「それ聞くのは十回目ですね。喧嘩を売られるのなら買いますよ?」
「良いぜ。売る売る」
「こらぁ。そういう時は私が責任持って対処しろぉ、とか言われちゃうんだぞぉ」
「そうですよ二人とも。ラグナさんに責任を負わせるようなことは止めなさい。メッ、ですわよ」
フィレーナが喧嘩を始めようとしていたレザシーとシグの頭を小突いて未然に防がれた。
流石に二人も本気でおっ始めるつもりは無かった。
ラグナの言う「責任」とは即ち喧嘩両成敗のことである。どちらも戦闘が好きではあるものの、勝てないことが決まっている勝負をけしかける程の異常者では無い。
「じゃああたし達の三人で行こうぜ。何処に行くよ?」
「仕立て屋にとかどうかしら?最近で北の商人から上質なものが入ったらしいわよ」
「良いねぇ。あーしもパジャマとか買いたいんだぁ」
「ラグナさん。前々から聞こうと思ってたんですけど何着パジャマを持っておられて?」
「今は二十着くらいかなぁ」
「絶対そんなに要らないだろ」
「要るよぉ。その日の気分で着替えたいだもん」
「だとしてもでしょう?片付けるのが苦手なのにこれ以上やたらに物を増やしても良いことないですわよ」
「お母さ〜ん。手伝ってぇ」
「そんな泣き目で上目遣いしても駄目です。そもそもお母さんじゃありませんわ」
「しょうがないなぁ。じゃあ後で枕買いに行こおぉ」
「結局寝具なのは変わらないのな」
そしてこのいつも通りの女子会メンバーに今日から新たに二人を追加することになる。
*****
ジェスが丘を離れてから、疲れた私と奏波はやることも無かったため宮殿に帰ってくつろごうということになった。
私がこの辺りを散策するのはどうだろうとも言ったが今日はラグナちゃんがいないからやめておこうと奏波に助言され、「知らずにこの世界のルールに抵触する発言をしてしまったら面倒」ということでまだこちらの世界に詳しくない私達は大人しく帰宅しようということになったのだ。
幸い宮殿はそこらの建造物よりもずっと大きいため方向を見失うことは無かった。
着ている衣服とかが目新しいのか道中の人から横目で見られることがあれ、何事もなく宮殿に戻れそうだったところで、ラグナちゃんと他二人の女性の影が見えた。
少し遠いが声をかけようとしたところで奏波が私の脇の下に腕を入れ込んできた。
「おぉ二人とも。まだこんなところいたのか?」
「毎度毎度、後ろから忍び寄るのやめてもらえませんか?いい加減乃亜の介護を一々するのに疲れてきましたよ」
盛大に倒れそうになっていた私を奏波が事前に支えられるようにしてくれていたのだ。
ジェスには驚くようなことはやめてもらいたい。
「あれから暇してるんならラグナ達と遊んできたらどうだ?フィレーナとシグも仲良くしてくれるだろうし。悪いけど俺はこれから南北境界線の前線基地まで行かないといけないから時間が無いんだよ」
「なんかぷらぷら遊び回ってるのが申し訳なくなってくるね」
「ハハ、そのくらい良いんだって。束の間の楽しみと思っておいてくれ」
束の間とか不穏な意味合いに聞こえる言葉を口にする。でもまた別の世界に行こうという話なら少しくらいはこの甘い思いを受け入れても良いかもしれない。
「俺も明日からは仕事が帳消しになるように色々出回ってるんだ。明日からはみっちり修練に付き合えるからお楽しみに」
「王様が仕事しない状態なんて大丈夫なんですか?それとも詐称がバレましたか?」
「なんで未だにそれを引きずってんだよ。まぁいいや。とにかく今日は確実に帰れないし、もしかしたら次会うのが昼過ぎになる可能性も出てきたんだ。だから金は渡しとかないとなと思って来たんだよ。ほれ」
そう言ってジェスがジャラジャラ鳴る小包みを私に手渡し──手に起きそうなところで奏波に渡し変えた。
「ねぇ何?私が信用出来ないって言いたいの?」
「いや何か知らないけど飯代とかを乃亜に渡してはいけないという勘が働いた」
大変失礼な勘だ。何を根拠にそんなことを考えたのだろうか。
「念の為に聞きますけど、これ日本円でどどのくらいあります?」
「大体十万円くらいだ。全部経費みたいな物だから気兼ねなく使って良いぞ」
「さっきこれポケットから出してましたよね?」
「そりゃあ俺のポケットマネーだし」
「多いよ」
「王様のポケットマネーなんてウン千万入ってても受け入れられるもんだぞ。そもそもタダで宮殿住まいしてるのに今更多いとかどうとか言うタイミングは過ぎてると思うし」
ジェスの一見出鱈目な価値観にも端々に事実が混じっていたので受け入れるしかなかった。
ここにいたら元の世界にいたころの金銭感覚が失われていきそうだ。
「じゃあ俺はもう行くぞ。軽く四百キロは離れてるからな。移動で日暮れがくる」
それだけ言ってジェスがあまり見ないスピードで走り去っていった。恐らくこの国内で出すことが出来るギリギリのスピードなのだろう。
その頃奏波が横で小包みを振ってジャラジャラと大きく音立てて遊んでいた。
「札束であおいだりこういうことしてたら愉悦感に浸れていいですね」
「なんか凄い上から目線になってる気がする」
「元から物理的に上から目線してますけどね」
確かに実際に奏波は私よりも十センチくらい背が高い。僅かに見下されているが別になんてことはない普通の身長差だ。
「というかこれどう使うんです?銀貨と銅貨の単価なんて知りませんよ」
「それぇ、あーし達と使わなーい?」
だから毎度毎度背後から忍び寄って話しかけるのはやめていただきたい。
先程まで遠目で見える程の距離の開きがあったのに気付いたらラグナちゃんが間近にいた。
その後ろにもう二人の女性が後を追って歩いてきた。
「あーそうそう。さっきラグナが話してたジェスが連れてる二人がこいつらだよ」
「たしか乃亜さんと奏波さんでしたよね。どちらがどちらで?」
「私が乃亜で」
「奏波です」
名前だけを伝える軽い自己紹介だけ済ました。どうやらジェスかラグナから私達が異世界人だという事情は聞き及んでいるらしい。
「変に謙虚になさらなくてもいいのですよ。そもそもここは国といっても未だに都市拡張の時期なんです。八割は移民で構成されてるんですから、この場に慣れていない人なんて普通ですわ」
「だな。別に来る場所が違ってるだけで変なことはなんも無いし」
「ねぇねぇ、そのお金って経費なんだよねぇ?」
ラグナちゃん以外の二人には歓迎の言葉を貰えて安心した。ジェスの言う通り悪い人では無いようだ。
「あら失礼、自己紹介が送れましたわね。わたくし、ノスタジル国軍所属第二師団長のフィレーナと申します」
「あたしは第四のシグ・トレイシスだ」
フィレーナの方は少しお辞儀をしながら丁寧に。片や右に同じくといった感じで割愛して手短に名前を教えてくれた。
ジェスに「フィレーナとシグ」とは教えられていたが、こちらも同様にどちらがどっちなのかが分からなかったため助かった。
「皆雰囲気が硬いなぁ。せっかくだしこのまま五人でお出掛けしようよぉ」
「ラグナさんと違ってわたくし達は初対面なのですわ。少しくらいは打ち解ける時間というものが必要になります」
このフィレーナ、て人。もしかしたら私が今まで会った異世界の人の中で一番まともかもしれない。
シグもラグナちゃんを一度宥めようとしてくれている。
「大体ラグナは相当な給金もらってんだから経費にたかろうとするなよな。それはこいつらの金なんだから好きに使わせろよ」
「むうぅ。分かってますよーだぁ」
「お前らも嫌なら嫌って言えよ。じゃないとコイツ自由奔放に暴走しだすから。一応注意すれば聞く奴ではあるしな」
シグって人も凄く良い人だった。
正直言って第一印象は素行が校舎裏で金を捲し立てる悪いヤンキーみたいな感じだった為少し驚いている。
やはり見た目で判断するのは駄目ということだろう。
「おいコラ。そこの乃亜って奴は意外って顔してるが何だ?」
「ナ、ナニモカンガエテナイデスヨ」
「嘘下手だな、お前」
そういえば前にもジェスに同じことを指摘された覚えがある。そんなに分かりやすいのだろうか。
「あたしは闘うのが好きではあるが、弱ぇ奴から毟り取るような真似は好かねえ。闘る気のねぇ野郎から奪い取った物で楽しんでも面白くないからな」
要は達成感のことを言いたいのだ。大変な思いをして手に入れた物が輝いて見えるようなものだろう。
フィレーナもシグも人が良いのは会ってから短いこの時間で伝わった。
私と奏波の間にフィレーナが潜り込んで来て小声で話しかけてきた。
「シグは中々良い子でしょう?ああ見えて可愛い物が好きなのですわ」
「おい聞こえてんぞ」
「陰口を言っている訳ではないのですわ。わたくしはシグのことを二人に知ってもらおうと一生懸命なのですから」
「だとしても最初にそれを言うとあたしのイメージが崩れるだろーが」
シグが少し気恥ずかしくなったのか、ため息を吐きながら片手で顔を覆う。
しかし少し見える口元は口角が上がっていた。ジェスがよく見せる悪知恵を働かせている時の顔だ。
「フィレーナ、お前確か一年前くらいからアポクリフ随分とそういう目で見るようになったよな?」
「んな!?そこを指摘するのは違うでしょう!」
「何、ただお前の自己紹介を変わってやっただけだ。お前と同じように」
シグはニヤニヤと実にイイ笑顔をして同じことをしただけだと煽る。
アポクリフ。昨日何故か連行されて行った警備総監だ。ジェスとラグナが南北境界線を走り回ってたと言っていたあの時のことだろうか?
「奏波ちゃん。何か買いたい物あるなら一緒に行こうよぉ。丁度あーし達もお出掛けするところだったんだぁ」
「ならついでに貨幣の価値とか教えてもらって良いですか?買い方とかもまるで分からないので」
「よーし決まりぃ。早速皆で行くぞぉ。どこ行くのぉ?」
「普通『行くぞー』の前に言いません?それ」
「ラグナちゃん。昨日は遊んで食べてしかしてなかったからもう一度この辺りのこと教えてよ。フィレーナさんとシグさんの口喧嘩も少しかかりそうだしさ」
口喧嘩と言っても罵詈雑言をぶつけ合っている訳ではなく、仲の良い友人と文句や愚痴を伝え合うようや微笑ましいと言える範疇のものだ。
「昨日は食べて遊んで食べて食べて食べてだったでしょうに。何勝手にちゃんと遊んだ感じだしてるですか」
「そこは気にしなくていーの」
正直なところ今の時点で元の世界より友達が多いからずっと楽しい。周りを気にかけることが良い意味で減ったというか、人の目に映りたがらないような自虐心が着実に薄れている気がする。
この後は皆で歩き回ってこの世界の一般常識などを教えてもらいつつ満喫した。
第◯師団長というのは国への貢献度の指標であり明確な実力を表しているわけではありません。
仮に五人で一対一の強さで比べるとこうなります。
ラグナ>>>>>レザシー=シグ≧ユラ>フィレーナ
ラグナvs他全員でもラグナが勝ちます。結構圧倒的な開きがあるのです。
(2026.4.23編集内容)シグとユラがどちらも第四になっていたのでユラを第五にしました。




