第3話 テセルスから②
長い通路を抜け、大きな扉の前まで来ると、ウェズリーが脇のボタンへ手を伸ばした。
押した直後、扉の奥で何かが噛み合う。
ガチャン――
ウィィィ――ン――……
低い駆動音とともに、扉の上にある針が右からゆっくり左へ動き始める。
三人はその動きを目で追った。
「誰か射出された後でしょうか?」
アストラが胸元を少し緩めながら言う。
「上に昇降機があると言うことはそうだな。」
マーベリックは腕を組んだまま、動き続ける針を見上げる。
「最近頻繁ですね……。」
ウェズリーがわずかに顔を伏せた。
「ああ。東西南北……テセルスを中心に黒影が出没しているからな。」
「それに中型も多くなりました。」
ウィィィ――ン――……
ゴォン――ゴォン――ゴォン――
扉の向こうから振動が伝わり、足元へ低く響いてくる。
「今俺達ができることは迎撃することだけだ。だから今回のような霧払いの場所は何かあるかもしれん。」
ウェズリーはうなづくと、中指で眼鏡を押し上げた。
「黒の入口の出現場所を事前に察知できる手がかりが見つかれば……。」
「ああ。こちらから先手を打てるかもしれない。」
ビ――――!
高い音が通路に響く。
続いて、
ゴォォン――……
大きな振動が一度だけ伝わると、音が途切れた。
ガラガラガラ――
ジャラジャラジャラ――……
扉が左右へ開き、その奥の鉄格子も遅れて開いていく。
「さ、行こう。」
三人が中へ入り、ウェズリーがボタンを押す。
扉と鉄格子が閉じると、すぐに足元から振動が伝わり、昇降機が上へ動き始めた。
ウィィィ――ン――……
ゴォン――ゴォン――ゴォン――
低い音が絶えず響き、その合間を縫うように、
プシュ――……
等間隔で蒸気の抜ける音が聞こえる。
三人は扉の上へ目を向けたまま、左から右へゆっくり移っていく針を追った。
しばらく上昇を続け、塔の中腹を抜けたところで視界の先が開ける。
夕陽に赤く照らされた広い土地が眼下へ広がり、アストラはその景色へ顔を向けた。
「どうして……黒影なんて出るんでしょうね……。」
マーベリックも同じ方向へ視線を移す。
「俺にもそれはわからない……。」
少し間を置き、そのまま外を見ながら続けた。
「ただ、俺達にはそれに対抗する手段は持っている。」
アストラがマーベリックを見る。
「魔都テセルス……剣聖国イヴァルナ……唯一黒影に対抗できる都市と国家。」
「いつ、終わるかはわからない。だからこういう調査も重要なんだ。」
マーベリックが外から視線を戻し、二人を見る。
「ただ俺はこれは終わりがない戦いだとは思っていない。」
アストラとウェズリーが顔を上げる。
ビ――――……
ガラガラガラ――
そのまま昇降機が止まり、正面の扉が開いた。
マーベリックは左右へ手を伸ばし、二人の肩に置く。
「さぁ、行くぞ。」
そのまま二人の肩を前へ押した。




