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風は巡り、再び戻る。~風に導かれた出会い~  作者: 上条四季
第0部 テセルスに吹く風
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2/18

第2話 テセルスから①

2カ月前――


アストディア大陸の中央に位置する、魔法特化型都市。


魔都テセルス――


カツ――カツ――カツ――カツ――


暗い通路に、三人分の足音が一定の間隔で響いていく。


「今、現状として出現している黒影は5体です。」


青い魔道服を揺らしながら歩いていた女性が口を開くと、その横で赤い魔道服の茶髪の女性が顔を向けた。


「5体だけ?なら私一人でも十分じゃない?」


「私は現状として……と言ったよ?アストラ。」


ウェズリーが片手で眼鏡をくいっと押し上げる。


「増えるってこと?ウェズリーの霧でも探知できないんだ?」 


歩みを止めないままランプの下を抜けるたび、三人の影が床を長く伸びては後ろへ流れていく。


「黒の入口から出てないのはさすがに探知できないよ。」  


「それに……」


ウェズリーの声がわずかに落ちると、アストラが横から顔をのぞき込んだ。


「それに?」


「霧が通らない空間があるの。だから今回はマーベリックさんにも同行お願いしたの。」


二人は同時に足を止め、そのまま後ろへ振り返る。


少し離れて歩いていた男の足音が、ゆっくりと近づいてきた。


コツ――コツ――コツ――


「霧が通らないと言うことはそこに何かがあると言うことだ。」


声とともに男がランプの下へ入り、深青のローブと顎に蓄えた髭が光の中へ浮かぶ。


ウェズリーが小さくうなづいた。


「はい。マーベリックさんの言うとおり、その場所だけ霧払いを受けてます。」


マーベリックは歩みを緩めず、顎髭へ指を添えた。


「……あまり聞かない事例だからな。調べる必要がある。」


ウェズリーが隣のアストラへ視線を戻す。


「はい。何かの障壁があるような……霧がそこだけ入り込めない……そのような感じです。」


そのまま少し間を置き、アストラへ目を向ける。


「ですので、アストラ一人じゃなかなか……。」


アストラはその視線から逃れるように顔をそらした。


「うん……マーベリックさんいてくれたほうが……間違いない……。」


ウェズリーはふっと笑うと、そのまま先へ歩き出す。


「アストラは前回、調査してって言ったのに全力で――」


「ちょっ!ウェズリー!?」


アストラが慌てて言葉を重ね、そのまま隣へ追いつく。


「だって事実でしょ?」


歩みを止めないウェズリーへさらに身を寄せ、アストラが耳元まで顔を近づけた。


「マーベリックさんに聞こえちゃう……。」


すぐ後ろから声が返ってくる。


「アストラは魔力は高火力だ。制御しても……な?」


アストラの背筋がぴんと伸びた。


「はい……そうですね……。」


追いついたマーベリックが二人の横へ並ぶ。


「得意不得意は必ずある。だから今回は俺も行く。」


そのままアストラへ視線を向けた。


「ウェズリーが言っているのは調査を忘れていなかったか?……そこなんだ。」  


ウェズリーが横でうなづくと、アストラは視線を足元へ落とした。


「さ、行こう。」


マーベリックが二人の肩へぽんと手を置き、そのまま前へ促す。


「はい。」


重なった二人の声とともに、三人の足音が再び暗い通路の奥へ続いていった。

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