偽りの誓いと冷たい雨
ルカの最後の言葉が虚空に響き渡った直後、図書室の温かみのある色彩はゆっくりと色褪せ、次の惨劇へと飛び移る準備をするかのように、分厚い灰色の霧へと吸い込まれていった。
やがて記憶の投影は、学校のバスケットボール大会の決勝戦の夜へと切り替わった。コート内は観客の地鳴りのような大歓声と、サポーターたちの叩くドラムの音で凄まじい熱気に包まれていた。
ピーーーッ!!!
長いホイッスルが鳴り響き、彼らの学校のチームの勝利を告げた。決勝ポイントを決めて汗だくになったレンディが、突如としてコートを突き抜けて走り出した。
彼は抱きつこうとするチームメイトたちを無視し、アマラが座っている観覧席の真ん前でピタリと足を止めた。何百双もの視線が集まる中、レンディは手の中のバスケットボールをアマラに向けて放り投げ、彼女は反射的にそれをキャッチした。ボールの皮面には、太い黒の油性ペンでこう書かれていた。
『アマラ、バスケ部キャプテンの彼女になってくれない?』
コートの全方向から、一気に割れんばかりの黄色い歓声が湧き上がった。レンディの友人たちは下品に口笛を吹き鳴らし、他の女子生徒たちは嫉妬の悲鳴を上げた。
レンディは顔を上げ、激しく上がる息を整えながら、観覧席に向かって満面の笑みを浮かべた。
「どう、アマラ?! 図書室でずっと待つのも、もう限界なんだけど。返事してよ!」
彼が声高らかに叫ぶと、さらに大きな歓声が爆発した。
一瞬何が起きたか分からず呆然としたアマラは、腕の中のボールを見つめ、それからレンディに視線を向けた。彼女の顔は完全に真っ赤に染まっていた。
全校生徒の視線に晒される中、その少女はついに、恥ずかしそうに微笑みながら小さく頷いた。
「うん、いいよ!」
アマラは半分囁くように答えたが、その唇の動きだけで、レンディが満足げに拳を空へと突き上げるには十分だった。
その夜から、二人は正式に付き合い始め、学校で誰もが羨む一番の人気カップルとなった。世界はとても美しく、笑顔に満ち、まるで二人だけのもののようだった。
しかし、その美しさは永遠には続かなかった。ルカたちの周囲の記憶の投影が、突如として激しく揺れ動き始めた。
笑顔に満ちた勝利の夜の鮮やかな色彩はゆっくりと色褪せ、分厚い灰色の霧へと吸い込まれていく。
騒がしかった観客の歓声は次第に静まり返り、代わりにポツリポツリと降り始めた雨の音が響き渡った。時の歯車は、彼らをどんよりと曇った冷たい放課後の夕暮れへと引きずり込んだ。
場所は、あの伝説の学校の裏庭にあるイチョウの木の下だった。
「レンディ、私たち卒業しても、本当に他の人に目移りしたりしない?」
アマラはノートをきつく抱きしめながら、純粋な女子高生特有の恋する瞳でレンディを見つめ、訊ねた。若きレンディは愛おしそうにアマラの髪をくしゃくしゃとかき回し、彼女の肩を強く抱き寄せながら笑った。
「このイチョウの木の下での愛の誓いは神聖なものだよ、アマラ。この高校に、お前の代わりになれる女子なんて一人もいないさ。とにかく、卒業したらすぐにプロポーズして、幸せな小さな家庭を築こうな」「レンディ……」
アマラが呟いた。その声は突如として震え出し、底知れぬ恐怖を物語っていた。
「もし……もし私たち、卒業まで待てなかったら、どうする?」
レンディは眉をひそめ、顔から笑みが消え失せた。
「どういう意味だよ、アマラ? 待つに決まってるだろ、あと1年しかないんだから」
アマラは答える代わりに、ゆっくりと涙を溜めた目で彼を見上げた。そして激しく震える手で、レンディの温かい手のひらを掴んだ。
彼女はその男の手を下方へと導き、制服の白とグレーのスカートに包まれた、自身の平らなお腹へと触れさせた。レンディは困惑して硬直した。手のひらのすぐ下で、アマラが息を詰まらせ、不規則に脈打つ彼女の呼吸を感じ取ったからだ。
「アマラ? 一体何なんだよ? なんで俺の手をこんなところに置くんだ?」
アマラの目からついに涙が溢れ出し、彼女の頬を濡らした。彼女は最後の支えを求めるかのように、レンディの手の甲をぎゅっと握りしめた。
「レンディ……私、2ヶ月遅れてるの」
アマラは今にも消え入りそうな声で囁いた。
「今朝、妊娠検査薬で確かめたら……陽性反応の2本線が出たの。レンディ、私、妊娠してる……」
その刹那、レンディの顔から笑みが完全に消失した。アマラのお腹に触れていた彼の手は、まるで燃え盛る炭火に触れたかのように、反射的に手荒く引き剥がされた。
さっきまで温かさに満ちていたその瞳は、突如として野生的なパニックへと変わり、苛立ちと拒絶の念が混ざり合った。
いつも口にしていた甘い呼び名は、一瞬にして蒸発して消え去った。
「は、はぁ?! 妊娠?! ふざけるなよ、アマラ!」
レンディが怒鳴りつけた。その声は数オクターブ跳ね上がり、アマラは恐怖に身をすくませた。
「あり得ないだろ! お前の家が留守の時に、たった1回やっただけじゃねえか! なんで一発でできるんだよ?! 厄介事を持ち込むな、俺のバスケのキャリアは今が全盛期なんだぞ!」
「でも、これが現実なのよ、レンディ! 嘘なんか言ってない!」
アマラの涙がついに決壊した。彼女は再びレンディの腕を掴もうとしたが、その少年はまるでアマラが呪いの塊であるかのように一歩後ろに下がり、大慌てで距離を取った。
「怖いよ、レンディ……もしお互いの親に知られたらどうなるの? 学校はどうするのよ!?」
レンディは苛立ちのあまり、自らの髪をかきむしった。彼は顔を真っ赤に引きつらせながら、不機嫌そうにイチョウの木の下を行ったり来たりした。
「クソッ! なんでそんなに軽率なんだよ?! バスケ部の中で俺の評判が落ちたらどうすんだよ?! お前……お前、おろす努力とかしなかったのかよ?!」
「レンディ! この子は私たちの子供よ!!」
アマラは悲鳴を上げた。つい先ほどまで自分に素晴らしい未来を約束してくれていた男の口から、これほどまでに残虐な言葉が飛び出すとは信じられなかった。
レンディはその悲鳴に一切耳を貸さなかった。死ぬほどの恐怖に顔を真っ青に引きつらせたその少年は、後退りした後、くるりと背を向けると、イチョウの木の下にアマラを一人残して猛烈な勢いで走り去っていった。
男は責任から逃げ出し、恋人を崩れ落ちさせ、激しさを増し始めた雨の中、冷たいセメントの地面の上にへたり込ませたのだ。
その非道な光景を特等席で目撃し、姿の見えない4人の観客たちの周囲の空気も、一気に怒りで沸騰し始めた。
「クソが! マジで最低な男だな、あいつ!」
ラファの口から、容赦のない罵倒がそのまま飛び出した。その拳は骨が白く浮き出るほど強く握り締められ、呼吸は激しい怒りの衝動で荒くなっていた。
もし自分の体がルカを支えていなければ、ラファは即座に前に飛び出し、記憶の投影である過去のレンディを殴り殺していただろう。
「落ち着け、ラファ……またお前のオーラを暴走させるな」ルカが鋭く囁いた。
ルカの声は背中の激痛をこらえるせいでかすれていたが、その両眸はレンディが逃げ去った方向を冷酷な憎しみの光を宿して見つめていた。
「だが、お前の言う通りだ。あんなクズ、人間と呼ぶ価値すらねえ」
彼らの隣で、ハスナはすでに両手で口を覆っていた。お腹を抱えながらイチョウの木の下で一人むせび泣く少女時代のアマラの姿に、彼女の目から自然と涙が溢れ落ちた。
「レンディ……どうしてそんな酷いことができるのよ……」
ハスナは悲痛にしゃくり上げた。一人の女性として、そして教育者として、彼女の心は強く締め付けられていた。
「自分が手を出しておきながら、自分だけ逃げ出すなんて……。アマラはまだ高校生なのよ、一人でこれを背負わなきゃいけないなんて……」
「行動心理学の分析に基づくと」
シャビエルが言葉を挟んだ。その普段は抑揚のない声が、今は一段と低く、突き刺さるように響いていた。
固く噛み締められた彼の奥歯の裏には、抑えきれない嫌悪感が隠されていた。
「被験者レンディの利己主義は絶対的なものだ。彼は自身の保身と名誉を守るために、他者の未来を犠牲にした。極めて……反吐が出る行為だ」
ルカは苦々しく鼻で笑い、今は膝に顔をうずめ、凍てつくような放課後の夕闇の中で泣きじゃくっているアマラを見つめた。
「見たろ、ハスナ先生。これはまだ始まりに過ぎないんだ」
ルカが冷酷に囁くと、ハスナの鳥肌がゾワゾワと泡立った。
「あの男が今日犯した一つの卑怯な行動こそが、この模範生徒を、将来俺たちを殺しかけるほどの怨念に満ちた化け物へと変貌させる最初の引き金なんだよ」
ルカの言葉が終わったまさにその瞬間、彼らの周囲の記憶の投影が突如としてフリーズした。アマラの泣き叫ぶ声と、2017年の大地を打ち付ける激しい雨の音の真ん中で、世界が完全に静止したのだ。
底知れぬ漆黒の闇が彼らの足元からゆっくりと広がり始め、胸の奥に割り切れない問いを残したまま、辺りを包み込んでいった。




