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ごめん、うちのちびモンスターがパニック中(だから世話をしなきゃ)  作者: HASNA


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2年目の真実

クソガキ三人組への尋問を続けるつもりだったが、諦めざるを得なくなった。突如、ルカ、ラファ、シャビエルのズボンのポケットが、ほぼ同時に激しく震え出したからだ。


それぞれのスマホから鳴り響く着信音が、静寂を破る。昼間に学校でおきた毒ガステロの不穏な噂を聞きつけ、心配した親たちが何度も電話をかけてきていたのだ。


「うん、お母さん…セナは今、帰り道だよ。さっき校門の前がすごく渋滞してたから」


ルカは母親を安心させようと、できる限り優しい声で電話の向こうに語りかけた。ラファは重いため息をつきながら父親からの通話を切り、シャビエルは姉からの通話が切れたことを示すスマホの画面に目を落とした。


「もうかなり遅い。帰るぞ」


ラファは目の前にいる三人の子供たちに視線を移し、ぶっきらぼうに言った。

「帰る」「バイバイ」という言葉を耳にした瞬間、クソガキ三人組はあからさまに大騒ぎし始めた。


レイチェルはまたルカのジャケットの裾を掴み、今度は目に涙を浮かべて泣きそうになりながら、子供特有のわがままを言った。


「嫌だ!イケメンお兄ちゃん、帰っちゃダメ!レイチェル、まだかくれんぼしたい!」


「おい、チェル!俺のジャケットが伸びちゃうだろ!」


ルカは抗議しながらも、ウルウルしたその瞳に見つめられて少し心が揺らぎ、必死に引き剥がそうとした。


(大げさすぎるだろ、このガキ。他のラノベなら、重要キャラとの別れには悲しいBGMでも流れるってのに、俺の場合はボタンが全部ぶっ飛ぶレベルで服を引っ張られてるだけじゃねえか)


ルカは心の中で己の不運を嘆いた。足元では、アキャスが再びラファの太ももにしがみつき、顔を思いっきりしかめていた。


「こわいおにーたん、いっちゃだめぇ…アチャ、まだびすけっとたべてないもん…」


その3歳の男の子は、眠気でかすれた声を上げながらも、離れるのを嫌がってぐずった。ハスナに抱っこされたままのナジュワもつられてぐずり始め、小さな指でシャビエルの上着をぎゅっと握りしめながら、何度も言葉を呟いた。


「ぱぱ…だめぇ…」


舌足らずなその声の破壊力に、ハスナはますます気まずそうにオドオドした。


「あ義ちゃん、困ったなぁ…お姉さんももう帰りたいの。足がもげそうなのよ、本当に」


ハスナは困り果て、優しくナジュワを引き離そうとしたが、失敗に終わった。その子は逆に、ハスナの首筋に顔をうずめて隠してしまったのだった。


「状況を分析する」


シャビエルは三人の子供たちを解読不能な眼差しで見つめ、言葉を挟んだ。「被験者の感情的愛着度は、初対面としては極めて異常だ。


しかし、青少年の生物学的時間規制を遵守するため、我々は今すぐこの交流を強制終了せねばならない」


「お前の言葉、お堅すぎなんだよ、冷蔵庫! 普通に『さあ、バイバイしよう』って言えばいいだろ、めんどくせえ!」


ルカが皮肉交じりに突っ込んだ。


「被験者の心理分析:このガキ三人組の依存度は、別れの言葉を耳にした瞬間から120%上昇している。今すぐ強制的に関係を遮断しなければ、我々は夜明けまでこの偽りの家族ドラマという底なし沼に囚われ続けることになるぞ」


「おい、今回はお前のロジックが正しいぜ、冷蔵庫! 早くこいつらの手を離すの、手伝え!」


熾烈な交渉の末――ラファがアキャスに手を離してもらうため、泣く泣くビスケットを一袋譲る羽目になったのを含め――四人はついに、薄暗い官舎のテラスを後にすることができた。


小さな一行は、大通りへと抜ける近道を探そうと、暗く静まり返った路地を急ぎ足で進んだ。


しかし、あの家からわずか50メートルほど歩いたところで、全員の足が突如としてピタリと止まった。前方の暗い路地の奥から、一つの人影が歩み出て、彼らの行く手を阻んだのだ。


乾いたアスファルトを踏み締める足音は重く、ゆっくりと引きずるような音を立てている。


ルカは反射的にハスナの腕を引いて自分の背後に隠し、ラファは即座にフロントガードの構えを取り、その瞳は夜の闇を鋭く射抜いた。


シャビエルもまた、あらゆる戦術的可能性に備え、鋭い視線をその影へと向けた。


その影は、街灯の光がうっすらと届く場所まで歩み寄ってきた。衣服はボロボロで、髪は少し乱れており、その顔には極限の疲労と激しい不安の影が刻まれている。


さっき古いマンゴーの木の陰から様子を伺っていた、あのおじさんだった。当初、その男の挙動は極めて不審で奇妙に思えた。


両手を体の脇でガタガタと震わせながら路地の真ん中に硬直して立ち、うつろでありながらも深い絶望を宿した瞳でルカたちを見つめていたからだ。


オカルトじみた不気味さと緊張感が一気に這い上がり、ハスナの鳥肌をまたしてもゾワゾワと泡立たせた。


「今度は何の用だ? 変な真似してみろ、その場で気絶させてやる」


ラファが冷酷に脅しをかける。その低く響く声には、容赦のない威圧感が込められていた。ラファの脅迫を耳にしても、その中年男性は退かなかった。


それどころか、彼は両膝をアスファルトの上に落とし、肩を激しく震わせながら四人の前にがっくりと膝を突いたのだ。


(おい、なんで土下座してんだよ?! 他のアクション小説なら、暗い路地で待ち伏せされたら即バトル突入だろ。なんでこいつはヤクザの組長に命乞いする土下座シミュレーション始めてんだよ?!)


ルカは呆然と心の中で突っ込んだ。この予想外の反応に、詐欺師としての脳が一瞬でエラーを起こす。シャビエルは目を細め、男の身体的ジェスチャーを深く観察した。


「簡易的な臨床分析:感情の変動に物理的攻撃の兆候は見られない。この男は重度のショック状態と、極限の恐怖に陥っている」


シャビエルはルカの耳元で静かに呟いた。汚れたおじさんの頬を、涙が伝い落ち始める。枯れて震える声で、彼はルカとラファを見上げ、痛切に懇願した。


「た、助けてくれ…仏様にかけて、助けておくれ…」


おじさんは かすれた声で ぽつりと言った。その悲痛な響きが、夜の緊張感を切り裂き、リアルな絶望を物語っていた。


「え、おじさん? なんでこんなとこで土下座してんのさ。とりあえず立ちなよ。一体何があったんだ?」


ルカは困惑して眉をひそめた。この痛々しい光景を前に、いつもの皮肉精神も思わず引っ込んでしまう。男は顔を上げた。こけた頬を、涙が幾筋も流れ落ちていた。


「あの子供たち……レイチェル、アキャス、ナジュワは……俺の実の子供たちなんだ、お嬢ちゃん、お坊ちゃん……俺があの子たちの父親なんだ」


男は絶望に打ちひしがれ、しゃくり上げた。


「はあ?! おじさんが父親なら、なんでさっきあの子たちは知らないって言ったんだよ? レイチェルなんて、おじさんのことブサイクなおじさんって言ってたぞ!」


ルカは納得がいかない様子で、まくしたてるように訊ねた。男は激しく首を振り、狂わんばかりに自らの髪をかきむしった。


「そこなんだよ! そこが異常なんだ! 俺の子供たちは何かがおかしい……あの家は何かがおかしいんだ!」


静まり返った路地の空気が、突如として重苦しく張り詰めた。吹き抜ける夜風が、ルカの喉元をひんやりと凍りつかせる。


「どういう意味だ?」


ラファが問いかける。その口調は少し柔らかくなったものの、依然として警戒に満ちていた。男は貪るように空気を吸い込み、震える声を必死に整えようとした。


「俺は離島の建設プロジェクトの作業員なんだ。契約を途中で打ち切ることができなくて、この2年間、一度もこの家に帰れなかった。その間、仕送りを送ることと、頻繁に不通になる古い電話で連絡を取ることしかできなかったんだ」


「それから?」


シャビエルが淡々と促す。その目は細められ、男の言葉のディテールをひとつも見落とさないよう集中していた。


「二日前、ようやく契約が終わったんだ。家族を驚かせようと思って、夜遅くに帰ってきたんだが……」おじさんの涙はさらに溢れ出し、声が喉の奥で詰まった。


「だけど……テラスの前に着いた瞬間、レイチェルは俺が誰だか分からなかったんだ。怯えて悲鳴を上げて、俺のことを悪い不審者だって言った。アキャスだって……俺が発った時はまだ赤ん坊だった息子なのに、触れさせてもくれなかった。あの子たち全員、まるで俺が幽霊であるかのように、俺のことを忘れてしまっていたんだ!」


今まで黙って聞いていたハスナは、思わず手で口を覆い、目を見開いて硬直した。


「そ、それで……おじさんの奥さんは? 子供たちのお母さんはどうしたんですか?」


男の瞳から突如として生気が消え、暗いアスファルトの道路をじっと見つめた。


その震える唇から漏れ出た次の言葉を耳にした瞬間、ルカの全身の毛が逆立った。


「そこなんだ、奥さん……妻の姿も、全く見当たらないんだ。俺が帰ってきてから、あの家のドアは内側から固く鍵が閉められたままだ。なのに、レイチェルに訊ねるたびに、あの子はいつも無邪気な笑顔で同じ答えを返すんだ……『お母さんは中にいるよ。お父さんの夕ご飯を作ってくれてるの』って……」


男は恐怖に目を見開き、ルカを見上げた。


「あの家は真っ暗なんだ。煙も出ていなければ、音もしない……。外に立っているのは、あの子たちの父親であるこの俺だ。なら……この2年間、俺の家の暗闇の中で料理を作っているのは、一体誰なんだ、お坊ちゃん?!」


その瞬間、静まり返った路地の空気は凍てつくような寒さへと変わった。吹き抜ける夜風はもはや心地よさなど微塵もなく、まるで喉元を締め上げる冷たい触手のようだった。


「ル、ルカ……」


ハスナは腰を抜かし、ルカの学生服をギュッと掴みながら彼の背後に隠れた。作者である彼女の顔は、今や紙のように真っ白だ。


「これ、完全にホラーじゃん、ルカ! もう推理モノのジャンルじゃないよ! 帰ろう、今すぐ陰陽師か霊能者を呼んできて! 教職員住宅の路地裏で、彼氏もいないまま死ぬなんて絶対イヤ!」


ルカは生唾をゴクリと飲み込み、シャビエルとラファの顔を交互に見つめた。彼の詐欺師としての魂と皮肉精神は、このあまりにも不条理な現実に一瞬でバグを起こしていた。


「ちょっと待ってくれ、おじさん。あんたの家庭のドタバタ劇を疑うわけじゃないんだけどさ」


ルカは突如としてゾワゾワと泡立ち始めた首の後ろを掻きながら言った。


「でも論理的に考えてさ、家が外から2年間も施錠されてるのに、子供たちが毎日ニコニコしながら『お母さんが料理を作ってる』なんて言うって……あいつら、空気でも食ってんの? それともあんたの奥さん、内緒で妖怪の出前でも頼んでるわけ?」


シャビエルは眼鏡の位置を直し、アスファルトの上に膝を突いたままの中年男性の表情をじっと見つめた。「認知異常の分析」シャビエルは低く冷たい声で呟いた。


「先ほどテラスにいた子供たちは、大規模な記憶の歪みを起こしている。彼らは実の父親の顔を忘れているにもかかわらず、家の中の家事活動が正常に機能しているという妄想を維持している。ルカ、あの建物の中には集中した負のエネルギ―の操作、つまり呪詛の類が働いている可能性がある」


ラファはジャケットのポケットの中で拳を強く握り締め、あの古びた官舎へと続く道を鋭く睨みつけた。


「母親は中にいる……だが、ドアは外から鎖で縛られている、か」


ラファが鋭く囁く。そのオーラが徐々に重みを増していく。


「ガタガタ抜かすな。今すぐあそこへ戻るぞ。俺の目で、あのドアの向こうに何があるのか確かめてやる」


「おい、ラファ! 簡単に戻るとか言うなよ! 俺の腰はさっきレイチェルにスマックダウンされたせいで、まだバキバキなんだからな!」


ルカは抗議したものの、なぜか彼の足は弟の隣へと向かって歩みを進めていた。「まあ……俺の詐欺師としての履歴書に『ボロ家の怪奇現象から逃げ出した』なんて書かれるのはダサすぎるしな。ほら、おじさん、立ちなよ。


あんたの話が本当かどうか、確かめに行こうぜ」一行はついに引き返し、夜がますます更けていくことも忘れて歩き出した。


そして、あの生い茂る生垣の前に再び辿り着いた時、テラスの景色は先ほどと全く変わらないままだった。


レイチェル、アキャス、ナジュワの三人は、まるでそこだけ時間が止まってしまったかのように、薄暗いコンクリートのテラスに相変わらず固まって座っていた。


ルカたちが再びテラスに向かって歩いてくるのを目にした瞬間、ガキ三人組の顔がパッと明るくなった。


帰るのをやめたのだと分かると、彼らは飛び跳ねて大喜びし、この上ない嬉しそうな表情を浮かべた。


「わーい! イケメンお兄ちゃんが戻ってきた! 遊ぶの? ねえ、遊ぼうよ!!」


レイチェルは手を叩きながら、嬉しそうにぴょんぴょん跳ねた。


「ああ、遊ぼう。でもその前にさ……」


「俺たち、お前らの家の中に入ってもいいか? 中にいる人に会いたいんだ」


「いいよ! もちろんいいよ! お兄ちゃんたち、入って入って!」


レイチェルは迷うことなく、即座にオッケーを出した。ルカは息を呑み、怪訝そうに眉をひそめた。シャビエル、そしてラファと視線を交わしながら、心の内で混乱を覚える。


(なんで家に入りたいって言った瞬間、あいつらあんなに喜んでんだよ? 普通、こういう呪われた家の化け物ってのは部外者を追い出すもんだろ。なのに温かい大歓迎って、どういうことだ?)


ルカは疑念を募らせ、心の中で呟いた。あまりにも簡単に許可が下りたため、ルカたちの脳裏には困惑が渦巻いた。


しかし、強烈な好奇心と謎を解き明かしたいという衝動に突き動かされ、自分たちの目で直接確かめるべく進むしかなかった。


だが、目の前には物理的な問題が立ちはだかった。古い木製のドアは完全に閉まりきっており、まるで内側から厳重に施錠されているかのように、微塵の隙間もなかった。


しかし、この真っ暗な官舎の中には誰もいないはずなのだ。二人の後ろをついて歩いていたあのおじさんは、びくびくと怯えながら、ピクリとも動かないドアノブを見つめることしかできなかった。


ラファは議論したり、怪しんだり、物理的な鍵を探したりして時間を無駄にするつもりは毛頭なかった。彼は無表情のまま歩を進めてルカを追い越し、内側から不気味に施錠されたドアの真ん前に毅然と立った。


「アニキ、退け」


ラファは冷酷に言った。左足を踏み締め、深く腰を落として構えを取ると、木製のドアの真ん中に向かって強烈な一撃を叩き込んだ。


バリバリ、ドシャッ!!!


ラファの常軌を逸した怪力により、ドアの内側にあった鍵とボルトのロックは一瞬で粉砕された。


古い木片が床に飛び散ると同時にドアが大きく開き、一行は真っ暗闇の広がる玄関ホールへと足を踏み入れることができた。


しかし、ドアが開いた瞬間、あの幽霊ガキ三人組の狂気(?)が再び発動した。彼らは相変わらずマイペースで、めちゃくちゃな行動を始めたのだ。


「わーい! ドアが開いた! イケメンお兄ちゃん、かくれんぼしよう! レイチェルが隠れるから、お兄ちゃんがオニね!」レイチェルは歓声を上げた。


そして何の合図もなく、その5歳の女の子はそのまま真っ暗な家の奥へと走り去り、闇の中に消えてしまった。


「びすけっと……こわいおにーたん、アチャ、またびすけっとほしい……」


アキャスは、この墓場のように息苦しく不気味な家の雰囲気などどこ吹く風で、甘えるように再びラファの太ももにギュッとしがみつき、ぶら下がった。一方、ナジュワはよちよち歩きでシャビエルに近づき、小さな両手を上に伸ばした。


「ぱぱ……だっこ……」


舌足らずな声で呟く。シャビエルは、暗闇の中で完全にバッテリー切れを起こしたマネキンのように、100%硬直して立ち尽くしていた。


腕を組んだまま、一歩も動こうとせず、ただ無表情に足元を見つめている。


「状況分析:被験者ナジュワの個体は、継続的な身体的接触を要求している」


シャビエルは超がつくほど頑なに、抑揚のないモノトーンな声で呟いた。


「私の最低賃金システムに致命的なエラーが発生した。人間の幼児をあやす、あるいは抱き上げるための機能的アルゴリズムは搭載されていない。私の忍耐回路が機能不全に陥る前に、身体的接触を控えていただきたい」


その隣に立っていたハスナは、鼻で思いっきり笑い飛ばした。教え子のあまりの堅物っぷりに吹き出しそうになる気持ちと、刻一刻と不気味さを増していく家の空気に縮み上がる恐怖の狭間で、彼女の感情はぐちゃぐちゃだった。


「ちょっと、冷蔵庫! こんなに可愛い赤ちゃんを被験者呼ばわりしないでよ! 抱っこくらいしてあげなさいよ、乾いた雑巾みたいにガチガチに固まっちゃって!」


アキャスのぐずる声とシャビエルの堅物っぷりが巻き起こす混沌の中、ルカは身を隠したレイチェルを探すべく動くことを選んだ。


彼の足は、分厚い埃の積もった家の廊下を進んでいく。半分開いたままのドアがある空き部屋を通りかかったその時、ルカは突如として足を止めた。


妙に冷たい感覚が首筋をゾワゾワと這い上がり、その足を引き寄せられるように部屋の中へと向かわせたのだ。兄の奇妙な様子に気づいたラファがすぐ後ろを追い、あのおじさんもガタガタと体を震わせながらその後に続いた。


ルカは目を細め、静まり返った暗い部屋に視界を慣らそうとした。顔にかかる蜘蛛の巣を払いながら、ゆっくりと前へ進む。


部屋の隅、ボロボロに腐り果てたマットレスの上が目に入った瞬間、ルカは完全に凍りついた。その瞬間、心臓が止まるかと思った。


絶対的な静寂の中、そこには白骨化し、埃をかぶった4体の人間の骨が横たわっていたのだ。そのうちの3体は小さな骨――子供のサイズ――であり、もう1体は大人のサイズだった。


大人の骨は横に寝そべった体勢のまま、その脆く崩れそうな両腕で、3体の小さな骨を今もなお愛おしそうに、ぎゅっと抱きしめていた。死をも超えて、暗闇の中で我が子を守ろうとする母親の抱擁だった。ルカは生唾をゴクリと飲み込み、全身の毛が完全に逆立った。


彼の悪知恵の働く脳は、目の前の凄惨なホラーの現実を受け入れられず、完全にエラーを起こしていた。


(子供が3人……大人が1人……。もし、あいつら全員がここで骨になってるんだとしたら……じゃあ、さっき表にいたのは一体誰なんだ?!)


「ラ、ラファ……シャビエル……」


ルカが呼ぶ声は、激しく震えていた。ルカのただならぬ様子を察し、廊下の中央にいたラファ、シャビエル、そしてハスナの三人が、自然と部屋のドアの敷居へと近づいてきた。


おじさんも震える体で後ろから覗き込む。


しかし、ルカがその崩れたマットレスを指差すよりも早く、彼の視線は、さっきの子供たちの行方を確かめるために、反射的にラファとシャビエルの足元へと向かった。


ヒュウウウッ……!


ルカ、ラファ、シャビエル、そしてハスナの視線が足元に向いたまさにその瞬間、さっきまでラファの太ももに甘えるようにぶら下がっていたアキャスのぐずる声が、突如としてピタリと消えた。


その姿は、まるで夜風に吹き晒された灰色の煙のように、全員の目の前で薄れて消えていったのだ。アキャスだけではない。


シャビエルの足元にいたナジュワのぐずる声も、ミリ秒単位の刹那で、まるで地底に呑み込まれたかのように消滅した。幼い二人の小さなシルエットはかき消え、ただ分厚い埃だけが空気中にゆっくりと舞い上がった。


全員が心底凍りついた。アキャスとナジュワが煙に変わったということは、かくれんぼをしようと一人でこの家の暗闇の奥へ入っていったレイチェルもまた……生きた人間ではないということだ。


「は、はぁ?! 子供たちが消えた?!」


ハスナはヒステリックに叫び、心臓が飛び出るほどの衝撃に反射的に後ろへ飛び退き、壁に背中をぶつけた。


ラファは即座に全身を緊張させて瞳に警戒の光を宿し、シャビエルは深く眉をひそめながら眼鏡の位置を直した。


「熱放射を伴わない、被験者の瞬時における質量消失……。彼らは生きた人間ではない」


シャビエルの声が、一瞬にして冷徹でシリアスなものへと変わった。狭い部屋の中に凄まじい風の音が鳴り響き、差し込んでいた月光のきらめきをすべて掻き消した。


辺りの雰囲気は、一気に最悪のホラーと絶望のどん底へと叩き落とされる。


「上だ!」


ラファが警戒の声を上げ、反射的にルカの腕を引いて自分の背後へと隠した。


ボロボロのマットレスの真上、崩落した天井の隙間から、一人の女の姿がゆっくりと降下してきた。


長く伸びた黒髪は乱雑に垂れ下がり、白いドレスは引き裂かれ、乾いた土の汚れにまみれている。その存在が顔を上げた瞬間、血のように真っ赤な両目が激しい復讐の怨念に燃え上がり、あのおじさんを真っ直ぐに射抜いた。


どう見ても、あの3人の子供たちの母親だとルカは確信した。この2年間、我が子の遺体を守るためだけに、怨霊としてこの世に留まり続けていた存在だ。


「薄汚い男め!!! 死ねぇぇぇ!!!」


女の金切り声が凄まじい勢いで響き渡り、鼓膜を震わせた。それは、裏切られ、見捨てられ、我が子と共に飢え死にするまで放置された、2年分の腐り果てた怒りに満ちていた。


息をつく暇さえ与えず、白い服の女は狂暴な勢いで突進した。長く伸びた黒い爪があのおじさんの首を容赦なく掴み、その体を壁に叩きつけるように力任せに吊り上げた。


ドシャッ!

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