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貧乏すぎて強盗に同情された結果、なぜか愚痴を聞きながら自宅まで警護される件

高級住宅街の片隅で霊界の実写版愛憎ドラマが絶賛上演されている頃、世界の反対側では、それよりも遥かに悲惨で、かつ不条理な運命がハスナに襲いかかっていた。


サヴィアの大型スポーツバイクに「重量オーバーで重すぎる」という理不尽な理由で交差点の真ん中で強制的に降ろされたハスナは、この世界での新しい自宅の住所に向かってトボトボと歩く羽目になっていた。


この小説の世界を創造した原作者(作者)である彼女は、自分が家庭環境が完全に崩壊した哀れな少女の体に転生してしまったことを、誰よりもよく知っていた。父親は重度のアルコール中毒、母親は水商売で夜の街へ消えていく。


「最悪…なんでトイレで大便してる時に、こんなシーズン2のド鬱展開のプロットなんか思いついちゃったんだろう。それに何で私がこんな人生の試練を受けなきゃいけないわけ? まあ、ルカやラファやサヴィアが、私が彼らを生み出した作者だってことにまだ気づいてないだけマシだけどさ…。バレたらその瞬間に即死させられるわ。っていうか、一体誰が私をこんなところに引っ張り込んだのよ! どうせ転生させるなら、イケメンで優しくておまけに金持ちの公爵様と結婚する運命の、悪役令嬢ものの世界にしてくれればよかったのに! 貴族と結婚どころか、今日明日を生き延びるだけで精一杯じゃない!」


ハスナは自分の不運な運命を呪いながら、薄暗く人通りのない歩道を力なく歩いていた。


「こんなことなら、いっそのことプロットを書き直して、ルカみたいに大財閥の御曹司の子供って設定にして転生すればよかった!」


ハスナがちょうど自分の身の上を呪い終えたその時、狭い路地の曲がり角から、黒いレザージャケットを着てマスクで顔を隠した大柄な男二人組が突如飛び出し、彼女の行く手を阻んだ。


シュキィィン!


小さな折りたたみナイフが、ハスナの目の前で鋭く振りかざされた。


「おい、そこのネエちゃん! 命が惜しけりゃ、持ってる貴重品を全部出しな! 財布とスマホだ、早くしろ!」


強盗Aが、わざと作ったような低い脅し文句で凄んだ。ハスナはパチパチと硬直したまま瞬きをした。彼女はその折りたたみナイフを見つめ、それから目の前の二人組の強盗を、中身が完全に抜け落ちたような哀れみの目で見つめた。


彼女の精神は、この異世界イセカイの過酷な現実に直面しすぎて、すでに摩耗しきっていたのだ。


(声がガラガラで汚いな…耳が痛くなるわ。…でも、まあいっか。私にはどうすることもできないし。テコンドーの心得はあるけど、なんかこの泥棒のお兄さんたちを見てたら、逆に可哀想になってきちゃった。きっと私よりも悲惨な人生を送ってきたに違いないわ…)


何の抵抗も示すことなく、ハスナは使い古されたボロボロのリュックサックを肩から外し、そのまま相手に差し出した。


「ほら。全部持ってって、お兄さん。どうぞ」


ハスナは力なく、まるで全財産を喜んで寄付するかのような仏のトーンで言った。強盗Aと強盗Bは、被害者であるはずの少女が悲鳴ひとつ上げず、泣きもしないことに困惑し、思わず顔を見合わせた。


強盗Aは慌ててハスナのリュックのチャックを開け、中身をガサゴソと漁り始めた。「ハズレだ、クソが!」強盗Aは中身を確認すると、激しく吐き捨てた。


「中身はシワシワのノートと、インクの出ないボールペンと、ペラペラの安物の財布だけじゃねえか!」


強盗Bはそのナイロン製の安物の二つ折り財布をひったくり、街灯の薄暗い光の下で開いてみた。開けた瞬間、中身は見事なまでに空っぽだった。


お札の一枚すら入っていない。それどころか銀行のカードすらなく、残されているのは1枚の国民健康保険証と、インクが完全に薄れて消えかかっている3週間前のカップ麺のレシートだけだった。


強盗Bは絶句した。彼はその空っぽの財布を見つめ、それから、靴の先が少し破れた制服を着ているハスナの格好に目をやった。強盗Bの、塵のようにつまらないはずの犯罪者の良心が、突如として激しく揺さぶられた。彼の同情心が、想定外のスピードで暴走を始めたのだ。


「おい…お前…マジで1円も持ってねえのか?」強盗Bの口調は、先ほどの荒々しさが嘘のように、ひどく優しいものへと変わっていた。


「見ればわかるでしょ? お金どころか、私は生きる希望すら持ってないのよ」


ハスナは電柱に力なく寄りかかりながら、虚ろな目で夜空を見上げて呟いた。強盗Bは重いため息をついた。彼は自分のズボンのポケットに手を突っ込むと、先ほど別の場所で奪い取ったばかりの五千円札を取り出し、それをハスナの安物の財布の中に大急ぎでねじ込んだ。


「おい、何してんだよ、この馬鹿!」


強盗Aは驚愕し、その金を奪い返そうと手を伸ばした。


「俺たちは金を奪うために強盗やってんだぞ! なんでお前が募金してんだよ!」


「無理だよ、ジョン! あいつの顔を見てみろよ、可哀想すぎるだろ! 俺たちは確かに犯罪者だけど、人のエンパシーまで捨てたわけじゃねえ!」強盗Bも負けじと言い返し、相棒の手を振り払って、ハスナの手に財布を押し戻した。「ほら、お嬢ちゃん。これを持っていきな。明日の朝のバス代にしなよ。もう泣くんじゃないぞ」


ハスナは自分の財布を受け取った。犯罪者からまさかの想定外の優しさを受け、ハスナの精神的な防衛線は完全に決壊した。


「ありがとう、強盗のお兄さん…。顔は山奥の生ハゲみたいで、やってることは最低だけど、心は絹豆腐みたいに柔らかいんだね…。正直、私の人生、本当に辛すぎるの」


ハスナの目から、大粒の涙が溢れ落ちた。


「こんな夜遅くに学校から帰ってきたって、家にはアル中の父親がいてボトルを叩き割って暴れてるの。母親も夜の仕事のせいで一度も家にいたことがない。私、もうどこに帰ればいいのか分からないよ…」


先ほどまで凶暴だった強盗Aは、ゆっくりとナイフを下ろした。彼の口はぽかんと開いたままで、目の前の少女のあまりの不幸な境遇に言葉を失っていた。彼の脳裏に、突如として自分自身の過去の記憶がフラッシュバックした。


「うっ…ひっ…」


重苦しいすすり泣きの声が響いた。見れば、強盗Aの目が涙でボロボロに濡れていた。


「クソッ…お前のお生い立ち、俺の子供の頃と全く同じじゃねえか、お嬢ちゃん…」


強盗Aはガタガタと震える声で呟くと、その場にへたり込んで頭を抱えた。


「俺の親父もアル中でさ…毎日毎日、革のベルトでお前を殴るみたいに俺をぶっ叩いてたんだよ。だから俺は家を飛び出して、結果的にこんな半端な強盗になっちまったんだよ! うわあああああん! 思い出すだけでも心が痛えよ!!」


強盗Bも相棒の隣にしゃがみ込み、マスクを濡らすほど大粒の涙をボロボロと流した。


「お前はまだマシだよ、ジョン! 俺なんてさ、お袋が地域の互助会の若い男と駆け落ちして、親父は売れない演歌歌手と再婚したんだぞ! 俺たち二人とも、崩壊した家庭の被害者だから犯罪に走っちまったんだよ、お嬢ちゃん! うわあああああん!」


こうして、街灯の薄暗い静まり返った夜道で、世界の犯罪史上もっとも不条理で奇妙な光景が誕生した。筋肉隆々の大柄な強盗二人と、一人の若い女性スクールカウンセラーが歩道に円になって座り込み、お互いの家庭の不幸自慢をしながら声を上げて大号泣しているのだ。


「もういいよ、お兄さんたち…泣かないで…」ハスナは今や、強盗Aの肩をポンポンと叩いてなだめる側に回っていた。「過ぎたことは、もう水に流そう…」


「流せねえよ、お嬢ちゃん! 俺たち、あんたのその強さにマジで感動しちまったんだ! とにかく今夜から、あんたが一人でこんな寂しい夜道を歩くのは禁止だ! 俺たち二人が自宅の前までボディーガード(警護)してやるからな!」


強盗Bがしゃくり上げながら大泣きした。静かな夜道だけがその証人だった。ハスナを中央に挟み、その左右を筋肉隆々の強盗二人が鼻をすすりながら厳重に警護して歩いていく。


強盗に襲われたトラウマなど微塵もなく、ハスナはまるで「深夜の出張無料カウンセリング」でも行っているかのような気分になっていた。


「でもさ、お兄さんたちはまだ、次の犯行ターゲットのことだけ考えてればいいからマシだよ」


ハスナはリュックの紐を直しながら愚痴をこぼした。


「私なんて、学校での本業がスクールカウンセラーじゃない? 今の時代の学生の相手をするのがどれだけ大変か、お兄さんたちに分かる?! ストレスの負荷が頭頂部を突き抜けてハゲそうになるレベルなんだから!」


強盗Aはレザージャケットの袖で、垂れてきた鼻水をズズッと拭った。


「あんたの学校の生徒、そんなにヤバいのかよ? 特注の鉄パイプでも振り回して集団抗争(リアル東リベ)でもやってんのか?」


「抗争どころじゃないわよ、お兄さん! 私の受け持ちの生徒にサヴィアっていうのがいるんだけど、顔は三六の板みたいに無表情なクセに、口を開けば激辛カレーのレベル30より容赦なく毒舌なの! その上、頭の回転は天才的なのに、その使い道が非効率的なオカルトの怪異退治(嫌がらせ)専門なんだから! 先日なんて、自分の帽子を口裂け女に盗まれたってだけで、旧校舎の南京錠をぶっ壊して侵入して、逆にその口裂け女を精神崩壊するまで徹底的にしごき直したのよ?! 教頭先生に始末書を出す私の身にもなってほしいわ!」


ハスナはプロットの崩壊に振り回される原作者としての怒りを、ここぞとばかりに爆発させて熱弁した。


「うわぁ、それはひどいな。そのガキ、道徳の授業をまともに受けてねえな」


強盗Bは同情しきった様子で深く首を振った。そして彼もまた、長いため息をつき、今度は自分たちの業界のプロフェッショナルとしての悩みを吐露し始めた。


「だけどお嬢ちゃん、強盗業だって今の時代、決して楽じゃないんだぜ? 最近は競争が激しいし、何より被害者がまったく非協力的(協調性ゼロ)なんだよ」


「非協力的って、どういうこと?」


ハスナが興味をそそられて尋ねた。


強盗Bは忌々しそうに鼻を鳴らした。


「先週さ、前の路地でいかにも金持ってそうな富裕層のオッサンを待ち伏せしたんだ。ナイフを突きつけて凄んだら、そのオッサン、何て言ったと思う? 『お兄さん、そのナイフは日本産業規格(JIS)の認証品かね? 滅菌消毒はされてるのか? もし私の皮膚が感染症を起こしたら、君は国民健康保険の自己負担分を賠償してくれるんだろうね?』だってさ! 正気かよ?! こっちが過剰思考オーバーシンキングになって病んじゃうだろ! 手っ取り早く裏金を稼ぐつもりが、刃物の衛生管理について説教されるハメになるなんて! 結局、ナイフをポケットに仕舞って泣きながら家に帰ったよ!」


「そうなんだよ、お嬢ちゃん! ジョンの言う通りだ!」


強盗Aも当時の怒りを思い出して加勢した。



「二日前なんて、俺の中年のオバサン(主婦)のターゲットが最悪だった。財布を出せって要求したら、逆にもの凄い剣幕で逆ギレされてさ。一時間ぶっ続けで説教だぜ? 『この怠け者! 甲斐性なし! だから独身なのよ!』って罵倒された挙げ句、最終的にはそのオバサンの自宅の3階まで、暖房用の重い灯油缶を階段で運ばされるハメになったんだ! なのにタバコ代の一銭もくれやしねえ! 俺たちは強盗なんだぞ、お嬢ちゃん。プライドってものがあるんだ。引っ越し業者の便利屋じゃねえんだよ!」


ハスナは思わず両手で口を塞いだ。目の前のへっぽこ犯罪者二人の切実すぎるお仕事の悩みに、笑いをこらえるのと同情の念が同時に押し寄せ、お腹がよじれるほど痛かった。


「元気出して、お兄さん、元気出して…。この世の中で金を稼ぐ方法なんて、どれも本当に楽じゃないんだから」


そして三人がお互いの不運な身の上話に完全に夢中になっていたその時、幹線道路沿いにある一軒の古びたラブホテルの前を通りかかり、彼らの足取りが自然と遅くなった。ホテルの出口から、ピチピチのド派手な服を着て、髪を高く夜会巻きにし、少し崩れかけた厚化粧をした中年女性が姿を現した。


その女性は、今夜の客とおぼしきヨレヨレのワイシャツを着た中年男性の腕に、甘えるようにべったりと寄り添って歩いていた。


ハスナはその場に凍りついた。脳内にある転生前の記憶と、この世界で目覚めてから初めての対面によって、その厚化粧の女性が他ならぬ自分の「母親」であることに気づいたのだ。


母親が自分たちのほうに向かって歩いてくるのを見て、ハスナは反射的に深く息を吸い込み、路上での感動的な家族の修羅場ドラマに身構えた。彼女は震える声で呼びかけようとした。


「お母さん…」


しかし、ハスナの喉からその言葉が飛び出すよりも早く、厚化粧の母親がハスナのほうをチラリと一瞥した。母親の目は、ハスナが着ているみすぼらしい教員のスーツを冷ややかに見つめ、それから彼女の左右にいる、どう見ても犯罪者面の強盗二人組に視線を移した。


「サルの子ね…」


母親はボソリと、しかし娘の耳にハッキリ届く声で呟いた。


(私がサルの子なら、お母さんはサルのエマ(オカン)じゃん…)


ハスナは悲壮感漂う表情をなんとか維持しながら、心の中で突っ込んだ。まるで娘の思考を見透かしたかのように、母親は何の罪悪感もなさそうにプイッと顔を背けると、足早に歩きながら、隣の客に甘ったるい声で囁いた。


「ねえ、あなた、早く車に乗りましょ。最近の夜道って、市場のゴロツキとつるんでるギャル上がりの新米教師なんかうろついてて、本当に物騒で怖いわぁ…。行きましょ、行きましょ…」


ブォォォン…


女性は客の所有する古いセダン車に乗り込むと、ハスナの目の前に濃い排気ガスを残して、またたく間に走り去っていった。


彼女は夜の仕事のプロフェッショナルとしてのプライド(?)を守るため、実の娘に対して本気で他人のフリを決め込んだのだ。


ハスナは歩道で棒立ちになり、完全に中身の抜け落ちた虚ろな目で、消えゆく排気ガスの煙をじっと見つめていた。胸の痛みなんて大したことはない。


ただ、この強盗二人組の前での恥ずかしさは、もはやどんな薬を飲んでも治らないレベルだった。強盗Aと強盗Bはゆっくりと顔を向け、先ほどよりも遥かにドラマチックに、再び目を涙でうるうるさせながらハスナを見つめた。


「お、お嬢ちゃん…今のって…」


強盗Aは口元を手で覆い、涙を必死にこらえた。


「うん、お兄さん…。私の母親だよ」


ハスナはサヴィア並みに平坦なロボットのような声で答えた。


「うわあああああん! あんまりだろ、いくらなんでも! 実の子供を市場のチンピラ扱いするなんて!」


強盗Bの涙腺が完全に崩壊し、強盗Aに抱きつきながら夜の幹線道路で声を上げて大号泣した。


「お嬢ちゃん、あんた強すぎるよ! 俺が案の定あんたの立場だったら、今夜にでも怪しいカルト教団(密入信)の門を叩いてるぜ! 可哀想すぎるよ、お嬢ちゃん! うわあああああん!」


ハスナはただただ長い溜息をつき、街灯の下で、相変わらず大号泣している筋肉隆々の強盗二人の肩をパスラ(諦め顔)でポンポンとなだめ続けた。


(マジで恥ずかしすぎるんだけど、この状況!!!!)


ルカのチームが霊界の実写版愛憎ドラマを特等席で観賞し、ハスナが二人の強盗になだめられているその頃、世界のまた別の場所では、それらとは完全に異なる、ひどく張り詰めたミステリアスな空気が漂っていた。外の世界から完全に遮断された暗黒の空間の中、宙に浮かぶシステムホログラムの画面から放たれる微かな光だけが、部屋の輪郭を辛うじて浮かび上がらせていた。


その画面にはルカの学校のデータ、そして今夜ルカたちが訪れているあの廃墟の図面が詳細に映し出されていた。


スクリーンの中央の前に、まるでトップスターのような完璧なプロポーションを持つ一人の青年の影が、微動だにせず立っていた。


彼の名は、アルビル。青年はホログラム画面に映るルカの顔写真を、愛憎の入り混じった複雑な眼差しで見つめていた。


その瞳の奥には、狂おしいほどの深い切なさと、拭いきれない罪悪感、そして暗い野心がギラギラと渦巻いていた。


その顔を見るたびに、彼の心臓は激しく高鳴る。前世における、彼の最愛の弟。アパートの上の階から落ちてきた近所の洗濯物の下敷きになり、あまりにも悲惨で、あまりにも間抜けな最期を遂げた弟。


その死によってアルビルは完全に理性を失い、狂い、後を追うように命を絶ったのだ。アルビルは、爪が白くなるほど拳を強く握りしめた。


このシステムの内部に囚われながら、彼をずっと苦しめ続けてきた過去の記憶の重みに、呼吸が激しく乱れる。


「ゼンラ……」


アルビルが呟いた声は、かすれて激しく震えていた。


「ようやく……ようやくこの世界で、またお前を見つけることができた」


アルビルは一歩前に踏み出し、冷え切った指先でホログラム画面のルカの顔にそっと触れた。


その端正な顔立ちに、どこか危険で謎めいた薄い笑みが浮かぶ。彼の身体から圧倒的な威圧感オーラがどろりと溢れ出し、まるで彼こそがこの世界に起きている全ての怪異の異常現象アノマリーを引き起こし、裏で運命の糸を引く絶対的な支配者であるかのように思わせた。


「待っていろ、ゼンラ。兄さんがこの世界をすべて、俺たちの支配下に跪かせてやる」アルビルは冷徹な声で呟いた。その声は、虚無の部屋の中に不気味に響き渡る。「お前は昔、約束してくれたよな。俺が空になるなら、自分は地を這う草になると……」


「俺たちをまた引き裂こうとする奴が、もしいるなら……誰であれ、この宇宙から確実に消し去ってやる」


彼が片手を一振りすると、宙に浮かんでいた無数のシステム画面が一瞬にして一斉に消灯した。部屋は完全な闇へと沈み込み、明日へと向けた彼の巨大な陰謀を闇の底へと隠蔽した。



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