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「ゴ・ガイブ」始動!あの世のウーバーイーツならぬ、妖怪デリバリー大作戦!

肥満ヤモリの物物交換と「セット販売の地獄ブティック」の大成功を経て、バスカラことカラの貯金箱は相変わらずカタツムリのハイハイ並みに遅いスピードでしか増えていなかった。彼には、筋力に頼らず、ただの度胸と(すでにへし折れた)厚顔無恥だけで一攫千金が狙える新しい起業のアイデアが必要だった。


その夜の午前2時頃、小屋の前にて、カラはボロボロのひび割れたボゴーヘルメットを頭に装着していた。

わざわざ中古を買ったのは、新品を買ったら彼のわずかに残ったプライドまで消え去ってしまうからだ。さらに彼は、多少の強引さを交えてマンクドウド夫人の夫、キ・マングロンドのバイクをこっそり借りパク……いや、一時拝借していた。


【回想スタート】


カラは小屋のテラスに座り、まるで空から大金が降ってくるのを待つかのように虚空を見つめていた。


「マジで仕事が欲しいぜ、人生ヒマすぎて死にそう」


[おや、自分が無職であることをすっかり忘れておられたのですね。村であれだけ大騒動を起こしておいて、恥を知らないのですか?]


「うるせえなテム! 今の俺は完全にバーンアウト(燃え尽き症候群)なんだよ。俺のメンタルには休息が必要なんだ」


[はあ? 金持ちならセラピストに通ったりスイスへ旅行したりするでしょうが。お前のような貧乏人の診断名は『バーンアウト』じゃなくて、単なる『暇を持て余した無職』です]


「言い方酷すぎだろ! 金持ちならストレスが溜まったら高級ホテルにでも泊まるけどよ、俺みたいな底辺がストレス溜まったら、井戸の隅っこでカエルの鳴き声聞きながら泣くしかねえんだよ! しかもそれも、弟のクルエルがスプーンを研ぎ澄ましている音が聞こえない時だけだ! やっぱ貧乏ってのは、自分のメンタル不調を悩むヒマすら与えてくれない最強の特効薬だわ!」


[それであの時、学校の授業をサボらず真面目に受けておけばよかったんですよ]


[「うるせえよテム! 前世じゃいい大学に入るために必死こいて勉強したのに、結末は物干し竿が頭に直撃して即死だぞ! こんな人生なら、無能なサイコパス弟のお守りをするために生まれてきたようなもんだわ!」]


[学歴は未来への鍵ですが、残念ながらあなたの未来の扉はすでにコネ入社用の合鍵でロックされています]


[「くそっ、これだから最近の若者は学校なんか行かずにインフルエンサー目指すんだよ! 何時間もかけて卒論書いたって、いざ就職すれば駐車代とTikTokの通信費を稼ぐだけの底辺社畜にされるだけだしな!」]

[仕事を探す気があるなら、ちゃんとした企業の面接に行きなさいよ]


[「めんどい! どうせ出来レースのコネ採用だろ、やってられっか! なあテム、 ikonお前の関係って、いわゆる『シチュエーションシップ(曖昧な関係)』みたいなもんだよな。お互い秘密を握り合ってるのに、未来の保証はゼロっていう」]


[おめでとうございます、流行りの『シチュエーションシップ』を体現していますね。責任もなし、未来もなし、ただ空虚な希望だけがある。実にGen Zらしいクソっぷりです]


[「最悪だな! 俺の書いた小説のプロット並みに展開が宙ぶらりんだぞ! 最近の若者ってのは『友達以上恋人未満』が好きなくせに、いざポイ捨てされたら運命のせいにしやがる。都合のいい時だけ使われて、本命として扱われないってのに!」]


[暇つぶしにおしゃべりしてる場合ですか。仕事が見つかりましたよ、あなたにぴったりの求人です!]


[「何の仕事だ?」]


[「幽霊を目的地まで送迎する『バイクタクシー(ゴ・ガイブ)』です! 世の中の幽霊たちはめんどくさがり屋が多いのでライバルが少ないですし、アドレナリンが出まくるうえに人間以外のカスタマーと交流できますよ」]


[「最高じゃねえかそれ!! でもバイクがねえよ」]


[「未来の『妻』のところから借りてくればいいでしょう」]


[「は? 妻? 誰だよ俺はフリーだぞ!」]


[「マンクドウド夫人以外に誰がいるんですか? あなたはすっかり彼女の『ご主人様』扱いですよ、ハハハ!」]


[「お前のその口を裁縫糸で縫い付けてやろうか! あのババアと俺の間になんの接点があるってんだよ……でもバイクを借りるってアイディアは悪くねえな」]


[「でしょう? じゃっそっさっさと彼女の家に行ってきなさい」]


[「行きたくねえよ、めんどくさい」]


[「相変わらずのめんどくさがりですね……」]


[「はハ、昔からこうだからよ、まあ兄貴のせ……」]


カラは言葉を途中で飲み込んだ。表情が一気に暗くなる。


[「……兄貴?」]


[「いや、何でもねえよ、ただの言い間違えだ」]


[「本当にそれだけですか? 顔に『大量の隠し事があります』って書いてありますけど」]


[「うるせえなクソシステム! 機嫌悪いんだよ!」]


「マス・カラ――!! 私の美しい愛の旦那様がご到着ですよ!!」


マンクドウド夫人の声が響き渡り、カラは慌てて外に視線を向けた。彼女はいつものように徒歩ではなく、なんとバイクに乗ってやってきた。しかし、その後ろに乗っているのは……キ・マングロンド? あのマンクドウド夫人の「夫」であるはずの男だった。おまけに、以前クルエルの呪いで膨らんだままの「妊婦のようなぽっこりお腹」がまだ治っていない。


まさか、これがカラの人生の終焉デス・エンドってやつか?


(テム、あれってキ・マングロンドだよな? なんで夫婦揃ってここに? ババアだけでもうざいのに夫まで加わったら、俺はストレスで脳梗塞になるわ!)


[通知!マンクドウド夫人は夫を連れて、あなたに「結婚の許しを得るため」という名の直談判にやってきましたよ!]


[「二号さんの夫として迎え入れられるってか?! ふざけんな、俺はまだ18歳だぞ! 絶対イヤだね!」]

「どうしたの、お兄ちゃん?」


クルエルの声が聞こえ、カラはホッと胸を撫で下ろした。とりあえず、この危険な場面では最強の弟を盾にできる。


「おいエル、あのマンクドウド夫婦が来やがった……」


「また来たの? あのクソババア、また呪いをかけに来たわけ? なら僕がさっそくあの二人を解体して、特製肥料にしてやろうか」クルエルは近づいてくる二人を冷酷な目で睨みつけた。


「お兄ちゃん、もしあいつらが変なこと言い出したら容赦しないでいいからね」カラは弟にこっそり耳打ちした。


「旦那様……私、ずっと会いたかったんですのよ。あなたも私の愛しい夫にお会いしたかったでしょう?」

マンクドウド夫人がカラの腕にまとわりつこうとした瞬間、


「お兄ちゃんに触るな」


クルエルの低く凍てつくような声が、二人を硬直させた。


「ひっ……! だ、大丈夫だよ義弟くん! 旦那様、私らはただ……このお方に私の夫としての『正式な籍』を認めてもらおうと思って……その……」


「籍なんてあるわけないだろ。今すぐお前らの首を刎ねて、兄さんへの供物にしてやろうか?」


マンクドウド夫妻はごくりと生唾を飲み込んだ。


「ま、待ってくれ! 実は昨日、お前の呪いでこの腹がパンパンになったまま治らなくて……! その、前の無礼を謝罪しに来たんだ! キ・カラ様、どうかお許しを……!」キ・マングロンドが必死に土下座せんばかりの勢いですがりついた。


[「許してあげますか、お荷物さん?」]


[「どうすっかな、ちょっと可哀想だけど……でも、あの腹を見たときはさすがに笑い転げたからな。よし、いい考えがあるぞ、ひゃひゃひゃ!」]


[「またろくでもない企みを……」]


「キさん、俺は正直めちゃくちゃ怒ってるんだよ。同じ呪術師の仲間だと思ってたのに呪いをかけてきやがって……だから、許してほしけりゃ、それなりの……な?」


「言ってくれ! キ・カラ様、この私が望むものなら何でも差し出しますから!」


カラはわざと深くため息をつき、小屋の前に停めてあるバイクに視線をやった。まるでこの世の不幸をすべて背負ったような顔を作りながら、口を開く。


「このバイク……譲ってくれるなら、許してやらなくもないけど?」


マンクドウド夫婦は顔を見合わせた。


「このバイクを、ですか?」夫人が確認する。


カラはうなずいた。


「どうぞ持って行ってください、キ様! 私は命が惜しい!」キ・マングロンドの即答に、カラは思わず目を丸くした。冗談のつもりだったのに!


「そうですとも! これは謝罪のしるし、そして私たち夫婦からキ・カラ様への『結納品マハル』ということで!」


[「なっ……結納品?!」]


[「おいおい、俺はまだ結婚するつもりねえぞ!」]


[「おや、プロポーズされましたね。おめでとうございます、悲惨な新婚生活の始まりです!」]


[「冗談じゃねえ!」]


「ちょっと待てお前ら、誰が『結納品』だ?」クルエルの声が一帯の温度を急降下させた。「うちのお兄ちゃんを売買用の商品とでも思ってるわけ?」


[「よく言ったエル! 兄さんはお前のその忠誠心に涙が出るぜ!」]


「ひっ! い、今の言い方は……ただのプレゼント、そう! 謝罪のプレゼントです! 誤解しないでちょうだい!」夫人は青ざめて叫んだ。


クルエルは冷たい視線を送ったまま言った。


「なら、そのバイクの鍵を出しなさい」


「これだ!!」キ・マングロンドは震える手でキーを差し出した。


「さっさと失せろ」クルエルが冷たく言い放つ。


二人は命からがら逃げ出していった。


クルエルはカラに向かって柔らかく微笑んだ。「お兄ちゃん、お疲れ様」


「やっぱ我が弟が一番頼りになるぜ!」


[「お前の弟は世界に一人しかいないけどね」]


[「うるせえな!」]


「あ、あの……キ・カラ様、私のこのお腹だけは……!」キ・マングロンドが泣きつく。


「エル、このおっさんの腹を治してやってくれ。さすがに可哀想だからさ」


クルエルは小さく溜息をつき、バイクの鍵をカラに投げ渡すと、渋々キ・マングロンドの治療に向かったのだった。


【回想おわり】


さて、現実に戻ろう。


ボロボロのバイクに跨がりながら、カラは自分のヘルメットの文字を眺めていた。そこにはスプレーで雑にこう書かれている。


『ゴ・ガイブ:お前が動けないなら、俺たちが運ぶ。ただしターゲットは人間以外!』


「テム、一番幽霊の溜まりそうなルートを指定してくれ。クルエルのスキンケア代を稼ぐために、スピード重視でクアンを回収しなさいっての!」カラが、まるで風邪を引いた老人のような咳をするバイクのエンジンをふかしながら言った。


[通知!『異界Googleマップ』のルート案内を開始します。第一号の乗客候補を発見:木陰のランデュ木エリア(墓場の裏)。依頼者:ノッペラボウの奥様。クレーム:ずっと立ちっぱなしで足がパンパンなので、最新のK-POPダスターショップに行きたいとのことです]


「ノッペラボウ? いつものレイコさんじゃないのか?」


[違います、お荷物さん。今回の客はレイコさんの親友、妖怪界の若手ホープですよ]


[「よしきた、お迎えに行くぜ、ノッペラボウのお姉さん!」]


カラはバイクを走らせ、指定されたランデュ木の根元に到着した。そこにいたのは、顔のパーツがすべてツルツルに消え去ったノッペラボウの女性だった。彼女は地面にペタリと座り込み、土まみれの足を一生懸命マッサージしている。


「お客さん、『ゴ・ガイブ』ですか? 『美人ノッペラボウ様』でお間違いないでしょうか?」恐怖心ゼロのカラが声をかける。とっくにモンスター級の借金や家賃滞納に比べれば、顔のない幽霊なんてただの通行人レベルだ。


ノッペラボウは驚いたように振り返った(顔はないが雰囲気でわかる)。「あら、お兄さん! 助かったわー、足がパンパンなのよ。昨夜、YouTuberと一緒にホラー動画の撮影で夜通し走らされてさ。契約では『ただ立って脅すだけ』って話だったのに!」


「よくある話ですね、妖怪の労働搾取ってやつは。さあ乗ってください! 顔のパーツがなくても交通ルールは厳守ですから、ヘルメットはちゃんと被って!」カラは無造作にヘルメットを押し付けた。


道中、その光景はあまりにもカオスだった。カラが平然と、顔のない妖怪を後ろに乗せて爆走しているものだから、途中ですれ違った村人たちは泡を吹いて気絶するか、家を固く施錠して震え上がるしかなかった。


「お兄さん、スピード出しすぎ! 私のツルツルの頭が風で持ってかれそう!」


「うるせえ! これでも安全運転だ! 自力で飛ぶよりエネルギーの節約になるだろ!」


[罪悪ポイント:システムの処理回路がバグを起こしています。人間以外の幽霊をバイクに乗せる行為は「善行(困った妖怪を助ける)」なのか「大罪(異界の交通法違反)」なのか判別不能です。まあ、いいでしょう、続けなさいお荷物さん]


[「黙れテム! これぞ真のインクルーシブ・タクシーだろ!」]


しばらくして、目的地である「霊界ダスターショップ」に到着した。


運賃代わりに、新鮮なカンティルの花の束と、システムからの「天界ルートのボーナスポイント」をゲットしたカラ。


一息つく間もなく、システムが再びけたたましく鳴り響いた。


[第二の依頼:ミイラ男(空き地エリア)。目的地:村の『ポコ(幽霊)たちの茶話会』。備考:足が包帯で縛られていて自力でバイクに乗れないので、うまく荷物のように積んでください]


カラは呆然とした。「テム、ミイラ男はどうやって乗るんだ?! 後部座席に縛り付けたら、どう見てもただの巨大なロールマットだろ!」


[それはあなたの腕の見せ所ですよ、お荷物さん。星5つの評価があなたのウーバーイーツ……いやゴ・ガイブの人生を左右しますからね]


[「くそっ、何でもありなら、俺のやり方でサッサと片付けてやるよ!」]


カラの前に立っていたのは、ミイラ男のファリスだった。全身が包帯でガチガチに固定されており、膝を曲げることができない。このままでは後ろに乗せても前が見えない。


「なあファリス、お前ちょっと横向きに座れないのか?」カラが尋ねる。


「横向き? そんなことしたら女性としての恥じらいが……って、生前はゴリゴリの男だったわ。でも落ちて死んだらどうすんだよ!」


「お前、記憶喪失か? もう死んでるだろが!」


「あ、そうだったわ、テヘペロ」


カラは深くため息をつき、ミイラ男をしげしげと眺めた。どう見ても特大の巻き寿司か、布をグルグル巻きにした冷凍マグロにしか見えない。


「ファリス、すまねえな。仕事の安全と顧客の快適さのためだ。その下の包帯の縛り目をちょっとほどくぞ」カラがファリスの包帯の端に手をかける。


ファリスはブルブル震えた。「ちょ、ちょっと待て! そこは僕のプライバシーが……いや、ほどいたらバラバラになるんじゃ!」


[「いいから黙れ! 着いたらもう跳ね回らなくて済んだんだから、ストリートファッションへの大改造だと思えよ! 露出対策はバッチリだから安心しろ!」]


シュシュッ! スパッ!


カラが手際よく包帯の結び目を緩めると、ミイラの布がふわりと広がった。これならバイクのシートに跨가ることができる。


「ファリス、お前その包帯をしっかり体に巻き直せよ! 風でほどけたら丸裸の変態妖怪になっちまうぞ!」


「わ、分かったよ……!」ファリスは慌てて布を体に巻きつける。


「ほら、これかぶれ!」カラはマンクドウド夫人から借りたピンクのボゴーヘルメットをファリスの頭に被せた。包帯だらけの頭に鮮やかなピンクのヘルメットが鎮座し、あまりにもシュールな見た目になった。


[罪悪ポイント:急上昇中! 妖怪の死体に対する不法改造を検知しました。しかし「狂気のファッションセンス」ポイント+500。おめでとうございます、あなたは公式に「バルザックの異界スタイリスト」に任命されました!]


「お兄さん……俺、なんかこう……頭だけファンシーなスウィーツの包み紙みたいになってないか?」ファリスが情けない声でつぶやく。


[「うるせえテム! さあ行くぞファリス、しっかり捕まれ!」]


カラがアクセルを全開にする。包帯の下の部分がほどえているため、バイクがスピードを上げるたびに白い布がバサバサと激しくたなびいた。


夜の村を巡回していた村の自警団おじさんたちが、その光景を目撃して大パニックに陥った。


「おい、見ろ! なんか白い怪物が空飛んでいるぞ! 強盗か?! 幽霊か?!」村のオジサンが叫びながら持っていた布団を投げつける。


「強盗じゃねえ、妖怪だ! これぞ新時代の『ゴ・ガイブ』、我が国のイノベーションだぜ!」カラは通り過ぎざまにドヤ顔で叫んだ。


「最近の若者は、幽霊をタクシー代わりにするなんて狂ってやがる……」オジサンは恥ずかしさのあまり顔を赤らめた。


世間がどう思おうと知ったこっちゃない。夜の闇を切り裂きながら、カラとピンクヘルメットのミイラ男は、最高にファンキーな異界のナイトライドを爆走していくのだった。

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