第73話 冷や汗が止まらない陸斗
「ふむ、中々美味しいな」
「ですね。こういうお祭りみたいな食べ物をあんまり食べたことが無いので楽しいですよ」
俺達の手には先ほど文化祭内でやっているクラスの出し物にあったチョコバナナとりんご飴を食べていた。
俺がチョコバナナで乃々がりんご飴だ。
幸せそうに乃々はりんご飴をペロペロ舐めていた。
可愛い。
「チョコバナナ食べるか?」
「え、いいんですか?」
「俺から言っといてダメって言うわけないだろ。ほら」
チョコバナナを乃々の方に差すだす。
彼女は少しだけ遠慮がちにパクっとチョコバナナを頬ばった。
なんだか小動物みたいで凄く可愛い。
「美味しいですね。チョコバナナ初めて食べました」
「ならよかったよ。こういう出し物でチョコバナナは結構定番だからな」
夏祭りでもチョコバナナの屋台は見かけたけど、買う事は無かったからな。
ここで買えたのは良かったのかもしれない。
「そうなんですね。凄くおいしいです。ありがとうございます!」
「口元にチョコついてるぞ」
彼女の口の端に着いたチョコを指で掬って着いたチョコを食べる。
学校の出し物程度と侮るなかれ。
この学園が金持ちしかいないからなのか、多分だけど相当に高いチョコを使っているのかかなりおいしい。
「あ、ありがとうござまひゅ」
「なんでそんなに顔を赤くしてるんだ?」
「……陸斗くんは本当に鈍感さんです。少しは自分の行動を自重してください!」
乃々はそう言いながら怒って先に歩いてしまった。
俺は何が何だかわからずに、彼女の後を追う。
そんな俺たちの様子を周囲の人たちは何故だか微笑ましそうに眺めているのだった。
◇
「いらっしゃいませ! 陸斗様、お嬢様」
「「「いらっしゃいませ~」」」
昼を過ぎたくらいに再び菫のクラスのメイドカフェを訪れた俺たちは手厚い歓迎を受けていた。
ここまで手厚くもてなされると流石に居心地が悪くなってくる。
「こちらにおかけください。ご注文がお決まりになりましたらお呼びください」
菫はメニュー表を置いて、別のテーブルの方に向かっていった。
流石と言うべきかその所作は凄く綺麗で見惚れそうだった。
「……陸斗くん? 菫をそんなに見つめてどうかしたんですか?」
「いや、相変わらず所作が綺麗だなと思ってな」
「それだけですか?」
「それだけだよ。なんでそんなに疑ってくるんだ?」
いつにも増して疑っているような表情で見つめられたので何か悪い事をしてしまったのかと不安になってしまう。
「別になんでもないです。それよりも早く注文を済ませましょう」
「あ、ああ。わかった」
そうして二人でメニュー表を覗き込むのだが、何故だか冷や汗のようなものが止まらなかった。




