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天才ヤンデレお嬢様の好感度がなぜかカンストしてる件  作者: 夜空 叶ト


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第72話 メイドカフェは次の機会に

「何か問題発生でしょうか?」


「高確率でそうだろうな。面倒だけど、仕事だし行くか」


「はぁ、まだ陸斗くんと文化祭回れてないのに。こんな初めから問題が起きるなんて」


 俺たちは気が重くなりながらも悲鳴がしたほうの教室にむかう。

 そこのクラスの看板にはメイドカフェとでかでかと書かれており、中を覗いてみればメイド服に身を包んだ女子生徒たちが見えた。


「なあ、ここって菫のクラスだよな?」


「ですね。メイドカフェをやっているとは思いませんでしたが、菫がいるのならかなりのクオリティになっていそうですね」


「だよな。菫って本職だし」


 最近忘れがちになってしまうけど、菫は本物の天城家に仕えるメイドさんだ。

 その彼女が指導をしているのならメイド服を着ている女子生徒たちもかなりメイドらしい立ち振る舞いができるのではないだろうか。


「でも、悲鳴ってこの教室の中から聞こえてきましたよね?」


「ああ、聞き間違いじゃなければな」


 少し人だかりが出来ていることからそれは間違いないだろう。

 周囲に文化祭運営委員会の腕章をつけている人間もいないからこの問題は俺たちが解決しないといけない。


「では、行きましょうか。菫が問題に巻き込まれれいないと良いのですが」


「だな。まあ、とっとと問題を解決して文化祭を回ることにしようか」


 俺はため息を一つつきながら菫の教室に足を踏み入れた。

 中はクラシカルな喫茶店と言った内装が広がっている。

 結構こだわっていそう……というか替えがかけられていそうだ。

 絶対に生徒会から降りた予算以上を使っていそうだった。

 流石は金持ち高校。


「運営委員です。何か問題が発生しましたか?」


 教室内にいた女子生徒に乃々が素早く声をかけに行く。

 相変わらずの手際の良さに感心するけど、問題が発生しているのは聞くまでもなかった。

 髪を金色に染めたガラの悪そうな男数人が、同じく金色の髪をハーフアップにした女の子の手を乱暴に掴んでいた。


「まずはその手を離せ。話はそれからだな」


 金髪ハーフアップの少女、菫の腕を掴んでいた男の手首を掴んで捻り上げる。

 声を上げて菫から手を離す。


「陸斗様!? どうしてここに?」


「巡回がてら菫のクラスに寄ろうって乃々と話してたんだよ。まさか、こんな問題が起こるとは思ってなかったけどな」


 俺は先ほど手首を捻り上げた男とその連れ二人に視線を向ける。

 制服を着ていないし、俺たちよりも歳が上のように見える。

 だが、社会人と言う風貌にも思えないのできっと大学生だろう。


「た、助けていただきありがとうございます」


「いいって。これが仕事だし。それよりも、乃々、悪いけど教員を呼んできてもらってもいいか? どうやら、相手さんは簡単には引き下がる気がなさそうだ」


 男達は指をポキポキと鳴らしながら俺に近づいてくる。

 どうやら、相当に頭に血が上っているらしく顔が真っ赤になっていた。

 完全に穏便に事を済ませることは不可能のようなのでここは時間を稼いで先生方に何とかしてもらう事にしよう。


「わかりました。気を付けてくださいね」


「ああ。ありがとうな」


 菫が教室を出て行ったのを確認してから俺は臨戦態勢を整える。

 三対一、教室内の奴らはすっかり怯え切っていて増援は期待できない。

 はぁ、ヤンキーは卒業したんだけどな。

 喧嘩とかもできることならしたくないって言うのに。


「ガキ……よくもやってくれやがったな。覚悟出来てんのか?」


「へへ、ボコボコにしてやんよ」


「腕が鳴るなぁ」


 取り巻きを引き連れて俺を囲んでくる三人。

 全く、なんでこんな品のない奴らの入場が許可されたのか。

 今度学校の管理体制に文句を入れてやる。


「はぁ、面倒だけどやるしかないよな。仕事だし」


 ああ、なんだか懐かしい。

 そう言えば、中学の頃にもこんな感じの不良を相手にしたことがあった気がするな。


「何ごちゃごちゃ言ってんだよ!」


「おっと」


 一人が我慢できなくなったのか大ぶりに殴り掛かってくる。

 かなり軌道が読みやすくて躱すのはたやすい。

 この場には目撃者がいっぱいいるからわざわざ殴られてやる必要もないから楽でいいな。


「大学生にもなって高校生相手にナンパとか少しダサいぜ?」


 言いながらがら空きの腹部に膝蹴りを叩き込んで距離を取る。

 腹に一発貰った男はその場にうずくまって悶絶していた。

 まあ、吐くほどの強さで蹴っては無いから大丈夫だろ。

 吐かれたら掃除とか大変そうだし。

 せっかくの菫のメイドカフェを台無しにするのはこちらとしても面白くはないしな。


「て、てめぇ何もんだ!」


「その動き、ただの高校生じゃないだろ」


「何者かって、そんなドラマでしか聞いたことないセリフを言われる日が来るなんて思わなかったな」


 どう考えても普通の日常生活を送っていたらまず聞くことのないフレーズが聞こえてきてびっくりする。

 でも、何者かと聞かれたら答えてあげるのが筋だろう。


「俺はただの高校生だ。というわけで、後はお願いしゃ~す」


 ちょうど教室に入ってきた筋骨隆々の男性教員二人に残りの二人を任せることにした。

 今回の俺の目的は何も喧嘩に勝つことではない。

 乃々が教員を呼んで戻ってくるまで時間を稼げばいいのだから。


「ちょっと、2人ともこっちでお話ししましょうか」


「あ、え?」


 二人と伸びている一人は二人の男性教員によって引きずられるようにして連れて行かれていた。

 あんな見た目の教員に連れて行かれるなんてお気の毒に。

 まあ、こんな金持ち学園の生徒に気軽に手を出そうとしたことがあいつらの間違いだな。

 うん。


「陸斗くん、怪我はないですか?」


「ないよ。ちょっとやんちゃなお兄さんたちの相手をしてただけだから」


 相手は完全に俺のことを見下してたし、油断しまくっていた。

 そんな相手に後れを取るほどなまってはいない。


「ありがとうございます陸斗様。それとご迷惑をおかけして申し訳ありません」


「菫が謝るような事じゃないよ。それよりも、その服凄く似合ってる。可愛いよ」


 普段から着ているメイド服とはまた意匠が違う。

 可愛い風のメイド服を着ている菫に素直に感想を伝えると彼女は消え入りそうな声でありがとうございますと呟いた。


「陸斗くん、どうします? 今からこのメイドカフェを回るって雰囲気でもなくなってしまいましたが」


「だな」


 周囲は依然として混乱しており、今のままでは本来のクオリティを楽しむことは難しそうだった。


「じゃあ、昼過ぎにまた来るか。そのころにはもとに戻ってるだろうし」


「賛成です。菫、大変でしょうけど頑張ってね」


「ありがとうございますお嬢様。お二人が来るまでには完璧に対応できるように立て直して見せます」


 菫が深々と俺たちにお辞儀をしてるのを確認したのちに俺と乃々は別の教室の巡回に戻った。

 早速事件に遭遇するという幸先の悪さは感じたけど、菫に何もなくてよかった。

 そう思う事にしようかな。

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