第70話 文化祭前夜
「なんとか間に合いそうだな」
「ですね。結構急ピッチで進めましたけど大した失敗もなさそうで安心しました」
「だな。まあ、男子連中はかなり変なコンテストを開催してたけどな」
男子たちは誰が料理担当をするかでかなりもめていた。
理由は簡単で、料理担当になってしまうとキッチンになる教室に籠ることになるため女子の浴衣姿が見れないのだ。
そのため、みんな料理担当をやりたがらずじゃんけんで熾烈な戦いが繰り広げられていた。
「そうなんですか?」
「ああ。女子は結構平和そうだったな」
「ええ。これと言った問題もなく接客担当とシフトは決まりましたよ。皆さん真面目で本当に助かりますね」
「男子連中ももう少し真面目に働いてくれたらいいんだけどな」
でも、男子たちもくだらない事でうだうだ言ってはいたけど決してサボったりするような連中はいなかったのでその点はありがたい。
それもこれもいい感じに男子たちを誘導してくれた雄介のおかげではあるのだが。
「ついに明日ですね。文化祭」
「だな。俺たちは見回りだったか?」
「はい。当日は腕章をつけて校内の巡回です。問題が発生したら教員や巡回中の風紀委員に連絡するのが主な役割です」
「俺達退屈過ぎないか?」
いくら何でも文化祭当日に見回りだけで終わるというのは寂しすぎではないだろうか?
もう少し文化祭をちゃんと楽しみたいのだが……
「そこら辺は大丈夫ですよ? 先生たちもそこまで鬼じゃないですから。ようは文化祭を回りながら問題が起ったら対処するというだけですので」
「ああ……なるほど」
普通に文化祭を回って楽しみつつ、問題が発生したら対処するという事は問題が発生しなかったら普通に文化祭を回れるという事か。
中々に良い役職なのかもしれないな。
「絶対に菫のクラスには行きましょうね!」
「ああ。結局どんな出し物をやるのか教えてくれなかったからな。結構気になってるんだ」
本人に聞いてみたら断固として教えてくれなかった。
プログラムにに???と記載されていたから本当に何をやるのかわからない。
生徒会と教師陣くらいしか内容は知らないのだろう。
「私もです。まずは菫のクラスを回って後はブラブラ全体を回りましょうか」
「だな。そう言われると結構楽しみだ。乃々と一緒に回れるのも楽しみだし」
「……わざとやってますか?」
「何のことだよ」
俺の膝の上に頭をのせている乃々はむぅっと頬を膨らませながら抗議してくる。
何をわざとしているというのか。
あまりわからないけど、本気で怒っているわけではなさそうなのでひとまずは良しとしよう。
「わからないならいいです。全く、鈍感なんですから」
「何を怒っているのかわからないけど、あんまり怒んないでくれよ。乃々は怒っている顔よりも笑っている顔の方が可愛いからさ」
俺は自分の本心を乃々に告げて頭を撫でる。
やはり手入れは行き届いているようで凄くサラサラな撫で心地で撫でているこっちが幸せな気分になってくる。
「なんだかごまかされている気がしないでもないですけど、撫でられるの気持ちいいので許してあげます。なのでもっと撫でてください」
むふふんと笑顔を浮かべながら乃々は更に頭を撫でてとねだってくる。
正直明日の文化祭も楽しみだけど、こうやって乃々と過ごす日常だってかけがえのない物なんだ。
こんな幸せな日常を守っていきたい。
できることならずっとこんな風に過ごしたいと心底思うのだった。




