第64話 告白してきたのは高飛車お嬢様?
「最近、お嬢様の機嫌が凄く良いんですよね。何かしたんですか? 陸斗様」
「別に特別な何かをした覚えはないんだけどな」
次の日の昼休み、俺は何故か菫に問い詰められていた。
ちなみに今日は乃々はクラスメイト達と弁当を食べているから今は俺と菫の二人である。
「そうなんですか? う~ん、じゃあなんであそこまで上機嫌なんでしょう。何かあったとしか思えないのですが?」
「それを俺に言われてもな。そう言うのは菫の方が詳しいんじゃないのか?」
付き合いの長さで言えば俺は菫に遠く及ばない。
彼女の些細な変化に一番気が付くことができるのはおそらく、菫のほかにはいないのだろう。
「それはそうかもしれませんけど」
「ちょっといいかしら?」
「……俺か?」
菫と会話をしていると、いきなり見知らない女子生徒から声をかけられた。
ネクタイの色的に学年は同じ二年生だ。
だけど、今まで一回も話したことが無い気がする。
かなり小柄で紫色のショートカットに琥珀色の瞳をした子だ。
菫や乃々と比べてしまえば見劣りするものの十分に可愛いと称される部類に入る人だと思う。
「あなた以外いないでしょう。まったく、これだから愚図な平民は嫌いなんです」
「……」
初対面なのに、かなりひどい物言いである。
それに平民とか言ってくるという事は彼女はきっと、名家の生まれか財閥の令嬢とかそんなところだろうか。
まったく、厄介この上ない。
「少し話がありますの。ついてきてもらってもいいかしら?」
「俺は今友人と飯を食ってるんだ。出直してくれないか?」
素直にこいつのいう事を聞くのも癪だし、何よりも俺は今菫と昼飯を食べているのだ。
礼儀を弁えない奴に合わせてやる必要性を感じない。
「何を言っていますの? この私が直々に声をかけているんですからついてきなさい。そんなメイド風情に構っていないでね」
目の前の女は菫を一瞥してそう言った。
明らかに見下している態度に腹が立ったけど、ここで事を荒立てては逆に菫に迷惑をかけてしまうかもしれない。
これ以上面倒なことになるのを避けたかった俺はこいつについていくことにした。
「すまん、、菫。ちょっと行ってくる」
「は、はい」
それだけ言って、俺は立ち上がってこの女の後に続く。
「わかればいいんですよ。では行きますよ」
「へいへい」
面倒だが仕方がない。
まあ、こんな奴が持ち掛けてくる話なんてどうせろくでもない話だろうけど聞かないという選択肢は俺にはないらしいので聞くだけは聞くとしよう。
◇
「単刀直入にいいますわ。宮野陸斗あなた私と付き合いなさい!」
ビシッと人差し指を俺に向けてくる。
この女は人に指をさすなと教わらなかったのだろうか。
呆れて言葉も出ない。
「なんでそうなるんだよ」
場所は屋上。
シチュエーション的に見れば告白なのだろうけど、こいつの場合そんな上等なものに感じない。
ほぼ確定で面倒事だろう。
一体俺が何をしたって言うんだ。
「なんでもいいですわ。あなたの答えなんて一択でしょう?」
「確かにそうだな」
確かに俺がこいつにする返答は一択になる。
というか、この答え以外に存在しないのだ。
「じゃあ、今日から私の恋人としてお願いね」
「あ”? 何言ってんだよ。断るに決まってんだろ。何寝ぼけたこと言ってんだよ」
こいつと付き合うくらいなら一生独身でいたほうがマシだ。
こんな傲慢で人のことを考えられない奴なんかごめんだ。
俺にだって選ぶ権利はある。
「なんで断るのか聞いてもよろしくて?」
「いや、どう考えても断るだろ。お前みたいな高飛車な奴の恋人になるなんて死んでもごめんだ。めんどくさい事この上ない」
今の俺は誰かと付き合う気がないのに加えて、こんなにもやばい奴に告白をされても一ミリも心は動かない。
そもそも、こいつは菫の事を見下した。
こんな奴の頼みを聞いてやる義理が俺には全くもって存在しなかった。
「そ、そんなことをこの私に言いますの!?」
「どの私かは知らないけど、俺はあんたと付き合う気なんて全くない。そういうわけだからもう戻ってもいいか?」
こんな奴の相手をしてるほど暇じゃないし、菫を独り待たせておくのも申し訳ないしな。
まったく、なんでこんな面倒なことに巻き込まれないといけないんだよ。
「言いわけがないでしょう! あなたには私と付き合う以外の選択肢がなくてよ!」
「はぁ、マジで面倒だなあんた。しかも俺はあんたの名前すら知らないんだけど?」
ネクタイの色で学年を判別しただけで、彼女の所属クラスや名前といった情報を俺は一切知らない。
そんな名前すら知らない相手と付き合おうと思えるほど、俺は酔狂じゃない。
「あら、自己紹介がまだでしたわね。私は古御門 由良といいますわ」
「あそ。俺は宮野陸斗。まあ、あんたは知ってると思うけどな。それじゃ」
手をひらひら振って少し肌寒い屋上を後にしようとしたけど、腕を掴まれて阻止された。マジでなんなんだ。
「お待ちなさい! 私と付き合うと言うまであなたの事を離しませんわよ」
「マジで面倒だな。なんでお前はそこまで俺と付き合いたがるんだよ。好きってわけでもないだろ」
こいつのさっきの口ぶり的に絶対に俺のことを好きという事はありえない。
のであれば、俺を利用したいと考えるのが普通だろう。
だが、こんないかにも上流階級の人間が俺を使って何をしたいというのか。
全く想像ができなかった。




