第62話 イチャイチャタイム
「ふむ、実行委員の仕事は案外簡単な物なのですね」
「ま、すごい複雑な仕事をするわけではないからな」
一回目の文化祭実行委員会を終えてから俺たちはいつものように俺の家でくつろいでいた。
まあ、勉強を教えてもらってもいるんだけど今は休憩時間だ。
「なんだか拍子抜けです。もっと、難しくて楽しい物かと思っていました」
「そんなわけないだろ。使い走りの雑用みたいなもんだからな」
主な仕事と言えば、クラスの出し物を決めたり出し物の申請を出したりなどの書類仕事と当日の見回りなどの仕事だ。
他にも有志の出し物の監査などもあるが、それを言い始めると仕事量が膨大になるからカウントしないことにする。
「むぅ、期待外れです。まあ、長い時間宮野くんと一緒に居れるのは嬉しいですけど」
「下心丸出しじゃねぇか。そんな事よりもクラスの出し物だよな。次のホームルームでアンケートとか取るか」
「ですね。私も特段やりたい出し物があるわけではないので」
「俺もだ。いい案が上がると良いんだけどな」
去年は何をやったか。
あまり記憶には残っていないな。
今年は記憶に残るような面白い出し物が出来ればいいんだけど。
それはまあ、クラスメイト達の案の中に良い物があることを祈ることにしようか。
「宮野くん、なんだか楽しそうですね」
「そうか? そんな自覚は無いんだが」
「楽しそうですよ。なんだか柔らかい表情をしていますし」
「それは天城と一緒に居るからかもしれないな」
なんだか、二人っきりでこうして俺の部屋でゆっくり話すのは懐かしいような気がする。
まったりできるし、落ち着くからこの時間は嫌いじゃなかった。
「嬉しい事を言ってくれるじゃないですか。お礼です。えい!」
天城は立ち上がって俺に抱き着いてきた。
飛びつくようにして抱きついてきたから一瞬バランスを崩しかけるがなんとか立て直す。
「お礼って、天城が抱き着きたいだけだろ?」
「でも、私がこうやって抱き着くのなんてあなたくらいなんですよ? 用は特権みたいなものです」
「……そう言われると悪い気はしないけどな」
女の子特有の甘いにおいがするし、俺よりも小さく華奢な身体は抱きしめていて心地がいい。
できることならしばらくはこうしていたいくらいだ。
「えへへ、こうやって抱きしめられるとやっぱり安心します。本当に記憶戻ったんですよね?」
「もう、二か月経ってるのにそんなこと聞くのか?」
「ふと、不安になっちゃうんですよ。明日になったら忘れられたりしないかなって」
「しないよ。もう、天城のいや、乃々のことは忘れないよ」
そうそう記憶をポンポン無くすわけにはいかないし、もう乃々の事を忘れるつもりもない。
乃々は俺にとってかけがえのない存在だから。
「あ……名前」
「嫌だったか?」
「ううん。嬉しいです」
にへっと乃々は天使と見間違うような笑みを見せてくれる。
本当に可愛いな。この子。
ヤンデレ気味なのがたまに傷ではあるけど、それはそれで可愛いからまあいいか。
「ならよかった。ま、文化祭実行委員二人で頑張ろうな」
「はい! 陸斗くんとなら頑張れそうです!」
二人して抱きしめあいながら文化祭に向けて頑張る事を決意するのだった。




