第61話 文化祭実行委員
「で、なんでまた来たんだよ。しかもその大量の合鍵まで用意してさ」
「ええ~愛する旦那様に会いたいと思うのはおかしな話ですか?」
「まず俺は天城の旦那じゃないし。今日は用事があるとか言ってなかったか?」
だから、今日は久しぶりに雄介と一緒に帰ってきたというのに。
家に帰ったらこれなのだからいつになっても心が休まらない。
まあ、なんだか慣れてしまった自分がいるわけなんだけどな。
「その用事がこれです! サプライズってやつですよ。ねっ! 菫」
「はい。お嬢様がどうしてもこのサプライズをしたいというので。ご迷惑をおかけしてもうしわけありません」
「別に菫が謝るような事じゃないさ。それにこんな風なやり取りにはもう慣れてるからな」
夏休みが終わり、すでに二か月が経とうとしていた。
俺たちは今まで通り家に行ったり、逆に来てもらったりしながら学校生活を送っていた。
季節は既に秋に差し掛かっており、夏の暑さはなりを潜め始めていた。
「宮野くん! そんな事よりも今年の文化祭はどうしますか!? 一緒に実行委員になりませんか?」
「……その話か」
実は、この話は少し前にもされていたのだが個人的には勉強をする時間が減りそうだからあまり乗り気ではなかった。
一度は断ったのだが天城はまだあきらめていないようだった。
「お嬢様、陸斗様にもいろいろ事情はあるんです。我儘を言うのは良くないですよ?」
「でも、来年は受験で今よりも遊べないだろうし今年の文化祭が全力で遊ぶ最後のチャンスじゃないですか?」
「……はぁ。わかったよ。じゃあ、明日一緒に立候補しようか」
「え!? いいんですか?」
天城は俺が許可を出すと花が咲き誇るかのように笑みを浮かべる。
ま、ここまで喜んでくれるんならよかったのかもな。
「良かったですねお嬢様」
「うん! えへへ」
年相応の女の子の笑みを浮かべながら天城は菫とキャッキャッとじゃれ合ってた。
美少女がじゃれ合ってるのを見るのはやはり良い物だな。
そんなバカみたいな感想を浮かべながら俺は文化祭について思いを馳せるのだった。
◇
「にしても、お前が文化祭実行委員ねぇ~どんな心境の変化だよ」
「別にそんなんじゃねぇよ。俺は天城に誘われたからやっただけだ」
翌日、文化祭実行委員に立候補した俺たちは今日の放課後にさっそく集まりに参加することになった。
普段なら絶対に立候補しないであろう俺が立候補したことを珍しく思ったのか昼休みに俺は雄介と屋上でだべることになったのだ。
「へぇ~前なら誘われても絶対に実行委員なんかしなかっただろうに。お前もなんやかんや変わったのかね」
「どうだかな。まあ、確かに昔よりは丸くなったとは思うけど」
雄介の言う通り、昔なら絶対に何を言われても実行委員なんかやらなかっただろう。まあ、親孝行も大切だけど今を楽しむことも大切だもんな。
こんな考え方、天城と菫に会わなかったら絶対にすることは無かったんだろうな。
「絶対丸くなったよ。まあ、俺も文化祭は楽しみたいから全力で頼むぜ? 文化祭実行委員様」
「できる限り頑張るさ」
玲瓏学園は金持ち学校なだけあって、文化祭の規模はかなり大きなものになる。
だから、生徒の情熱もかなり高く例年大盛り上がりをしている。
そんな中で俺が考えないといけないのは天城をどうやって制御するかだ。
彼女の事だから、とんでもない事をやろうとしかねない。
「はぁ、安請け合いしていいようなものじゃなかったかもな」
そう言いつつ、俺は自分の口角が少しだけ上がっているのを感じるのだった。




