第60話 両手に花
「それよりも、これリンゴ飴です! 二人ともどうぞ!」
「ありがとう」
「ありがとうございます。お嬢様」
天城からリンゴ飴を受け取って一口舐める。
久しぶりに食べたけど、結構甘いなこれ。
リンゴ飴なんて食べたのマジで何年ぶりだろう。天城とこうして出会わなかったらりんご飴を食べることは無かったかもしれないな。
「おいしい~」
「美味しいですね。わたくし、リンゴ飴初めて食べました」
「そうなのか?」
「まあ、菫は幼少期にはメイドとしての英才教育を受けていましたから祭りに行く時間なんて無かったですからね」
なるほど。
確かに、代々使用人やメイドの家系なら幼いころにそう言う教育を受ける物なのか。
やっぱり、俺とは住む世界が違うんだな。
「昔は、本当に大変でしたね。常に礼儀作法を叩き込まれたり、勉強させられたりと。今思い返してみれば、自由時間なんてものは寝るとき以外無かったような気がしますね」
「……なんか、ブラック企業みたいだな」
「やめてくださいよ。うちの家の使用人をブラック企業の従業員扱いするのは」
「いや、だってなぁ」
流石に今の話を聞いてブラック企業じゃないというのは無理な気がするけど。
菫はそれでもめげずに頑張ってメイドになったんだな。
「ふぇ!? な、なんでいきなり撫でるんですか? 陸斗様」
「いや、頑張ったんだな~って思って。ついな」
「あ!? ズルいです! 私も撫でてくださいよ!」
菫を撫でていると天城から抗議の声が飛んでくる。
確かに片方だけ撫でるのは不公平か。
そう思って天城の頭も撫でる。
二人とも髪がサラサラしてて撫で心地が凄く良い。
「やっぱり宮野くんに撫でられるのは気持ちがいいですね」
「そう良い物でもないと思うんだけどな」
「いえ、そんなことはありませんよ! 陸斗様は撫でるのが凄くうまいんですから」
菫は声を大にしてそう主張していた。
俺はそうは思わないんだけど、2人がそう言うのなら俺は案外人のことを撫でるのが上手いのかもしれないな。
「そろそろ花火が始まりそうですよ」
「お! じゃあ、見やすい場所に移動するか」
雑談したりリンゴ飴食べたりしてたら結構時間が経ってしまったらしい。
俺たちは人混みをかき分けていい場所まで移動することにした。
これでいい感じに花火が見れると良いんだけどな。
そう思って三人で花火が見やすい場所に向かう事にした。
◇
花火は結構小規模で地元の花火大会の方が綺麗だったように思うけど、隣にいた二人が凄くはしゃいでいてそれを見ているだけで楽しかった。
何はともあれ、この花火大会を最後に俺たちの夏休みはつつがなく終了した。




