第三章:愛玩という名の共依存
モデルの未来を失い、自分の価値を完全に見失っていた雫にとって、朱音のカプセルホテルは新しい檻であり、唯一の救いだった。朱音は、傷だらけの雫を「あたしだけの可愛いお人形(愛玩物)」として部屋の奥に囲い、世間の目から隠して飼育し始めた。
二人の間には、歪で強固な共依存のシステムが完成していった。朱音が外で自らの肉体を切り売りし、泥をすすって潤沢な薬と保護を雫に与えれば与えるほど、不思議なことに、雫の身体はかつての輝きを取り戻していった。肌の荒れは引き、自傷のケガも癒え、かつての「完璧な白」の美しさを、残酷なほど鮮やかによみがえらせていく。対照的に、雫の生存の熱量を支えるために夜の男たちに消費され続ける朱音の肉体は、日に日にボロボロになり、無秩序へと堕ちていく。
「あたしが外で痛みを引き受けるから、雫は綺麗なお人形でいて」
「うん、私は朱音だけの私になる」
そう囁き合い、薬物の酩酊のなかでお互いの境界線を溶かし合う二人。
朱音は雫が「惨めに震える弱者」であるからこそ全能感を得て愛することができ、雫もまた朱音の愛玩物になることで、現実の挫折から目を背けていた。
だが、雫が美しくなればなるほど、二人の本質は静かな違和感と共に急速に乖離していった。




