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第一章:剥がされた爪痕
それは、ある雨の日の凄惨な記憶から始まった。
当時十四歳だった朱音は、母親の代わりに渋々訪れた老人ホームの暗がりで、気の触れた大人のスタッフに襲われた。
逃げ場のない狭い部屋、獣のような息遣い、そして首元に深く突き立てられた、肉を引き裂くような男の歯型――。警察も大人も「お前にも隙があった」と事件を曖昧に処理し、首元に消えない「咬み傷」という呪いだけを残して、朱音を夜の街へと弾き出した。
彼女が十六歳になった年の新宿。薄暗いカプセルホテルの一室で、朱音は外で自らの価値を切り売りし、密売人リリエから薬を買う日々を繰り返していた。自らの肉体を消費し、その身を削るたびに、彼女の身体には青あざや新しい傷が不規則に増えていく。あの老人ホームの咬み傷をさらに醜い暴力で塗りつぶすように、朱音の肉体は無秩序の底へと損なわれていった。




