第五章:失われた光、消えぬ魂
次に雫が目を覚ましたとき、視界を覆ったのは、かつて自分が纏っていたどんな衣装よりも眩しすぎる、白い天井の光だった。鼻を突く消毒液の匂い。耳障りな医療機器の電子音。
そこは、徹底的に管理された病院のベッドの上だった。一命を取り留めたものの、自身の身体に触れた雫は、言葉を失うほどの衝撃に襲われる。包帯に巻かれ、傷つき、もう二度とあの完璧な『白』を体現するファッションモデルには戻れない、決定的に損なわれてしまった自分の身体。表の偶像としての価値を完全に失った現実を前に、彼女は音もなく涙を流した。
病院のセキュリティの壁に阻まれ、雫との連絡を完全に断たれたリリエは、灰色の雑踏の中にいた。
(僕は、また間違えたのだろうか──)
かつて妹の命を救えず、姉の熱を奪い、実家からも絶縁し、そして今、唯一守りたかった少女さえも奈落へ突き落としてしまった。激しいジレンマが、彼の胸をナイフのように抉る。
けれど、彼に立ち止まることは許されない。歩るくたびにカチ、カチと響く右足の痛みを感じながら、リリエは今日も、薬を求める客たちの待つ暗がりへと足を運ぶ。世間の正しさという光に背を向けたまま、他人の痛みを麻痺させるための薬を、彼は売り続ける。
互いに触れ合うことすらできなくなった、冷たい指先と、熱い背中。二人が交わした歪な体温の記憶だけが、鳴り止まない魂の叫びとなって、夜の深淵に消えていった。




