14/22
第二章:冷めない残響と、消えない渇き
翌朝、男が去ったベッドの上で、可奈は手に入れた現金を握りしめ、約束のファン仲間から無事にチケットを受け取った。解散ライブは大成功だった。ステージの上の推しは眩しく輝き、隣の席のファンと手を取り合いながら、可奈は人生で最高の熱量の中にいた。身体を売ったことへの後悔は微塵もなかった。あの瞬間、私は確かに救われたのだと、今でも本気で信じている。
しかし、ライブが終わり、グループが完全に消滅した後、可奈の身体に本当の地獄が訪れた。どれだけ時間が経っても、あの安ホテルの夜に強制注入された薬物の残響が、骨の髄まで凍りつくような激しい禁断症状となって彼女の肉体を襲うのだ。
推しという光を失った虚無感と、薬物が切れた瞬間の凄惨な絶望。二つの無秩序が、可奈の情緒の輪郭を完全に狂わせていく。一度きりで終わるはずだった境界線は、あの夜の男によって肉体側から強制的に破壊されていた。
しかし、あの夜の恐怖が呪いとなり、見知らぬ他者に生身の自分を晒すことは、可奈の精神にはもう不可能だった。それでも、壊された神経が求める薬物への渇きだけは、執拗に彼女を夜の深淵へと引きずり込んでいく。




