第九章 交差する想い
屋上のドアが開いたまま、
夕方の風が吹き込んでいた。
高橋悠斗と白石美月は、まだ手をつないだままだった。
そこに立っているのは
黒川蓮と橘さくら。
四人の間に沈黙が落ちる。
最初に口を開いたのは蓮だった。
「……そういうことか」
蓮の視線は二人のつないだ手に向いている。
悠斗は少し緊張したが、手を離さなかった。
美月も離さなかった。
それを見て蓮は小さく息を吐いた。
「美月」
「なに?」
「本気なのか?」
美月は少しだけ悠斗の手を握った。
そして静かに言った。
「うん」
その言葉は迷いがなかった。
蓮は目を閉じた。
夕日が彼の横顔を赤く染める。
そして苦笑した。
「そうか」
少し沈黙。
そして蓮は悠斗を見る。
「高橋」
「はい」
「美月のこと」
「ちゃんと守れよ」
悠斗は驚いた。
「え?」
蓮は肩をすくめた。
「幼なじみとして言ってるだけだ」
その言葉は少し寂しそうだった。
美月は言った。
「蓮くん」
「なに?」
「ありがとう」
蓮は少し笑った。
「礼言われることじゃない」
その時。
もう一人が口を開いた。
橘さくらだった。
「……なるほどね」
腕を組んでいる。
少し悔しそうな顔。
でも。
どこか納得しているようだった。
さくらは悠斗を見る。
「悠斗」
「なに?」
「もう決めたんだね」
悠斗は少し迷った。
でも。
美月の手を握りながら言った。
「うん」
さくらは少し目を閉じた。
そして大きく息を吐いた。
「そっか」
その声は少しだけ寂しかった。
でも。
次の瞬間。
さくらはいつもの笑顔になった。
「じゃあ」
「仕方ない」
悠斗は驚いた。
「え?」
さくらは笑った。
「だって勝負だったでしょ」
そして美月を見る。
「白石さん」
「なに?」
「悠斗、泣かせたら許さないから」
美月は少し驚いた。
でも。
小さく笑った。
「うん」
夕焼けがだんだん暗くなる。
空に最初の星が見え始めていた。
蓮はドアの方へ歩きながら言った。
「美月」
「なに?」
「転校のこと」
「ちゃんと話せ」
その言葉に悠斗は驚いた。
「え?」
美月は少し黙った。
そして小さく言った。
「……うん」
蓮とさくらは屋上を出ていった。
残されたのは
悠斗と美月。
夜の風が吹く。
美月は悠斗を見る。
少し真剣な顔。
「悠斗くん」
「なに?」
「話さないといけないことある」
悠斗は少し緊張した。
「転校のこと?」
美月は首を振った。
「それだけじゃない」
そして。
静かに言った。
「私」
「本当は」
「この学校に来た理由がある」
悠斗は驚いた。
「理由?」
夜の空に星が増えていく。
そして。
美月は言った。
「悠斗くんに会うため」
その言葉に
悠斗の時間が止まった。




