第七章 夜の電話
日曜日の夜だった。
高橋悠斗は自分の部屋のベッドに寝転んでいた。
スマホを見ながら、ぼんやり天井を見る。
頭の中には
今日一日ずっと同じことが浮かんでいた。
橘さくらの言葉。
「悠斗、白石さんのこと好きなの?」
そして自分の答え。
「うん」
悠斗は小さく息を吐いた。
(俺……)
(美月のこと好きなんだな)
そう思った瞬間。
胸が少し熱くなる。
その時だった。
スマホが震えた。
画面を見る。
白石美月
悠斗の心臓がドキッとする。
すぐに通話ボタンを押した。
「もしもし」
少し沈黙。
そして。
「悠斗くん?」
美月の声だった。
少し安心する。
「どうしたの?」
美月は少し迷ったように言った。
「起きてた?」
「うん」
「よかった」
その声は少し嬉しそうだった。
悠斗は笑った。
「電話くれると思わなかった」
美月は少し照れたようだった。
「なんとなく」
「声聞きたくて」
悠斗の胸がまた少し高鳴る。
しばらく二人は電話で話した。
学校のこと。
今日の映画。
ゲームセンターの話。
他愛もない会話。
でも。
それがすごく楽しかった。
その時。
美月が少し真面目な声で言った。
「ねえ」
「なに?」
「今日さ」
「蓮くんと話した」
悠斗は少し緊張した。
「そうなんだ」
美月は少し黙った。
そして言った。
「蓮くん」
「幼なじみなの」
悠斗は少し驚いた。
「そうだったんだ」
「うん」
「小さい頃」
「よく一緒に遊んでた」
美月は少し笑った。
「昔はすごく優しかった」
悠斗は聞いた。
「今は?」
美月は少し沈黙した。
そして言った。
「今も優しいよ」
「ただ」
「心配してるだけ」
悠斗は少しだけ胸がざわついた。
(幼なじみか……)
美月は言った。
「でも」
「私は」
「今この学校が好き」
「悠斗くんと話すの楽しいし」
その言葉を聞いた瞬間。
悠斗の胸が強くドキッとした。
悠斗は言った。
「美月」
「なに?」
少し沈黙。
悠斗は言おうとした。
「俺さ――」
でも。
その時だった。
電話の向こうで
ドアの音がした。
「ごめん」
美月が言った。
「お母さん呼んでる」
「また明日ね」
悠斗は言った。
「うん」
電話が切れる。
部屋は静かになった。
悠斗はスマホを見つめた。
さっき言おうとした言葉。
それは
好きだ
だった。
悠斗は少し笑った。
「……言えなかったな」
でも。
もう気づいている。
この恋が
本物だということに。
その頃。
美月は自分の部屋の窓の前に立っていた。
夜空。
星。
そして小さく呟いた。
「悠斗くん……」
その声には
少しだけ
迷いがあった。
なぜなら。
彼女には
まだ誰にも言っていない秘密があったからだ。




