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第十一章 残された時間

四月の終わり。


桜はもうほとんど散っていた。


校庭の木には、少しだけ花びらが残っている。


高橋悠斗は教室の窓からそれを見ていた。


「悠斗ー」


後ろから声がする。


振り向くと、佐藤健太だった。


「どうした?」


悠斗は少しぼんやりしていた。


「いや、なんでもない」


健太はニヤッと笑った。


「白石さんのこと考えてた?」


悠斗は苦笑する。


「バレてる?」


「バレバレ」


健太は机に座った。


「でもさ」


「最近楽しそうじゃん」


悠斗は少し照れた。


「そうかも」


その時だった。


教室のドアが開いた。


入ってきたのは


白石美月だった。


いつも通りの制服。


でも。


どこか少しだけ表情が違った。


席に座る。


そして静かに言った。


「悠斗くん」


悠斗は振り向いた。


「なに?」


美月は少し黙った。


そして言った。


「今日」


「話がある」


その声は少し真剣だった。


放課後。


二人はまた屋上にいた。


夕方の風が吹く。


でも今日は少しだけ冷たい。


悠斗は言った。


「どうしたの?」


美月はフェンスの向こうの空を見ていた。


そして。


静かに言った。


「転校」


悠斗の胸がドクンと鳴る。


「決まったの?」


美月はうなずいた。


「うん」


「来週」


悠斗は言葉を失った。


「そんなに早く……」


美月は小さく笑った。


「父の仕事」


「急に決まって」


風が強く吹く。


屋上に静かな時間が流れる。


悠斗は言った。


「あと一週間?」


美月はうなずく。


「うん」


悠斗の胸が苦しくなる。


やっと始まった恋。


でも。


すぐ終わってしまう。


美月は言った。


「悠斗くん」


「なに?」


「後悔してないよ」


悠斗は驚いた。


「え?」


美月は微笑んだ。


「会えてよかった」


「本当に」


その言葉は優しかった。


でも。


どこか寂しかった。


悠斗は言った。


「俺は」


「まだ終わりって思ってない」


美月が見る。


悠斗は言った。


「転校しても」


「会える」


「今はスマホもあるし」


「電車だってある」


美月は少し驚いた。


そして笑った。


「前向きだね」


悠斗は真剣だった。


「だって」


「好きだから」


その言葉を聞いて


美月の目が少し潤んだ。


「……うん」


夕焼けが空を赤く染める。


残された時間。


あと一週間。


でも。


その一週間が


二人にとって


一番大切な時間になる。

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