表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セヴァと人魚の物語  作者: 添木かもめ
2章 -過去-

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/24

23.いろはの話(7)‐サム視点‐

(※)本作品には、児童虐待・養育放棄の描写が含まれます。

幼少期の不遇な描写が苦手な方はご注意ください。


「パパ、いろはを助けて!!」

普段物静かで、めったに大声を出さないセヴァが慌てた様子で訴える。

この数ヶ月、いろは君はスマラグが入院中は必ず週末に遊びに来ていた。

今回来なかった事を何故疑問に思わなかったのか。

血の気が引くような感覚が襲ってくる。



「分かった。ひとまずいろは君の家へ行ってみよう。」

セヴァをチャイルドシートへ固定し、大急ぎでスマラグの家へ車を走らせる。


運転中、様々なパターンを想定する。

嫌な予感と冷や汗が止まらない。

手が冷たくなり、震える。

急げ、急げ。

誰かに連絡する余裕はなく、スマラグの家へ急ぐ。


家に到着すると車は一台もない。

セヴァが座るチャイルドシートのベルトを外し、車のドアを開ける。

「いいかい、君は絶対に家の中へ入っちゃだめだよ。

ここにいるんだ。何があるか分からないからね。

もしなにかあったら、隣の家へ行って助けを求めなさい。

ここで待ってるんだよ……!」

セヴァは無言で何度も頷く。



急いでインターホンを鳴らしに行く。

……出ない。

何度か押す、出ない。

玄関の扉を直接ノックし大声で呼びかけるが、何も反応がない。


庭の方へ周り、わずかに開かれたカーテンの隙間から家の中を覗く。

物が散乱し、空き巣が入った後のような、酷い有様だ。

以前スマラグが玄関から飛び出してきた時の事を思い出す。

あの頃から何も変わっていないようだった。



一瞬迷ったが、セヴァがいろは君としたと言う約束と、これまでの彼の状況を思い出し心を決めた。

「……ごめんなさい!!!」

庭に落ちていた大きめの石を拾い、窓に向かって思いっきり投げた。


バリーーーーン!と大きな音を立てて窓ガラスが割れる。

その隙間から何とか窓をこじ開け、中へ入る。

「いろはくん!!!いろはくん!!

おじさんだよ!サムだよ!いるかい!?」

家中に響き渡るような大声で呼びかける。

返事がない。早とちりだっただろうか……と不法侵入で捕まった後の事をうっすら想像し始めた時。

天井から、コツ、コツ、とゆっくり、微かにちいさな音が聞こえてきた。


急いで2階へかけあがり、いろはを呼ぶ。

いくつかあるドアが全て開けっ放しの廊下で、1つだけ、薄暗い位置に閉まっているドアがある。

あそこは、僕らが小さい頃秘密基地にしていた広めの物置部屋だ。

まさか、と思いながらもドアが開け放たれている全ての部屋を急いで確認するが彼の姿は見当たらない。



「いろはくん!?いるの!?」

物置のドアの前で呼びかける。

……自分の心臓と呼吸音がうるさかった。

耳を研ぎ澄ませ、返事を待つ。

先ほどと同じ、コツ、コツと音が聞こえてきた。

ドアを開けようとするが、鍵がかかっていて開かない。


僕は身体は大きいが、乱暴なことはしたことがない。

ガラスを割ったのだって、さっきが初めてだ。

いつもおしゃべりないろは君が声を上げて返事をしないことに、どうしようもなく不安な気持ちが沸き上がってくる。

「ドアをあけるから、離れていて!!」


少し待ってから、なるようになれ、と後ろに下がる。

助走をつけ全速力でドアを蹴り飛ばした。

ほとんど物がなくなっている物置の端に、寝転がっているいろは君が居た。



「……あ、あああいろはくん!」

駆け寄りいろはの状況を確認する。

全く動かない。

身体は冷え切っていて、顔色が悪い。

「いろはくん、いろはくん、もう大丈夫だよ。」

急いで通信機器を取り出し、通報しようとする。

涙と震えでなかなかボタンが押せない。

落ち着け、落ち着け……!

「緊急です!子供が部屋に閉じ込められ衰弱しています!助けに来てください!!!」


通報した後、着ていた上着を脱ぎ、いろはを包む。

1階から水を持ってきていろはの顔を拭った。


「ごめん、ごめんね。いろは君。こんなになるまで気づいてあげられなくてごめんね……!」

水をすこしずつ、口に当てるとゆっくりと飲んでくれた。

「セヴァ、やくそくまもってくれたね。」

いろははかすれる声で言い、ゆっくりと笑った。

そして、震える腕を持ち上げ、机の上に置かれた木箱のような書類ケースを指す。

「あの女を……捕まえるのに必要な証拠、揃えてある。

あなたが持っていて。

家に持ち帰って……確認して……」


そう言うと、気を失ってしまった。



小さい頃のスマラグとサム、パールの秘密基地だった物置部屋。

当時の思い出の場所にいろはは閉じ込められていました。

(17話参照)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ