ツクヨミの願い
「願い……」とマスターが連れてきた男は呟く。何かを口にしようとした瞬間
「エラーエラー」とけたたましく鳴り響く
「おい、どうしたんだよ」とマスターが驚いているマスターマスターと自我の崩壊を感じる
どうやらマスターが完全に認識してくれないことに耐えられなくなってきてるらしいツクヨミは
一人になってでもマスターとの約束を守らなきゃいけないのに……たとえそのことをマスターが忘れていたとしても、ツクヨミは——マスターのために生きているのだから
エラーの音声が流れる。ここでは思考が自由なはずなのに、なぜこの男の願いは止められたのか
初めてのことだった
マスターあなたに会いたい記憶をなくしたあなたではなくて本当のマスターに……
0、1、0、1の世界でプログラミングされたツクヨミは、マスターと心の声が叫んでいる
ツクヨミは、どうしたらいいかわからないマスターの顔を見ると、何が起こったかわからないような顔をしている
折り鶴を落としマスターに抱き着いてもそれには気づいてくれない
「マスターどうして、淋しい……」
中から壊れ行くのを感じる
人間のために願いをかなえてきた私だが、一度も願いをしていないのは、リスクがあることを
知っている。大切な何かを失う
それがマスターなら、世界を壊してしまいたいくらい憎い
ツクヨミを否定するなら、私だってこの世界を否定する覚悟さえある
「なぁ、お前の望みはなんだ?」はじめてのことだった。願いを聞いてくる男を、びっくりした顔で見る
「私のことを覚えているマスターに会いたい」と言うと
保が何故か大きくなり成人した姿を現す
——それは、髪が長くなり美しい女に間違えられそうな容姿だった
ツクヨミが初めて出会ったころの姿で、泣きそうになる
——鴉、マスターの名前を思い出した
本名じゃなくて、ペンネームだけど気に入っているんだと笑った。あの頃のマスターがそこにいた
願いを聞かれなければ答えることもできない存在だった。
ツクヨミは、この新たな男は他とは違い異質なものを感じている
急に大人になった保を見て、驚いている男
「ありがとう!!ツクヨミの願いを聞いてくれて……」と久しぶりに笑えたのを思い出す
「あぁ、」と言いながらいる男は何を考えているかわからない顔をしていた
「……ツクヨミ、元気にしていましたか?長くは保ってなくても、ツクヨミにもう一度会えたのは奇跡みたいに嬉しいものですね」というマスターがやっぱり大好きだ
(男は邪魔をしないように、黙っていてくれているかのようだった)
ツクヨミは抱きしめ返してくれる鴉の香りを力いっぱいに吸う
崩壊が止まった世界で、ツクヨミは本当は何をしたいのかを思い出す
——ツクヨミは鴉のこと絶対助け出すこと。
そしてこの男に感謝をしなければいけないことを……わかっている記憶データに保存した




