第246話 子孫の一番弟子
この頃になると、ニーナは三十二歳になっていた。
相変わらずの魔道具バカではあるのだが、好きこそものの上手なれという格言の示す通り、努力を怠らず、めきめきと腕を上げていっていた。
その結果、今では自他ともに認める私の一番弟子となっていた。
そんなニーナが研究テーマにしていたのは、魔道具の更なる小型化だった。そのために、いろいろと新しい加工器具を開発していて、小さな魔法文字を刻む方法を試行錯誤している。
そんなある日。
初代のワントから数えて八代目となるヒデオ工房の副工房長は五十九歳になっており、引退を表明した。
その彼が後継者に指名したのは、なんとニーナであった。
女性として初の副工房長になるだけでなく、弱冠、三十二歳にしてヒデオ工房の実質的なトップになるのは、異例のことであった。
しかし、ニーナの実力は誰もが認めるところであったため、誰からも異論は出なかった模様だ。
そんなニーナは、副工房長に就任すると、私と顔を合わせるたびに以下のような発言を繰り返すようになっていた。
「大おじい様、国造りなんて退屈な作業はさっさと終わらせて、ヒデオ工房の工房長に専念してください。そして、私たちと一緒に、魔道具業界をさらに発展させましょう!」
鼻息も荒く力説しているニーナを見ながら、私は以下のように考えたこともある。
(まあ、全てが片付いたら、そういう未来もいいかもしれませんね……)
ただ、同時に以下のようにも考えてしまっていた。
(しかし、やはりその時には、クリスさんとのあの約束を果たしたいですね)
そのため、いつも曖昧に返事をすることになっていた。
副工房長になったニーナには、あの粉を含めた全ての秘密を打ち明けた。
その席で、ニーナが感嘆の声を上げる。
「こ、これが、魔道具業界の最大の謎の正体……」
私の作った金色の粉をじっとりと見つめ、うっとりとした表情を浮かべるニーナ。
私はその様子に、若干、引き気味になりながら、秘伝の塗料の配合方法や、合金の作成手順などを伝えたのであった。




