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魅了の魔女だと嫌われている私ですが、光属性の皇子様から溺愛されています  作者: 束原ミヤコ


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洞窟の魔物



 途中で休憩をとりながら、ゆっくりと山頂までの道を進んでいく。

 魔狼の群れや、人喰い樹木など、危険度の高い魔物が出現したものの、カイネルードの敵ではなかった。

 

 山頂まで転移魔法を使わなかったのは、足場が悪い場所に集団に転移することは危険だからである。

 カイネルード一人ならなんとかなるが、そこが危険な場所だった場合、転移の場所を少しでも間違えれば崖下に真っ逆さまに落ちてしまうこともある。


 それから、せっかくなら歩いて頂上まで向かいたい、という気持ちもあったのだと、歩きながらカイネルードが話をしてくれる。


「こういうものは、皆で踏破してこそ意味があるのだろう。ルティ、疲れたら抱き上げよう。大丈夫か?」

「大丈夫です。歩くのは、得意です。……お兄様に、家にいてもいいから、動くように言われていて。ダンスの練習もしましたし、運動も、していました」

「ルティは偉いな」

「そんなことは……でも、練習、していてよかったです。カイネ様と一緒に踊ることができて、楽しかったですから」

「俺も同じだ」


 山の中腹は休憩所が作られている。簡素な木製のベンチに座り、休憩をした。

 持ってきていた飲み物と、野菜とハムなどが挟まれているパンを食べる。

 ルティナたちよりも少し遅れて現れたステラは、ぜえぜえと肩で息をしていた。


 いつもは饒舌だというのに、疲れ果てているのか、話すこともできないようだった。


「ステラ様、大丈夫ですか? あまりお辛いようなら、戻りましょうか」

「平気よ」

「足は、痛くありませんか? 山歩きの靴ではありませんから、きっと、傷が……薬を持ってきました。塗りましょうか」

「……塗ってちょうだい」


 一息ついたところで、やはりあまり元気のないステラを心配して、ルティナは所持品の中から小さな薬壺を出した。

 ステラのそばにいき、それから、男性たちを見渡した。


「ステラ様の足を見ますので、どうか後ろを向いていてください。足の傷は、見られたいものではありませんから」


 肌を見せることも、傷を見せることも、女性にとっては恥である。

 ルティナは魔物憑きの傷を極力誰にも見せたくないと考えている。

 それがどんな傷であっても、見せたくないのは同じだろう。


 カイネルードたちが距離を取ってくれるのを確認してから、ルティナはステラの足にそっと触れた。

 低いヒールのある可愛らしい靴を履いている。だが、長距離を歩くためには作られていない。

 靴と靴下を脱がせると、踵は切れており、足の裏は水疱が破けていた。


「ステラ様、よくここまで頑張りましたね。今、薬を塗ります。魔法薬ですから、とても効き目がいいですよ。少しの傷なら、すぐに治ります」


 深い傷を治すことはできないが、浅い傷ならすぐに治る。

 ルティナは薬を丁寧にステラの足に塗っていく。ステラは文句を言わずにじっとしていた。


「……ルティナ。どうして、優しくするの」

「どうしてというのは」

「……私が邪魔ではないの?」

「邪魔……というのは」

「なんでもないわ」


 魔法薬の効果は確かなもので、塗ってから数分もするとステラの足の傷は癒えていた。

 ルティナは一度、魔法薬作りに失敗をして、カイネルードに迷惑をかけている。

 それから諦めたりせずに、ずっと魔法薬の作成を続けていたのである。

 今では簡単な薬なら、すぐに作ることができるようになっている。


 元気を取り戻したステラを連れて、ルティナたちは山道をあがっていく。

 ステラはカイネルードに話しかけず、クオンツとフェルズの隣を大人しく歩いていた。


 山頂に近づくにつれて、勾配がきつくなってくる。

 山頂手前は洞窟になっており、洞窟を抜けるとそこに頂上がある。

 夕暮れが近いが、洞窟の中は、いくつか空いた天井の亀裂から光が届いている。

 

「わぁ……」


 カイネルードに手を引かれて歩きながら、ルティナは感嘆の声を漏らした。

 洞窟の中は、鉱石で溢れていた。

 壁から突き出している岩に交じるのは、月光石や、星瑠璃や、雷玉など。


 いずれも希少価値が高い鉱石である。

 それに、光苔や、白茸や、虹百合などの植物もある。


「希少な素材が、たくさんあります。すごい」

「嬉しそうだな、ルティ」

「はい。……手慰みに、始めた魔道具作りですが、今はとても楽しいです」

「それはよかった。ルティのそのような顔が見られるのなら、来てよかったな」


 まずは頂上に行こうと話をしていたので、採取は後回しにして、カイネルードとルティナは洞窟から出ようとした。

 すると、背後で悲鳴があがった。


「きゃあああっ」


 ステラの声だ。

 足を止めてルティナが振り向くと、ルティナたちから少し離れた場所、ちょうど洞窟の中央に差し掛かったステラの足元から、無数の絨毛のようなものが生えてきていた。



 

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