休息
「ノーラの様子はどうだ?」
「熱でうなされてる……。 お医者さんの話だと、魔眼が一度に二つも発現したことに対して身体が適応できてないだけで、しばらくすれば治るとは言ってたけど……」
ノーラが倒れた後、急いで屋敷に戻り医者を呼び現在に至る。
魔眼が二つ発現することは稀にあるが、それが原因で倒れるという話は聞いたことがないためユリウスもエリナもずっとそわそわしている。
「あとは魔眼の性質の可能性も考えられる。 ノエルの話によると、まるで未来が視えていたようだと」
「……もしかして千里眼? あの魔法なら未来を読み取れるし幻覚も見破れる。 だけど、魔眼で発現できた人は1人しかいないって聞いたけど」
「いや、可能性としては高いだろう。 千里眼は脳への負荷が大きい魔法だ。 今のノーラが扱っていいような魔法ではない」
「分かっているのは回復と身体強化の魔眼だけかぁ。 でも、こっちも幼いノーラちゃんには大きすぎる力だよね……」
「あぁ、成長するまではあまり使わせないほうがいいだろう。 ところでノエルはどうした?」
「休むように言ったんだけど、ノーラちゃんのそばにいるって聞かなくて。だいぶ責任感じちゃってるみたい……」
「そうか。ノーラのおかげで生き延びれたと言っていたし、兄としては複雑な心境だろう……」
「かもしれないね……。 今は立ち直ってくれることを祈るしかできないけど、できるだけ支えてあげよう」
「そうだな。 それに、あいつらは誰よりも強くなる気がする。だから、俺たちはそれまで守ってやらないとな」
「うん!」
「う……」
「ノーラ、気が付きましたか!?」
目を開けると、にーさまが心配そうに私の顔を見ていた。
「にーさま……? あれ、ここは……」
「ここは僕の部屋です。 ノーラの部屋と比べて被害が少なかったのでこちらに運びました」
えっと、たしかとうさまたちが来てくれた後急に意識が遠くなったんだっけ……。
もしかして、にーさまずっといてくれた?
「からだ、あつい……」
「熱があるのですからそのまま寝てて大丈夫ですよ。魔眼の発現による副作用のようなものなので、すぐ良くなります」
「あい……」
身体を起こしているのもやっとなので、言われた通り横になる。
すると、にーさまがぽそりとつぶやいた。
「……ごめんなさい」
「どうして、にーさまがあやまるのです?」
「僕がもっと強ければ、ノーラが怖い思いをしなくても済んだし倒れることもなかったはずです。僕は、兄失格です……」
「そんなことないです、にーさま」
悲しそうにうつむくにーさまの手をきゅっと握る。
にーさまは責任感強すぎますね。
「わたしはまだ、にーさまみたいにたたかうちからないです。にーさまがまもってくれたから、たすかりました」
「ですが……!」
「それをいうなら、わたしだって、ぎりぎりでまがんつかえるよう、なりました。 もとからつかえてれば、にーさまもらくできました」
「それは、そうですが……」
「それに、いちばんわるいのは、まがんがりです。にーさまもわたしも、とうさまもかあさまも、だれもわるくないです」
「ノーラ……」
「むー、わたしがにーさましっかくなんて、いうはずないです。 それでもわるいとおもうなら、いもうとがねるまで、てにぎっててください」
「……わかりました。これでいいですか?」
そう言うと握っていた手を力強く握り返してくれた。
前世では倒れた時にそばにいてくれる人なんていなかったから、こうしてくれているだけでも十分です。
「ん、あんしんできます。おやすみなさいです、にーさま……」
「……うん、おやすみ、ノーラ」
今日のようなことがまた起きたときにーさまに悲しそうな顔をさせないためにも、私も強くならないと……。
そう心に決めて、この日は眠りについた――




