第9話:自称親友(トラブルメーカー)、まさかの転校 〜他校のAランクエリートがFランクを追ってきた結果、闇の組織の侵略が疑われる〜
獅子王魔法学園との合同訓練から数日後。
王立魔法学園の朝のホームルームにて、レイはいつも通り机に突っ伏して深い眠りについていた。
「静かにしろー。今日は特別なお知らせがある」
担任教師がパンパンと手を叩くと、教室が少しだけ静まる。
「なんと、隣街の獅子王魔法学園から転校生がやってきた。入ってこい」
ガラッ、と勢いよく教室の扉が開く。
そこに立っていたのは、王立学園の制服の胸元をはだけさせ、筋骨隆々の肉体を誇示するように仁王立ちする大柄な少年だった。
「おおおおっす!! 今日からお前らの仲間になる、ザックだ!! よろしくな!!」
地響きのような大声に、教室中の生徒が耳を塞ぎつつも、その顔を見て顔面を蒼白にさせた。
「お、おい嘘だろ……。合同訓練に来てた、獅子王の『紅蓮のザック』じゃないか!?」
「バリバリのAランク特待生だぞ!? なんでエリート校のトップ陣が、うちのクラスに転校してくるんだよ!?」
ざわめきが頂点に達する中、ザックは教室を見渡し、一番後ろの席で寝ている人物を見つけてパァッと顔を輝かせた。
「おーい、レイ!! 約束通り、お前と一緒にトップを目指すために転校してきたぜ!!」
その声に、レイはビクッと肩を震わせて顔を上げた。
「……は?」
「獅子王の連中には『俺には王立学園に最高のライバルがいるから抜けるわ』って言って退学届叩きつけてきたぜ! これから毎日、朝から晩まで一緒に切磋琢磨できるな!!」
ザックは親指をグッと立てて、白い歯をキラリと光らせた。
教室の空気が、パリーンと凍りついた。
モブ生徒たちの視線が、一斉にレイへと突き刺さる。
「は、はあああああ!?」
「あのAランクのバケモノ、うちの万年Fランクのために転校してきたって言ったぞ!?」
「ライバル!? マイナス野郎のレイが!? どういう冗談だよ!!」
(終わった……)
レイは頭を抱え、再び机に突っ伏した。
(せっかくあの合同訓練を『ダグの自爆事故』で誤魔化して乗り切ったのに……。なんでこいつ、わざわざ俺の平穏をピンポイントでぶち壊しに来るんだよ……!)
「おう隣の奴、ちょっと席代わってくれ! 俺はレイの隣に座るって決めてるんだ!」
ザックは凄まじい威圧感(本人は笑顔のつもり)でレイの隣の生徒をどかし、無理やり席を陣取った。
「さあレイ! まずは俺たち二人で、この学園のトップ(生徒会)をシメに行こうぜ!!」
「……不良漫画じゃないんだからさ。頼むから寝かせてくれ」
レイの胃痛がマッハで加速していく中。
教室の窓の外、中庭の木の枝に同化するように潜伏し、望遠鏡(魔力強化済み)でこの光景をガン見している銀髪の美少女がいた。
我らがSランク生徒会長、アリシアである。
「なっ……! レイ君の組織の幹部が、堂々と学園内部に侵入(転校)してきたというの!?」
アリシアはワナワナと震えながら、『レイ君観察ノート(6冊目)』に激しい筆圧でメモを書き込む。
(しかも、転校初日から『生徒会をシメに行く(=王立学園の武力制圧)』と高らかに宣言するなんて……! しかしレイ君は、『寝かせてくれ(=まだ動く時ではない)』と幹部の暴走を冷徹に制止したわ……!)
(間違いない、彼らは学園の地下深くに眠る『何か』を狙っているんだわ! レイ君……貴方は一体、この学園をどうするつもりなの……ッ!?)
ただ「熱血バカが親友を追ってきた」という青春の1ページは、アリシアのポンコツフィルターを通すことで、学園存亡を懸けた『闇の組織の侵略作戦』へと華麗に変換されていた。
「学園の平和は……私が必ず守ってみせる! そして、レイ君の真意も……!」
木の枝の上で謎の決意を固めるSランク会長と、隣の席で大声で筋トレを始めるAランクの自称親友。
Fランクのレイを取り巻く環境は、もはや「平穏」という言葉から銀河系レベルで遠ざかり始めていた。




