第18話:使い魔お披露目テスト 〜Fランクの飼い犬が『Sランク』を叩き出し、教師の胃に穴が空く〜
王立魔法学園の屋外グラウンド。
この日は、生徒たちが契約した動物や魔獣の格付けを行う『使い魔お披露目・測定テスト』が行われていた。
「おうレイ! 見てくれよ、俺の相棒の【火竜】だ! Bランクだぜ!」
ザックが腕に赤いトカゲを這わせて得意げに笑う。
周囲のモブ生徒たちも「俺の使い魔はCランクの風鷲だ!」「私のは回復魔法が使えるスライムよ!」と、思い思いの相棒を自慢し合っていた。
そんな中、グラウンドの隅っこで、ひときわ異彩を放つ(物理的にデカい)モフモフの毛玉があった。
「……すぅ……すぅ……」
「ワフッ、ハッ、ハッ……(意訳:王よ! 今日の私の毛並み、最高のクッション性を実現しております!)」
Fランクのレイである。
彼は銀色の大型犬のフカフカなお腹を枕にして、周囲の騒ぎなど我関せずと爆睡していた。
「おい、そこ! Fランクのレイ! いつまで寝ている!」
バインダーを持った実技担当の教師が、青筋を立てて怒鳴り込んできた。
「お前の番だ! さっさとその……なんだそのデカい犬は。まあいい、その犬を『使い魔測定器』に乗せなさい!」
「……んー? ああ、フェンの番か」
レイは目を擦りながら起き上がった。
「ほらフェン、ちょっとあの板の上に乗ってきて。すぐ終わるから」
「ワンッ!(意訳:御意ィ!!)」
フェンは尻尾を千切れんばかりに振りながら、グラウンドの中央に設置された巨大な水晶板(測定器)の上にちょこんと座った。
実技教師が冷笑しながら水晶板のスイッチを入れる。
「ふん。どうせFランクの使い魔だ。その辺の野良犬に毛が生えた程度の魔力しか——」
——ピ……ピピピピピピピピピピッ!!!
水晶板が起動した瞬間、けたたましい警告音がグラウンドに鳴り響いた。
フェン自身はレイの言いつけ通り魔力を極限まで抑え込んでいたが、最新鋭の測定器は残酷にも『魔獣の魂の格』を正確にスキャンしてしまったのだ。
水晶板に浮かび上がった文字は、学園の歴史上でも数えるほどしか表示されたことのない、黄金のアルファベットだった。
【ランク:S(災害級)】
「なっ……!?」
教師はバインダーを落とし、目をひん剥いた。
「Sランクだと!? こ、この測定器の上限ギリギリじゃないか! 災害級の魔獣が、なぜ学園に……!? し、しかもこの銀の毛並みと、底知れぬ冷気……! 嘘だろ、ま、まさか文献に記された伝説の【氷雪狼フェンリル】……!?」
教師はパニックになり、ガタガタと震えながらレイを見た。
Fランクの落ちこぼれ生徒が、生徒会長と同格の【Sランク】の伝説の魔獣を従えている。しかも、ただの『便利な枕』として。
常識が崩壊する光景に、教師は脳の処理が追いつかず呼吸困難に陥りかけた。
「な、なんだお前は……! お前、一体どうやってこんなヤバい魔獣を……!」
教師がレイを問い詰めようと一歩踏み出した、その時。
——グラウンドを見下ろす校舎の最上階、生徒会室の窓から、異常なまでの『殺気』が放たれた。
「ヒッ!?」
教師が視線を上げると、生徒会長のアリシア、副会長のクラウスら生徒会メンバー全員が、冷酷な目でこちらを見下ろしていたのだ。
彼らの手にはすでに高度な攻撃魔法が展開されており、その目は雄弁に物語っていた。
『それ以上、我らが王の御遣い(ペット)の正体を探ってみろ。……学園から、社会的に(あるいは物理的に)消すぞ』と。
「あ、あ、ああぁ……!」
教師は完全に心を折られた。Fランクの生徒を問い詰めようとしただけで、学園最強の生徒会メンバー全員から命を狙われる。この学園(レイの周り)の闇は深すぎる。
教師は震える手でバインダーを拾い上げ、涙声で宣言した。
「……れ、レイ君の使い魔……測定終了、ご、合格です……!」
「……? なんか先生泣いてるけど。フェン、おいで」
「ワフッ!(意訳:王の御心のままに!)」
フェンは一瞬でレイの足元に戻ると、再び「極上のクッションモード」へと移行し、丸くなった。
「じゃあ終わったし、俺寝るから。ザック、次の授業のとき起こして」
「おう! よくわかんねえが、お前の犬スゲエな! 先生が感動して泣いてたぜ!」
Fランクの少年は、Sランクの魔獣をただのクッションとして使い、グラウンドのど真ん中で優雅な二度寝に入る。
教師が理不尽なトラウマを抱え、生徒会メンバーが窓から「やはり王のペットもSランク……我々とお揃いですね!」と心酔の眼差しを送る中、レイの平穏(?)な使い魔テストは無事に幕を閉じたのであった。




