↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強の力を隠したいのに、Sランク生徒会長(ストーカー気質)のせいでちっとも平穏じゃない!  作者: 鷲尾秋水


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/25

第15話:王(Fランク)の尊厳を傷つけた結果 〜モブ貴族、生徒会の総力をもって社会的に完全抹殺される〜

昼休みの学食。

レイは列に並び、最後の一つとなった『購買部限定・幻の極上焼きそばパン』へと手を伸ばそうとしていた。

ドン・レイの快適な昼寝ライフにおいて、この焼きそばパンの確保は最重要ミッションである。


「おい、そこどけよFランク。そのパンは俺がもらう」


横から乱暴に割り込んできたのは、派手な制服の着こなしをした上級生の男子生徒だった。取り巻きを数人引き連れた彼は、学園でも幅を利かせている中堅貴族、ガストン男爵家の次男坊だ。


「なんだ、生徒会にこき使われてる底辺の雑用係じゃないか。お前みたいな魔力ゼロのゴミが、そんな高級なパンを食べる資格なんてないだろ?」


ガストンは下品に笑い、レイが取ろうとしていた焼きそばパンを横取りした。


「悔しかったら、俺の靴でも舐めてみろよ。そうしたら一口くらい分けて——」


「あー……わかったわかった。じゃあそれ譲るわ。俺、別のパン買うから」


レイは欠伸を噛み殺し、あっさりと引き下がった。


(こんな小物相手にキレて騒ぎを起こしたら、目立って面倒くさいし。……まぁ、焼きそばパンは明日食えばいいか)


レイは争うことすら面倒くさがり、適当なクリームパンを手に取って学食を後にした。

ガストンは「はっ、腰抜けが!」と勝ち誇ったように笑っていた。

——彼らは気づいていなかった。

学食の天井裏、柱の陰、そして配膳カウンターの裏側から、およそこの世のものとは思えないほどの『ドス黒い殺意』が放たれていたことに。


「……万死。万死に値するわ、あの男」


天井裏に同化していたアリシアの瞳(魔眼)が、絶対零度の怒りに凍りついていた。


「我らがドンから、あろうことか『本日のメインディッシュ』を強奪し、あまつさえ『靴を舐めろ』と……ッ!?」


柱の陰に潜んでいたクラウスが、杖を握りつぶさんばかりに震えている。


彼ら生徒会メンバーは、レイの『俺が強いことは絶対に秘密にしろ。表向きはFランクの雑用係として扱うように』という命令を絶対遵守している。

だからこそ、表立ってレイを庇うことはできない。


「だが、王の慈悲(レイが面倒くさがって見逃したこと)に甘え、つけ上がる愚者を野放しにするわけにはいかない……!」


「ええ。生徒会の名にかけて、あの男に社会的な死を与えましょう」


セリアが冷酷に眼鏡を押し上げ、ギルバートが胡散臭い笑みを極限まで深めた。

その日の午後、ガストンの身に『不可解な不幸』が連続して降り注いだ。

まず、午後の授業。


「ガストン君。君の過去三年分のテストにおける『カンニングの魔力痕跡』および『解答の不正購入ルート』の完全な証拠データが、教師陣のデスクに匿名で届きました。……放課後、指導室へ来なさい」


セリアの完璧な情報操作により、ガストンの学業成績は完全に地に落ちた。

次に、休み時間。


「……おい、お前」


ガストンが廊下を歩いていると、すれ違いざまに大柄な転校生(ザック)が、壁を『ドゴォォォォン!!』と粉砕しながら凄んできた。


「次、俺の“親友”の前にそのツラ見せたら……その壁の代わりに、お前の顔面を消し飛ばすぞ」


純粋な暴力による脅迫。ガストンは恐怖で失禁しかけた。

さらに、放課後。


「ガストン男爵家のご子息ですね? 困りましたよ、貴方のご実家が運営する商会が、王宮の監査に入られましてね。どうやら『大規模な脱税』と『裏帳簿』の証拠が、どこからかリークされたようで……男爵家は、本日をもって破産および取り潰しが決定しましたよ」


ギルバートが、ソロバンを弾きながら満面の笑みで告げた。ガストンは泡を吹いて倒れた。

そしてとどめ。

指導室の前で絶望に打ちひしがれるガストンの前に、完璧な微笑みを浮かべた生徒会長・アリシアが現れた。


「ガストン君。学園の規律を乱し、成績を偽造し、実家も取り潰しとなった貴方に、これ以上この神聖な学園に在籍する資格はありません。……これにサインを」


アリシアが差し出したのは、あらかじめ彼の筆跡を完璧にトレースして書かれた『自主退学届』だった。


「……ひぃっ! わかりました! やめます、もう俺の人生は終わりだぁぁぁっ!!」


もはや何が起きているのかすら理解できないまま、ガストンは涙と鼻水まみれで学園から逃げ出していった。

焼きそばパンを奪ってから、わずか数時間後の出来事であった。

—— 一方その頃、生徒会室。


「……ふわぁ。よく寝た」


極上のフカフカソファで昼寝を満喫していたレイが、目を擦りながら起き上がった。

テーブルの上には、なぜか昼休みに売り切れていたはずの『極上焼きそばパン』が、山のように高く積まれている。


「ん? なんだこれ」


「レイ様がお目覚めになられました! さぁ、昼の分までお召し上がりください!」


「ドン・レイに歯向かった愚か者は、すでにこの世(学園)から排除いたしました。ご安心を」


生徒会メンバーたちが、レイの前にひれ伏し、キラキラとした瞳でこちらを見上げている。


(……なんかよくわかんないけど、アイツらまた勝手に気を利かせてパン買ってきてくれたのか。まあいいや)


「お、おう。サンキュ。じゃあいただくわ」


レイが焼きそばパンにかぶりつくと、アリシアたちは「おお……王が我々の供物を食しておられる……!」と感涙に咽び泣いた。

Fランクの少年の『面倒くさい』という一言は、狂信的なエリート集団の手によって、今日も学園に理不尽な粛清の嵐を吹き起こしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。