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 翌週は、テストが次々と返却されてきて、花音達の高校では、各教科の平均点、上位二十名までの名前とその得点が、各教科の研究室前の掲示板に貼り出される。

 全教科の総合順位は全員には公開されず、個人の順位は本人だけに分かるようにwebで確認できる方式だ。


 花音の名前は現代文、古典、英語のgrammarで十位以内に入っており、瑛司は、数学だけ二十位に入っていた。

 金曜の夕方以降にwebで自分のものは確認できるので、普段掲示は通りかかれば見るくらいの花音だったが、今回は何となく瑛司の名前を探しに行ってしまった。

 瑛司の名前を見つけたとき、自分のことではないのに、つい、胸に嬉しい気持ちが広がる。あれだけ頑張っていたのだ。誰かの頑張りが報われることは、素直にうれしい。


 金曜日のホームルームの時間前には、数学で二十位に返り咲いた瑛司に男子が数人群がっていた。

「瑛司、貼り出されてたぞ!」

「やってくれたわ〜」

「おいおい〜本気出すのやめてくれよ〜俺の順位が落ちる〜」

 そんな男子達の言葉に、瑛司は、

「いやー、マジで今回わりと俺の人生かかってるから。帰って総合順位見るのこえーよ」

と、苦笑して返した。


 ホームルームが始まってすぐ、花音は視線を感じて隣りの瑛司を見ると、瑛司は机とお腹の間で周りに見えないようにサムズアップをしてきた。花音は瑛司に向かって一瞬だけ微笑んで、視線を前に戻した。



 その日の夜、瑛司からメッセージが届いた。

『四十八位でした』

という一言に続いてギリギリセーフのスタンプが送られてくる。花音は思わず、

「おぉ」

と声に出してしまった。そして、

『やったね』

と拍手を送る。


『花音は?』

『二十九位でした』

『マジかーいつか超える』

 それに対して、

『すぐ超えられそうでこわい』

と送った。

 本当に。元々は二十位以内だったようなので、やればできるのだろうが、瑛司は春休みからここまでで一気に追い上げたのだから、相当な努力だったのだと思う。


『でも、ここからは範囲が広くなるし、今はサボってたところと格闘中』

『えらい。私もがんばる』

 クラスメイトも瑛司に触発されていたが、花音ももちろんその一人だ。素直に敬意を表したい。


『あ、スマホ普通に夜も使えるようになった』

『よかったね〜』

 うるうる感激の涙を流すキャラのスタンプが送られてきて、思わずニヤっとしてしまった。


 と、そこへ、

『ところで、明日の午後空いてる?』

と突然のお誘いが表示される。


 スタンプに反応したニヤけは一瞬で消えて、胸がドクンと鳴った気がした。

 先程までの、軽いラリーのような返信がすぐにできない。

 なんと返したものか、躊躇う気持ちと、早く返信しないと変に思われるかもという気持ちで、焦る。

 そうこうしているうちに、

『英語の成績上げるために、AI使って自分専用のアプリ作ったんだけどさ』

と続けて送られてきて、花音は一瞬思考停止した。


 さっきの躊躇いはどこかへ吹き飛んで、

『アプリ?』

と送り返す。

『そ。成績上げるために自分の弱点強化に特化したアプリ。ちょっと興味ない?』

 花音は今度は一瞬の間もおかず、

『ある』

と即答して、翌日の午後に約束をした。



 土曜日の朝になり、クローゼットの前に立つと、花音は何を着たらいいかで迷ってしまった。

 前回は、一花曰く『徳を積む』善行で勉強を教えるつもりで出かけたから、もちろんおでかけ着ではあったものの、勉強のしやすさとか体温調節のしやすさを優先して、そこまで意識しなかった。

 けれど、自分のことを好きと言って、口説く、と言っている相手と会うのには何を着たら正解なのか。さっぱりわからない。


 ミニスカートとかショートパンツは、何となくやめた方がいい気がする。なんとなくだけど!


 ああでもない、こうでもないと、服を出したりしまったりを繰り返す。

 一時間近くかけて、まずは足の線が出ないダボっとしたパラシュートパンツに決めたが、次に上を決めるのに苦労した。

 最近はこのパンツにミニTを合わせるのだが、お腹のチラ見えがまずい気がする。しかし、そんなことを考えることが自意識過剰な気もする。

 結局、他のトップスをあれこれ合わせてみてもなんだかしっくり来なくて、次第に腹が立ってきた。


 なんだって自分がこんなに疲れるほど考えなければいけないのか。

 結局、花音は上はいつも通りミニTにし、上から透け感のあるパーカーを羽織り、キャップを被って行くことに決めた。

 すると、次にキャップにいつもの眼鏡が合わないような気がして悩み始め、結局コンタクトレンズを入れることにする。元々、体育祭の時などはコンタクトレンズを使ったりと併用していたので、


 大丈夫、意識してるわけじゃない。ちょっとスポーティな格好だから。


 と、心の中で誰にともなく言い訳して、軽めのメイクをしながら、


 大丈夫、一花たちと出かけるときと同じくらいの普通のメイクだから。


 と心の中で唱えながら、先日友人達とお揃いで買ったリップを塗って出かけることにした。




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