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「というわけでした」
「ほぉ〜」
花音は、その日の夜、一花へのオンライン報告会で、ところどころオブラートに包みながら、口説く宣言をされたことを報告した。
「やっぱ恋の予感だったじゃーん。それにしても、うちら世代でそんなグイグイ攻めてくる人いるんだね。今までのイメージだと日野くんってそこそこモテるんだろうけど、もうちょい軽めのチャラさというか、去る者は追わなそうな」
「あ、確かに」
花音は去年までの瑛司のイメージを思い出して同意する。
「それにグイグイ攻めるのって、一歩間違えればハラスメントじゃん?」
「そう、そうだよね。……そうなんだけど、なんか私にとってのギリギリラインをさ、向こうのほうが知ってる感じで。ちょっと怖い」
「ほほ〜ん。よくわからんけど、テクニシャンてことかな?」
「テクニシャン…?なんだろ、うーん、すごく高い精度で観察されているような…?」
花音は上を向いて思い返しながら首を傾げた。
「ふーん。で、どうなの?花音は落とされちゃいそうなの?」
からかうような口ぶりで、一花が聞いてくる。
「…ドキドキとか、びっくりして心臓バクバクとかはしたんだけどさ」
「ほほぅ?」
「好きって思ってたわけじゃない人から、ふいに何かされて感じたドキドキは、好きのドキドキじゃないじゃんね?」
「ん?」
そこで一花のからかいモードがプツリと途切れた。
「どゆこと?」
「だから、びっくりしてドキドキと好きのドキドキは違うよね、みたいなこと」
「んあー、そっかそっか、花音はまたちょっと考えすぎな気もするなー。うちら頭でっかちの弱点よ、それ多分」
スマホの向こうで一花が頭をガシガシとするような雰囲気の音が聞こえる。
「吊り橋効果なんてよく聞くじゃん?それで好きって勘違いしても、結局その先お互いを大事にできればいいんじゃないの?結局オーライというか」
「結果オーライかあ…」
花音は何となく納得のいかない気持ちでオウム返しした。
「そりゃ、お互い一目惚れした!とか、普段の様子から少しずつ相手を知るうちに両思いになって、とか、運命を感じました!その後幸せに暮らしました。めでたしめでたし。ってのが理想的なんだろうけどさ」
「あぁ、まあ、うん」
「そんな絵に描いたようなお話なんて、果たしてどれだけあるんだろうね」
そこで、花音は一花の言いたいことに思い至った。
「うちの親なんて、運命的な大恋愛の末の離婚だからね。逆に昔はお見合いで出会ってその後オシドリ夫婦なんて家もあるし」
「そっか」
「自分にどんな出会いがあってどうなるかは、努力で選べないとこも多いじゃん?ホントにヤバい奴とか、生理的に無理とかだったら逃げなきゃだけど、嫌でなくて、本気で口説いてきて、ドキドキしたなら、貞操は守りつつ、相手のことを知りながら考えてみてもいいんじゃないの?」
「一花、すごい。なんか大人」
花音は素直に感心した。
「何事も致命的でない失敗を重ねて学びながら、人間は成長していくもんでしょ」
「一花様!」
ヨイショで一花が少し調子に乗ってきた。
「さっきのをそのうち日野くんにも聞いてみたら?また私とは違う答えが返ってくるかもよ」
「うーん、なんか、変な方に誘導されそうでこわいんだよね」
そういうと、スマホの向こうで一花が吹き出した。
「もうこの一日で、だいぶ向こうのいい感じに誘導されてるとは思うけどね」




