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話の切れ目の都合で、今回は短くなっています。

「何のQRコードだろ…」


 花音がスマホを取り出して、QRコードを読み込むと、見たことのないアプリのインストール画面になる。

 花音は、ドキリとして、慌てて瑛司に連絡した。

『このアプリ、何?』

『俺が作った』

『二人だけで使うオリジナルアプリ』

『瑛司くんが作ったの?』

『そう』

『見たことないアイコンだから、何のアプリかと思った』

『とりあえず、セキュリティ考えてそのQRコード十分間しか有効にしてないから』

 その一文の後に、瑛司から、入力する招待コードが送られてくる。これも一度きりのコードらしい。

 言われるがまま入力し、アプリを開くと、そこには、『誕生日おめでとう。これからもよろしく』という文字の下に、先程瑛司が撮った二人の写真が出ていた。


 写真の花音は、肉まんとピザまんを両手に、少し緊張気味に、でも嬉しそうな表情をしていて、顔を寄せた瑛司は穏やかな顔をして微笑んでいた。


 初めてのツーショット写真がこれか、とか、やっぱり食いしん坊みたいじゃないか、とツッコミたい気持ちとは裏腹に、喉元が熱くなる。


 さらに写真の下には、『行きたい場所リスト』という項目があり、そこに東京の、ある大きなプラネタリウムのリンクが貼ってあった。クリックすると、美しい星々の映像の下に、品のいい丸いペアシートがいくつも並んでいる画像が飛び込んでくる。


 こんな素敵なプラネタリウムがあるんだ…。


 花音は込み上げてくる熱い塊のようなものを感じたまま、電話の受話器マークを押した。


「花音入れたな。これ、二人だけしか入れないように設計してあるから、その、セキュリティは心配しないで。絶対とは言えないんだけど…」

 開口一番、瑛司は、セキュリティのことばかり話してくる。相当、気を使って設計したらしい。

「すごいね、瑛司くん。ありがとう…」

 気の利いた褒め言葉も、写真への抗議も出てこなくて、誰でも言える賞賛と感謝しか出てこない。花音の体を駆け上がってきた熱いものは、涙になって、じんわりと目が潤む。


「行きたい場所リスト、見た?」

「うん、見たよ。あれ、東京だよね」

「そ、進学先から行ける中で、良さそうかなって」

「あんな素敵なところあるんだね」

「な、ちょっと良さそうだろ?プログラムもいくつかあって、たぶん季節毎変わるっぽい。リラックス系もあるし、天文好き用っぽいプログラムもありそうで。進学したら、一緒に行かないか」

「ふふ、絶対合格しなきゃだね」

「当たり前だろ。てか、そうじゃなくても、いつか二人で行きたい」

「うん」

 花音の声が涙でほんの少し揺れた。

「……アルバム共有なんて他のアプリでできるんだけどさ、行きたいところリストみたいに、これから俺たち二人が欲しい機能を追加していこう」

「…欲しい機能?」

「例えば、記念日表示とか?」

「へえ、そんなこともできるんだ。やっぱりすごいな、瑛司くんは」

 花音は滲んだ涙を拭って、深呼吸しながら感心した。


「…ホントはさ」

 スマホの向こうで瑛司が、

「指輪とかネックレスとか、身につけるものあげたかった。でも実力不足。それに、あげるなら、花音が好きなのじゃないとな」

 と言う。

「指輪?…あ、もしかして、」

 うれしい気持ちの中で、少し前のうさぎの首輪の話を思い出し、それを言いかけて、止める。

「もしかして?」

と続きを促す瑛司に、

「ううん、うれしいけど、また。これから、まだまだ何回も誕生日あるもん。今回のだって、めちゃくちゃすごくて、うれしかったよ」

と言った。

「それに、合格守だって身につけるものと言えばそうじゃない?」

 続けた花音の言葉に、

「そうだった、お守りだもんな」

と瑛司がスマホの向こうで笑った。




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